やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第3版 発刊にあたって
 日本成人矯正歯科学会は,現在の徳仁(なるひと)天皇のご成婚の年,1993年に発足し,昨年30周年を迎えました.
 国民への医療提供の面で見ますと,1948年に歯科が標榜可能な診療名となり,1961年には国民皆保険制度が実施されました.その後,1978年の医療法改正により美容外科,呼吸器外科,心臓血管外科,小児外科,矯正歯科,小児歯科の標榜が可能となり,矯正歯科が医療として国民に知られるようになってきました.そして,私が歯科大学を卒業し,札幌医科大学に勤務した当時,毎日新聞北海道発行所報道部がまとめた『谷間の口がい裂児─この子らに健保を』が発行され,これがきっかけとなり1982年に口唇口蓋裂の矯正歯科治療の保険導入が開始されました.
 日本成人矯正歯科学会の発足当時,矯正歯科治療はおもに子どもが対象であり,成人の矯正歯科治療は難しい治療とされていました.そこで,われわれ矯正歯科医が勉強する場として当会が発足した経緯があります.その後,国民へのよりよい矯正歯科治療の提供には,矯正歯科の知識の普及と適切な指導ができる人材の養成が必要とのことで,この目的のために,歯並びコーディネーター研修会および認定制度が2007年に設立されました.今年で16年目を迎えますが,COVID-19の影響により一度中止された以外は毎年開催され,現在では2000名を超える「歯並びコーディネーター」が誕生しております.
 本書は,歯並びコーディネーター資格審査試験を受講する方のテキストとして2008年にデンタルダイヤモンド社から発行された『歯並びコーディネーター・白い美しい歯並びは美と健康のシンボルです』が元となっております.その後,2015年に『やさしくわかる矯正歯科治療 歯並びコーディネーター入門書』(医歯薬出版)として生まれ変わり,今回は内容を精査し,さらに最新の情報を提供するため,「第3版」を出版することとなりました.
 この認定制度は日本成人矯正歯科学会の会員だけでなく非会員の方々も対象とし,歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士のほか,意欲のある歯科助手,受付などのコデンタルスタッフも取得できます.よくかめる機能的なかみ合わせは人々の健康を守り,また美しい歯並び,口もとは自信にあふれたさわやかな笑顔をもたらします.本研修会を受講し,資格を取得され,われわれと一緒に矯正歯科の国民への啓蒙と,健康増進の働きかけを行っていただけることを期待しております.
 最後に,歯並びコーディネーター委員会の板倉醸幸先生(故人),石野善男先生,眞泉伊都夫先生,椿 丈二先生はじめ,委員の先生方のご協力により本制度が順調に発展していますことを深く感謝いたします.
 2023年夏
 日本成人矯正歯科学会
 理事長 村井 茂


第2版 発刊にあたって
 日本成人矯正歯科学会は佐藤元彦先生が中心となり,矯正歯科臨床医を主体とした学会を創りたいとの趣旨で1993年に設立されました.その後,2005年,内閣府の下に全国的な学会として特定非営利活動法人となり,当学会のモットーである“ 開かれた学会” の理念実現のため,理想的チーム歯科医療の実践を試みて来ました.
 この理想的チーム歯科医療の実現のため,歯並びコーディネーター認定制度をはじめとして,認定矯正歯科衛生士および認定医研修プログラムが実施され,武内 豊前理事長のご尽力により認定矯正歯科技工士の制度も設立することができました.これらの認定制度の拡充に伴い,当学会は急激な会員数の増加とともに発展してまいりました.
 開かれた学会としての最も重要な使命は,国民に対する正しい矯正歯科(よい歯並び,かみ合わせ)の知識の啓蒙と,正しい知識を普及する人材の育成です.この学会としての使命実現のため,2007年,上記のとおり歯並びコーディネーター研修会および歯並びコーディネーター認定制度が設立されました.この研修会受講の対象者は,国民に対する正しい矯正歯科の知識啓蒙の使命をもつ歯科医師,歯科衛生士,歯科技工士,そして歯科助手,受付などのスタッフを含むいわゆる「コ・デンタル」です.さらに矯正歯科に興味をもつ一般の方々も受講可能で,研修会後に実施される認定審査に合格すると「歯並びコーディネーター」の認定証が授与されます.
 歯並びコーディネーター研修会スタートにあたり,正しい矯正歯科の知識を学ぶための適当な教材がなかったため,歯並びコーディネーター委員会が中心となり「歯並びコーディネーター・白い美しい歯並びは美と健康のシンボルです」(デンタルダイヤモンド社,2008年)を出版しました.その後2015年に内容の刷新を図り,医歯薬出版株式会社より「やさしくわかる矯正歯科治療―歯並びコーディネーター入門書」を出版しましたが,さらに最新の情報を提供するため,今回,「第2版」を出版することになった次第です.
 歯並びコーディネーター委員会歴代委員長の板倉醸幸先生(故人),石野善男先生,椿 丈二先生をはじめ委員の先生方のご協力によって歯並びコーディネーター認定制度が順調に発展した結果,2019年3月時点で約1,700名の歯並びコーディネーターが誕生し,矯正歯科治療の重要性を国民に広く啓蒙する使命をもって全国で活躍しています.
 最後に,歯並びコーディネーター研修会の計画初期から参画され,第1回から講師を勤めていただいた故人の板倉醸幸先生,酒井信夫先生に感謝をこめて本書を捧げます.
 2019年秋
 日本成人矯正歯科学会
 理事長 小谷田 仁


