やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文(初版)
 日本口腔インプラント学会
 用語委員会委員長 斎藤 毅
 20世紀は科学技術の進歩の著しい100年であったと言われております.科学の進歩に伴って学問,技術は体系化が進み,それぞれ専門に分化して発展の道をたどってきました.学問と秘伝・奥義の類とが大きく異なるところは,その哲学,理論,技術を包括する学術的背景を「文字」で表現し,人に伝えることが出来るか否かにあると言われております.この意味で口腔インプラントの専門用語集が編集されて発刊の運びとなりましたことは,歯科医学におけるインプラント学の進歩と発展を示すものであり,またこの分野の今後の展開に寄与するところが大きいものと考えられます.
 この度の用語集は,日本口腔インプラント学会・平成6年度執行部(古本啓一会長)で企画されて学会用語委員会に付託されたもので,当初,インプラント用語集に対する期待は過度に大きいものでありました.しかし口腔インプラント学は基礎歯科医学から臨床の各専門領域を包括する学際的な領域であるため,その用語は解剖,病理,無機・有機材料,生体材料,外科技術,咬合の回復,生体の治癒力,予後管理あるいは社会科学など膨大な領域に亙るものであり,さらに用語の統一や解説を望む声も聞かれました.
 用語委員会では,これらの問題を整理し,今回の用語集では現在口腔インプラントを取り巻く歯科医学の領域で使用されている用語を整理して収録することとし,用語の解説は次の企画に委ねることとしました.すなわち,用語の蒐集は国内外の口腔インプラント関連の成書,学会誌を中心に進めました.また,同じ事象を異なる表現・用語で使われているもの,あるいはカタカナ表示で使用されているものもあり,これらの用語の統一は本委員会の能力を越えるものであり,また経時的に一つの用語に集約されて使われていくもので,これらの用語は同義語として複数併記して編集することとしました.
 口腔インプラント用語集の編集は平成9年度からは末次恒夫会長に,平成12年度からは鈴木和夫会長に引き継がれ,それぞれ委員会も改組され上記企画を継承して編集作業が継続され,この度,初版として完成したものであります.学術用語集の編集作業は着手して9年に亙るものでありますが,この間,日新月歩の著しい学問の進歩に合わせてup to dateの新しい用語を逐次追加して編集を進めました.また,前会期末(平成12年3月)には口腔インプラント用語集・暫定版を発刊し,これを学会役員(理事,評議員)に提供して広く意見を求めて完成度を高めました.
 本用語集は,インプラントに関する事象を英語,日本語および分類(カテゴリー)として3段に分けて編集し,利用者の便を図るために日本語索引を設けてあります.また巻末には,市販のインプラントシステムおよび世界のインプラント学会名を表示し,学術論文作成の助けとなるインプラント関連用語をまとめて記載してあります.さらに,本用語集は現鈴木会長の強い要請を受けて印刷物(ハードコピー)として全会員に配布することが認められ,また情報化の時代に即してCD-ROM化を行い会員の要請に応えられるよう準備がされております.
 以上のように,本用語集は学会の経年的な事業として企画され,3期,9年間に亙る精力的な努力によって資料の蒐集,採択,見直しなどの編集作業を通じて完成されたものであることを報告し,この間の作業に当たられた用語委員会の委員各位,特に地道な作業を進められた小委員会委員および学会事務局の御労苦に対し,深甚なる感謝の意を申し上げる次第であります.
 なお,口腔インプラントはその学術的背景が広く,学際領域に及び歯科における研究面および臨床面での活性が高い分野であるので,継続的な検討と改訂作業が必要であることを付記する.

第2版の編集にあたって
 2003年に口腔インプラント学会(鈴木和夫会長,斎藤毅用語委員長)が自ら学術用語集を編集して上梓して以来,約7年が経過しました.この間にあって口腔インプラント学の発展はまことに目ざましく,新たな学術用語(以下,用語)の導入,古くなった用語の整理など,ニーズに対応する新しい展開が必要となりました.ここに,口腔インプラント学の新しい学術用語集を編集し発刊の運びとなったことは,まさに口腔インプラント学の進歩と発展を示すものであり,さらにこの分野の今後の展開に口腔インプラント学会が大きく寄与できる可能性を提示するものであります.
