本別冊の企画にあたって
“一般臨床医が行う矯正治療”の可能性と意義
歯列不正は,さまざまなシチュエーションで問題を引き起こす.
歯周治療,補綴治療,保存修復など,どの分野にとっても歯列不正は頭の痛い問題である.歯列不正によって惹起される,プラークコントロールや咬合,審美的な問題を,無理な補綴治療や形態修正によって改善しようとしても,その予後に問題が起こることは誰にでも想像できる.そして,歯列不正によって引き起こされるさまざまな問題の解決策が矯正治療以外にないことは,異論のないところであろう.
MTMは,これら歯列不正から引き起こされる問題を少しでも改善しようと,古くから一般臨床に取り入れられてきた.いわばMTMは,補綴前処置の環境整備を目的に,一般臨床医が手がける矯正治療として,全顎矯正とは別の範疇で臨床応用されてきたわけである.
しかし,現代の歯科治療の革新的な進歩のなかで,MTMの目的は大きく変わろうとしている.
インプラント補綴によって,残存歯に負担をかけない欠損補綴が可能になったことで,補綴治療の予知性は各段に向上した.また,低侵襲治療(MI)という概念の浸透は,齲蝕治療だけでなくあらゆる分野に変革をもたらし,良好な予後を得ている.将来,予防歯科の分野はますます発展し,齲蝕や歯周病は完全に克服できる時代がくるだろう.
しかしながら,歯列不正がなくなることはない.なぜならそこに遺伝的要素が含まれているからである.また,欠損歯列を放置したことによって起こる後天的な歯列不正も後を絶たないであろう.
矯正治療は「歯を削らない」という観点からすれば最も低侵襲な治療方法である.治療を一口腔単位で考えた場合,歯列不正を改善することで,補綴的介入範囲の少ない,低侵襲で予知性の高い治療が可能になるのであれば,矯正治療を臨床に取り入れない理由は見当たらない.
このように考えると,今後は,MTMと全顎矯正という枠組みを超えて,病状の回復にどのような矯正治療が必要であるかという議論こそが必要になり,そのために一般臨床医は,矯正全般の知識を身につける必要性に迫られることになるだろう.
これからは,一般臨床医が矯正治療の正しい知識を備え,自身で対応可能な矯正治療と,矯正専門医とのインターディシプリナリーアプローチのどちらを選択するかを判断していかなくてはならない.
本書は,MTMを一般臨床に取り入れようとする初学者を対象に編集したが,本書を通して,いまだ手つかずの状態である「一般臨床と矯正治療の融合」をどのように行うかという重要なテーマに,一石を投じることができれば幸いである.
編者を代表して 渡辺隆史
“一般臨床医が行う矯正治療”の可能性と意義
歯列不正は,さまざまなシチュエーションで問題を引き起こす.
歯周治療,補綴治療,保存修復など,どの分野にとっても歯列不正は頭の痛い問題である.歯列不正によって惹起される,プラークコントロールや咬合,審美的な問題を,無理な補綴治療や形態修正によって改善しようとしても,その予後に問題が起こることは誰にでも想像できる.そして,歯列不正によって引き起こされるさまざまな問題の解決策が矯正治療以外にないことは,異論のないところであろう.
MTMは,これら歯列不正から引き起こされる問題を少しでも改善しようと,古くから一般臨床に取り入れられてきた.いわばMTMは,補綴前処置の環境整備を目的に,一般臨床医が手がける矯正治療として,全顎矯正とは別の範疇で臨床応用されてきたわけである.
しかし,現代の歯科治療の革新的な進歩のなかで,MTMの目的は大きく変わろうとしている.
インプラント補綴によって,残存歯に負担をかけない欠損補綴が可能になったことで,補綴治療の予知性は各段に向上した.また,低侵襲治療(MI)という概念の浸透は,齲蝕治療だけでなくあらゆる分野に変革をもたらし,良好な予後を得ている.将来,予防歯科の分野はますます発展し,齲蝕や歯周病は完全に克服できる時代がくるだろう.
しかしながら,歯列不正がなくなることはない.なぜならそこに遺伝的要素が含まれているからである.また,欠損歯列を放置したことによって起こる後天的な歯列不正も後を絶たないであろう.
矯正治療は「歯を削らない」という観点からすれば最も低侵襲な治療方法である.治療を一口腔単位で考えた場合,歯列不正を改善することで,補綴的介入範囲の少ない,低侵襲で予知性の高い治療が可能になるのであれば,矯正治療を臨床に取り入れない理由は見当たらない.
このように考えると,今後は,MTMと全顎矯正という枠組みを超えて,病状の回復にどのような矯正治療が必要であるかという議論こそが必要になり,そのために一般臨床医は,矯正全般の知識を身につける必要性に迫られることになるだろう.
これからは,一般臨床医が矯正治療の正しい知識を備え,自身で対応可能な矯正治療と,矯正専門医とのインターディシプリナリーアプローチのどちらを選択するかを判断していかなくてはならない.
本書は,MTMを一般臨床に取り入れようとする初学者を対象に編集したが,本書を通して,いまだ手つかずの状態である「一般臨床と矯正治療の融合」をどのように行うかという重要なテーマに,一石を投じることができれば幸いである.
編者を代表して 渡辺隆史
Section 1 Discussion-MTMは何のために行うのか?
Section 2 MTMを行う前に
歯の移動のメカニズムを理解して,的確な診断を行おう!
器材の理解を通して,MTMの基本知識をマスターしよう!
ワイヤーベンディングの基本をマスターしよう!
Section 3 Case Presentation
MTMが求められるシチュエーションを整理しよう!
臼歯部のMTM
前歯部のMTM
Section 4 MTM初心者のためのQ&A
MTM全般についてのQuestion
ブラケット,ワイヤーの取り扱いについてのQuestion
エクストルージョン,アップライト,レベリングの術式についてのQuestion
Section 5 Discussion-とにかくTRYしてみよう!
付録DVD ワイヤーベンディングの基本
・オープンループ
・クロージングループ
・Lループ
・Tループ
・ファーストオーダーベンド
・セカンドオーダーベンド
・サードオーダーベンド
・アップライトセクション
・エクストルージョンセクション
・対合歯のワイヤーベンド
・結紮
Section 2 MTMを行う前に
歯の移動のメカニズムを理解して,的確な診断を行おう!
器材の理解を通して,MTMの基本知識をマスターしよう!
ワイヤーベンディングの基本をマスターしよう!
Section 3 Case Presentation
MTMが求められるシチュエーションを整理しよう!
臼歯部のMTM
前歯部のMTM
Section 4 MTM初心者のためのQ&A
MTM全般についてのQuestion
ブラケット,ワイヤーの取り扱いについてのQuestion
エクストルージョン,アップライト,レベリングの術式についてのQuestion
Section 5 Discussion-とにかくTRYしてみよう!
付録DVD ワイヤーベンディングの基本
・オープンループ
・クロージングループ
・Lループ
・Tループ
・ファーストオーダーベンド
・セカンドオーダーベンド
・サードオーダーベンド
・アップライトセクション
・エクストルージョンセクション
・対合歯のワイヤーベンド
・結紮








