やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

まえがき

 私はリハビリテーション学院の非常勤講師であることから学生と接する機会が多い.そこで「内科学は難しい.よく分からない」という訴えをしばしば聞く.「範囲が広すぎる.内科ばかりに時間をかけられない.解剖学・生理学もままならないのに内科学を理解できるわけがない・・・」などなど.
 しかしここで認識し直して欲しい.内科学は実際に臨床の現場で“使える“,“必要な”知識であり,過去の受験勉強とは根本的に違う.
 何のために勉強しているのか?国家試験に合格することが最終目標であるはずがない.それは必要最小条件であり,学んだことからどれだけ知識,経験,人間性を上積みできるかがその人の強みとなるのである.
 たしかに生きた知識を習得することは決して楽なことではない.しかし丸暗記や言葉の羅列ではなく,きちんと理論付けがなされ有機的につながった知識が自分の中に根付くことは,一生の財産となるはずである.
 加えて昨今の臨床現場では,患者さんの病気について十分理解し,患者さんの訴えに耳を傾け,ドクターとの連携が取れる,そんなコメディカルが求められている.このことは国家試験の傾向にも反映されている.ことに内科学は,解剖学・生理学の上に成り立っているため他科とも密接に関係し,医療現場で日常接する疾患を数多く含んでいる不可避の科目である.
 内科学の範囲は広く深い.その全てに精通するのはさすがに無理である.そこで,「現場で通用する知識」を整理・集約しようというのが本書のねらいである.「あれも知って欲しい,これも押さえてほしい」という中から,一字一句吟味したつもりである.
 避けて通れぬものならばできるだけ楽に通りたいのが人情である.しかし学問に王道はない.だからこそ真正面から取り組むのが一番の近道である.「PT・OT基礎から学ぶ」シリーズは一貫してこのようなねらいで作られており,本書もなんとかその方針から外れずに済んだのではないかと胸をなでおろしている.
 本書が熱心な学生やコメディカルの一助となることを願ってやまない.
 またこの場を借り,医歯薬出版株式会社の担当編集者に感謝申し上げたい.
 2003年10月
 中嶋淳滋


刊行にあたって

 今回「PT・OT基礎から学ぶノートシリーズ」の臨床医学編として内科学ノートを出版することになりました.ノートシリーズは,(1)一人で学習することができる,(2)わかりやすい内容である,(3)書き込み式で知識の確認作業ができる,(4)学校で学習したことの予習・復習ができる,(5)学校の試験対策に利用できる,(6)国家試験対策に利用できる,などを目的として作成したものです.この内科学ノートもその理念に基づいて「誰にでも分かりやすく,誰が学んでも確実に学習でき,そして基本的な知識を万遍なく網羅している」ものを目指して作成しました.
 加えて本書は臨床医学編ですので,編者に臨床医学の専門家である内科専門の医師にも参加していただき,理学療法士・作業療法士が習得すべき学習内容について吟味しました.
 近年日本は超高齢社会に突入し,医療の現場でもその対象の大半が高齢者です.当然リハビリテーション医療の対象も老人が多く,現場で役立つ『内科学の知識』は必須項目になっています.にもかかわらず学校で『内科学』を学ぶときは,病気に対するイメージが湧きにくいため,内科学の言葉の丸暗記ばかりが先行し,病気をイメージ化して理解できていないのが現実ではないでしょうか.
 そこで,この内科学ノートでは,学習しながらその瞬間に「なるほどこんな病気なのか」と納得できるような学習方法を取り入れました.具体的には“できるだけビジュアルに,できるだけイメージできるように”イラストや表を数多く取り入れました.今回は特にサイドメモ欄をフルに活用し,内科に役立つ用語の説明を加え,一人でも学習することができるように心がけました.広い範囲を学習しなければならないため,長い文章をだらだらと読む学習を避けて,できるだけ短い言葉で端的にまとめてあります.また各章の小項目ごとに基礎問題を設け,これを解けば知識を確認することができるようにしました.基礎問題の質問形式は「カッコ埋め」,「○×」,「線引き」問題などで,学校の定期試験にも対応できるようにし,演習問題では国家試験レベルまで学習できるようにしています.解答集の中にも図や表を挿入してイメージ学習できるように心がけました.
 今までの基礎医学編ノートシリーズとともに,ぜひこの内科学ノートで臨床医学の基礎を学んでください.
 最後にこのノートシリーズのためにご尽力いただいた医歯薬出版編集部の方々に深謝いたします.
 2003年10月
 中島雅美
 松本貴子
CONTENTS
まえがき
刊行にあたって
本書の使い方

