やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 透析の仕事中に患者Aさんが胸痛を訴え,血圧の低下と不整脈を認めました.この場合に,それが何によるのか,どのような検査をして診断,治療をしたらよいのかを直ちに決定し,実施する必要があります.日常,このようなことは全身にわたってしばしばみられるものです.
 この際には,透析の教科書や参考書を開いて読むような余裕はなく,必要なポイントを直ちに把握して行動をすすめなければなりません.どうしたらよいかわからないままにウロウロしていると処置に手抜かりがあったり,ミスをすることにもなります.また,患者さんに不安な気持ちを与えることにもなります.
 本書は透析スタッフにとってこのような場合の有力な援軍となるようにつくりました.日常よく遭遇し,重要と考えられる症状・所見や,知っておくべき諸知識193項目について,それぞれの内容や対策のポイントを1〜2ページに収め,わかりやすくまとめてあり,直ちに実行できるようになっております.
 執筆は,わが国のそれぞれの領域において指導的な立場で活躍しておられる先生方によってなされており,透析スタッフにとって,どのページも必須で得難い珠玉のような内容です.本書を第1ページから読み始めるのもよいでしょうが,必要に応じて現在当面していたり,関心を持っている事項のページを開いて,内容のポイントを素早く把握し,実行に移すことがよいと思います.
 さらに,その事項に関連する検査(VII章),薬の用い方(IX章),食事療法(VIII章),心理・社会(X章),透析機器・装置(XII章),基礎知識(I章)などについても疑問を解き,知識を広く深く獲得できて,充実した包括的な治療が達成できるようになれます.
 このように,本書は透析スタッフにとって最良のガイドとなり,優れた指導者や先輩による適切な指導が得られる書物になるといえます.本書により,日常当面する諸問題が解決され,自信を持って最良の治療がなされることを願ってやみません.
 本書ができあがるまで,コンパクトでわかりやすく優れた内容の原稿を執筆していただいた多数の先生方に心から感謝します.また,編集から出版に至るまで煩瑣な仕事を熱心に行っていただいた医歯薬出版(株)編集部や,関係する方々に深謝します.
 平成19年1月
 飯田喜俊
 秋葉 隆
 編集協力者一同
I 透析療法の基礎知識
 1.透析療法の原理(峰島三千男)
 2.尿毒症物質(篠田俊雄)
 3.透析療法の種類と選択(〃)
 4.その他の血液浄化法の適応(〃)
 5.慢性透析療法の導入基準(〃)
 6.在宅血液透析(〃)
 7.バスキュラーアクセス(佐藤 隆)
 8.ダイアライザー(峰島三千男)
 9.透析膜(〃)
 10.生体適合性と体外循環の生体反応(篠田俊雄)
 11.水処理(佐藤 隆)
 12.逆濾過,逆拡散(峰島三千男)
 13.ドライウエイトの設定法(佐藤 隆)
 14.クリアランス,ダイアリザンス(峰島三千男)
 15.透析量(Kt/V),蛋白異化率(PCR),適正透析指標(〃)
 16.血流量,透析液流量(〃)
 17.透析液(佐藤 隆)
 18.抗凝固療法(篠田俊雄)
 19.連日血液透析,長時間透析(佐藤 隆)
 20.高Na透析(〃)
 21.低温透析(〃)
 22.腹膜透析(PD) --CAPD,APD(窪田 実)
 23.CAPDカテーテル(〃)
 24.CAPD透析液(〃)
 25.CAPDの至適透析(〃)
II 透析療法の実際
 1.血液透析(HD)(片岡浩史・木全直樹)
 2.その他の血液浄化療法(〃)
  1.血液濾過(HF) 2.血液透析濾過(HDF) 3.イーカム(ECUM)
 3.腹膜透析(PD)(石原美和・木全直樹)
  1.CAPD 2.APD
III 患者の日常生活の注意点
 1.血圧測定,血圧管理(松岡由美子)
 2.体温の測定,発熱時の対処(〃)
 3.脈拍のチェックと対処(〃)
 4.体重のコントロール,ドライウエイト(〃)
 5.内シャントの自己管理(〃)
 6.血糖異常と対処(島崎玲子)
 7.運動と体力増進の問題(鳥海奈穂美)
 8.高齢者の問題(斉藤しのぶ)
 9.外科手術の問題(丸田愛子)
 10.CAPD患者の日常生活での注意点(藤田文子)
IV 看護ケア
 1.透析導入期の看護(斉藤しのぶ)
 2.透析維持期の看護(〃)
 3.糖尿病透析患者の看護(島崎玲子)
 4.小児透析患者の看護(鳥海奈穂美)
 5.高齢透析患者の看護(斉藤しのぶ)
 6.ハイリスク透析患者の看護(丸田愛子)
 7.外科手術時の看護(〃)
 8.妊娠・出産時の看護(鳥海奈穂美)
 9.服薬指導(近藤美幸)
 10.水分管理の指導(〃)
 11.CAPD患者の教育(藤田文子)
V 透析中の症状と対策
 1.不均衡症候群(飯田喜俊)
 2.低血圧(椿原美治)
 3.高血圧(勝二達也)
 4.不整脈(古松慶之)
 5.皮膚のかゆみ,皮膚異常(金子哲也)
 6.意識障害,痙攣(上田峻弘)
 7.胸痛(〃)
 8.呼吸困難(〃)
