やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

まえがき

 臨床家や福祉機器に携わる方のなかには,運動分析に興味はあるけれど自分でやったことがないという方はたくさんおられると思います.その理由は,近くに計測システムがない,運動分析に必要な力学がむずかしそう,などさまざまでしょう.本書は,そのような方たちが自分で運動分析を行った気持ちになっていただけることを目指して企画しました.
 本書では,人の立ち上がり動作を対象として,実際に運動分析システムを使って計測したデータを使って解説しています.本書の目的の第一は,立ち上がりを題材として運動分析に必要な力学を理解することです.この部分は初級編として書かれています.第二は,力学を使って立ち上がり動作そのものを理解することです.この部分は中級編です.このほかに,ここには書かれていない上級編があります.上級編は,読者自身による発見です.CD-ROMに収録されたデータは,実際の運動を計測したものですから,3次元画像やグラフをみながら,本書には書かれていないいろいろな発見ができるようになっています.数値データも収録されていますので,これらを駆使して読者自身が計測ラボをもったつもりで,新しい発見にチャレンジしてください.
 本書によって,1人でも多くの方が「運動分析っておもしろい!」と思っていただけることを願っています.
 本書付録CD-ROMのCGやグラフは,3次元動作分析システムVICON用に開発されたPolygonソフトウェアを使用して作成しました.ソフトウェアの使用を快諾していただきましたイギリスOxford Metrics社ならびに(株)ナック・イメージテクノロジー社に感謝いたします.また,本書のイラストは,東北大学大学院医学系研究科 勝平純司氏にご協力をいただきました.動作計測にあたりましては,神奈川県総合リハビリテーションセンター,東北福祉大学感性福祉研究所,北陵クリニック,東北大学大学院医学系研究科 松村 馨,高野亜紀子,勝平純司,東北福祉大学 関川伸哉,ならびに(株)ナック・イメージテクノロジー 玉澤治夫の各氏にご協力をいただきました.これらの方々に対し,ここに感謝の意を表します.
 臨床歩行分析研究会では,本書に収録されているようなデータを対象として,実際の計測システムを使用した運動分析の実習セミナーを開催しています.詳細は本書の著者までお問い合わせください.
 2001年3月
 江原義弘 NAH04120@nifty.ne.jp
 山本澄子 VZF10020@nifty.ne.jp
 まえがき
 本書の読み方

 初は初級編 中は中級編

1.立ち上がり動作を観察してみましょう 中
2.まず体幹が前傾します,これはなぜでしょう
 2.1 物体の合成重心 初
 2.2 身体の重心 初
 2.3 立ち上がり動作と重心位置 中
3.殿部が椅子から浮く
 3.1 立ち上がり中の座面と床面の力 中
 3.2 合成力の求め方 初
 3.3 合成力の作用点の求め方 初
 3.4 立ち上がり中の合成床反力の動き 中
4.膝を伸展していく
 4.1 速さを変えた立ち上がり 中
 4.2 立ち上がり中の体重心の位置,速度,加速度 初
 4.3 床反力と体重心の加速度 初
 4.4 速さを変えた立ち上がり中の体重心加速度 中
5.体幹を直立させて立ち上がるとどうなるでしょう
 5.1 体幹直立で立ち上がると 中
 5.2 関節モーメントとは何か 初
 5.3 立ち上がり時の関節モーメント 中
6.体幹を直立に戻す 中
7.立位の保持 中
8.座り込みの観察
 8.1 立ち上がりと座り込みの筋活動 中
 8.2 力学的エネルギーとは 初
 8.3 立ち上がりと座り込みのエネルギーの増減 中
9.どうしたら立ち上がりやすいか
 9.1 反動の利用 中
 9.2 立ち上がりにくい人のために 中

付録
 付録CD-ROMの使い方
  1.付録CD-ROMの収録内容
  2.動作環境
  3.「BodyDynamics_1」の操作方法
  4.「Movie」の操作方法
  5.「Data」の操作方法
 ボディダイナミクス入門 データ一覧

 索引