序文と謝辞にかえて
歯科矯正学の教科書を書こうと決めたのは,実に20年以上も前のことである.昭和43年(1968),母校東京医科歯科大学から歯学部が創設されたばかりの新潟大学に赴任し,新しい歯科矯正学の講座を主宰することになったが,新任教授のどなたも同じように,まず教科書に困った.当時,教科書と呼べるものは,わずかに高橋新次郎先生のもの1冊で,榎恵先生監修のものは昭和49年になって発行された.
以後,毎年少しずつ書きはじめ,講義のたびに数枚のものを学生に配ったりしていたが,学園紛争もあり,原稿は遅々として進まなかった.昭和52年(1977),昭和大学に歯学部が併設された折に2度目の新講座を担当し,ますます教科書の必要に迫られることになった.医歯薬出版から,教科書執筆の最初の話があったのもこのころのことだった.
以来,あっという間に十数年がたってしまったが,自分で叩いたワープロ原稿は相当なボリュームにはなっており,自作のワープロ講義録として学生に配布してきたが,写真はスライド上映になるので割愛したし,教科書として世に問う体裁にはならないまま,定年退職を迎えてしまった.
さて,ようやく今回こうした立派な装丁のもとに出版されたとはいえ,もとより本書が現在の歯科矯正学の水準の高さを示すものとはいいがたい.基礎・臨床を通じて歯科矯正学の奥は非常に深く,その日進月歩の速さとレベルには,追いかけても追いかけても,とうてい追いつけるものではない.
教科書を書くことは自分の知識の浅さを公にすることで,つまりある意味で恥をかくことは覚悟しなければならない.それを承知で,なお教科書に取り組もうとさせるものは何だろうかと,自ら問うことが多かった.確かに,この十数年の間に出版された歯科矯正学やその臨床に関する著書は非常に多くなった.まさに昔日の感があるが,ただそのほとんどは特定の技術に限定されたものとか,分担を決められた数名の共同執筆・編集ものであって,必ずしもひとりの著者のconceptを伝えるものではない.
本書に,類書と違うところがあるとすれば,一人の矯正専門医のconceptで貫かれている,という点にあるかもしれない.無論,専門範囲には限界があり,一部当時の教室員に分担を願ったところがあるが,大部分は一人で書き上げたものである.公平は期したものの,当然の帰結として独断と偏見があることはお許し願いたい.ただ基本的な精神として,患者さんのために奉仕する歯科医療の一分野に携わる人間として,どういうふうに歯科矯正学を考えるのがよいか,ということを中心に私はこの本を書いたつもりである.
矯正治療を初めてみる人は,矯正専門医の使う特殊な材料と,wre bendngの手さばきに驚き,そして歯の移動をmagcとしてみるかもしれない.その歯の移動ひとつを取り上げても,歯や歯周組織変化の知識,特殊な素材と最新のtechnology,さらにそれを駆使する技術,それらなしでは矯正治療は進まないことは確かである.しかし,本書はただそうした事項だけを記述し紹介しようとしていない.特に,治療技術は経験を積めばだれにでもマスターすることができる,割合容易な問題である.大切なのは,治療におけるconceptなのである.
いまnformed consentが重視され“説得と合意“などと訳されているが,医療そのものが本来“説明の医療“であるはずである.“説得”のなかに,医師の傲慢さの影がまだうごめいていることを,敏感な患者さんは感じとっている.
医療は,患者さんとの信頼関係で成り立つといわれる.それには“患者さんに尊敬される”ことがまず必要だという.
しかし私は,逆だと思う.一人ひとりの患者さんの立場になって患者さんの気持ちを理解できる能力としての広い教養と,“患者さんを尊敬する”謙虚さで,医療は成り立つものだと思うからである.
つまり,何よりも患者さんを大事にする態度と愛情が,医療の基本だと思う.口唇裂・口蓋裂患者の矯正治療の健保導入も,すべてこの線上の問題であり,これによってやっと歯科矯正治療も“医療としての市民権”を確立した,と私は信じている.
