やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

Preface
 コンポジットレジンを用いた直接歯冠修復処置の目的の一つは,患者が望む審美と機能とを両立させ,それを長く保つことである.この目的を達成するために,術者である歯科医師は,各メーカーの製品を吟味,選択して臨床に用いている.幸いなことに,最近のレジン製品は,レイヤリングテクニックを意識した構成となっており,一部の優れた臨床家のみが行っていた審美性の高いコンポジットレジン修復も,何回かのトレーニングを受けること,あるいはコツを習得することによって多くの歯科医師にとって可能となっている.
 本別冊のあらゆるページに提示されている,天然歯に肉薄した歯冠修復処置は,それぞれの術者の卓越した技法あるいは工夫によるものであることは確かである.しかし,それは理論の裏づけのもとで構築された技巧でもあり,ステップを積み上げることによって誰もが施術可能なテクニックでもある.
 一方,患者が望む審美と機能を回復する目的は,歯質をはじめとした被着体への確実な接着という手段によって,初めて確実なものとなる.その点からは,接着の基礎と臨床の実際を確認することは,良好な予後を得るためにも重要となる.すなわち,象牙質/歯髄複合体の理解に始まり,歯質切削ならびに臨床的に多彩な被着体をどのように扱うかを知ることが重要であり,これを怠れば予想もしなかった結果が待ち受けることとなる.逆に,接着という手段を有効に生かすことができれば,患者自身の口腔内の健康に対する意識を向上させることが可能となり,コデンタルスタッフとの共同作業によって,患者自身のオーラルヘルスプロモーションに貢献することにつながるであろう.
 歯質接着あるいはコンポジットレジン充填が一般臨床に浸透し,従前とは異なる歯科診療形態がすでに作られつつある.そのようななかで,本別冊が発信する情報は,個性に満ち溢れたプレゼンテーションで構成されており,だからこそ現在の歯科接着技術あるいはコンポジットレジンを用いた直接歯冠修復を網羅できるものと確信している.
 本別冊を通して,これで完成を迎えるのではなく,さらに発展する歯科医療技術の潮流を感じていただけることを願いつつ擱筆する.
 2006年 10月
 編者 宮崎真至
 ・Preface(宮崎真至)
 ・目次
 ・執筆者一覧
Section1 コンポジットレジン修復の現在
 充填修復から審美歯冠修復へのパラダイムシフト(宮崎真至)
 コンポジットレジン修復への新たな挑戦(青島徹児)
 ホワイトニングとコンポジットレジンを用いたMI修復治療(北原信也)
 ダイレクトボンディングにおける不快症状の発生防止法(松本勝利)
 エステティック・レイヤリング(高橋 登)
 臼歯部コンポジットレジン修復の留意点(秋本尚武)
Section2 臨床に役立つ接着の基礎理論
 これだけは押さえよう 臨床に役立つ接着理論(宮崎真至)
 接着の過去・現在・未来(山田敏元)
 歯質接着材の高機能化(今里 聡)
 歯質への化学的接着を科学する(吉田靖弘・鈴木一臣)
 接着性の評価法とその臨床への適応(山本一世)
 歯質接着の効果と安全性(冨士谷盛興)
 コラム 暗号受信は“もうできない”(近藤隆一)
 コラム どの材料を使うかというより,材料をどう使うかがはるかに大切(桃井保子)
Section3 接着修復による審美的アプローチ
 ボンディングシステムの使い分け(宮崎真至)
 レジン修復を成功に導く色彩学(細矢由美子)
 Optimal treatmentへ導くための歯質削除とコンポジットレジン充填(天川由美子)
Section4 接着修復の臨床
 齲蝕反応象牙質・硬化象牙質への接着(宇野 滋)
 歯頸部修復への応用(奈良陽一郎・鈴木貴規)
 ホワイトニングと接着(須崎 明)
 歯質接着とその耐久性(久保至誠)
 歯内療法への応用(伊藤修一・斎藤隆史)
 コラム 「接着」への夢(日野浦 光)
Section5 接着が広げる歯科臨床
 間接修復への応用(小峰 太・松村英雄)
 接着を活かした補修修復(二階堂 徹・田上順次)
 接着とヘルスプロモーション―予防と治療の接点を求めて―(吉田秀人)
 接着歯学を支えるハイジニストワーク(土屋和子)
 接着関連製品とその特徴(坪田圭司・宮崎真至)
 ・編集後記
付録DVD(巻末)
 IV級窩洞の修復(宮崎真至)
 正中離開の修復(宮崎真至)
 II級インレー窩洞に対するII級コンポジットレジン修復(秋本尚武)