 9.吐血,下血(〃)
 10.悪心,嘔吐(〃)
 11.腹痛(〃)
 12.こむらがえり(〃)
 13.血液透析(HD)中の事故(山川智之)
 14.CAPD時の事故(〃)
VI 透析合併症と対策
 1.心不全(うっ血性心不全)(長谷弘記)
 2.心筋梗塞,狭心症(〃)
 3.心膜炎(田中友里)
 4.肺水腫(〃)
 5.尿毒症肺(〃)
 6.高血圧(菅野義彦・鈴木洋通)
 7.低血圧(〃)
 8.初回透析症候群(〃)
 9.脳血管障害(〃)
 10.動脈硬化症,血管石灰化(〃)
 11.足の潰瘍・壊死(岩澤秀明)
 12.内シャントの合併症(大平整爾)
 13.貧血(椿原美治)
 14.ヘパリン起因性血小板減少症(藤井正満)
 15.鉄沈着症(金子哲也)
 16.結核(藤井正満)
 17.ウイルス性肝炎(〃)
 18.肝硬変,肝癌(藤井正満)
 19.尿路感染症(横山建二)
 20.多嚢胞化萎縮腎,腎癌(〃)
 21.上部消化管出血(〃)
 22.下部消化管出血(〃)
 23.二次性副甲状腺機能亢進症(小田 稔)
 24.腎性骨異栄養症(〃)
 25.異所性石灰化(〃)
 26.透析アミロイドーシス(山本 卓・下條文武)
 27.手根管症候群(〃)
 28.破壊性脊椎関節症(〃)
 29.アルミニウム蓄積症(〃)
 30.透析脳症(〃)
 31.悪性腫瘍(肝・腎を除く)(横山建二)
 32.視力障害(安宅伸介)
 33.末梢神経障害(岡田知也)
 34.自律神経障害(〃)
 35.栄養障害(中尾俊之)
 36.高脂血症(〃)
 37.高血糖,低血糖(〃)
  1.高血糖 2.低血糖
 38.CAPDカテーテルトラブル(長谷川廣文)
 39.腹膜透析腹膜炎(〃)
 40.腹膜透析出口部感染症,皮下トンネル感染症(〃)
 41.腹膜機能低下(〃)
 42.被嚢性腹膜硬化症(〃)
VII 検査異常と対策
 1.検体検査(小島智亜里)
  1.一般血液検査 2.検尿 3.検便 4.腎機能検査 5.電解質,血液ガス 6.蛋白・脂質検査 7.糖代謝検査 8.肝・膵機能検査 9.鉄代謝検査 10.出血・凝固検査 11.免疫血清検査 12.内分泌機能検査 13.骨代謝マーカー 14.腫瘍マーカー
 2.生理検査(池辺宗三人)
  1.胸部X線写真と心胸比 2.心電図,ホルター心電図 3.心臓超音波検査 4.胃X線検査,注腸バリウム検査 5.胃・大腸内視鏡検査 6.CT,MRI 7.超音波検査(腹部,下大静脈,頚動脈) 8.骨塩量測定 9.神経伝導速度
VIII 食事療法と問題点
 1.透析患者の食事基準(金澤良枝)
 2.炭水化物,蛋白質,脂質の摂取(〃)
 3.食塩,水分の摂取(〃)
 4.カリウム(K)の摂取(〃)
 5.リン(P),カルシウム(Ca)の摂取(〃)
 6.食物繊維の摂取(〃)
 7.糖尿病透析患者の食事(市川和子)
 8.CAPD患者の食事(〃)
 9.急性腎不全患者の食事(〃)
 10.治療用特殊食品(瀬戸由美)
 11.嗜好食品(〃)
 12.外食,旅行時の食品(〃)
 13.栄養評価法(〃)
IX 薬の用い方
 1.透析患者の薬の用い方(平田純生)
 2.主な薬の服薬方法と注意点
  1.昇圧薬/(三宅健文) 2.降圧薬/(平田純生) 3.狭心症治療薬/(三宅健文) 4.強心薬/(〃) 5.抗不整脈薬/(〃) 6.解熱・鎮痛薬,非ステロイド性抗炎症薬/(〃) 7.催眠薬,抗不安薬/(平田純生) 8.副腎皮質ステロイド薬/(三宅健文) 9.血糖降下薬/(木村 健) 10.高尿酸血症治療薬/(平田純生) 11.高脂血症治療薬/(木村 健) 12.消化器治療薬/(〃) 13.抗菌薬,抗真菌薬,抗結核薬,抗ウイルス薬/(平田純生) 14.造血薬/(木村 健) 15.血液凝固阻止薬/(三宅健文) 16.透析骨症治療薬/(平田純生) 17.高カリウム(K)血症治療薬/(木村 健) 18.高リン(P)血症治療薬/(〃) 19.抗癌薬/(平田純生)
X 透析患者の心理・社会問題と社会資源
 1.透析生活への不安(春木繁一)
 2.インフォームドコンセント(藤田 譲)
 3.透析拒否(春木繁一)
 4.透析の中止(大平整爾)
 5.医療保険制度(藤田 譲)
 6.身体障害者手帳(〃)
 7.透析治療に関する費用(〃)
 8.在宅支援における通院介助(〃)
 9.高齢者への援助(〃)
 10.要介護透析患者への支援(〃)
 11.介護保険(〃)
XI 腎移植の諸問題
 1.腎移植か透析療法か(宮本直志)
 2.生体腎移植と献体腎移植(〃)
 3.腎移植希望の登録(〃)
 4.腎移植の適応と成功率(〃)
 5.移植方法(〃)
 6.拒絶反応と対策(〃)
 7.移植後の透析再導入(〃)
XII 透析関連機器・装置
 1.血液透析装置(小野淳一)
 2.除水制御装置(〃)
 3.漏血検知装置(〃)
 4.気泡検知装置(〃)
 5.高Na透析装置(Naインフューザー)(〃)
 6.水処置装置(〃)
 7.透析液清浄化装置(〃)
 8.モニタリング装置(〃)
 9.APD装置(〃)

索引