こうした考えは,長い大学教師の時にも守ったつもりであるが,やっと市井の一専門開業医となることができて,ますますこの考えが正しいことを多くの患者さんに教えられた.そんな信条も,本書のいろいろな部分にちりばめたつもりである.
患者さんのための歯科矯正臨床学として本書を読んでいただければ,嬉しい.
今は亡き恩師の故高橋新次郎,藤田恒太郎,滝本和男,Joseph A.Salzmann,Albert A.Dahlbergの諸先生のご薫陶を偲び,また榎恵,三浦不二夫先生ほか多数の諸先輩,そして亡き畏兄Hto Suyehroと私の両親,ならびに内外の同僚諸兄に心からの感謝の意を表したい.
また特に,柴崎好伸教授をはじめとする昭和大学歯学部歯科矯正学教室の新旧全医局員に,ご協力堰E゚て深謝する.この人たちの力なしでは,本書は生まれなかったからである.
1994年初冬 福原達郎
歯科矯正学の教科書を書こうと決めたのは,実に20年以上も前のことである.昭和43年(1968),母校東京医科歯科大学から歯学部が創設されたばかりの新潟大学に赴任し,新しい歯科矯正学の講座を主宰することになったが,新任教授のどなたも同じように,まず教科書に困った.当時,教科書と呼べるものは,わずかに高橋新次郎先生のもの1冊で,榎恵先生監修のものは昭和49年になって発行された.
以後,毎年少しずつ書きはじめ,講義のたびに数枚のものを学生に配ったりしていたが,学園紛争もあり,原稿は遅々として進まなかった.昭和52年(1977),昭和大学に歯学部が併設された折に2度目の新講座を担当し,ますます教科書の必要に迫られることになった.医歯薬出版から,教科書執筆の最初の話があったのもこのころのことだった.
以来,あっという間に十数年がたってしまったが,自分で叩いたワープロ原稿は相当なボリュームにはなっており,自作のワープロ講義録として学生に配布してきたが,写真はスライド上映になるので割愛したし,教科書として世に問う体裁にはならないまま,定年退職を迎えてしまった.
さて,ようやく今回こうした立派な装丁のもとに出版されたとはいえ,もとより本書が現在の歯科矯正学の水準の高さを示すものとはいいがたい.基礎・臨床を通じて歯科矯正学の奥は非常に深く,その日進月歩の速さとレベルには,追いかけても追いかけても,とうてい追いつけるものではない.
教科書を書くことは自分の知識の浅さを公にすることで,つまりある意味で恥をかくことは覚悟しなければならない.それを承知で,なお教科書に取り組もうとさせるものは何だろうかと,自ら問うことが多かった.確かに,この十数年の間に出版された歯科矯正学やその臨床に関する著書は非常に多くなった.まさに昔日の感があるが,ただそのほとんどは特定の技術に限定されたものとか,分担を決められた数名の共同執筆・編集ものであって,必ずしもひとりの著者のconceptを伝えるものではない.
本書に,類書と違うところがあるとすれば,一人の矯正専門医のconceptで貫かれている,という点にあるかもしれない.無論,専門範囲には限界があり,一部当時の教室員に分担を願ったところがあるが,大部分は一人で書き上げたものである.公平は期したものの,当然の帰結として独断と偏見があることはお許し願いたい.ただ基本的な精神として,患者さんのために奉仕する歯科医療の一分野に携わる人間として,どういうふうに歯科矯正学を考えるのがよいか,ということを中心に私はこの本を書いたつもりである.
矯正治療を初めてみる人は,矯正専門医の使う特殊な材料と,wre bendngの手さばきに驚き,そして歯の移動をmagcとしてみるかもしれない.その歯の移動ひとつを取り上げても,歯や歯周組織変化の知識,特殊な素材と最新のtechnology,さらにそれを駆使する技術,それらなしでは矯正治療は進まないことは確かである.しかし,本書はただそうした事項だけを記述し紹介しようとしていない.特に,治療技術は経験を積めばだれにでもマスターすることができる,割合容易な問題である.大切なのは,治療におけるconceptなのである.
