発刊にあたって
安心・安全で適正な輸血医療を提供するために,検査室が担う役割には非常に大きいものがあります.特に輸血関連検査は,検査の適否が患者の生命に直結するという側面から,予期せぬ反応・トラブルが生じた際にも迅速かつ適切な対応が行えるよう,確かな知識と高い技術が求められています.
そのような背景をふまえ,本誌『Medical Technology』では「基礎知識をわかりやすく」,そして「学んだ知識を実践で活かせるように」というコンセプトから,2018年に「4STEPで学ぶ 不規則抗体スクリーニング&抗体同定 徹底マスター」(46巻3号)を,2019年には「血液型検査SOS!」(47巻1号)をお届けし,これらの企画には大きな反響をいただきました.
そこでこのたび,上記のコンセプトを引き継いだうえで,新たに交差適合試験,新生児・乳児の輸血検査,造血幹細胞移植前後の輸血検査,緊急輸血への対応,輸血副反応への対応についてもご解説をいただき,臨時増刊号として一冊にまとめ発刊する運びとなりました.既出となる血液型検査・不規則抗体検査の章についても,適宜情報をアップデートし,加筆・修正のうえ掲載しています.
各章では,今さら聞けない基本用語の解説から,知っておきたい検査の知識・コツ・工夫まで,特に新人技師や日当直者がつまずきやすい点・不安に感じる点・理解に難渋する点に焦点を当ててまとめていただきました.また模擬症例を用いた「症例問題」を作成いただき,さまざまなケースに対してどのように考え対応を進めていけばいいのか,シミュレーションしながら実践的な知識を身につけていただける構成としています.さらには,読者から本誌に寄せられた輸血検査にかかわる疑問・質問にお答えいただく「輸血検査Q&A」のコーナーも設けています.
本書をご活用いただくことで,輸血検査に抱いていた苦手意識を払拭し,自信をもって検査を行うための知識・技術を習得いただけましたら幸甚に存じます.さらに安全な輸血医療を提供するための一助としていただければこのうえない喜びです.
最後になりますが,ご多忙のなか本書のコンセプトを汲んでご執筆くださいました先生方,また企画から制作にいたるまで仔細にわたるご指導・ご尽力をいただきました東邦大学医療センター大森病院・輸血部の奥田誠先生に,心より御礼申し上げます.
2020年12月
月刊『Medical Technology』編集委員会
安心・安全で適正な輸血医療を提供するために,検査室が担う役割には非常に大きいものがあります.特に輸血関連検査は,検査の適否が患者の生命に直結するという側面から,予期せぬ反応・トラブルが生じた際にも迅速かつ適切な対応が行えるよう,確かな知識と高い技術が求められています.
そのような背景をふまえ,本誌『Medical Technology』では「基礎知識をわかりやすく」,そして「学んだ知識を実践で活かせるように」というコンセプトから,2018年に「4STEPで学ぶ 不規則抗体スクリーニング&抗体同定 徹底マスター」(46巻3号)を,2019年には「血液型検査SOS!」(47巻1号)をお届けし,これらの企画には大きな反響をいただきました.
そこでこのたび,上記のコンセプトを引き継いだうえで,新たに交差適合試験,新生児・乳児の輸血検査,造血幹細胞移植前後の輸血検査,緊急輸血への対応,輸血副反応への対応についてもご解説をいただき,臨時増刊号として一冊にまとめ発刊する運びとなりました.既出となる血液型検査・不規則抗体検査の章についても,適宜情報をアップデートし,加筆・修正のうえ掲載しています.
各章では,今さら聞けない基本用語の解説から,知っておきたい検査の知識・コツ・工夫まで,特に新人技師や日当直者がつまずきやすい点・不安に感じる点・理解に難渋する点に焦点を当ててまとめていただきました.また模擬症例を用いた「症例問題」を作成いただき,さまざまなケースに対してどのように考え対応を進めていけばいいのか,シミュレーションしながら実践的な知識を身につけていただける構成としています.さらには,読者から本誌に寄せられた輸血検査にかかわる疑問・質問にお答えいただく「輸血検査Q&A」のコーナーも設けています.
