第3版 はじめに
小児の疾患は,病状が急変しやすく,病態の経過が早い.また多くの組織は発達段階にあり生理機能的に未熟である.特に乳児・幼児期等においては容易に重症へと移行する.また抵抗力が弱く感染に罹患しやすい等々の種々の特徴を有する.
小児の疾患の治療において薬物治療は欠くことができない.一方薬物作用に影響を及ぼす因子には種々あるが生体側のものとして年齢の要因は大きい.特に小児における薬物治療は,小児特有の病態,薬物の感受性さらに薬物動態において特異な状況でのそれになるので留意すべき点が多い.
一方,小児の病的異常の第一発見者は家族となることが多く,またその治療時の身近なケアー者は家族である.従って小児領域での実際の服薬指導は,お子様本人ばかりでなく,家族の方々に対して行われる場合が多い.疾患によっては服薬コンプライアンスでは血中濃度と薬物効果の関係など示されて指導されている場合もある.平成9年には,保険診療上,薬剤師の保護者への服薬指導で薬剤管理指導料が認められ,各医療施設で種々の工夫もなされている.しかしながら医薬品の小児への投与の際,適正な用法および用量等が添付文書上記載されていない場合も多く,その際医療側は細心の注意が必要である.
そのような意味で,本書(第1版)の発行となったが,そこでは実際薬剤管理指導業務に携わる薬剤師が,小児領域での服薬指導時の留意点を取り上げ,それと共に代表的疾患と薬物療法,さらに患者(保護者)への服薬説明を中心に記載した.
その後時の流れと共に,各疾患の新しい診断・治療方法,また新しい医薬品の登場,さらには患者(保護者)側の疾患への意識の変化等で第3版を改訂した.
小児領域の疾患において,本書が薬剤師の小児患者ならびに保護者への服薬指導を含むファーマシュテイカルケアーのさらなる展開への一助になれば幸いである.
2006年10月 五味田 裕,荒木博陽
第1版 はじめに
多くの治療用医薬品は種々の要因によって影響されることはいうまでもない.すなわち,それには薬物側における影響要因と,さらに応用される生体側における影響要因がある.その生体側要因には種々あるものの,年齢差の要因はきわめて大きい.特に小児患者における薬物治療においては,薬の選択ならびに投与量の調整には留意すべき点が多い.年齢による吸収・分布・代謝・排泄機能の差,また血液脳関門などの透過性の差,加えて薬物代謝酵素の遺伝多型などが関与すれば,その影響はさらに倍加する.
近年,薬剤師が病棟において服薬指導など活躍する場面が多くなってきた.特に小児領域担当薬剤師においては,薬物作用・副作用・コンプライアンスなどを含む服薬指導において種々苦労されているところである.小児特有の疾患・病態の複雑性,治療薬物ならびに剤形の特殊性,また治療薬コンプライアンスの不確実性,さらには患者本人・保護者への服薬指導などにおいて留意すべき事項が多々ある.しかしながら,現実的には担当薬剤師の今までの小児疾患の知識・経験,服薬指導内容・方法などについては,独自でなされているのが現状ではないかと思われる.といって参考となる成書がほとんどない.
そこで,本書では実際に服薬指導管理業務に携わる薬剤師が小児領域での留意点を取り上げ,それをもとに小児の代表的各種疾患と特徴を,またそれに対する薬物療法について具体的処方例をあげ,実際の服薬指導時の留意点などについて解説した.さらに患者(保護者)側が一番関心のある治療効果・副作用についての服薬説明のポイントについて具体的に記載した.
小児領域の薬学的な観点からのケアのあり方については,その疾患が複雑であること,年齢によって留意点が異なることなど,注意しなければならない要因が種々あるものと思われるが,本書が小児領域を担当している薬剤師の患者への服薬指導を含むファーマシューティカルケアの実践上の一助,ならびにさらなる展開のきっかけとなれば幸いである.
2000年10月 五味田 裕
小児の疾患は,病状が急変しやすく,病態の経過が早い.また多くの組織は発達段階にあり生理機能的に未熟である.特に乳児・幼児期等においては容易に重症へと移行する.また抵抗力が弱く感染に罹患しやすい等々の種々の特徴を有する.
小児の疾患の治療において薬物治療は欠くことができない.一方薬物作用に影響を及ぼす因子には種々あるが生体側のものとして年齢の要因は大きい.特に小児における薬物治療は,小児特有の病態,薬物の感受性さらに薬物動態において特異な状況でのそれになるので留意すべき点が多い.
一方,小児の病的異常の第一発見者は家族となることが多く,またその治療時の身近なケアー者は家族である.従って小児領域での実際の服薬指導は,お子様本人ばかりでなく,家族の方々に対して行われる場合が多い.疾患によっては服薬コンプライアンスでは血中濃度と薬物効果の関係など示されて指導されている場合もある.平成9年には,保険診療上,薬剤師の保護者への服薬指導で薬剤管理指導料が認められ,各医療施設で種々の工夫もなされている.しかしながら医薬品の小児への投与の際,適正な用法および用量等が添付文書上記載されていない場合も多く,その際医療側は細心の注意が必要である.
そのような意味で,本書(第1版)の発行となったが,そこでは実際薬剤管理指導業務に携わる薬剤師が,小児領域での服薬指導時の留意点を取り上げ,それと共に代表的疾患と薬物療法,さらに患者(保護者)への服薬説明を中心に記載した.
その後時の流れと共に,各疾患の新しい診断・治療方法,また新しい医薬品の登場,さらには患者(保護者)側の疾患への意識の変化等で第3版を改訂した.