いまnformed consentが重視され“説得と合意“などと訳されているが,医療そのものが本来“説明の医療“であるはずである.“説得”のなかに,医師の傲慢さの影がまだうごめいていることを,敏感な患者さんは感じとっている.
医療は,患者さんとの信頼関係で成り立つといわれる.それには“患者さんに尊敬される”ことがまず必要だという.
しかし私は,逆だと思う.一人ひとりの患者さんの立場になって患者さんの気持ちを理解できる能力としての広い教養と,“患者さんを尊敬する”謙虚さで,医療は成り立つものだと思うからである.
つまり,何よりも患者さんを大事にする態度と愛情が,医療の基本だと思う.口唇裂・口蓋裂患者の矯正治療の健保導入も,すべてこの線上の問題であり,これによってやっと歯科矯正治療も“医療としての市民権”を確立した,と私は信じている.
こうした考えは,長い大学教師の時にも守ったつもりであるが,やっと市井の一専門開業医となることができて,ますますこの考えが正しいことを多くの患者さんに教えられた.そんな信条も,本書のいろいろな部分にちりばめたつもりである.
患者さんのための歯科矯正臨床学として本書を読んでいただければ,嬉しい.
今は亡き恩師の故高橋新次郎,藤田恒太郎,滝本和男,Joseph A.Salzmann,Albert A.Dahlbergの諸先生のご薫陶を偲び,また榎恵,三浦不二夫先生ほか多数の諸先輩,そして亡き畏兄Hto Suyehroと私の両親,ならびに内外の同僚諸兄に心からの感謝の意を表したい.
また特に,柴崎好伸教授をはじめとする昭和大学歯学部歯科矯正学教室の新旧全医局員に,ご協力堰E゚て深謝する.この人たちの力なしでは,本書は生まれなかったからである.
1994年初冬 福原達郎
序文と謝辞にかえて……III
第1部 基礎編……1
第1章 歯科矯正学とはなにか……2
I.歯学における歯科矯正学……2
II.歯科矯正学の定義……3
III.歴史的回顧……4
1.20世紀以前/4
2.Angle時代/5
3.第二次世界大戦後/7
4.これからの歯科矯正学界/8
第2章 歯科矯正学の目的……11
I.生理的障害の除去……11
1.咀嚼能力の回復/11
2.構音障害の回復/11
3.う蝕の予防/13
4.歯周疾患の防止/13
5.顎発育の促進/13
II.心理的障害の除去……14
第3章 成長論……16
総論
I.成長研究の意義……17
II.成長研究の方法……17
1.生体計測学的方法,頭蓋計測学/17
2.生体染色法/18
3.ラジオアイソトープ/18
4.メタル・インプラント法/18
5.頭部X線規格写真計測法/20
III.成長のタイプ……20
IV.全身の成長変化……22
1.体重/22
2.身長/24
V.平均成長と個成長……24
VI.相対成長の考え方……27
VII.顎顔面頭蓋の相対成長研究……30
各論
I.口腔と顔面の発生……34
1.口蓋の形成/34
2.顎骨の発生/35
3.歯堤の出現/36
4.胎児の顔面の成長過程/36
II.骨の成長……37
1.軟骨内骨形成/37
2.膜内骨形成/37
III.脳頭蓋の成長発育の特徴……37
1.縫合/38
2.泉門/38
3.頭蓋冠の成長過程/39
4.頭蓋冠の形/39
IV.頭蓋底の成長……40
V.顔面頭蓋の成長……42
1.上顎骨の成長/42
2.下顎骨の成長/44
3.咬合力と顔面頭蓋の形態との関係/47
VI.歯列の成長……47
1.歯の発育の臨床的評価/47
2.歯列弓の成長/50
第4章 咬合論……56
I.咬合概説……56
1.咬合に関する考え方の変遷/56
2.咬合の定義/57
3.下顎位/57
4.下顎運動/60
II.正常咬合……64
1.乳歯列における正常咬合/65
2.混合歯列期にみられる正常像/66
3.永久歯列の正常咬合/69
4.正常咬合の種類/72
III.咬合異常・不正咬合……73
1.不正咬合/73
2.咬合異常/79
3.咬合異常・不正咬合の分類/80
第5章 原因論……88
I.先天的原因……88
1.遺伝によるもの/88
2.遺伝的傾向のある先天異常/97
3.染色体異常による症候群/105
