やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

まえがき

 これから医学を学ぼうとする医学関連の学校の学生諸氏にとって,解剖学の学習は切っても切り離せない最も重要な学問である.医療の世界,人の身体を対象とするこの世界で仕事をする者にとって,解剖学は学問のはじまりといっても過言ではない.この道を進もうと考えているからには,ヒトの体を学ぶ事を「嫌いだ」とは思っていないはずである.むしろ興味をもっているくらいで,だからこそ,この道を選んだはずである.ところが待望の学校に入学して,「さぁ,がんばって勉強しよう」と思った矢先,聞いたこともない医学用語や解剖学用語の大洪水に出会い,それを丸暗記でもして覚えなければ,次に出てくる生理学を理解できず,そのため最後には専門科目の内容さえまったくわからないという悪循環を繰り返していく.そうなってくると学生は「やっぱり解剖学は難しい」,「解剖学は暗記力が勝負だ」,「解剖学なんておもしろくない」などと思いはじめ,解剖学を楽しく,おもしろく学ぶことをあきらめてしまう.
 これはとても残念なことである.ヒトの体を組み立てている部品を「細胞」という最も小さな部品にまで分解する.その細胞で組み立てられた部品ごとに名前がついていて,部品の形や大きさや作りに違いがあり,その部品の役割に応じて特徴がある.それが部品の存在する場所にとても適したものになっている.それをひも解くのが解剖学なのである.
 解剖学は本当はとてもおもしろい学問である.それを是非,学生諸氏に知っていただきたい.どのように学べば解剖学をおもしろく思うのか.それを工夫してみようと試みたのがこの「PT・OT基礎から学ぶ解剖学ノート」である.おもしろく学ぶためには,丸暗記は害である.ヒトの体を見たらその体を構成する部品の一つ一つが目の前に浮かび上がるようにイメージできること.これが最も楽しく学ぶコツである.
 本書では人体のビジュアルなイメージを表現するために図を多用,その図に直接名称を書き入れられるようにした.また覚えなければならない項目は表にして規則性を理解できるようにした.次に理解できたかどうかを試すために,小項目ごとに基礎問題を(○)(×)問題や空欄穴埋め問題として取り上げた.さらに上級編の演習問題として国家試験レベルの問題を取り上げた.
 本書は学生が学習する手引きとなるようにするため,大項目を単元別に小項目に分類し,小項目の内容は1頁ごとに完結することを原則とした.1冊完成すれば「解剖学ノート」として学校の講義で利用できるし,定期試験の復習にも利用できると思う.いや是非そうしてほしい.そして本書の余白に学生のメモがたくさん書き込まれることを望んでいる.
 最後に本書に用いた図はすべて,新たに描かれたものであるが,原図の作成にあたっては国内・外のさまざまな解剖学書の写真,図等を参考にさせていただいた.それらの書名を巻末に引用文献・参考文献として掲げ,感謝の意を表します.
 また出版に当たっては医歯薬出版株式会社には並々ならぬご協力を頂いた.深く感謝申し上げたい.
 2000年1月 中島雅美
まえがき
本書の使い方

