やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 「どのように安全に食べさせることができるか」─子どもや高齢者など一人で食事ができない家族がいる方は,この感情を持った経験があるのではないだろうか.保育や介護の現場では,安全に食べてもらうことも一つの目標とされており,改めて「食べること」が「生きること」であり,安全に食べることが健康な生活への第一歩となり,充実した生活につながると考えている.
 周知のとおりわが国では高齢化が加速し,超高齢社会とも言われている状況で,医療技術の発達により平均寿命の延伸は続いており,厚生労働省の「簡易生命表(令和3年)」によると,2021年の日本人の平均寿命は男性が81.47年,女性が87.57年とのことである 1)が,今後も平均寿命は延伸すると見込まれており,2065年には男性が84.75年,女性が91.35年 となり,女性の平均寿命が90年を超えるとの内閣府の見解もある 2).これは要介護者も含んだ数であるためやはり健康寿命の延伸が重要と感じる.今回はデジタルデンティストリーがどのように健康長寿社会に寄与できるかに視点を置いて考えたい.
 健康であれば自分の足で歯科医院に行き,適切な設備のもとで受診することができるが,要介護となった場合,往診対応では十分な医療提供が受けられないことが予想される.要介護者に対する歯科治療,歯科訪問診療(以下,訪問診療)のニーズは年々増加している(図1,2) 3-6)が,訪問診療においては,補綴装置製作においてもワークフローの第一歩である印象採得からハードルが高い傾向にある.そこで,3Dスキャナー(ラボスキャナー)を活用した総義歯およびデュプリケートデンチャーの製作にターゲットを絞って,デジタルデンティストリーの活用事例を紹介したい.
 1)厚生労働省:令和3年簡易生命表の概況.https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life21/index.html.2021.
 2)内閣府:第1章高齢化の状況.令和4年版高齢社会白書.令和4年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)-内閣府(cao.go.jp).2022.
 3)厚生労働省:平成29年医療施設(静動・動態)調査・病院報告の概況.2017.
 4)厚生労働省:令和2年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調(在宅).2020.
 5)厚生労働省:中央社会保険医療協議会総会(第495回)在宅(その4).2021.
 6)平野浩彦ほか(日本老年歯科医学会):日本歯科医学会:フレイルおよび認知症と口腔健康の関係に焦点化した人生100年時代を見据えた歯科治療指針作成に関する研究.日本歯科医学会誌,44:27-31,2022.
Special Article
特別企画 超高齢社会における3Dテクノロジーを活用したデュプリケートデンチャーの有用性
 ─使い慣れた旧義歯の簡便な再製作・リモデリングで変わる歯科訪問診療の形と質
 (瓜生博伺)

Complete Articles
Clinical Advice デジタル技術を活用した義歯製作における様々な試み
 (藤田耕介,鈴木啓太,加藤悠太)

追悼 青嶋 仁先生 ご逝去
 (吉澤和之,坂 清子,川島 哲)

シリーズ企画 歯科技工士とスポーツ歯科Update Cross Essay(1) スポーツ歯科の普及を成功に導くラボ・コミュニケーション
 (中原浩介/新家義章(編集協力))

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AIと歯科領域・原論
 第4回 AIの未解決問題
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患者満足度が得られる「失敗しない」補綴装置を求めて
 第23回 HPIと規格模型について(Main Body)
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ほのぼの技工LIFE
 Vol.18
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