やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社



 歯周治療の一環として,また補綴治療の前準備として行われる歯周外科処置にはさまざまな手技,手法がある.それらは,改良,改変が加えられ,日々多様化してきている.そのため,個人名や特別な術式として名称を冠せられた手技,手法が際立って紹介されることも少なくない.しかし,体系的な技術の修得という点でこのような状態は,とりわけ,これから歯周外科を学ぼうとする者をかえって混乱させることになるのではないかとの危惧を抱く.事実,著者らも混乱を経験した一人であった.
 ところが,歯周外科の処置には特別な術式というものはそれほどなく,あくまで基本的な手技,手法を身につけさえすればほとんどすべての状況に対応でき,さらに創意,工夫を加えれば,より的確な処置が期待できるようになるのではないかと考える.
 そのため,本書のタイトルともなっている一昨年の『歯界展望』における連載「一から学ぶ歯周外科の手技」においては,歯周外科処置の基本的な目的に沿って術式を整理したつもりであった.そして,術式の修得を主眼としたこの連載に,新たに術後の経過症例を追加し変化の有無について考察を加えるなどの追加作業を行ったのが本書である.
 本書が,これから歯周外科の手技を修得したいと考えられている歯科医師の方々,あるいはすでに身につけられている多くの方々に多少とも参考となれば幸いである.
 最後に,歯科治療のすべての根幹にわたり根気強く指導していただいているDr.Raymond L.Km,またわれわれの臨床を寛大に見守っていただいた山崎長郎・本多正明両先生および多数のスタッフ,そして歯周外科の基本を教授していただいた Dr.Paul Sochat,連載ならびに本書の編集に尽力していただいた
 医歯薬出版株式会社・柳与志晴氏に心から感謝の意を表します.
 1996年晩秋 茂野啓示 西川義昌