序文
歯科用CAD/CAMシステムは口腔内情報をデータとして取り込むスキャナー,修復物のデザイン設計を行うCADソフト,材料を決定し加工プログラムを運用するCAMソフト,そして設計された修復物を具現化する加工装置の4つの構成要素から成り立っています.歯科用に改良されたCAD/CAMシステムは,当初は口腔内情報を直接カメラで撮影し,その場で設計,加工できるシステムとして開発されましたが,適合性の面でアナログ加工された従来の修復物より劣ったため,広く適用されるには至りませんでした.その後は,精密印象から得られた作業用模型をスキャニングするシステムが安定的に用いられてきましたが,近年ヨーロッパを中心に,口腔内スキャナーの改良・開発が進み,2年に1度開催されるIDSでは20社以上の企業から口腔内スキャナーが出展されています.さらに最近では,ワンドの小型軽量化やスキャニング速度の高速化,高画質の画像,イメージングソフトの改良などが進み,いわゆるモデルレスの修復プロセスが確立され,インプラント治療においてはすでにCTデータと口腔内スキャナーのデジタルデータの融合によって検査,シミュレーション,ガイデッドサージェリー,上部構造の製作に至るまでデジタルワークフローが完成されてきています.
口腔内スキャナーの最大のメリットは患者に優しい歯科治療であり,これまで苦痛を強いられてきた印象採得のプロセスから解放されることで,超高齢社会においては安全な治療機器となり,さらに口腔内の雑菌や血液が付着した印象面に注入された石膏模型は感染源であることから,口腔内スキャナーは衛生上の観点からも安全です.また,光学印象であることからデータとして伝達・保存ができ,瞬時に遠隔地までデータを送信することが可能で,製作期間の短縮化,効率化にもつながります.これまでは印象採得後,作業用模型でしか確認できませんでしたが,口腔内スキャナーによる光学印象では,撮影後リアルタイムに支台歯形態の評価などが可能です.CTの画像データや顎運動装置,色調採得で得られたデータとの融合によって,機能的,審美的な修復物の製作が可能となります.
また,口腔内スキャナーは診療室のみならず,最近では歯科技工の臨床現場においてもハンディスキャナーとしての威力を発揮しており,その適用範囲は広がり,近未来の診療・技工機器としての大きな可能性を秘めています.
そこで,口腔内スキャナーを有効活用するために診療サイドと歯科技工サイドとの連携,データの授受,セキュリティに対する課題などについて整理し,臨床現場のみならず,大学や歯科技工士学校における教育面での充実も必要であることから,本書を発刊させていただく運びとなりました.
口腔内スキャナーの普及を目指して,日々臨床でご活躍の歯科技工士,歯科医師にとって,そして学生教育において本書が少しでもお役に立てれば幸甚です.
2023年5月
末瀬一彦(大阪歯科大学)
山下茂子(株式会社デンタルデジタルオペレーション)
歯科用CAD/CAMシステムは口腔内情報をデータとして取り込むスキャナー,修復物のデザイン設計を行うCADソフト,材料を決定し加工プログラムを運用するCAMソフト,そして設計された修復物を具現化する加工装置の4つの構成要素から成り立っています.歯科用に改良されたCAD/CAMシステムは,当初は口腔内情報を直接カメラで撮影し,その場で設計,加工できるシステムとして開発されましたが,適合性の面でアナログ加工された従来の修復物より劣ったため,広く適用されるには至りませんでした.その後は,精密印象から得られた作業用模型をスキャニングするシステムが安定的に用いられてきましたが,近年ヨーロッパを中心に,口腔内スキャナーの改良・開発が進み,2年に1度開催されるIDSでは20社以上の企業から口腔内スキャナーが出展されています.さらに最近では,ワンドの小型軽量化やスキャニング速度の高速化,高画質の画像,イメージングソフトの改良などが進み,いわゆるモデルレスの修復プロセスが確立され,インプラント治療においてはすでにCTデータと口腔内スキャナーのデジタルデータの融合によって検査,シミュレーション,ガイデッドサージェリー,上部構造の製作に至るまでデジタルワークフローが完成されてきています.
