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栄養評価から栄養診断,そして臨床推論の新時代へ
 臨床栄養では,栄養評価だけでなくGLIM基準などによる栄養診断が求められる時代となった.診断を行うには,診断推論や臨床推論が必要である.旧時代の栄養ケアマネジメントでは,栄養アセスメントをした後に臨床推論を行わずに栄養ケアプランを立案して介入することも可能であった.しかし,臨床推論や診断推論を行わなければ,立案された栄養ケアプランの質は高くない可能性が高い.
 今回の臨時増刊号では,臨床栄養における臨床推論を特集した.医師,歯科医師,看護師,薬剤師,理学療法士など多くの医療職種が臨床推論をすでに卒前,卒後で学習している.専門家として優秀かそうでないかを分ける基準の一つが,臨床推論能力である.しかし,管理栄養士は今まで臨床推論を体系的に学習する機会が乏しかった.Part 1は,「臨床推論を知る」という基礎的な内容とした.優秀な医師であれば,専門科を問わず理解,活用している内容である.Part 2は,「栄養関連問題を臨床推論する」という実践的な内容とした.各論では,食欲不振など臨床栄養でよくみる栄養関連問題の臨床推論の仕方を紹介した.その際,薬剤面,心理面,社会面を見落とさないことが重要であるため,これらが原因のときの対応も紹介した.
 臨床推論はむずかしい.しかしこれからは,臨床推論をすでに学習してきた他職種とチーム医療で臨床推論を行う新時代である.今回の臨時増刊号が臨床栄養における臨床推論の臨床,教育,研究が発展する一助となれば幸いである.
 編者を代表して
 若林秀隆
 序:栄養評価から栄養診断,そして臨床推論の新時代へ(若林秀隆)
Part 1 臨床推論を知る
 【概論】臨床推論・診断推論とは(安本有佑)
 帰納法と演繹法(原嶋 渉)
 OPQRST法(河内雅章)
 感度・特異度・事前確率・事後確率(岩佐沙弥・道免和久)
 システム1「直観」とシステム2「分析」(永井多賀子)
 臨床推論でのバイアス(岸本 浩)
 ロジックツリーとセマンティック・クオリファイアー(SQ)(莵原洸司)
 ピボット・クラスター戦略とhorizontal-vertical tracing(関 隆実)
 多職種による診断エクセレンスで診断エラーを予防する─管理栄養士編(小坂鎮太郎)
 診断精度研究(百崎 良)
 臨床予測ツール研究(前田圭介)
 臨床推論の学習方法(松本朋弘)
Part 2 栄養関連問題を臨床推論する
 管理栄養士にとっての臨床推論・診断推論(西岡心大)
 薬剤が原因のときの対応─リハビリテーション薬剤(松本彩加・吉村芳弘)
 心理面が原因のときの対応(若林秀隆)
 社会面が原因のときの対応(藤原 大)
 【各論】
 食欲不振(大濱良映)
 吐き気・嘔吐(宇野千晴)
 食事動作困難(森山大介)
 咀嚼障害(兼弘朋実)
 嚥下障害(粟田麻友)
 栄養素摂取の不足(林 美華)
 栄養素摂取の過剰(川勝知佳)
 体重減少(若林秀隆)
 体重増加(垣谷知佐)
 低栄養(一島妃東美)
 過栄養・肥満(鈴木達郎)
 サルコペニア(石田悠子)
 サルコペニア肥満(ア美幸)
 フレイル(西山 愛)
 便秘(浦田ちひろ)
 下痢(小林大樹)
 便失禁(塩濱奈保子)
 尿失禁(寺田 師)
 脱水症(鈴木尚子)
 浮腫(後藤美紅)