第1章 呼吸器疾患
 1 呼吸器の解剖生理学
  □1 呼吸器系の構造
  □2 気管支の構造
  基礎問題
  演習問題
 2 呼吸の運動学
  □1 呼吸運動
  □2 呼吸筋
  内呼吸と外呼吸
  基礎問題
  演習問題
 3 肺機能検査
  □1 スパイログラム
  □2 フローボリューム曲線
  □3 肺コンプライアンス
  基礎問題
  演習問題
 4 動脈血ガス分析
  □1 ガス交換能
  □2 換気能
  基礎問題
  演習問題
 5 閉塞性換気障害
  □1 換気障害
  □2 慢性閉塞性肺疾患
  基礎問題
  演習問題
 6 拘束性換気障害
  □1 拘束性換気障害(拘束性肺疾患)
  □2 間質性肺炎・肺繊維症
  基礎問題
  演習問題
 7 感染性肺疾患
  □1 感染性肺疾患
 8 その他の肺疾患
  □1 その他の肺疾患
  演習問題
 9 呼吸不全
  □1 呼吸不全
  □2 呼吸不全の臨床症状
  □3 慢性呼吸不全を起こす基礎疾患
  基礎問題
  演習問題
 10 在宅酸素療法
  □1 在宅酸素療法
 11 呼吸リハビリテーション
  □1 呼吸リハビリテーション
  □2 横隔膜呼吸
  □3 口すぼめ呼吸
  □4 体位排痰法
  基礎問題
  演習問題
  
第2章  循環器疾患
 1 循環器の解剖生理学
  □1 心臓の構造
  □2 冠状動脈
  □3 刺激伝導系(心臓の興奮伝導)
  □4 心臓の神経支配
  □5 全身の血液循環
  □6 心電図
  □7 心音
  □8 その他の心臓検査
  基礎問題
  演習問題
 2 虚血性心疾患
  □1 虚血性心疾患
  □2 虚血性心疾患の代表的疾患
  □3 虚血性心疾患の治療
  基礎問題
  演習問題
 3 心不全
  □1 心不全
  □2 心不全の原因疾患
  □3 心不全の分類
  □4 心不全の治療
  基礎問題
  演習問題
 4 心弁膜疾患
  □1 心弁膜疾患
  □2 僧帽弁狭窄症
  □3 僧帽弁閉鎖不全
  □4 大動脈弁狭窄症
  □5 大動脈弁閉鎖不全
  □6 心弁膜症の治療
  基礎問題
  演習問題
 5 先天性心疾患
  □1 中隔欠損
  □2 ファロー四徴症
  □3 肺動脈狭窄症
  □4 動脈管開存症
  □5 エプスタイン症候群
  演習問題



 6 不整脈
  □1 不整脈
  基礎問題
  演習問題
 7 心筋疾患
  □1 心筋疾患
  基礎問題
  演習問題
 8 心膜炎
  □1 心膜炎
  基礎問題
  演習問題
 9 肺性心・肺高血圧・肺塞栓
  □1 肺性心
  □2 肺高血圧
  □3 肺塞栓
  基礎問題
  演習問題
 10 動脈疾患・末梢血管疾患
  □1 大動脈疾患・末梢血管疾患
  基礎問題
  演習問題
 11 高血圧
  □1 高血圧の原因と分類
  基礎問題
  演習問題
  
