発行にあたって
今回,「咬合調整」の基本術式を紹介しようと思い立ち,患者の反応を確認しながら二度に分けて咬合調整を行い,その術式を細部にわたり記録した.その間,はや2年半が過ぎ,やっと本別冊をまとめるにいたった.
「顆頭安定位に基づく上下顎歯の安定的なかかわりを妨げている早期接触部位の調整」は,正常な顎口腔機能を維持,獲得するうえで重要であることは論を待たない.しかし実際には,日常臨床における咬合調整の理論と,それに基づく術式が整備されているとはいいがたい.
一般的に行われている咬合紙を咬ませることで得られる咬合印記点に対し,“どの部位“を“どの程度”調整すればよいのか?あるいは,削る調整だけでよいのか?等々,特に天然歯の中心位(CR:顆頭安定位)での早期接触に対し,その調整方法と調整にいたる根拠を明確にするための診査・診断法等が示された情報は少ない.
そこで本書では,まず,顎機能と咬合に関する研究と臨床をリードしてきたアメリカの咬合学の基礎を築いた一人で,“近代咬合学の父”と称されるDr.Clyde H.Schuylerの咬合理論と臨床術式を整理した.
桑田は,1963年にDr.Schuylerと出会い,その後1970年代にかけて臨床の現場でDr.Schuylerの咬合調整のサポートを行ってきた.またセミナーなどでもアシスタントを行ってきた当時を思い起こし,Dr.Schuylerと実際に行っていた“ドクターとテクニシャンのチームで行う咬合調整”をここに再現してみたいと思う.
本別冊では,Dr.Schuylerの役割を茂野が担い,そのアシスタントを桑田が務め,日本人モデル(患者)で咬合調整のプロセスを数百枚の写真に記録した.これらの記録とDr.Schuylerの資料を基に,咬合治療のコンセプトを紹介すると同時に,今日的な咬合理論を踏まえ最も妥当性のある咬合調整テクニックを提示し,わかりやすく学べるマニュアルとすることを心がけた.この咬合接触点はなぜよくないのか,どのように調整すればよいのか等,日常臨床における咬合調整の疑問に対し,理解が深まるのではないかと思う.
また,本書において特筆すべきことは,東北大学国際高等研究教育機構国際高等融合領域研究所所長の渡邉誠教授,そして日本歯科大学新潟生命歯学部歯科補綴学第1講座の小出馨教授に,「咬合学の理論と実際」を臨床に反映していただけたことである.渡邉教授には「咬合接触点の評価法と診査・診断の要点」について,そして小出教授には「咬合状態の評価と顎口腔機能との関係」について,科学的な根拠に基づき的確な解説をいただいた.
本別冊では症例として,天然歯列の咬合調整について解説しているが,これはそのまま修復治療時の咬合調整として日常臨床に応用してもらえるはずである.本書を繙くことで,理解しづらいと思われている「咬合」について理解していただき,実際の臨床に「咬合調整」を応用していただければ幸甚である.
本別冊で紹介した,いわゆるモダンデンティストリーを築きあげてきた“Giants(巨人)”と称される歯科関係者の方々,科学的に「咬合」解明の研究を続けられている渡邉,小出両教授に感謝を表したい.そして,今は亡き恩師Dr.Clyde H.Schuylerに,本書を捧げる.
2009年5月
桑田正博
茂野啓示
今回,「咬合調整」の基本術式を紹介しようと思い立ち,患者の反応を確認しながら二度に分けて咬合調整を行い,その術式を細部にわたり記録した.その間,はや2年半が過ぎ,やっと本別冊をまとめるにいたった.
「顆頭安定位に基づく上下顎歯の安定的なかかわりを妨げている早期接触部位の調整」は,正常な顎口腔機能を維持,獲得するうえで重要であることは論を待たない.しかし実際には,日常臨床における咬合調整の理論と,それに基づく術式が整備されているとはいいがたい.
一般的に行われている咬合紙を咬ませることで得られる咬合印記点に対し,“どの部位“を“どの程度”調整すればよいのか?あるいは,削る調整だけでよいのか?等々,特に天然歯の中心位(CR:顆頭安定位)での早期接触に対し,その調整方法と調整にいたる根拠を明確にするための診査・診断法等が示された情報は少ない.
そこで本書では,まず,顎機能と咬合に関する研究と臨床をリードしてきたアメリカの咬合学の基礎を築いた一人で,“近代咬合学の父”と称されるDr.Clyde H.Schuylerの咬合理論と臨床術式を整理した.
桑田は,1963年にDr.Schuylerと出会い,その後1970年代にかけて臨床の現場でDr.Schuylerの咬合調整のサポートを行ってきた.またセミナーなどでもアシスタントを行ってきた当時を思い起こし,Dr.Schuylerと実際に行っていた“ドクターとテクニシャンのチームで行う咬合調整”をここに再現してみたいと思う.
