やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

特集にあたって
 リハビリテーション医療は通常,多職種によるチーム医療として展開される.貢献度の高いチームへと成長させていくためには,適切な目標設定をベースとして,チームとともにスタッフも成長できるような組織運営を推し進める,リーダーシップが不可欠となる.リーダーシップのあり方については,軍隊やビジネスの世界で議論が重ねられてきたように,明確な指示や命令を出し,部下を突き動かしていくリーダーシップだけでなく,部下を支援することでその強みを引き出して組織全体を成功に導くサーバントリーダーシップや,メンバー全員がそれぞれの立場でリーダーシップを発揮するというシェアード・リーダーシップといったものも存在する.ビジネスの世界でのリーダーシップ理論を,医療にそしてリハビリテーションチームに当てはめることで,参考にすべきことは多々あるものの,主とする顧客が患者であること,そして障害と向き合うことを支援するというリハビリテーション医療の特殊性を考慮すると,すべてをそのまま当てはめれば成功するというものではないのかもしれない.そして何より,各現場のリハビリテーションチーム形態はさまざまであるため,それぞれに最適なリーダーシップも多様となるはずである.回復期リハビリテーション病棟の責任者として勤務する医師のように,チーム全体の統括が求められるリーダーシップもあれば,療法士長のような部門リーダー,さらに在宅医療のように,時に顔も知らない他組織のメンバーが構成員となる中でのリーダーシップもある.
 本特集は,現場のリーダーだけでなく,それを支えるスタッフにも参考となり,よりよいチーム作りに寄与することを期待して企画した.リハビリテーション医療において,現場のリーダーは1 人に限定しなければならない,というものではなく,リーダー(マネージャー)がもつべきリーダーシップと,専門職として働くスタッフがもつべきリーダーシップがあることがポイントになるのではないかと感じたが,真のポイントが何かについては,読者の皆様それぞれの感性に委ねたい.
 (編集委員会)
特集 リハビリテーション医学・医療とリーダーシップ
 特集にあたって
 リーダーシップ理論と研究 羽田明浩
 医学・医療におけるリーダーシップ 相馬孝博
 リハビリテーション医療チームの統括―回復期リハビリテーション病棟を中心に― 高橋博達
 リハビリテーション部門管理者のリーダーシップ―リハビリテーションスタッフの目標管理制度と教育制度― 三好貴之
 在宅医療を支えるリハビリテーションチームに求められるリーダーシップ 神山一行

TOPICS ドイツにおける回復期心臓リハビリテーションの現状と日本の心臓リハビリテーションの比較 林健介

連載
巻頭カラー 症例でつかむ!摂食嚥下リハビリテーション訓練のコツ
 14.終末期に対する食支援のコツ 保田祥代 小口和代・他

リハビリテーションスタッフがかかわるチーム医療最前線
 20.三重大学医学部附属病院におけるリハビリテーションチーム医療 清水美帆 堀 真輔・他

慢性疼痛のリハビリテーション
 9.慢性疼痛に対する脊髄刺激療法 上利 崇

新型コロナウイルス感染症とリハビリテーション医療
 12.コロナ後遺症(Long COVID)におけるブレインフォグと社会復帰 佐々木信幸

知っておきたい神経科学のキィワード
 10.AMPA受容体を起点としたシナプス生理学のtranslational medicine 高橋琢哉

ニューカマー リハ科専門医
 菱田愛加

リハビリテーションと薬剤
 18.リハビリテーションにおける疾患・病態に応じた薬剤管理:(2)心不全 木田圭亮 鈴木規雄・他

リハビリテーション医療におけるACP―治らないかもしれない障害をもつ患者に対応する―
 7.心不全におけるACP事例 簗瀬正伸

回復期・生活期リハビリテーション医療に必要な内科的管理
 9.不穏・暴力,せん妄 向精神薬(抗精神病薬)の使用を中心に 先崎 章

リハビリテーション医学・医療と私
 最終回 CR創刊30周年を迎えて 連載のおわりに 江藤文夫

臨床研究
 日本における入院リハビリテーションの実施動向:NDBオープンデータ解析 黒部美智子 堀 真輔・他

 開催案内
 バックナンバー
 投稿規定
 総目次