4.非遺伝的なもの/106
II.後天的原因……106
1.全身的原因/107
2.局所的原因/108
第6章 矯正力と組織変化……118
I.矯正力とは……118
1.生理的な歯の移動/118
2.矯正学的な歯の移動/118
3.矯正力の適用方法/118
4.矯正力の強さと“至適な矯正力”/119
5.歯の移動の様式/119
II.矯正力に伴う組織変化……121
1.歯根膜と歯槽骨の変化/122
2.顎の移動と組織変化/125
III.歯根の吸収と短小歯根……129
1.矯正治療中の歯根吸収/129
2.いわゆる術前歯根吸収/131
3.歯根吸収に対する処置/132
第7章 固定法……135
I.固定の部位による分類……135
II.抵抗の性質による分類……136
III.抜歯空隙と固定の程度……136
IV.差働矯正力……137
第2部 症例分析・実習編……141
第8章 症例分析(1)--一般診査と模型計測……142
I.矯正臨床における症例分析の手順……142
1.一般的診査/143
2.臨床的資料の作製と収集/145
II.Simonの顎態模型……148
1.Simonの三平面/149
2.顔面規格写真/149
3.ポンの指数/150
4.Simonの眼窩犬歯法則/150
III.模型計測法……150
1.模型観察/150
2.模型計測/153
3.Arch length discrepancyの計測法/153
第9章 症例分析(2)--頭部X線規格写真計測学……156
I.セファロメトリックスの臨床応用上の問題点……156
1.基礎となったサンプルの問題/157
2.平均値のもつ意味/157
3.治療上のゴールを示さない/157
4.立体構造と平面分析の問題/157
5.計測上の誤差の問題/158
6.各数値の相対性/158
II.頭部X線規格写真の撮影と幾何学的条件……158
1.撮影装置/158
2.幾何学的条件/159
III.頭部X線規格写真計測法とその実際……159
IV.基準点の設定……160
V.基準線・基準平面……161
VI.計測方法……162
VII.セファログラム分析法……163
1.ダウンス法/163
2.Riedel法/164
3.Tweed法/165
4.Williamsのfacial diagramと坂本のprofilogram/166
5.セファログラムによる機能分析/166
6.セファログラムによる成長分析/167
第10章 治療目標と治療計画の立て方……170
I.定義および注意点……170
1.定義/170
2.治療目標の設定上の注意/171
3.治療計画決定についての注意/171
4.矯正力の測定/172
II.治療計画の実習例……172
症例1/172
症例2/176
症例3/179
症例4/183
第11章 矯正治療前準備と器具……187
I.矯正診断の前準備……187
II.矯正治療の前準備……187
1.ブラッシング指導とう蝕治療/187
2.矯正治療の進行を妨げると思われる原因の除去/188
3.矯正治療についての説明/188
III.器具……188
1.診査用器具/188
2.バンド関係用器具/188
3.線屈曲用鉗子/189
4.結紮用・歯冠分離用鉗子/191
5.線切断用鉗子/191
6.マルチブラケット関係/192
7.技工用器具/193
8.計測用器具/195
9.その他/195
IV.消毒法……195
1.術者の手指の消毒/195
2.一般外来患者に対して/196
3.感染症患者に対して/196
第12章 矯正装置とその概要……197
I.固定式装置……197
1.唇側弧線装置,唇側歯槽部弧線/197
2.舌側弧線装置/198
3.固定式拡大装置/199
4.双線弧線装置/199
5.マルチブラケット装置/201
II.可撤式装置……207
1.床装置/207
2.顎外固定装置/212
第13章 矯正材料……217
I.金属材料……217
1.線材料/217
2.バンド(帯環)材料/218
3.ブラケット類/218
4.チューブ/219
II.有機材料……219
1.エラスティック/219
2.ボンディング材/220
3.ポジショナー材/221