第1章 解剖学総論
 1 人体の区分と名称
  身体の断面に関する用語
  身体の方向を示す線
 2 体表観察
  上肢の体表観察
  下肢の体表観察
  手の体表観察
  基礎問題
  演習問題
 3 発生
  胚葉の分化
  基礎問題
  演習問題
 4 細胞と組織
  細胞の構造
  上皮組織
  基礎問題
  演習問題
第2章 骨格系
 1 骨の構造
  全身の骨格
  骨の外形による分類
  基礎問題
  演習問題
 2 頭部の骨
  大人の頭蓋骨
  新生児の頭蓋骨
  基礎問題
  演習問題
 3 脊柱の骨
  脊柱の構造
  椎骨の形
  脊柱と諸器官の位置の対応
  基礎問題
  演習問題
 4 胸部の骨
  胸部の骨の概観
  肋骨
  胸骨
  基礎問題
  演習問題
 5 骨盤
  骨盤の男女差
  骨盤と寛骨
  基礎問題
  演習問題
 6 上肢の骨
  肩甲骨
  上腕骨
  尺骨と橈骨
  基礎問題
  演習問題
 7 下肢の骨
  大腿骨
  骨と腓骨
  足の骨
  基礎問題
第3章 関節と靱帯
 1 関節の構造
  関節の構造
  関節面の形態的分類
  全身の関節
  基礎問題
 2 頭部・脊椎の関節・靱帯
  脊椎と頭の連結
  脊椎の連結
  基礎問題
  演習問題
 3 胸部・骨盤の関節・靱帯
  胸部の骨の連結
  骨盤の連結
  基礎問題
  演習問題
 4 肩・肘の関節・靱帯
  肩部の骨の連結
  肘部の骨の連結
  基礎問題
  演習問題
 5 手部の関節・靱帯
  手の関節
  手根の靱帯
  指の靱帯
  基礎問題
  演習問題
 6 股・膝の関節・靱帯
  股関節
  膝関節
  基礎問題
  演習問題
 7 足部の関節・靱帯
  足部の関節
  足部の靱帯
  基礎問題
  演習問題
第4章 筋系
 1 筋の構造
  筋線維の種類
  筋の形状
  基礎問題
  演習問題
 2 頭部の筋
  表情筋
  咀嚼筋
  基礎問題
  演習問題
 3 頚部・背部の筋
  頚部の筋
  背部の筋
  基礎問題
  演習問題
 4 胸部・腹部の筋
  胸部・腹部の筋
  横隔膜
  基礎問題
  演習問題
 5 肩・腕の筋
  肩・腕の筋
  基礎問題
  演習問題
 6 手部の筋
  手部の筋
  基礎問題
  演習問題
 7 股・膝の筋
  股・膝の筋
  基礎問題
  演習問題
 8 足部の筋
  足部の筋
  基礎問題
  演習問題
第5章 筋の起始部と神経支配
 1 体幹前面の筋―起始停止と神経支配
  体幹前面の筋
  体幹前面の筋―起始・停止と神経支配
  基礎問題
  演習問題
 2 体幹後面の筋―起始停止と神経支配
  体幹後面の筋
  体幹後面の筋―起始・停止と神経支配
  基礎問題
  演習問題
 3 上肢の筋―起始停止と神経支配
  上肢の筋
  上肢の筋―起始・停止と神経支配
  基礎問題
  演習問題
 4 下肢の筋―起始停止と神経支配
  下肢の筋
  下肢の筋―起始・停止と神経支配
  基礎問題
  演習問題
第6章 中枢神経系
 1 神経の構造
  神経細胞
  神経系の構成
  基礎問題
  演習問題
 2 大脳
  大脳の区分
  大脳皮質の機能局在
  大脳の前頭断面
  基礎問題
  演習問題
 3 脳幹
  脳室
  間脳(視床と視床下部)とその周辺
  中脳・橋・延髄の前面
  基礎問題
  演習問題
 4 上行性伝導路
  脊髄の伝導路
  上行性伝導路
  基礎問題
  演習問題
 5 下行性伝導路
  下行性伝導路
  基礎問題
  演習問題
 6 脊髄
  脊髄の各部の名称
  脊髄の断面図
  基礎問題
  演習問題
第7章 末梢神経系
 1 頚神経叢と腕神経叢
  頚神経叢
  腕神経叢
  基礎問題
  演習問題
 2 上肢の神経と筋支配
  筋皮神経と筋支配
  腋窩神経と筋支配
  尺骨神経と筋支配
  橈骨神経と筋支配
  橈骨神経と筋支配
  正中神経と筋支配
  基礎問題
  演習問題
 3 腰神経叢と仙恊_経叢
  腰神経叢
  仙骨神経叢
  基礎問題
  演習問題
 4 下肢の神経と筋支配
  閉鎖神経と大腿神経
  坐骨神経(腓骨神経)
  基礎問題
  演習問題
 5 脳神経
  脳神経12対の部位
  脳神経のまとめ
  基礎問題
 6 自律神経系
  自律神経の分布
  基礎問題
  演習問題
第8章 内臓器系
 1 口腔・咽頭
  口腔
  唾液腺
  基礎問題
  演習問題
 2 胃・腸
  胃
  十二指腸と膵臓
  大腸
  基礎問題
  演習問題
 3 肝臓
  肝臓
  胆のうと胆道
  基礎問題
  演習問題
 4 呼吸器
  呼吸器系の構造
  気管
  基礎問題
  演習問題
 5 腎臓
  腎臓
  腎小体
  基礎問題
  演習問題
 6 生殖器
  女性生殖器
  男性生殖器
  基礎問題
  演習問題
 7 内分泌器
  内分泌腺
  基礎問題
  演習問題
第9章 循環器系
 1 脈管系の構造
  全身の血液循環
  胎児の血液循環
  基礎問題
  演習問題
 2 心臓
  心臓と弁
  刺激伝導系
  基礎問題
  演習問題
 3 動脈(1)
  動脈の主幹の走行
  外頚動脈
  大動脈輪(ウィリス動脈輪)
  上肢の動脈
  基礎問題
  演習問題
 4 動脈(2)
  腹腔動脈
  下肢の動脈
  基礎問題
  演習問題
 5 静脈(1)
  静脈の主幹の走行
  上肢の皮静脈
  基礎問題
  演習問題
 6 静脈(2)
  門脈と体幹の静脈
  下肢の皮静脈
  基礎問題
  演習問題
 7 リンパ循環
  全身のリンパ系
  リンパ節の構造
  基礎問題
  演習問題
第10章 感覚器系
 1 皮膚
  皮膚の構造
  基礎問題
  演習問題
 2 聴覚・平衡感覚器
  聴覚・平衡感覚器
  基礎問題
 3 視覚器
  眼球
  眼筋
  基礎問題
  演習問題

引用文献