発刊にあたって
 日本成人矯正歯科学会は1993年6月27日に産声をあげて以来,早いもので既に20年余の歳月が経過し,まさに成人矯正歯科学会となりました.この間,1994年には『日本成人矯正歯科学会雑誌』を創刊し,1996年には日本学術会議の登録学術団体に認定され,2005年には特定非営利活動法人として法人化し,2006年には矯正歯科専門医制度を発足いたしました.
 2007年にはよい歯並び・よいかみ合わせの知識の普及と適切な指導ができる人材の養成を目的に歯並びコーディネーター研修会および歯並びコーディネーター認定制度を開始いたしました.よくかめる機能的なかみ合わせは人々の健康を守り,また,美しい歯並び,口元は自信にあふれたさわやかな笑顔をもたらします.歯並びをよくするのに年齢は関係ありません.子どもから,成人,高齢者でも可能です.この研修会は日本成人矯正歯科学会の会員だけではなく非会員の方々も対象とし,歯科医師,歯科衛生士,歯科技工士などの歯科医療有資格者,歯科助手,受付などのスタッフ,さらに歯並びやかみ合わせに関心をもつ一般の方々も受講することができ,研修会後に行われる認定審査に合格すると認定証が授与され「歯並びコーディネーター」の資格を取得することができます.
 歯並びコーディネーター認定制度は歴代の歯並びコーディネーター委員会委員長の板倉醸幸先生(故人),石野善男先生,椿 丈二先生をはじめ委員の先生方のご尽力によって順調に発展し,2015年9月までに約2,150名の歯並びコーディネーターが誕生し,矯正歯科治療の伝道者として歯並び・かみ合わせの大切さ,矯正歯科治療の重要性を啓蒙する使命をもって全国で活躍しています.また,「E-ライン・ビューティフル大賞」授賞式,矯正歯科月間などさまざまな広報,啓蒙活動も功を奏し,成人でも矯正歯科治療を受ける人が急速に増えています.
 さて,本書の前身は,『歯並びコーディネーター―白い美しい歯並びは美と健康のシンボルです―』(デンタルダイヤモンド社,2008年)になりますが,最新の情報を提供するために内容を精査,検討してこのたび新たに出版する運びとなりました.本書の出版にあたりご尽力頂いた医歯薬出版の編集担当者に深く感謝いたします.
 最後に,歯並びコーディネーター研修会の構想の段階から参画され,第1回から講師をお勤めいただいた故人の板倉醸幸先生,酒井信夫先生に本書を捧げます.
 2015年秋
 日本成人矯正歯科学会
 理事長 武内 豊
第1章 歯並びに関する基礎知識
 (重枝 徹)
 はじめに
 乳歯列の形成
 混合歯列の形成
 永久歯列の形成
 正しい歯並びとは
 悪い歯並びの原因
 不正咬合の分類と種類
 まとめ
 column 固定の考え方と歯科矯正用アンカースクリュー
 column 歯科用CTと矯正歯科治療
第2章 知っておくべき矯正歯科治療の流れ
 (佐藤元彦)
 はじめに
 矯正初診相談
 精密検査
 検査結果の説明
 矯正歯科治療の開始
 矯正料金に含まれるもの
 支払いのシステム
 column 矯正歯科治療の医療費控除について
 子どもの矯正と大人の矯正の違い
 矯正歯科治療中に患者さんがすべきこと
 健康医療における矯正歯科治療
 おわりに
第3章 不正咬合の原因と口腔習癖
 (石野善男)
 口元の品格
 口腔軟組織
 不正咬合の原因と口腔習癖
 口腔習癖が及ぼす影響
 口腔習癖の種類
 その他の口腔習癖
 MFTによる対処
 MFTにおける機能訓練
 MFTの歯科臨床における応用
 column 歯ぎしり(ブラキシズム)
 おわりに
第4章 矯正歯科治療の開始時期
 (椿 丈二)
 はじめに
 矯正歯科治療の種類と時期
 医療面接
 インフォームドコンセント
 各歯列期の不正咬合と治療の種類
 矯正歯科治療における成長発育
 成人の矯正歯科治療
 おわりに
第5章 不正咬合はなぜよくないの? 矯正歯科治療の役割
 (武内 豊)
 はじめに
 歯,口の役割
 不正咬合がもたらす障害と矯正歯科治療
 まとめ
第6章 矯正歯科治療の目的と矯正装置
 (小谷田 仁)
 はじめに
 矯正歯科治療の目標
 矯正歯科治療の現代,将来の課題と目的
 矯正歯科治療の分類
 矯正装置の種類
 成人矯正における矯正装置(審美的矯正装置)
 column エッジワイズ法
 column ストレートワイヤー法
 保定装置
 column 現在のマウスピース型矯正装置による治療の問題点
第7章 どうして歯が動くの? 歯の移動のメカニクスと保定
 (今村隆一)
 はじめに
 矯正歯科治療とメカニクス
 歯の移動のメカニクス
 矯正歯科治療における歯の移動
 器械的な矯正力のためのツール
 機能的な矯正力のためのツール
 保定
 おわりに
第8章 矯正歯科治療において知っておくべきポイント
 (相澤一郎)
 はじめに
 矯正歯科治療におけるアプローチの方法
 矯正歯科治療のみによる症例
 補綴処置を伴った症例
 治療中の偶発事項
 治療期間
 抜歯の有無
 インフォームドコンセント
 E-ライン
 おわりに
第9章 矯正歯科治療における口腔衛生
 (相澤一郎・椿 丈二)
 矯正歯科治療中の口腔清掃
 唾液の働き
 染め出し
 column 矯正歯科治療中の感染症対策

 本書のあとがきにかえて(佐藤元彦)
 索引