やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 今回,新たに『必修 歯科臨床研修実践ハンドブック』を出版することとなりました.本書の前身は,平成18年度に歯科医師臨床研修が必修化されたのにあわせて,臨床研修のための「必修臨床研修歯科医ハンドブック」(竹原直道,廣藤卓雄監修)として出版されました.その後,2年ごとの診療報酬改定時に改訂を行い,最後の「新臨床研修歯科医ハンドブック 令和4年度診療報酬改定対応版」(廣藤卓雄,粟野秀慈,米田雅裕監修)の内容を基盤として,現状の臨床研修に加えて卒前の診療参加型臨床実習においても活用していただくことをコンセプトに,今回大幅な内容の改訂を行いました.
 令和6年4月1日から改正歯科医師法の施行により,共用試験に合格した歯学生が歯科医師法第17条の規定にかかわらず,大学が行う診療参加型臨床実習において,歯科医師の指導監督のもと,歯科医療に関する知識,技能および態度を修得するために,Student Dentistとして歯科医業を行うことができることとなりました.加えて,卒前の診療参加型臨床実習と卒後の臨床研修は,共通の到達目標の設定を行うなど,臨床研修と診療参加型臨床実習の有機的な連携をはかるシームレス化もはかられております.本書は,九州歯科大学と福岡歯科大学で診療参加型臨床実習・臨床研修に携わる臨床教員が中心となって執筆しており,歯科医師になった際に必要となる包括歯科診療に係るすべての項目を網羅して,臨床研修歯科医だけではなく,卒前の診療参加型臨床実習に参加している学生の皆さんにとっても役立つ内容となっております.
 本書は,臨床研修と診療参加型臨床実習のかかわり,医療保険制度の仕組みと令和6年度診療報酬改定に対応した診療録記載法,感染対策から予防・治療の臨床手技,医療事故対応,周術期口腔機能管理,歯科訪問診療などを含めた有病患者への対応も網羅しており,全国のさまざまな研修プログラムに幅広く対応しております.
 今後の歯科医療を取り巻く環境は,大きく変わっていくでしょう.医療分野における,Digital Transformation(DX)化,生成AIの活用,少子高齢化,人口減少,歯科医療従事者の不足など,先行き不透明な未来ではありますが,そういった中でも,人間性豊かで有能な医療人は,変わらず求められ続けるでしょう.歯科医師としての第一歩を踏み出す皆様が,志を高くもち,患者さんの立場に立てる質の高い歯科医師となるために,本書が皆さんの必携のバイブルとなることを祈念しております.
 令和6年9月
 監修者
 粟野秀慈
 米田雅裕
 歯科医師臨床研修制度の概要
第1章 歯科医師としての心構え
 1 臨床を行うにあたってのクリニカルポリシー
 2 歯科医師のマナー
 3 歯科医師と患者
 4 歯科医師とコデンタルスタッフ
 5 診療前の準備
 6 診療後の情報整理・評価
第2章 医療保険制度を知る
 1 医療保険制度の仕組み
 2 保険診療の流れ
 3 診療録(カルテ)の書き方
第3章 医療安全,感染対策
 1 医療安全,感染対策の基本
 2 ラバーダム防湿法
 3 診療器具,機材の消毒法・滅菌法
 4 医療事故が起きたときの対応
 5 針刺し・切創の予防
 6 針刺し・切創,皮膚・粘膜曝露
 7 薬物アレルギー
 8 薬剤による皮膚・粘膜の刺激
 9 誤飲・誤嚥事故
 10 バーによる損傷
 11 上顎洞穿孔
 12 抜歯中に根尖が破折したときの対応
 13 難抜歯のための抜歯中止時の対応
 14 皮下気腫
 15 髄床底穿孔時の対応
 16 抜歯後異常出血
 17 ドライソケット
 18 顎関節脱臼
第4章 医療面接の仕方
 1 患者の悩みを聴取する
 2 患者に説明する
 3 患者に動機づけする
第5章 検査・診断・治療計画
 1 頭頸部および口唇・口腔内の診察
 2 デンタルエックス線画像撮影法
 3 パノラマエックス線画像撮影法
 4 全身用CTおよび歯科用コーンビームCT撮影法
 5 口腔内カラー写真撮影法
 6 スタディモデルによる検査・診断
 7 習癖(口呼吸,ブラキシズム)の検査・診断
 8 口腔顔面痛の検査・診断
 9 う蝕の検査・診断
 10 歯髄炎の検査・診断
 11 根尖性歯周炎の検査・診断
 12 歯周組織の検査・診断
 13 顎関節症の検査・診断
 14 不正咬合の検査・診断
 15 口腔乾燥症の検査・診断
 16 口腔機能低下症の検査・診断