口腔内スキャナーの最大のメリットは患者に優しい歯科治療であり,これまで苦痛を強いられてきた印象採得のプロセスから解放されることで,超高齢社会においては安全な治療機器となり,さらに口腔内の雑菌や血液が付着した印象面に注入された石膏模型は感染源であることから,口腔内スキャナーは衛生上の観点からも安全です.また,光学印象であることからデータとして伝達・保存ができ,瞬時に遠隔地までデータを送信することが可能で,製作期間の短縮化,効率化にもつながります.これまでは印象採得後,作業用模型でしか確認できませんでしたが,口腔内スキャナーによる光学印象では,撮影後リアルタイムに支台歯形態の評価などが可能です.CTの画像データや顎運動装置,色調採得で得られたデータとの融合によって,機能的,審美的な修復物の製作が可能となります.
また,口腔内スキャナーは診療室のみならず,最近では歯科技工の臨床現場においてもハンディスキャナーとしての威力を発揮しており,その適用範囲は広がり,近未来の診療・技工機器としての大きな可能性を秘めています.
そこで,口腔内スキャナーを有効活用するために診療サイドと歯科技工サイドとの連携,データの授受,セキュリティに対する課題などについて整理し,臨床現場のみならず,大学や歯科技工士学校における教育面での充実も必要であることから,本書を発刊させていただく運びとなりました.
口腔内スキャナーの普及を目指して,日々臨床でご活躍の歯科技工士,歯科医師にとって,そして学生教育において本書が少しでもお役に立てれば幸甚です.
2023年5月
末瀬一彦(大阪歯科大学)
山下茂子(株式会社デンタルデジタルオペレーション)
Chapter 1 IOSの基礎知識
IOSの歴史と光学印象の基本的な構造(堀田康弘)
IOSを用いた補綴治療のワークフロー(末瀬一彦)
IOSの精度と適応症例(田中晋平,馬場一美)
Chapter 2 機種情報
CEREC Primescan
TRIOS 4 オーラルスキャナシステム
iTeroエレメント 5Dプラス シリーズ
プランメカ Emerald TM S
i700 オーラルスキャナ
オーラルスキャナ IS 3800 ワイヤレス
Chapter 3 チェアサイドとラボサイドの連携
スキャンの基本的な手順と注意点(疋田一洋)
データの受け渡しと管理(宮田幸一郎)
患者情報を扱ううえでの注意点とセキュリティ(野ア一徳,南部恵理子)
データ受け取り時の確認事項(田中文博,滝沢琢也,陸 誠)
Chapter 4 IOSを用いた補綴治療の実際
スーパーインポーズを活用したインレーの製作(荒木康成)
前歯部審美症例への対応(鬼頭寛之)
モデルレスで製作するインプラント上部構造(辻 貴裕)
シミュレーションシステムを活用したインプラント治療(上原芳樹,渡部美咲希)
IOSを使用したデジタルデンチャーの製作(羽田多麻木,岩城麻衣子,金澤 学)
Topics
IOSの保険導入への期待(末瀬一彦)
IOSの普及によるリモートワーク発展の可能性(山下茂子)
各種スプリントおよびアライナー矯正装置の製作(下郡綾子)
訪問診療におけるコピーデンチャーの可能性(瓜生博伺)
IOSの歴史と光学印象の基本的な構造(堀田康弘)
IOSを用いた補綴治療のワークフロー(末瀬一彦)
IOSの精度と適応症例(田中晋平,馬場一美)
Chapter 2 機種情報
CEREC Primescan
TRIOS 4 オーラルスキャナシステム
iTeroエレメント 5Dプラス シリーズ
プランメカ Emerald TM S
i700 オーラルスキャナ
オーラルスキャナ IS 3800 ワイヤレス
Chapter 3 チェアサイドとラボサイドの連携
スキャンの基本的な手順と注意点(疋田一洋)
データの受け渡しと管理(宮田幸一郎)
患者情報を扱ううえでの注意点とセキュリティ(野ア一徳,南部恵理子)
データ受け取り時の確認事項(田中文博,滝沢琢也,陸 誠)
Chapter 4 IOSを用いた補綴治療の実際
スーパーインポーズを活用したインレーの製作(荒木康成)
前歯部審美症例への対応(鬼頭寛之)
モデルレスで製作するインプラント上部構造(辻 貴裕)
シミュレーションシステムを活用したインプラント治療(上原芳樹,渡部美咲希)
IOSを使用したデジタルデンチャーの製作(羽田多麻木,岩城麻衣子,金澤 学)
Topics
IOSの保険導入への期待(末瀬一彦)
IOSの普及によるリモートワーク発展の可能性(山下茂子)
各種スプリントおよびアライナー矯正装置の製作(下郡綾子)
訪問診療におけるコピーデンチャーの可能性(瓜生博伺)