4.レジン/221
5.印象材/222
III.矯正用線材料の力学……222
1.ワイヤーの力学/222
2.ループの力学/224
第3部 治療編……227
第14章 抜歯論……228
I.1911年の抜歯論争……228
II.Lundstro¨mのapical base theoryと抜歯論の台頭……228
III.第一小臼歯の抜去……230
IV.小臼歯4本抜去の根拠と技術的問題(ブロック・スライディング・コンセプト)……231
1.4 本抜去の目標/231
2.抜歯空隙の閉鎖と歯群移動/231
3.基本的な力系,ブロック・スライディング・コンセプト/231
4.抜去小臼歯の選択基準/233
V.その他の歯の抜去……235
1.第二大臼歯の抜去/235
2.第三大臼歯の抜去/235
3.下顎切歯の抜去/237
4.8 本抜歯/237
5.第一大臼歯の抜去/239
6.上顎犬歯の抜去/239
VI.連続抜去法……239
VII.抜歯基準……241
1.Tweedの抜歯基準/241
2.Steinerの抜歯基準/243
第15章 保 定……247
I.保定の必要性……247
II.保定の種類……248
1.自然保定/248
2.器械的保定/248
3.外科的保定/249
III.保定装置の条件……249
IV.保定装置の種類……249
1.可撤式装置/249
2.固定式装置/251
V.保定に要する期間と問題点……252
VI.症例別にみた保定の必要性……254
1.保定を必要としないもの/254
2.永続的ないし半永続的に保定を必要とするもの/254
3.種々の保定期間を必要とするもの/254
4.保定装置の使用をいつやめるか/254
VII.真性下顎前突の外科的矯正治療後の保定……255
第16章 矯正治療の実際……258
治験例……259
1.叢生/259
2.上顎前突/269
3.反対咬合/279
4.開咬/288
第17章 咬合異常の予防と抑制的早期治療……294
I.咬合異常の予防……294
1.全身あるいは口腔外の留意点/294
2.口腔内の留意点/294
II.予防処置の方法……295
III.抑制的早期矯正治療……295
IV.治療目標と治療方法……296
1.異常な顎関係と成長の抑制の方法/296
2.異常な早期接触/296
3.習癖による咬合異常/296
4.正中離開/296
5.萌出余地不足による排列異常/296
第18章 限局矯正と成人矯正……298
I.限局矯正……298
1.初心者にできる限局矯正/298
2.初心者の失敗しやすい矯正例/301
3.中級者にできる限局矯正/302
II.成人矯正……303
1.若年者の矯正治療との相違点/304
2.成人矯正における一般的注意事項/305
第19章 チーム医療と歯科矯正治療(1)--外科矯正,その他……308
“チームアプローチ”成功の鍵……308
I.外科矯正……308
1.顎変形症などの外科矯正/308
2.その他の外科矯正/316
II.補綴前矯正,その他……316
第20章 チーム医療と歯科矯正治療(2)--口蓋裂に起因する咬合異常の矯正治療……319
I.口唇口蓋形成術後の上顎の変化……319
1.口唇(顎)裂/320
2.口蓋裂,単独口蓋裂/320
3.片側性口唇口蓋裂/321
4.両側性口唇口蓋裂/322
II.口唇口蓋裂の咬合異常……323
1.上顎骨の発育不全/323
2.上顎歯槽部の変形/325
3.歯の異常/325
4.下顎の異常/325
III.口蓋裂児の歯・顎・顔面・頭蓋の特徴……326
IV.治療方針……326
1.上顎の拡大/327
2.残孔の処理/328
3.前歯部反対咬合の改善/328
V.治療開始の時期……329
VI.段階的集中治療方式……330
VII.口蓋裂矯正治療の健保導入と“社会医療”的意義……333
第21章 顎関節症の問題……336
I.病名……336
II.顎関節の解剖……338
III.症状……339
1.疼痛/339
2.関節雑音/340
3.開口障害,顎運動障害/341
4.その他の症状/342
IV.病因論……342
V.診査,診断……343
1.診査/343
2.診断/345
