やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

特集にあたって
 2021年8月24日から9月5日に,当初の予定より1年遅れで東京2020パラリンピック大会が開催された.161の国と地域から4,403人もの選手が参加して日々熱い戦いが繰り広げられ,パラアスリートからたくさんの感動と勇気を貰った方も多いのではないか.コロナ禍という異常な状況下において多くの国民が不安を抱える中,無観客開催となったものの大会を無事終了できたのは,たくさんの関係スタッフやボランティア等の献身的な働きによるところが大きかったと考えられる.この中にはリハビリテーション科医や理学療法士等多くのリハビリテーション医療関係者も含まれており,大会運営においてリハビリテーション医療分野におけるメディカルサポートの重要性が示された.つまり,パラアスリートのメディカルサポートには,リハビリテーション医療が必要であることが改めて強く認識できた大会でもあった.さらに今回,日本でパラリンピックが開催されたことにより,国民のパラスポーツに対する関心も大きく広がることとなった.東京2020パラリンピックのレガシーを残すためにも,多くのリハビリテーション医療関係者にパラスポーツに対するリハビリテーション医療の役割とその重要性を知ってもらい,実際の現場へ参加してもらうことが重要である.
 そこで,「パラスポーツとリハビリテーション医療」というテーマで特集を企画し,パラスポーツの分野で活躍している先生方に執筆をお願いした.健常者スポーツ同様,パラスポーツにおいてもスポーツ外傷や関節障害は大きな問題であり,パラアスリートにおけるスポーツ外傷と関節障害の特徴と対策について尾川貴洋先生に解説いただいた.自律神経はスポーツにおける運動継続やパフォーマンス向上のために重要な役割を果たしており,脊髄損傷における自律神経障害がパラスポーツに与える影響と対策について上條義一郎先生に解説いただいた.女性アスリートには女性特有の医学的問題があり,女性パラアスリート特有の問題も含めた女性アスリートの医学的問題と対応について中村寛江先生,能瀬さやか先生に解説いただいた.内部障害者のパラスポーツでは,内部障害者特有の医学的問題があり,内部障害者のパラスポーツ参加の医学的問題と対応について黒澤一先生に解説いただいた.さらに,パラアスリートの医学的サポートには,障害者の特殊性を理解しているリハビリテーション科医の役割が重要であり,パラスポーツにおけるリハビリテーション科医の役割と課題について羽田康司先生に解説いただいた.
 本特集を通して多くのリハビリテーション医療関係者がパラスポーツに興味をもち,パラスポーツにおけるメディカルサポート参加へのきっかけとしていただければ幸いである.
 (編集委員会)
特集 パラスポーツとリハビリテーション医療
 特集にあたって
 パラスポーツによる外傷・関節障害の特徴と対策 尾川貴洋
 パラスポーツにおける自律神経障害の影響と対策 上條義一郎
 女性パラアスリートの医学的問題と対応 中村寛江 能瀬さやか
 内部障害者のパラスポーツ参加における医学的問題と対応 黒澤 一
 パラスポーツにおけるリハビリテーション科医の役割と課題 羽田康司

連載
巻頭カラー 症例でつかむ!摂食嚥下リハビリテーション訓練のコツ
 13.認知症に対する食支援のコツ 保田祥代 小口和代・他

リハビリテーションと薬剤
 17.リハビリテーションにおける疾患・病態に応じた薬剤管理:(1)脳卒中 中道真理子

ニューカマー リハ科専門医
 野田政志

新型コロナウイルス感染症とリハビリテーション医療
 11.COVID-19患者に対する地域におけるリハビリテーション医療の取り組み 元木由美

知っておきたい神経科学のキィワード
 9.脳由来神経栄養因子-Brain-derived neurotrophic factor 田代祥一

リハビリテーション医療におけるACP―治らないかもしれない障害をもつ患者に対応する―
 6.進行がん患者〜病勢が進行する中,本人の希望にどう寄り添うか 祝 広香 浅岡雅人・他

リハビリテーションスタッフがかかわるチーム医療最前線
 19.山口大学医学部附属病院リハビリテーション部 池田 諭 油形公則・他

慢性疼痛のリハビリテーション
 8.慢性疼痛と運動療法 松原貴子 大賀智史・他

回復期・生活期リハビリテーション医療に必要な内科的管理
 8.てんかん,痙攣 藤本礼尚

リハビリテーション医学・医療と私
 第7回 オリジナリティとダイバーシティ 海老原 覚

臨床研究
 脳卒中急性期患者の包括的嚥下リハビリテーション効果 長谷川千恵子 小笠原聡之・他

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