第3章  消化器疾患
 1 消化器系の解剖生理学
  □1 消化器系の解剖生理学
  □2 口腔,咽頭,食道
  □3 胃
  □4 小腸と大腸
  □5 肝臓,胆嚢,膵臓
  □6 消化管運動のまとめ
  □7 消化液のまとめ
  基礎問題
  演習問題
 2 消化器疾患の症候・病態生理・検査法
  □1 腹痛
  □2 消化管出血
  □3 便秘
  □4 下痢
  □5 胸やけ
  □6 悪心・嘔吐・げっぷ・食欲不振・腹部膨満感
  □7 消化器疾患の内科的検査法
  基礎問題
  演習問題
 3 口腔疾患・食道疾患
  □1 口腔疾患
  □2 食道疾患
  基礎問題
  演習問題
 4 胃疾患
  □1 胃疾患
  基礎問題
  演習問題
 5 小腸・大腸疾患
  □1 急性腸炎
  □2 虫垂炎
  □3 腸閉塞
  □4 潰瘍性大腸炎とクローン病
  □5 消化管ポリポーシス
  □6 腸管の悪性腫瘍
  □7 過敏性腸症候群
  □8 腸結核
  □9 メッケル憩室
  □10 蛋白漏出性胃腸症
  基礎問題
  演習問題
 6 肝疾患
  □1 急性肝炎
  □2 慢性肝炎
  □3 アルコール性肝障害
  □4 肝硬変
  □5 肝臓がん(肝がん)
  基礎問題
  演習問題
 7 胆のう・胆道疾患
  □1 胆石症
  □2 胆のうがん・胆管がん
  基礎問題
  演習問題
 8 膵疾患
  □1 急性膵炎
  □2 慢性膵炎
  □3 膵がん
  基礎問題
  演習問題
  
第4章  代謝性疾患
 1 代謝の生理学
  □1 代謝
  □2 栄養素
  □3 代謝
  基礎問題
  演習問題
 2 糖代謝障害(糖尿病・低血糖)
  □1 糖代謝
  □2 糖尿病
  □3 低血糖症
  基礎問題
  演習問題
 3 脂質代謝障害(高脂血症)
  □1 脂質
  □2 高脂血症
  基礎問題
  演習問題
 4 痛風
  □1 痛風
  □2 痛風発作の特徴
  基礎問題
  演習問題
 5 骨粗鬆症
  □1 骨粗鬆症
  基礎問題
  演習問題
  
第5章  内分泌性疾患
 1 内分泌器の解剖生理学
  □1 内分泌腺の解剖
  □2 ホルモン
  □3 内分泌腺の種類とホルモン
  □4 ネガティブフィードバック機構
  □5 ホルモン分泌異常による内分泌疾患
  基礎問題
  演習問題
 2 視床下部疾患・下垂体疾患
  □1 視床下部疾患
  □2 下垂体疾患の分類と症状
  基礎問題
  演習問題
 3 甲状腺疾患
  □1 甲状腺機能異常疾患の分類と症状
  基礎問題
  演習問題
 4 副甲状腺疾患
  □1 副甲状腺疾患の分類と症状
  □2 副甲状腺機能低下症状の特徴
  基礎問題
  演習問題
 5 副腎皮質・副腎髄質疾患
  □1 副腎皮質・髄質疾患の分類と症状
  基礎問題
  演習問題
 6 性腺疾患
  □1 性腺疾患の分類と症状
  演習問題
  
第6章  泌尿器疾患
 1 泌尿器の解剖生理学
  □1 腎臓の解剖
  □2 腎小体の解剖
  □3 尿の生成
  基礎問題
  演習問題
 2 急性腎不全・慢性腎不全
  □1 腎不全
  □2 腎不全の分類・原因・症状・治療
  基礎問題
  演習問題
 3 前立腺疾患
  □1 前立腺肥大症と前立腺癌
  基礎問題
  演習問題
 4 その他の泌尿器疾患
  □1 その他の泌尿器疾患
  基礎問題
  演習問題
  
第7章  血液・造血性疾患
 1 骨髄・血液の解剖生理学
  □1 骨髄
  □2 血液の組成
  □3 血液検査データ
  基礎問題
  演習問題
 2 貧血症・多血症
  □1 貧血
  □2 鉄欠乏性貧血
  □3 悪性貧血
  □4 再生不良性貧血
  □5 多血症(赤血球増加症)
  基礎問題
  演習問題
 3 白血病
  □1 白血病
  □2 急性白血病
  □3 慢性骨髄性白血病
  □4 慢性リンパ性白血病
  演習問題
 4 悪性リンパ腫
  □1 悪性リンパ腫
  □2 ホジキン病
  □3 成人T細胞性白血病(ATL)167
  演習問題
 5 出血性疾患
  □1 止血
  □2 特発性血小板減少性紫斑病
  □3 血友病
  基礎問題
  演習問題
  