 17 口腔機能発達不全症の検査・診断
 18 摂食機能療法の評価
 19 小児の口腔軟組織疾患,口腔習癖に対する検査・診断
 20 バイタルサインの測定
 21 口臭症の検査・診断
 22 総合治療計画
第6章 予防・管理
 1 予防・管理のしくみ
 2 う蝕の予防・管理
 3 歯周疾患の予防・管理
第7章 局所麻酔法
 1 浸潤麻酔法
 2 伝達麻酔法,その他の麻酔法
 3 笑気吸入鎮静法
第8章 投薬の基本知識
 1 抗菌薬,鎮痛薬の投薬法
 2 外用薬の投薬法
 3 小児への投薬法
 4 妊婦・授乳婦への投薬法
第9章 う蝕修復処置法
 1 切削器具の使い方
 2 切削器具使用時のポジショニング
 3 初期う蝕の処置
 4 軟化象牙質の除去(う蝕検知液の使用法)
 5 覆髄(歯髄保護処置)
 6 グラスアイオノマーセメント修復
 7 コンポジットレジン修復
 8 メタルインレー修復
 9 CAD/CAMインレー修復
第10章 歯内療法
 1 麻酔抜髄法
 2 電気的根管長測定法
 3 インレー,クラウン,ポストコアの除去法
 4 感染根管処置法
 5 歯肉息肉除去
 6 根管貼薬の選択基準
 7 根管充填
第11章 歯周治療
 1 歯周治療の流れ
 2 歯口清掃指導法(プラークコントロール)
 3 Professional Tooth Cleaning(PTC)
 4 暫間固定(TFix)
 5 超音波スケーラー,エアスケーラーの使用法
 6 シャープニングの方法
 7 スケーリング・ルートプレーニングの方法
 8 歯周ポケット掻爬の方法
 9 歯周疾患に対する薬剤の応用法
 10 咬合調整,歯冠形態修正
 11 慢性歯周炎の急性発作時の対応
 12 知覚過敏に対する治療
 13 歯周外科療法
 14 インプラント周囲炎
第12章 口腔外科手術
 1 口腔内切開の基本
 2 縫合の基本
 3 抜歯
 4 切開排膿術
第13章 口腔粘膜疾患
 1 アフタ性口内炎への対応
 2 口腔カンジダ症への対応
 3 口腔癌の疑いのある症例への対応
 4 粘液嚢胞への対応
第14章 歯冠補綴
 1 メタルコアによる支台築造
 2 レジンコアによる支台築造
 3 テンポラリークラウンの製作法
 4 クラウンの歯冠形成
 5 部分被覆冠の歯冠形成
 6 歯冠形成後の印象採得,咬合採得
 7 歯冠補綴装置の装着
 8 クラウンの脱離への対応
 9 小臼歯のハイブリットレジンCAD/CAM冠
第15章 欠損補綴
 1 欠損補綴の選択基準
 2 欠損補綴の流れ
第16章 ブリッジ
 1 ブリッジ設計の基本
 2 ブリッジのための歯冠形成
 3 ブリッジのための印象採得,咬合採得
 4 ブリッジの試適
 5 ブリッジの装着
第17章 部分床義歯
 1 不適合部分床義歯への対応
 2 部分床義歯の設計
 3 部分床義歯の印象採得
 4 部分床義歯の咬合採得
 5 部分床義歯の試適
 6 部分床義歯の装着
 7 部分床義歯のリライン
 8 部分床義歯の修理
第18章 全部床義歯
 1 小さすぎる外形の全部床義歯への対応
 2 義歯装着時の痛みへの対応
 3 義歯床下組織の診察
 4 旧義歯を活用して顎位を修正する方法
 5 ティッシュコンディショニングの方法
 6 全部床義歯の印象採得1(概形印象)
 7 全部床義歯の印象採得2(精密印象)
 8 全部床義歯の咬合採得
 9 ろう義歯の試適
 10 全部床義歯の装着
 11 全部床義歯のリライン
 12 全部床義歯の修理
第19章 小児の歯科治療
 1 小児患者への対応
 2 小児に対する口腔衛生指導
 3 小児に対するフッ化物応用
 4 乳歯・幼若永久歯のシーラント
 5 乳歯の修復処置
 6 生活歯髄切断法
 7 乳歯の麻酔抜髄法
 8 小児のう蝕治療における継続管理の流れ
 9 乳歯の抜歯
 10 保隙装置の装着
 11 外傷への対応
 12 小児の口腔習癖への対応
 13 矯正装置の装着
第20章 有病者の歯科治療
 1 有病患者への対応
 2 歯科訪問診療の実際
 3 周術期口腔機能管理
 4 摂食機能療法の実際
第21章 情報検索ほか関連事項
 1 医療情報の検索
 2 Evidence-Based Dentistry(根拠に基づく歯科医療)
 3 技工指示書の書き方
 4 処方箋の書き方
 5 投薬・注射・麻酔の保険請求
 6 医療情報提供書(紹介状・照会状)の書き方
 7 臨床検査値の読み方

 索引
 付録 歯科診療報酬点数早見表