VI.治療……345
1.スプリント療法/346
2.咬合の治療/346
第22章 診療過誤(誤診・誤療)と診療事故--初心者の起こしやすい失敗例・成功の秘訣はなにか……351
I.誤診・誤療……351
1.分析資料の不備によるもの/351
2.分析資料からの判断の誤り/352
3.治療方針の選択の誤り/353
4.装置選択の誤り/354
5.装置使用法の誤り/354
II.診療事故……354
1.矯正装置の誤嚥/354
2.矯正装置の着脱時に起こる軟組織および硬組織への損傷/355
3.矯正装置による軟組織への損傷/355
4.矯正治療を原因とした歯根吸収,顎関節症など/355
5.口腔衛生管理の悪さより起こるう蝕・歯肉炎/356
6.初心者の起こしやすい失敗例/356
III.成功の秘訣はなにか……359
和文索引……361
欧文索引……367
人名索引……371
第1部 基礎編……1
第1章 歯科矯正学とはなにか……2
I.歯学における歯科矯正学……2
II.歯科矯正学の定義……3
III.歴史的回顧……4
1.20世紀以前/4
2.Angle時代/5
3.第二次世界大戦後/7
4.これからの歯科矯正学界/8
第2章 歯科矯正学の目的……11
I.生理的障害の除去……11
1.咀嚼能力の回復/11
2.構音障害の回復/11
3.う蝕の予防/13
4.歯周疾患の防止/13
5.顎発育の促進/13
II.心理的障害の除去……14
第3章 成長論……16
総論
I.成長研究の意義……17
II.成長研究の方法……17
1.生体計測学的方法,頭蓋計測学/17
2.生体染色法/18
3.ラジオアイソトープ/18
4.メタル・インプラント法/18
5.頭部X線規格写真計測法/20
III.成長のタイプ……20
IV.全身の成長変化……22
1.体重/22
2.身長/24
V.平均成長と個成長……24
VI.相対成長の考え方……27
VII.顎顔面頭蓋の相対成長研究……30
各論
I.口腔と顔面の発生……34
1.口蓋の形成/34
2.顎骨の発生/35
3.歯堤の出現/36
4.胎児の顔面の成長過程/36
II.骨の成長……37
1.軟骨内骨形成/37
2.膜内骨形成/37
III.脳頭蓋の成長発育の特徴……37
1.縫合/38
2.泉門/38
3.頭蓋冠の成長過程/39
4.頭蓋冠の形/39
IV.頭蓋底の成長……40
V.顔面頭蓋の成長……42
1.上顎骨の成長/42
2.下顎骨の成長/44
3.咬合力と顔面頭蓋の形態との関係/47
VI.歯列の成長……47
1.歯の発育の臨床的評価/47
2.歯列弓の成長/50
第4章 咬合論……56
I.咬合概説……56
1.咬合に関する考え方の変遷/56
2.咬合の定義/57
3.下顎位/57
4.下顎運動/60
II.正常咬合……64
1.乳歯列における正常咬合/65
2.混合歯列期にみられる正常像/66
3.永久歯列の正常咬合/69
4.正常咬合の種類/72
III.咬合異常・不正咬合……73
1.不正咬合/73
2.咬合異常/79
3.咬合異常・不正咬合の分類/80
第5章 原因論……88
I.先天的原因……88
1.遺伝によるもの/88
2.遺伝的傾向のある先天異常/97
3.染色体異常による症候群/105
4.非遺伝的なもの/106
II.後天的原因……106
1.全身的原因/107
2.局所的原因/108
第6章 矯正力と組織変化……118
I.矯正力とは……118
1.生理的な歯の移動/118
2.矯正学的な歯の移動/118
3.矯正力の適用方法/118
4.矯正力の強さと“至適な矯正力”/119
5.歯の移動の様式/119
II.矯正力に伴う組織変化……121
1.歯根膜と歯槽骨の変化/122
2.顎の移動と組織変化/125
III.歯根の吸収と短小歯根……129
1.矯正治療中の歯根吸収/129
2.いわゆる術前歯根吸収/131
3.歯根吸収に対する処置/132
第7章 固定法……135
I.固定の部位による分類……135
II.抵抗の性質による分類……136
III.抜歯空隙と固定の程度……136
IV.差働矯正力……137
第2部 症例分析・実習編……141
