やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 2000年当初日本に「歯科用CAD/CAMシステム」が導入され,歯科技工領域において利用されるようになり,これまでのアナログ的な経験則に基づいた歯科技工作業からコンピュータ支援による設計,機械加工に大きく変革した.日本では,経験的なアナログ技工が優れていたために歯科用CAD/CAMの導入,発展は海外に比べて遅れていたが,歯科診療における脱メタル修復の機運の高まりと相まって,高性能なジルコニアやCAD/CAM冠用レジンブロックの開発や口腔内スキャナーの活用などによって一気に普及してきた.2010年にこれからの修復物の製作には歯科用CAD/CAMシステムは欠かせないツールとなることを予測し,『日本CAD/CAM歯科学会』を設立したが,その後,画像診断装置や矯正治療のデジタル化などが急速に進むことから,2014年には『日本デジタル歯科学会』に改称し,現在では1,000名超える会員数にまで発展した.最近ではオンライン資格認証,電子カルテ,レセプトオンライン請求などの医療情報のIT化と共に,令和6年の社会保険診療報酬改定において国の医療DXの推進に基づいて保険診療においてもデジタル化による歯科医院と歯科技工所との情報連携,光学印象などが導入された.現在,そして近未来において歯科診療におけるデジタル化は避けられないプロセスであり,待ったなしの状況である.
 そこで,歯科医療に携わるスタッフにデジタル歯科連携のあり方について少しでも有用な情報を発信するために本書を企画した.これまで掲載されてきた歯科用CAD/CAMシステムにおける治療術式や材料などの最新情報はもとより,デジタルツールを活かした歯科医院や歯科技工所の取り組み方,連携の仕方,歯科用CAD/CAMシステムの周辺ツールの活用,さらには,歯科医療職種のデジタル教育の取り組み方について目次立てを行った.
 歯科医療において,初診時から修復物の装着,さらにはリコール時における評価までデジタル機器は多くのシチュエーションで活用され,データとして保存,情報連携が可能である.また,歯科健診においてもデジタル機器の活用によって,効率的,高精度に情報収集が可能で,今後の活用が期待される.
 本書が日常臨床でデジタル化について不安な思いをされておられる方やデジタルツールに精通されておられる諸兄において少しでも有意義に活用されることを祈念しています.
 令和6年11月吉日
 末瀬一彦(日本歯科医師会常務理事)
 山下茂子(株式会社デジタルデンタルオペレーション)
 序文
 目次
 巻頭対談 デジタルデンティストリーを成功に導く歯科医師と歯科技工士の“デジタル連携”(末瀬一彦,山下茂子)
Chapter 1 これからはじめるデジタル歯科
 デジタルによって変わる歯科医院のシステム作り(荒井昌海)
 歯科技工所におけるデジタルワークフローの実現(山下茂子,加藤拓也)
 歯科医院と歯科技工所の連携─デジタル化において歯科医院から歯科技工所へ依頼する際の注意点や連携時のコミュニケーションについて(北原信也)
 歯科衛生士業務における口腔内スキャナーの活用と歯科技工士との関係を考える(吉久保典子)
Chapter 2 デジタル歯科治療の最新知識
 デジタル時代の連携とは(田中晋平,馬場一美)
 IOS×CAD/CAMインレー(末瀬一彦)
 ジルコニアマテリアル(伴 清治)
 ジルコニア製作法の分類(小出俊介)
 CTの読像(村岡宏隆,金田 隆)
 矯正治療のデジタル化最新事情(橋場千織)
 義歯製作のデジタル化の現状とチェアサイド・ラボサイドの連携(喜久田吉蔵,高橋雄太,山ア麻由,時 秋宜,原田直彦,大久保力廣)
 インプラント治療におけるデジタル連携(千葉豊和)
Chapter 3 最新デジタル機器を用いたリレーションシップ
 口腔内スキャナー(IOS)活用のポイント(窪田 努)
 バーチャル咬合器の活用(井川知子,小川 匠)
 3Dプリンターの活用(瓜生博伺)
 フェイススキャンの臨床的使用について(遠山敏成)
Chapter 4 卒前におけるデジタル教育の重要性
 歯科大学におけるデジタル教育(土田優美,金澤 学)
 デジタル革命と歯科技工士教育の未来─歯科技工士養成校におけるデジタル教育の役割と進化─(木暮ミカ)
 歯科衛生士学校におけるデジタル教育について(久家理恵)