 口腔インプラント学は基礎歯科医学から臨床の各専門領域を包括するきわめて学際的な領域であり,その用語は膨大な領域にまたがるものです.本用語委員会では,川添堯彬理事長からの指示を受け,これらのニーズに即時に対応すべく問題を整理し,今回の学術用語集では現代の口腔インプラント学で使用されている用語をできるだけ網羅して収録しました.また,各用語の解説は次の企画に委ねることとしました.すなわち,編纂方針としては,2003年度に出版された口腔インプラント学会学術用語集をベースとし,国内外の口腔インプラント関連の成書や学会誌,また日本歯科医学会学術用語集や日本補綴歯科学会用語集など専門分野での用語も丁寧に蒐集することとし,また,古くなったものでもはや使わない用語は棄却し,さらに進歩に伴って使用されてきている新しい用語は可能なかぎり入れることにしました.また,口腔インプラントの進歩を牽引してきた商品名も歴史的意義の大きなものは残しましたが,この時代に合わせて整理もしました.さらに,同じ事象を異なる表現や用語で使われているもの,あるいは英語をカタカナ表示するものなど口腔インプラント関連では特に多くあり,これらの用語の統一は本委員会の能力を越えるものであることから,ひとまず列記しました.すでにカタカナで用いられている用語はそのままとし,和文が同じで英語が異なるもの,英語は同じで和文が異なるものなどもそのまま用いることにしました.これらは経時的に用いられていくことで,一つに集約されるものと思われます.さらに,より見やすくするため,用語の日本語と英語を併記し,利用者の利便性を図るため英語索引も設けました.また,付録として,市販のインプラントシステムとそのパーツの用語も列記し,学会発表や論文作成の助けとなるよう記載しました.本学術用語集は川添堯彬理事長の強い要請を受けて印刷物として会員全員に配布することとし,さらに将来的にCD-ROM化も可能なように手はずしています.
 この作業に当たった用語委員会は,短期間で迅速に作業を進めることができたことに誇りを持ちます.しかしながらここに至る推進力となった旧評議員の方々の多くの示唆やコメントがなければ,洗練された完成にはとうてい至りませんでした.それゆえ,旧評議員,旧理事の方々に深甚なる感謝の意を申し上げる次第であります.また,まとめや連絡で多大な労をいただいた賛助会員の方々,学会事務局,医歯薬出版編集部に対し,心からお礼を申し上げます.
 このように編集した学術用語集を,学会会員は是非ともうまく活用され,優れた学会発表や論文作成を行って下さい.すなわち,学会会員は学会発表や論文作成に勝手な造語など活用せず,この学術用語集に従っていただくこと,このことを委員会は最も強く望みます.一方で,口腔インプラント学の進歩の速度はあまりにも速く,追加や変更されるべき用語が存在しており,継続的な検討と改訂作業が必要であることは言うまでもなく,次回はさらに改訂されるべきものと認識いたします.
 2011年3月
 公益社団法人 日本口腔インプラント学会
 用語委員会
 委員長 赤川安正
 副委員長 加藤仁夫
 委員 児玉利朗 塩田 真 内藤宗孝 原 宜興 松浦正朗 宮崎 隆(五十音順)

口腔インプラント用語集の発刊にあたって(初版)
 日本口腔インプラント学会
 会長 鈴木和夫
 用語集は学問領域の道標となるもので,内容と利用に一般学術書とは違った意味をもっています.歯科診療においてインプラント治療が多く行われるようになるに従い,インプラントに関連する用語が歯科医学の教育・研究および臨床に多く使われるようになってきました.このような専門用語には,用語をただ呼称させるだけでなく,その内容をある程度意味付けることが多いようです.新しく用語を設定・使用するには,共通した理解のもとに使用されるに至る研究・臨床面での長い間のインプラント学修学のなかで多くの検討がなされ,その結果として使われることが望ましいと考えます.
