やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに―本特集にあたって
 今回の「医療安全」という特集は慣れ親しみにくく,いまいちピンとこないかもしれません.しかし,現在は医療現場において「医療安全」抜きには何もできない時代になっており,それは臨床検査の分野も例外ではありません.しかしながら,現状として臨床検査技師は「医療安全」に対する自覚が非常に低いように思います.では,臨床検査技師は他の医療職に比べ,「医療安全」をおろそかにしているのでしょうか.臨床検査技師は品質保証や精度管理をはじめ,臨床検査の信頼性を向上するための取り組みを日々行っていますが,この行いは,実は多くのリスクを軽減しているのです.つまり,質の高い安全な医療を提供するための一翼を最前線で担っているということになります.普段から行っている臨床検査業務自体が,「医療安全」の目的である「医療の質と安全の確保」につながる業務であり,私達臨床検査技師は,日頃から無自覚に「医療安全」に深く携わっているのです.このことをあらためて自覚したうえで業務を行うことによって,今まで以上に医療の質と安全の向上に寄与することができるでしょう.
 本特集では,病理・輸血・生理機能・検体検査の各部門で活躍される一方で,施設内の医療安全管理部門,検査部門内のリスクマネージャーとして「医療安全」に積極的に取り組まれている方々に執筆をご担当いただきました.総論では医療安全の変遷と現状,医療安全・患者安全のために必要なこと,そして各論では,想定事例をもとに背景・発生要因・要因への対応,再発防止の取り組み方・考え方を述べていただきます.
 現時点で「医療安全」に興味がない方,本特集を頑張って読んではみたものの理解できなかった方もいらっしゃるでしょう.しかし安心して下さい.今後何か困った時に「確か『Medical Technology』に医療安全の特集があったな」と本棚に手が伸び,その時に役立つような特集になったと確信しています.本特集が,皆様の医療安全に対する意識が変わる“junction report”となれば幸いです.
 ◎監修 根本誠一 *1,3・宇城研悟 *2,3
 (株式会社日立製作所ひたちなか総合病院 TQM統括室 安全管理センタ *1/
 松阪市民病院 医療技術部 *2/
 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会 医療安全委員会 *3)
特集 やっている“つもり”になっていませんか? 臨床検査の医療安全を見直そう
  はじめに―本特集にあたって
  (根本誠一・宇城研悟)
 1.医療安全の変遷と現状
  (根本誠一)
 2.医療安全・患者安全のために必要なこと
  1)チーム医療で行う医療安全
  (宇城研悟)
  2)医療の質を知り,安全を得るための手法
  (根本誠一)
 3.想定事例から学ぶ 検査領域別の医療安全・医療事故防止のポイント
  1)病理検査
   (1)検体受付から病理診断
   (鈴木美那子・北村美寿穂)
   (2)病理診断報告の既読・未読管理
   (島田直樹)
  2)輸血検査
  (山本喜則)
  3)生理機能検査
  (田中夏奈)
  4)検体検査(血液検査・生化学検査・一般検査・微生物検査)
  (鈴木美穂)

Editorial―今月のことば
 スランプ脱出法
 (三井田 孝)

話題―NEWS&TOPICS
 3D/4D画像解析ソフトに期待する未来
 (山口雅子)

基礎講座
 実践!免疫組織化学の精度管理
 (島方崇明・鴨志田伸吾・桑尾定仁)
 ヘモグロビンA1cの各種測定法の特徴
 (廣渡祐史)

技術講座
 酵素基質培地の使いこなし方
 (中山麻美)
 NGS検査を成功に導くためのポイント―プレアナリシスを中心に
 (白石直樹)

臨床検査Q&A
 体腔液細胞診における反応性中皮の「反応性」とは何ですか?
 (松本慎二)
 最近,LDアイソザイムを構成するH型およびM型サブユニットでは,LD活性が異なることが報告されています.両サブユニットでどの程度異なるのか,またなぜそのようなことがわかるのかを教えてほしいです.
 (田中満里奈)

これは便利!
 改良版 自作パラフィン薄切加湿システム
 (藤井 浩)

MT Seminar
 微生物検査技師に必要なロジカルシンキング
 (米谷正太)
 シリーズ 日常のなかの例外・トラブル対応
 2.検査室の機器トラブル対策
 (井上賢二)

Information
 第35回日本臨床微生物学会総会・学術集会
 第13回病理技術向上講座 第9回びわ湖細胞病理テュートリアル
 エコーセミナー

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 編集後記・次号予告