やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

2001 訳者の序

 本書の初版は2000年6月の発刊であった.今版が第2版であり,アメリカとほぼ同時発売である.原著の改訂が毎年という予定であるので,日本語版も同時に改訂していけるよう,訳者一同努力するつもりである.
 第2版は初版発刊以降,アメリカで発売中止になった医薬品の相互作用9件を削除し,新たに確立された相互作用9件を追加している.また,健康補助食品として身近に販売されているサプリメントと薬物との相互作用についても表にまとめ,付録として今版に追加された.
 相互作用の検索をいかに簡単に行うか,初版では原著にはない早見表を作成し,索引の一部として添付した.しかし,利用の仕方を明記しなかったため,十分に活用いただけなかったおそれがある.そこで,今版は,その早見表を目次代わりに本文の前に移動した.文字どおりの相互作用の早見検索表である.
 医療事故に関する報道が後を絶たない.医薬品の相互作用に基づく有害反応の検索,回避には,ぜひ本書を有効に活用していただきたい.本書は,臨床で重要な相互作用を簡潔に要点のみ収載してある.そのうえ,その相互作用を回避するための方法および代替薬,さらに,有害反応の発現を事前に見つけるためのモニター項目について記載している.今回もまた,正確な内容であることを心がけたが,お気づきの点など,是非,ご一報いただきたく,お願いする次第である.
 2001年3月20日 訳者を代表して 菅家甫子

第1版 訳者の序

 今日,「薬物相互作用」といえばDr.Hanstenといわれるほど,彼はこの分野における第一人者として,世界的に知られている.
 訳者の一人,菅家が初めてDr.Hanstenの労作,“Drug Interaction”に出会ったのは1970年のことであった.当時勤務していた大学の教員数名で,その本を翻訳した.それが,Dr.Hanstenの日本における最初の著書の紹介であった.訳者一同は日本に「薬物相互作用」の理解と普及に多少なりとも貢献したものと考えた.以来,原著改訂版が出るごとに翻訳させていただいた.
 共立薬科大学大学院に臨床薬学特論を開設したのは,1996年であった.附属病院をもたない大学で,最良の臨床薬学教育を目指したとき,アメリカの臨床薬剤師の業務を体験させたいと考えるのは当然のことであった.そこで,100年以上の歴史をもち,臨床薬学教育の最先端を行っているワシントン大学薬学部(シアトル)と学術交流協定を締結させていただいた.
 そのワシントン大学で偶然にもHansten教授と初めてお会いしたのが,1999年の夏であった.昔からのいきさつをお話している最中に,本書,“The Top 100 Drug Interactions”を著作編集していることを伺い,私が日本における翻訳権をいただくことになった.
 早速,共立薬科大学臨床薬学教室員3名で作業を進め,完成させた.途中,何カ所にもわたって疑問が生じ,E-mailでDr.Hanstenと討議を重ねながら,翻訳は正確な内容を心がけた.
 本書が医療現場および医学・薬学の場において,少しでも活用されるならば,訳者一同の喜びとするところである.
 2000年5月20日 訳者を代表して 菅家甫子

日本語版への序

 本書が日本語へ翻訳出版されたことは,われわれにとり大変名誉なことと感激しています.われわれは数年前から,臨床上どの薬物相互作用が最重要であるか知りたいというワシントン大学の学生の指針として,本書をまとめ始めました.本書の主目的は,薬物相互作用の臨床的なマネジメントに対し指針を提供することです.単に2つの薬剤が相互作用を起こすということを知っているだけでは実践の場ではあまり使いものにはなりません.その薬物相互作用に対する有効なマネジメントを導入して初めて利用できるのです.
 われわれは共立薬科大学の菅家甫子教授はじめ教室員に,本書の翻訳に尽力いただいたことに感謝するとともに,一緒に仕事ができたことを光栄に思います.
 われわれは本書が日本の皆様にとって,薬物-薬物相互作用による有害作用を予防するのに役立つことを希望してやみません.
 2000年4月1日 Philip Hansten John Horn University of Washington

原書出版社から

 本書は著者によって全編編集著作されたものである.本書は薬物相互作用の情報として,他の書籍にとってかわることを意図するものではない.
 本書の著者・訳者ならびに出版者は,収載情報の正確さを確保するために細心の注意をはらったが,患者本人フもつファクターを考慮し,その分野の新たな進歩を考慮したうえで,当該記載事項の妥当性を評価するのは,読者の責任においてしていただきたい.著者・訳者ならびに出版者は本書に記載されている情報を用いた結果,いかなる過誤や損害が起こっても,責任は一切負わない.

 Copyright 1999 by H & H Publications.
 本書のいかなる部分も,無断複製,検索システムへの取り込み,あるいはデジタル,電子機器,光学的,コピー機器あるいは音声による録音などを含む,あらゆる手段での,あらゆる形での転載を禁じる.本書発行所に文書で許諾を請求しなければならない.
 16921 76th Ave West,Edmonds,WA 98026 USA.