 口腔インプラント学は,外国での歴史も長く,外国からの研究・臨床例が多く報告され,発表などに使用される用語は英語をはじめとする外国語が多く,翻訳文に専門用語を外来専門語として直ちに使用することは,内容を正しく把握することが難しくなる傾向にあります.さりとて安易に翻訳し,訳語として使用することはその内容を誤って伝えることの不安もあります.また,個々独自に用語を作り,使用することは事柄の理解を惑わすことになります.また,インプラントに関する教育・研究・診療にあたっては,口腔インプラント学に関連する用語を的確に理解し,使用することが大切です.あらゆる領域での教育・研究にあたっては,用語について正しく理解し,より正確,かつ効果的に使用することが正しく内容を伝える第一歩と考えます.
 そのため,本書がインプラントを志すもののみならず,歯科医学の教育・研究・臨床に携わるすべての歯科医学関係者の座右の書として広く活用されることを期待しています.
 斎藤 毅教授(日本大学歯学部)を中心に,多くの委員によりインプラント学に関連する用語を纏めることを心がけてから,早くも9年余の歳月が過ぎました.これもこの間インプラント学が発展・変貌し,幾度となく見直し,整理の必要が起こり,そのため用語集の発刊が遅れ,今日に至ったと伺っております.
 当然のことながら,今後も,口腔インプラント学の進歩・変貌に伴い多くの用語が変化していくことは必至で,適正な用語,表記の統一など修正への努力を続ける必要があると思います.今後ともインプラント学の進歩・発展に伴って委員会の詳細な検討により修正・改正されることを願っています.
 また,用語集が論文執筆や診療の用語使用の規制となることなく,内容が正しく伝えられるための基準となることを期待しています.
 最後に,口腔インプラント学会独自の用語集の出版を強く希望した学会員と,これを高く評価しご尽力下さった古本啓一元会長ならびに末次恒夫前会長に深甚なる敬意を表するとともに心から感謝申し上げます.

『口腔インプラント学学術用語集第2版』の出版にあたって
 公益社団法人 日本口腔インプラント学会
 理事長 川添堯彬
 現在,わが国においては口腔インプラント治療が広く行われるようになっています.それに伴い,多くの口腔インプラントに関連する学術用語が歯科医学の教育,研究および臨床の場で使われるようになってきました.しかしながら,口腔インプラントに関する教育・研究・臨床にあたっては,口腔インプラント学に関連する統一的学術用語を的確に理解し,使用することが大切であります.口腔インプラント学は,外国での歴史も長く,外国からの研究・臨床例が多く報告され,発表などに使用される専門学術用語は英語をはじめとする外国語が多いのが現状です.このような専門学術用語を外来専門語として直ちに使用することは,内容を正しく把握することが難しくなる懸念があります.さりとて安易に翻訳し,訳語として使用することは,その内容を誤って伝えることの不安もあります.また,独自に学術用語を作り,使用することは事柄の理解を惑わすことにもなります.
 このような観点から,旧日本口腔インプラント学会では,斎藤 毅理事(当時)を中心に,多くの時間を費やしインプラント学に関連する学術用語を纏めて第1版として2003年3月30日に出版致しました.その後インプラント学が発展・変貌したため,見直し,整理が必要との声が起こり,この度口腔インプラント学学術用語集の第2版を出版することが待たれていました.
 加えて一昨年の調査では,全国29大学の卒前教育において口腔インプラント学の授業が始まっており,国家試験への出題も増える傾向にあります.これらの状況に鑑み,早急に,本学会が率先して口腔インプラント学に関連する統一的学術用語集を編纂することは,本学会の念願であり,喫緊の課題となっていました.
 この大仕事を,わずか1年の間に完成してくれるよう赤川安正用語委員長ならびに委員各位に懇願して,お引き受けいただきました.
 会員におかれましてはこの学術用語集を論文執筆や診療時に活用され,内容が正しく伝えられるための基準となることを期待してやみません.
 最後に,公益社団法人日本口腔インプラント学会独自の学術用語集の出版を強く待望された学会員の皆様,改訂を高く評価し,労力を惜しまずにご尽力下さった赤川安正用語委員長ならびに用語委員会委員の皆様に深甚なる敬意を表すとともに,心から感謝申し上げます.
 2011年3月