第8章 症例分析(1)--一般診査と模型計測……142
I.矯正臨床における症例分析の手順……142
1.一般的診査/143
2.臨床的資料の作製と収集/145
II.Simonの顎態模型……148
1.Simonの三平面/149
2.顔面規格写真/149
3.ポンの指数/150
4.Simonの眼窩犬歯法則/150
III.模型計測法……150
1.模型観察/150
2.模型計測/153
3.Arch length discrepancyの計測法/153
第9章 症例分析(2)--頭部X線規格写真計測学……156
I.セファロメトリックスの臨床応用上の問題点……156
1.基礎となったサンプルの問題/157
2.平均値のもつ意味/157
3.治療上のゴールを示さない/157
4.立体構造と平面分析の問題/157
5.計測上の誤差の問題/158
6.各数値の相対性/158
II.頭部X線規格写真の撮影と幾何学的条件……158
1.撮影装置/158
2.幾何学的条件/159
III.頭部X線規格写真計測法とその実際……159
IV.基準点の設定……160
V.基準線・基準平面……161
VI.計測方法……162
VII.セファログラム分析法……163
1.ダウンス法/163
2.Riedel法/164
3.Tweed法/165
4.Williamsのfacial diagramと坂本のprofilogram/166
5.セファログラムによる機能分析/166
6.セファログラムによる成長分析/167
第10章 治療目標と治療計画の立て方……170
I.定義および注意点……170
1.定義/170
2.治療目標の設定上の注意/171
3.治療計画決定についての注意/171
4.矯正力の測定/172
II.治療計画の実習例……172
症例1/172
症例2/176
症例3/179
症例4/183
第11章 矯正治療前準備と器具……187
I.矯正診断の前準備……187
II.矯正治療の前準備……187
1.ブラッシング指導とう蝕治療/187
2.矯正治療の進行を妨げると思われる原因の除去/188
3.矯正治療についての説明/188
III.器具……188
1.診査用器具/188
2.バンド関係用器具/188
3.線屈曲用鉗子/189
4.結紮用・歯冠分離用鉗子/191
5.線切断用鉗子/191
6.マルチブラケット関係/192
7.技工用器具/193
8.計測用器具/195
9.その他/195
IV.消毒法……195
1.術者の手指の消毒/195
2.一般外来患者に対して/196
3.感染症患者に対して/196
第12章 矯正装置とその概要……197
I.固定式装置……197
1.唇側弧線装置,唇側歯槽部弧線/197
2.舌側弧線装置/198
3.固定式拡大装置/199
4.双線弧線装置/199
5.マルチブラケット装置/201
II.可撤式装置……207
1.床装置/207
2.顎外固定装置/212
第13章 矯正材料……217
I.金属材料……217
1.線材料/217
2.バンド(帯環)材料/218
3.ブラケット類/218
4.チューブ/219
II.有機材料……219
1.エラスティック/219
2.ボンディング材/220
3.ポジショナー材/221
4.レジン/221
5.印象材/222
III.矯正用線材料の力学……222
1.ワイヤーの力学/222
2.ループの力学/224
第3部 治療編……227
第14章 抜歯論……228
I.1911年の抜歯論争……228
II.Lundstro¨mのapical base theoryと抜歯論の台頭……228
III.第一小臼歯の抜去……230
IV.小臼歯4本抜去の根拠と技術的問題(ブロック・スライディング・コンセプト)……231
1.4 本抜去の目標/231
2.抜歯空隙の閉鎖と歯群移動/231
3.基本的な力系,ブロック・スライディング・コンセプト/231
4.抜去小臼歯の選択基準/233
V.その他の歯の抜去……235
1.第二大臼歯の抜去/235
2.第三大臼歯の抜去/235
3.下顎切歯の抜去/237
4.8 本抜歯/237
5.第一大臼歯の抜去/239
