やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

シリーズ企画 歯科技工士とスポーツ歯科Update
General Remarks(総論)
今日求められるカスタムメイドマウスガードとその製作
 中島一憲 筒井 新 阪上隆洋
 東京歯科大学口腔健康科学講座スポーツ歯学研究室(東京歯科大学水道橋病院健康スポーツ歯科)

はじめに
 スポーツマウスガード(以下,マウスガード)は一般的には「マウスピース」「マウスプロテクター」「ガムシールド」などとも呼ばれ,記録として残っているその起源は今から130年以上前,1892年のイギリスが発祥である.当時のボクサーの依頼を受けた歯科医師のWoolf Krauseがガッタパーチャを用いてカスタムメイドのマウスガードを提供したと言われている 1).また,日本においてはその33年後の1925年に歯科医師の大久保信一がカスタムメイドのマウスガードをボクシング選手に提供した記録が残っている 2).
 スポーツによる顎口腔領域への外力は,舌や口唇,頬粘膜などの軟組織損傷だけでなく歯の震盪・破折・脱臼・脱落,そして顎骨骨折や外傷性顎関節炎などの傷害を引き起こす.さらにはその衝撃が頭蓋を通じ,より重篤な場合,脳や頸椎まで損傷することがある.これらの傷害を予防する,あるいはアスリートの安心・安全を担保する目的で進化を遂げてきたマウスガードは,対戦相手や用具との接触が多発するコンタクトスポーツだけでなく,転倒や転落による地面からの衝撃,トレーニング中の噛みしめなどから歯を守るという観点からノンコンタクトスポーツやレジスタンストレーニングの分野からも急速なニーズの高まりを見せている.
 アスリートの立場から意見を聞くと,より小さく,より薄く,会話や呼吸を妨げることがなく,デザイン性に優れ,さらには外傷予防効果の高いマウスガードを求める声が大きい.一方で,歯科医師の立場からすると,当然のことながら外傷予防効果が最優先事項であり,その他の事項は二次的にマウスガードの付加価値を上げ,その普及に寄与する項目と考えられてきた.
 本稿では,長くスポーツ歯科医学に携わり,その進化に関わってきた者の一人として,アスリートのニーズに応え,機能的にも満足のいくマウスガードを提供するために,どのような知識やアイデアが必要か,どのような対策や改善が必要かについて考えていきたい.

 参考文献
 1)Reed, R.V. Jr.:Origin and early history of the dental mouthpiece. Br.Dent.J., 176:478-480, 1994.
 2)大久保信一,福田寿男,山本為之:マウスピースの歯科学的研究(第I報 形態,材料,調整法について),歯科学報,60:325-328,1960.
Special Article
シリーズ企画 歯科技工士とスポーツ歯科Update 総論 今日求められるカスタムメイドマウスガードとその製作
 (中島一憲,筒井 新,阪上隆洋)

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