本別冊では,Dr.Schuylerの役割を茂野が担い,そのアシスタントを桑田が務め,日本人モデル(患者)で咬合調整のプロセスを数百枚の写真に記録した.これらの記録とDr.Schuylerの資料を基に,咬合治療のコンセプトを紹介すると同時に,今日的な咬合理論を踏まえ最も妥当性のある咬合調整テクニックを提示し,わかりやすく学べるマニュアルとすることを心がけた.この咬合接触点はなぜよくないのか,どのように調整すればよいのか等,日常臨床における咬合調整の疑問に対し,理解が深まるのではないかと思う.
また,本書において特筆すべきことは,東北大学国際高等研究教育機構国際高等融合領域研究所所長の渡邉誠教授,そして日本歯科大学新潟生命歯学部歯科補綴学第1講座の小出馨教授に,「咬合学の理論と実際」を臨床に反映していただけたことである.渡邉教授には「咬合接触点の評価法と診査・診断の要点」について,そして小出教授には「咬合状態の評価と顎口腔機能との関係」について,科学的な根拠に基づき的確な解説をいただいた.
本別冊では症例として,天然歯列の咬合調整について解説しているが,これはそのまま修復治療時の咬合調整として日常臨床に応用してもらえるはずである.本書を繙くことで,理解しづらいと思われている「咬合」について理解していただき,実際の臨床に「咬合調整」を応用していただければ幸甚である.
本別冊で紹介した,いわゆるモダンデンティストリーを築きあげてきた“Giants(巨人)”と称される歯科関係者の方々,科学的に「咬合」解明の研究を続けられている渡邉,小出両教授に感謝を表したい.そして,今は亡き恩師Dr.Clyde H.Schuylerに,本書を捧げる.
2009年5月
桑田正博
茂野啓示
発刊にあたって
執筆者一覧
Chapter1 咬合状態の診査・診断と顎口腔機能との関係
Section1 咬合状態の評価と顎口腔機能との関係(小出 馨・近藤敦子)
Section2 咬合接触点の評価法と診査・診断の要点(渡邉 誠・岩松正明・板橋志保・佐藤智昭)
Chapter2 生理的咬合調整のコンセプト―修復物および天然歯に与える咬合の考え方とスカイラーによる咬合調整の術式(桑田正博)
PFMクラウン研究開発の過程で認識した咬合の重要性
失敗しないラボワークを熟考し辿り着いた,咬合とクラウンカントゥアの考え方
Dr.Schuylerによる咬合調整の実際
コラム:Dr.SchuylerとOcclusal Rehabilitation Study Club
Chapter3 チェアサイド・ラボサイドのコンビネーションによる咬合調整の実際
Section1 早期接触の除去を目的とした咬合調整(桑田正博・茂野啓示)
咬合調整の目的と手順
術前診査
バイトワックスによる咬合診査
中心位における咬合採得(centric bite taking)
中心位における早期接触の印記
Trim off(削る咬合調整)
Add on(足す咬合調整)
Section2 早期接触の除去と下顎偏心運動時の咬頭干渉除去を目的とした咬合調整(桑田正博・茂野啓示)
フェイスボウトランスファー
自然頭位での中心位の採得
チェックバイト法による矢状顆路角・側方顆路角の設定
側方運動の調整
Trim off(削る咬合調整)
Functional re-contour(ファンクショナル・リカントゥア)
Add on(足す咬合調整)
Esthetic re-contour(エステティック・リカントゥア)
Section3 AnaBiterによる咬合接触の評価(渡邉 誠・岩松正明・板橋志保)
使用器材一覧
奥付
執筆者一覧
Chapter1 咬合状態の診査・診断と顎口腔機能との関係
Section1 咬合状態の評価と顎口腔機能との関係(小出 馨・近藤敦子)
Section2 咬合接触点の評価法と診査・診断の要点(渡邉 誠・岩松正明・板橋志保・佐藤智昭)
Chapter2 生理的咬合調整のコンセプト―修復物および天然歯に与える咬合の考え方とスカイラーによる咬合調整の術式(桑田正博)
PFMクラウン研究開発の過程で認識した咬合の重要性
失敗しないラボワークを熟考し辿り着いた,咬合とクラウンカントゥアの考え方
Dr.Schuylerによる咬合調整の実際
コラム:Dr.SchuylerとOcclusal Rehabilitation Study Club
Chapter3 チェアサイド・ラボサイドのコンビネーションによる咬合調整の実際
Section1 早期接触の除去を目的とした咬合調整(桑田正博・茂野啓示)
咬合調整の目的と手順
術前診査
バイトワックスによる咬合診査
中心位における咬合採得(centric bite taking)
中心位における早期接触の印記
Trim off(削る咬合調整)
Add on(足す咬合調整)
Section2 早期接触の除去と下顎偏心運動時の咬頭干渉除去を目的とした咬合調整(桑田正博・茂野啓示)
フェイスボウトランスファー
自然頭位での中心位の採得
チェックバイト法による矢状顆路角・側方顆路角の設定
側方運動の調整
Trim off(削る咬合調整)
Functional re-contour(ファンクショナル・リカントゥア)
Add on(足す咬合調整)
Esthetic re-contour(エステティック・リカントゥア)
Section3 AnaBiterによる咬合接触の評価(渡邉 誠・岩松正明・板橋志保)
使用器材一覧
奥付