原書の序

 薬物相互作用を,臨床上重要なものと,そうでないものとに区別することは困難である.本書は,臨床で無視すべきでない薬物相互作用を明確にしようと企画した.本書に収載されている相互作用は,次に示すいくつかのファクターに基づいて選択された.
 有害反応が起こった場合の重篤度
 資料の妥当性(適切性)
 推定発現頻度
 しかし,患者における薬物相互作用の決定的な疫学的調査研究が欠落しているので,どの相互作用が人々にとって実際に最も危険であると指摘しているのか,正確に決定することはできない.本書の相互作用の記載形式は,薬物相互作用を受ける薬剤と薬物相互作用を引き起こす薬剤とを対応させている.後者の薬物相互作用を引き起こす薬剤は,各薬物相互作用を受ける薬剤が関与する相互作用の機序によってグループ分け(たとえば,酵素阻害薬,酵素誘導薬)されている.

利用者の手引きと説明

 ◆本書では薬物相互作用に対し,利用しやすい分類を採用している(「薬物相互作用の実践上の分類」の説明を参照).
 ◆本書は臨床上意義のある薬物-薬物相互作用を取り上げている.薬物相互作用の重篤度は,患者間で大きく差があるので,通常,予測することは困難であることを心にとどめてほしい.
 ◆記載された相互作用の可能性の中には,論文として発表されていないものもある.当該2剤の既知の特性に基づき,相互作用の可能性が予測できる場合のみ,含めて記載してある.
 ◆薬物間相互作用に基づく有害反応を回避するため,相互作用を起こさない代替薬を使用するのが望ましい場合が多い.一方,ごくわずかではあるが絶対禁忌を指示する相互作用がある.処方者は,相互作用の可能性をもつ薬剤の併用投与にあたり,危険性と利益を,ぜひ慎重に考慮していただきたい.
 ◆本書中には,食物,タバコおよび主に外科手術中に使われる薬剤との相互作用はほとんど含まれていない.相加的中枢神経抑制のような予想できる薬理学的相互作用や,よい結果を期待しての薬物-薬物相互作用なども含まれていない.
 ◆本書の利用者は,以下にあげるより詳細な薬物相互作用の書籍を利用されるとよいであろう.
 Hansten & Horn's Drug Interactions Analysis and Management.(Facts and Comparisons,Inc.)
 ◆薬物相互作用早見表を設け,相互作用の組み合わせが迅速に検索できるよう図った.
 ◆本書に収載された薬剤(商品名)は代替薬として記載したものも含め,すべて薬剤名索引に収載している.
 ◆日本非発売の薬剤(商品名)については,英名で表記した.
 【薬物相互作用の実践上の分類】
 薬物相互作用の分類システムを臨床で役立つようにするため,薬物相互作用財団(本部:オランダ)では次のようなシステムをつくりあげた.このシステムは薬物相互作用をその相互作用のマネジメント(これは一般に,医療人が取り組むべき最重要点)に基づいて分類することである.従来のシステムは臨床上の意義を推定し,それに基づいて分類していたが,本システムでは,臨床家が容易に使用でき,薬剤選択の手段として,より大きな利益が見いだせるよう工夫した.
 【注意】本書にはクラス1,2,3の相互作用のみを収載している.
 クラス1:併用を避ける(併用した場合の危険性が利益を上回る).
 クラス2:通常は併用を避ける(利益が危険性を上回ると思われる場合のみ併用する).
  ●一方あるいは両薬剤にはっきりこれといえる代替薬がある場合の相互作用.
  ●併用により利益が危険性を大幅に上回らないと判断されるならば,併用を回避すべき相互作用.
 クラス3:危険性を最小化(危険性を評価し,必要に応じ対処する).
  ●代替薬を考慮:相互作用があまり起こりそうにない代替薬がある.
  ●回避:相互作用を最小化するよう対処する(併用を避けずに).
  ●モニター:早期の発見により有害な結末に至る危険性を最小化できる.
 クラス4:特別の警戒を必要としない(有害な結末となる危険性が小さい).
 クラス5:無視(根拠からは相互作用しない).
2001 訳者の序
第1版訳者の序
日本語版への序
原書出版社から
原書の序
利用者の手引きと説明
薬物相互作用の実践上の分類

薬物相互作用早見表(クラス分け)……〈1〉〜〈82〉
薬物相互作用トップ100(五十音順+欧文)……1〜183
 表:ワルファリンに対する他の抗菌薬の影響

付録1-1……チトクロームP450酵素と薬物相互作用
付録1-2……チトクロームP450の基質薬物,阻害薬および誘導薬
付録2……薬用植物/サプリメントとの薬物相互作用

薬剤名索引