6.上顎犬歯の抜去/239
VI.連続抜去法……239
VII.抜歯基準……241
1.Tweedの抜歯基準/241
2.Steinerの抜歯基準/243
第15章 保 定……247
I.保定の必要性……247
II.保定の種類……248
1.自然保定/248
2.器械的保定/248
3.外科的保定/249
III.保定装置の条件……249
IV.保定装置の種類……249
1.可撤式装置/249
2.固定式装置/251
V.保定に要する期間と問題点……252
VI.症例別にみた保定の必要性……254
1.保定を必要としないもの/254
2.永続的ないし半永続的に保定を必要とするもの/254
3.種々の保定期間を必要とするもの/254
4.保定装置の使用をいつやめるか/254
VII.真性下顎前突の外科的矯正治療後の保定……255
第16章 矯正治療の実際……258
治験例……259
1.叢生/259
2.上顎前突/269
3.反対咬合/279
4.開咬/288
第17章 咬合異常の予防と抑制的早期治療……294
I.咬合異常の予防……294
1.全身あるいは口腔外の留意点/294
2.口腔内の留意点/294
II.予防処置の方法……295
III.抑制的早期矯正治療……295
IV.治療目標と治療方法……296
1.異常な顎関係と成長の抑制の方法/296
2.異常な早期接触/296
3.習癖による咬合異常/296
4.正中離開/296
5.萌出余地不足による排列異常/296
第18章 限局矯正と成人矯正……298
I.限局矯正……298
1.初心者にできる限局矯正/298
2.初心者の失敗しやすい矯正例/301
3.中級者にできる限局矯正/302
II.成人矯正……303
1.若年者の矯正治療との相違点/304
2.成人矯正における一般的注意事項/305
第19章 チーム医療と歯科矯正治療(1)--外科矯正,その他……308
“チームアプローチ”成功の鍵……308
I.外科矯正……308
1.顎変形症などの外科矯正/308
2.その他の外科矯正/316
II.補綴前矯正,その他……316
第20章 チーム医療と歯科矯正治療(2)--口蓋裂に起因する咬合異常の矯正治療……319
I.口唇口蓋形成術後の上顎の変化……319
1.口唇(顎)裂/320
2.口蓋裂,単独口蓋裂/320
3.片側性口唇口蓋裂/321
4.両側性口唇口蓋裂/322
II.口唇口蓋裂の咬合異常……323
1.上顎骨の発育不全/323
2.上顎歯槽部の変形/325
3.歯の異常/325
4.下顎の異常/325
III.口蓋裂児の歯・顎・顔面・頭蓋の特徴……326
IV.治療方針……326
1.上顎の拡大/327
2.残孔の処理/328
3.前歯部反対咬合の改善/328
V.治療開始の時期……329
VI.段階的集中治療方式……330
VII.口蓋裂矯正治療の健保導入と“社会医療”的意義……333
第21章 顎関節症の問題……336
I.病名……336
II.顎関節の解剖……338
III.症状……339
1.疼痛/339
2.関節雑音/340
3.開口障害,顎運動障害/341
4.その他の症状/342
IV.病因論……342
V.診査,診断……343
1.診査/343
2.診断/345
VI.治療……345
1.スプリント療法/346
2.咬合の治療/346
第22章 診療過誤(誤診・誤療)と診療事故--初心者の起こしやすい失敗例・成功の秘訣はなにか……351
I.誤診・誤療……351
1.分析資料の不備によるもの/351
2.分析資料からの判断の誤り/352
3.治療方針の選択の誤り/353
4.装置選択の誤り/354
5.装置使用法の誤り/354
II.診療事故……354
1.矯正装置の誤嚥/354
2.矯正装置の着脱時に起こる軟組織および硬組織への損傷/355
3.矯正装置による軟組織への損傷/355
4.矯正治療を原因とした歯根吸収,顎関節症など/355
5.口腔衛生管理の悪さより起こるう蝕・歯肉炎/356
6.初心者の起こしやすい失敗例/356
III.成功の秘訣はなにか……359
和文索引……361
欧文索引……367
人名索引……371