小児領域の疾患において,本書が薬剤師の小児患者ならびに保護者への服薬指導を含むファーマシュテイカルケアーのさらなる展開への一助になれば幸いである.
2006年10月 五味田 裕,荒木博陽
第1版 はじめに
多くの治療用医薬品は種々の要因によって影響されることはいうまでもない.すなわち,それには薬物側における影響要因と,さらに応用される生体側における影響要因がある.その生体側要因には種々あるものの,年齢差の要因はきわめて大きい.特に小児患者における薬物治療においては,薬の選択ならびに投与量の調整には留意すべき点が多い.年齢による吸収・分布・代謝・排泄機能の差,また血液脳関門などの透過性の差,加えて薬物代謝酵素の遺伝多型などが関与すれば,その影響はさらに倍加する.
近年,薬剤師が病棟において服薬指導など活躍する場面が多くなってきた.特に小児領域担当薬剤師においては,薬物作用・副作用・コンプライアンスなどを含む服薬指導において種々苦労されているところである.小児特有の疾患・病態の複雑性,治療薬物ならびに剤形の特殊性,また治療薬コンプライアンスの不確実性,さらには患者本人・保護者への服薬指導などにおいて留意すべき事項が多々ある.しかしながら,現実的には担当薬剤師の今までの小児疾患の知識・経験,服薬指導内容・方法などについては,独自でなされているのが現状ではないかと思われる.といって参考となる成書がほとんどない.
そこで,本書では実際に服薬指導管理業務に携わる薬剤師が小児領域での留意点を取り上げ,それをもとに小児の代表的各種疾患と特徴を,またそれに対する薬物療法について具体的処方例をあげ,実際の服薬指導時の留意点などについて解説した.さらに患者(保護者)側が一番関心のある治療効果・副作用についての服薬説明のポイントについて具体的に記載した.
小児領域の薬学的な観点からのケアのあり方については,その疾患が複雑であること,年齢によって留意点が異なることなど,注意しなければならない要因が種々あるものと思われるが,本書が小児領域を担当している薬剤師の患者への服薬指導を含むファーマシューティカルケアの実践上の一助,ならびにさらなる展開のきっかけとなれば幸いである.
2000年10月 五味田 裕
総論
1.小児の服薬指導の問題点と対処(井門敬子・荒木博陽)
2.小児に用いられる薬剤の処方根拠(荒木博陽)
3.適正な薬剤の服用および使用とその方法(藤堂麻紀・荒木博陽)
4.保険薬局窓口における小児の服薬指導(藤堂麻紀)
5.小児の薬物動態,授乳,予防接種(ワクチン)(末丸克也)
6.服薬コンプライアンス向上のための留意点(千堂年昭)
各論
1. アレルギー疾患
1)アトピー性皮膚炎(山下梨沙子)
2)アレルギー性鼻炎(末丸克矢)
3)アレルギー性結膜炎(佐藤智昭)
2. 呼吸器系疾患
1)気管支喘息(北村佳久)
2)風邪症候群(浦本さやか)
3. 消化器系疾患
1)下痢・嘔吐(田中亮裕)
2)腹痛(河崎陽一)
3)便秘(河崎陽一)
4. 腎疾患
1)ネフローゼ症候群(横山紀子)
5. 中枢神経疾患
1)てんかん(西原茂樹)
2)熱性痙攣(相良英憲)
6. 耳鼻咽喉科疾患
1)耳の疾患(中耳炎)(松岡 綾)
2)鼻の疾患(副鼻腔炎─蓄膿症)(川上恭弘)
3)のどの疾患(急性咽頭・扁桃炎)(森岡淳子)
7. その他の疾患
1)若年性糖尿病(武市佳己)
2)白血病(井門敬子)
3)頭部外傷(吉田利子)
8. 小児の急性中毒(二神幸次郎)
付/小児頻用薬剤と小児薬用量,特徴一覧
索引
1.小児の服薬指導の問題点と対処(井門敬子・荒木博陽)
2.小児に用いられる薬剤の処方根拠(荒木博陽)
3.適正な薬剤の服用および使用とその方法(藤堂麻紀・荒木博陽)
4.保険薬局窓口における小児の服薬指導(藤堂麻紀)
5.小児の薬物動態,授乳,予防接種(ワクチン)(末丸克也)
6.服薬コンプライアンス向上のための留意点(千堂年昭)
各論
1. アレルギー疾患
1)アトピー性皮膚炎(山下梨沙子)
2)アレルギー性鼻炎(末丸克矢)
3)アレルギー性結膜炎(佐藤智昭)
2. 呼吸器系疾患
1)気管支喘息(北村佳久)
2)風邪症候群(浦本さやか)
3. 消化器系疾患
1)下痢・嘔吐(田中亮裕)
2)腹痛(河崎陽一)
3)便秘(河崎陽一)
4. 腎疾患
1)ネフローゼ症候群(横山紀子)
5. 中枢神経疾患
1)てんかん(西原茂樹)
2)熱性痙攣(相良英憲)
6. 耳鼻咽喉科疾患
1)耳の疾患(中耳炎)(松岡 綾)
2)鼻の疾患(副鼻腔炎─蓄膿症)(川上恭弘)
3)のどの疾患(急性咽頭・扁桃炎)(森岡淳子)
7. その他の疾患
1)若年性糖尿病(武市佳己)
2)白血病(井門敬子)
3)頭部外傷(吉田利子)
8. 小児の急性中毒(二神幸次郎)
付/小児頻用薬剤と小児薬用量,特徴一覧
索引