やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第4版の序

 1999年10月に第3版,2000年4月に第3版増補版を発行したが,新薬の発売,相互作用の追加などに伴い,今回,第4版として補足,修正を行うことになった.
 まず,薬の専門書として充実を図るため,今回からトピックスとして話題となっている薬の新しい情報を加えることにした.今回は「誤嚥性肺炎の予防にACE阻害剤が有効である?」「NSAIDが大腸癌の予防薬になるのか?」について述べてみたので参考にしていただきたい.また,今回追加した主な相互作用は,併用禁忌となったβ遮断剤とチオリダジン(メレリル:ピペリジン系フェノチアジン)との併用,および以下に示す新薬,医薬品,健康食品などに関連するものであり,必要に応じて薬理作用,特性などの追加・補足を行っている.
 アンプレナビル(プローゼ:HIVプロテアーゼ阻害剤),エファビレンツ(ストックリン:非ヌクレオシド系HIV逆転写酵素阻害剤),メシル酸デラビルジン(レスクリプター:非ヌクレオシド系HIV逆転写酵素阻害剤),塩酸パロキセチン(パキシル:SSRI),塩酸ミルナシプラン(トレドミン:SNRI),ポリカルボフィルCa(コロネル:過敏性腸症候群治療剤),塩酸フェキソフェナジン(アレグラ:抗アレルギー剤),酒石酸ゾルピデム(マイスリー:非BZP系入眠剤),スマトリプタン(イミグラン注:選択的5-HT1B/1D作動剤),バルサルタン(ディオバン:AT1拮抗剤),クロバザム(マイスタン:BZP系抗てんかん剤),ラマトロバン(バイナス:T×A2拮抗剤),プロポフォール(ディプリバン注),エレメンミック注,セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)含有健康食品など.
 2000年4月から調剤薬局では技術料として特別指導加算が算定されるようになり,さらなる薬物相互作用の理解と新しい情報の収集が必要となってきている.本書が読者の方々のよき相談相手として,常に最新の情報を兼ね備えた相互作用の理論書,また実践書となるように最善の努力をするつもりである.読者の方々が引き続き本書を愛読されることを願って,改訂版序の言葉としたい.
 2001年1月 杉山正康
本書の構成,内容について
◆参考図書・文献
◆本書の構成と使い方
◆欧文略号
◆医薬品名・構造式

序章 薬物相互作用とは
 1.相互作用の発現機序
 2.相互作用に注意すべき薬剤
 3.処方箋を受け付けた際の相互作用の考え方と医師・患者への対処
   1)最初に処方箋を受け付けたとき
   2)患者への投薬
 4.発現機序別の併用禁忌(同時服用禁忌も含める)・原則禁忌のまとめ

第1章 薬動態学的相互作用
A:消化管吸収
 1.物理化学的変化
   1)金属キレート,吸着
   2)結合による吸収阻害(薬効低下)
 2.抗菌剤による腸内細菌叢の変化
 3.消化管運動の変化
   1)難溶性薬剤の溶解
   2)胃排泄時間と初回通過効果
   3)薬剤の分解
 4.消化管内のpH上昇
   1)薬剤の溶解性
   2)薬剤の解離度
 5.その他
B:分布
 1.血漿タンパク結合
 2.血液脳関門(BBB)
C:腎排泄
 1.NSAIDによる腎血流量の低下(糸球体濾過低下)
 2.近位尿細管での分泌阻害・競合(作用増強)
   1)P糖タンパク輸送系
   2)陽イオン輸送系
   3)陰イオン輸送系
 3.尿酸の再吸収,分泌の変化
 4.近位尿細管でのリチウム,抗菌剤の再吸収
 5.尿pHの変化
 6.その他
D:代謝
 1.肝チトクロームP450(CYP450)酵素関係
   1)肝チトクロームP450酵素阻害
   2)肝チトクロームP450酵素誘導
   3)二相効果
 2.チトクロームP450酵素以外での代謝に関係する相互作用
   1)ウラシル脱水素酵素
   2)キサンチンオキシダーゼ(XOD)
   3)アルコール代謝酵素系
   4)抱合
   5)モノアミンオキシダーゼ(MAO)
   6)コリンエステラーゼ

第2章 薬力学的相互作用──協力および拮抗作用──
A:薬の作用に起因する相互作用
 1.中枢神経抑制および興奮
 2.末梢神経系
   1)交感神経系
   2)副交感神経系(抗コリン,コリン),運動神経遮断,神経節遮断
 3.MAO阻害
 4.ヒスタミン
 5.心機能促進および抑制,QT延長
 6.血管拡張および収縮
 7.血液凝固抑制および促進
 8.血糖低下および上昇
B:薬の副作用に起因する相互作用
 1.痙攣,パーキンソン病
   1)痙攣
   2)パーキンソン病(脳内ドパミン低下)
 2.低K・高K血症
 3.血液障害
 4.NSAIDによる副作用
   1)消化性潰瘍
   2)腎血流量低下
   3)アスピリン喘息
   4)皮膚粘膜眼症候群,中毒性表皮壊死症候群
   5)ライ症候群
   6)その他
 5.その他の副作用
   1)横紋筋融解症
   2)内耳(第八脳)神経障害および腎障害
   3)光線過敏症
   4)間質性肺炎
 6.その他の併用禁忌



A:5-HT(セロトニン)
   1)うつ病,精神分裂病
   2)末梢循環不全
   3)催吐作用
   4)消化管運動賦活
B:PDE(ホスホジエステラーゼ)
   1)血管系(血管平滑筋・内皮,血小板)
   2)心筋
   3)気管支平滑筋,炎症細胞
   4)海綿体平滑筋

索引