やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに

 「百聞は一見に如かず」というよく知られた古い諺があるが,正しく理解するためには,話や文章だけでは不十分なため,図や写真などを用いてさらに理解を深めようとすることが日常広く行われている.とくに,教育手段として視聴覚教育が盛んになったのもこのためである.以前,この点に着目して,医歯薬出版株式会社が歯科写真文庫を刊行しはじめたのは1958年である.本書の初版が1959年であるので,約34年も前のことである.
 その後,歯科医学の進歩は著しく,歯科放射線の分野においても同様で,そのなかでとくに注目すべきものとしてパノラマX線撮影装置の出現があげられる.歯科用X線装置も高性能となって,ほとんどの歯科診療所に普及し,また大型X線撮影装置や特殊撮影装置も続々と登場し,X線の撮影は質的にも飛躍的な発展を遂げた.
 一方,X線フィルムも,高感度で品質も向上して撮影枚数が増大し,歯科における年間撮影枚数は9,000万枚以上に達する現状である.したがって,1診療所におけるX線フィルムの現像処理の枚数も増加して,現在行われているインスタント現像に加えて,同一現像条件下で多くのフィルム枚数を処理し,均一なX線写真を得るための各種の自動現像処理機も出現している.
 このような状況から,以前からの改訂準備のための資料をつけ加えて1983年に第2版として発行した.本書には登場する人物が多いが,これは何年にもわたって撮影した資料を用いたためである.
 第2版での改訂は,パノラマX線撮影法とX線フィルムの現像処理が主であるが,第3版では,その後,約10年を経て医療法施行規則の変更や放射線関連機器の発達などにより今回の改訂となった.理解を深めるためには写真を多くすることは当然であるが,写真は平面的で立体感に乏しいので,2方向以上の理解図や写真を加えることによって補うことができる.しかし,不十分な点もあるので,そのときは成書を参照していただきたい.その反対に,写真や図を成書の参考に利用していただければ幸いである.
 最後に,写真の撮影を担当した愛知学院大学歯学部写真室の松井隆夫技師,西川明剛技師,また今回の改訂では,種々ご協力いただいた本講座の岡野恒一講師に心から謝意を表する次第である.
 1993年2月 著者
1 口内X線撮影法… 4
 1)歯科用X線装置… 4
 2)歯科用X線フィルム… 7
 3)頭部固定法…10
 4)X線フィルムの用い方と保持法…11
 5)X線投影法…14
  A 正放線投影法/14
  B 二等分(面)法/14
  C 歯槽頂(歯頚部)投影法/15
  D 平行法/15
  E 咬翼法/24
  F 咬合法/25
  G 口内法の特殊撮影法/26
2 口外X線撮影法…27
 1)口外法X線フィルム…27
 2)口外撮影に用いられる用具…27
 3)口外撮影法…28
  A 下顎骨側斜位の撮影/28
  B 顎関節側面の撮影/30
  C 顎関節正面の撮影/32
3 大型X線装置による頭顔部の撮影法…34
 1)大型X線装置…34
 2)顔面正面像の撮影…35
 3)ウォーターズ法…36
 4)顔面側面像の撮影…37
 5)タウン法…37
 6)軸方向の撮影…37
4 パノラマX線撮影法…38
 1)回転パノラマ撮影法…38
 2)口腔内線源方式…40
5 頭部X線規格撮影法…42
6 特殊撮影法…43
7 放射線防護と管理…45
8 現像処理…48
9 口内法全顎X線写真の整理…53
10 X線写真の観察法…54