第8章  免疫関連疾患
 1 免疫反応の生理学
  □1 免疫に関与する細胞
  □2 免疫グロブリン(Ig)
  □3 体液性免疫と細胞性免疫
  □4 アレルギー反応の分類
  基礎問題
  演習問題
 2 膠原病
  □1 膠原病
  □2 膠原病の特徴的な症状
  □3 膠原病の分類
  基礎問題
  演習問題
 3 膠原病類縁疾患
  □1 膠原病類縁疾患の分類と症状
  基礎問題
  演習問題
 4 自己免疫疾患
  □1 自己免疫疾患
  基礎問題
  演習問題
 5 免疫不全症候群
  □1 免疫不全の定義
  □2 後天性免疫不全症候群の合併症
  基礎問題
  演習問題
  
第9章  感染性疾患
 1 感染症
  □1 感染症
  □2 感染の病理学
  □3 感染源による特徴
  □4 敗血症
  □5 呼吸器感染症
  □6 中枢神経系感染症
  □7 その他の感染症
  基礎問題
  演習問題
  
第10章  老年期疾患
 1 老化(高齢)と社会保障
  □1 老化・高齢者
  □2 老年期疾患
  □3 高齢者の医療・看護・介護・福祉・保健
  基礎問題
  演習問題
 2 加齢に伴う生理的変化
  □1 感覚機能の生理的加齢変化
  □2 自律神経系機能の生理的加齢変化
  □3 神経機能・運動機能の生理的加齢変化
  □4 精神・心理面の生理的加齢変化
  基礎問題
  演習問題
 3 老年症候群
  □1 代表的な老年症候群
  □2 廃用症候群
  基礎問題
  演習問題
 4 老年期疾患のまとめ
  □1 老年期疾患のまとめ
  
第11章  症候学と検査値
 1 胸痛
  基礎問題
 2 呼吸困難・呼吸異常
  □1 呼吸困難・呼吸異常
  □2 呼吸異常
  基礎問題
  演習問題
 3 喀血・吐血
  基礎問題
  演習問題
 4 動悸・心悸亢進
  基礎問題
  演習問題
 5 チアノーゼ
  基礎問題
  演習問題
 6 ショック
  基礎問題
  演習問題
 7 浮腫
  基礎問題
  演習問題
 8 発熱
  基礎問題
 9 全身倦怠感
  基礎問題
  演習問題
 10 食欲不振・食思不振
  基礎問題
 11 悪心・嘔吐
  基礎問題
 12 腹痛
  基礎問題
  演習問題
 13 易感染性
  演習問題
 14 意識障害
  基礎問題
 15 めまい
  基礎問題
 16 頭痛
  基礎問題
  演習問題
 17 けいれん
  演習問題
 18 検査値
  □1 循環器疾患
  □2 呼吸器疾患
  □3 消化器疾患
  □4 血液造血疾患
  □5 代謝性疾患
  □6 肝・胆・膵疾患
  □7 内分泌疾患
  □8 泌尿器疾患
  □9 膠原病
  基礎問題
  演習問題
引用文献・参考文献
索引

本書の使い方

 本書はPT・OTの内科学で必要な基礎事項が一冊にまとまるように構成されています.
 あらかじめ自分の力で考え,調べながら記入することで,内科学の基礎事項を頭の中で整理できるようになっています.授業で習ったことを補足・確認しながら,オリジナルの内科学ノートを完成させてください.
 1.●1( )……空欄は内科学の基礎事項・重要語句です.図や表で確認しながら記入していきましょう.
 2.解答……空欄の解答はページ下にあります.なるべく解答を見ないようにして,自分で調べて,記入し,最後に確認するようにしましょう.
 3.SIDE MEMO……覚えておきたい補足事項を掲載してあります.空いている部分には( )に入りきらなかった解答やメモしておきたい事項を記入しましょう.
 4.基礎問題……各項目を確認するための問題.学内の試験対策に役立てましょう.解答は解答集に掲載.
 5.演習問題……国試の過去問題から頻出される問題を抜粋しました.確実な点数確保のために国試対策の最終チェックとして役立てましょう.解答は解答集に掲載.
 6.MEMO……授業で習ったことを空欄に書き込んだり,自分だけのまとめをつくり,オリジナルノートを完成させましょう.
 7.解答集……基礎問題,演習問題の解答と解説を別冊として綴じ込んであります.問題と照らし合わせて使いましょう.