本書をご活用いただくことで,輸血検査に抱いていた苦手意識を払拭し,自信をもって検査を行うための知識・技術を習得いただけましたら幸甚に存じます.さらに安全な輸血医療を提供するための一助としていただければこのうえない喜びです.
最後になりますが,ご多忙のなか本書のコンセプトを汲んでご執筆くださいました先生方,また企画から制作にいたるまで仔細にわたるご指導・ご尽力をいただきました東邦大学医療センター大森病院・輸血部の奥田誠先生に,心より御礼申し上げます.
2020年12月
月刊『Medical Technology』編集委員会
PART 01 血液型検査
STEP 1 ABO血液型検査の基本を学ぶ(李 悦子)
ABO血液型の基礎知識
ABO血液型検査法の種類
検体採取にかかわる注意点
ABO血液型検査法の手順
予期せぬ反応を認めたら
予期せぬ反応の原因
陥りやすい血液型判定時のミス
輸血検査の精度管理
当直者への教育
適合血の選択
STEP 2 予期せぬ反応の原因と対応を整理する(井手大輔)
予期せぬ反応を認めた場合の基本的な対応の流れ
原因(1) 汎血球凝集
原因(2) 後天性(獲得性)B
原因(3) 寒冷凝集素や自己抗体の結合
原因(4) 疾患による抗原の減弱
原因(5) 亜型
原因(6) 新生児/高齢者
原因(7) 型物質の異常増加
原因(8) 異型輸血後
原因(9) キメラ/モザイク
原因(10) 胎児母体間輸血症候群
原因(11) 連銭形成
原因(12) 不規則抗体
原因(13) 母体から移行した抗体による反応
原因(14) 高分子製剤輸注後/造影剤投与後
原因(15) 低・無γグロブリン血症
原因(16) ABO不適合造血幹細胞移植後
STEP 3 症例問題で学ぶ トラブルケースの考え方と対処法(道野淳子)
PART 02 不規則抗体検査
STEP 1 不規則抗体検査を理解するための基本用語集(井手大輔)
Keyword(1) 不規則抗体
Keyword(2) 臨床的意義のある抗体
Keyword(3) 不規則抗体スクリーニング
Keyword(4) 不規則抗体同定検査
Keyword(5) 間接抗グロブリン試験
Keyword(6) 反応増強剤
Keyword(7) 生理食塩液法
Keyword(8) 酵素法
Keyword(9) カラム凝集法
Keyword(10) マイクロプレート法
Keyword(11) 直接抗グロブリン試験
Keyword(12) 量的効果
Keyword(13) 可能性の高い抗体,否定できない抗体
Keyword(14) 消去法
Keyword(15) 高頻度抗原に対する抗体,低頻度抗原に対する抗体
Keyword(16) 2-ME,DTT
Keyword(17) 吸着(吸収),解離
Keyword(18) Fisher確率計算法
STEP 2 不規則抗体の種類と臨床的意義を整理する(国分寺 晃)
不規則抗体とは
不規則抗体の「臨床的意義」とは
AHTR・DHTR・HDFN
不規則抗体と輸血用血液製剤の選択
ABO血液型(抗A,抗B,抗A,B)
H抗原(抗H,抗HI)
Rh血液型(抗E,抗cなど)
Duffy血液型(抗Fya,抗Fyb)
Kidd血液型(抗Jka,抗Jkb)
Diego血液型(抗Dia,抗Dib)
Kell血液型(抗K)
JR血液型(抗Jra)
MNS血液型(抗M,抗N,抗S,抗s)
Lewis血液型(抗Lea,抗Leb,抗Leab,抗Lec,抗Ledなど)
P1PKおよびGloboside血液型(抗P1,抗P,抗PP1Pk)
Xg血液型(抗Xga)
STEP 3 不規則抗体スクリーニング・同定の手順と注意点を学ぶ(丸山美津子)
不規則抗体スクリーニング・同定の目的と意義
不規則抗体スクリーニング・同定の準備
不規則抗体の検査法
抗体スクリーニング陽性から抗体同定までの流れ
抗体同定の過程で必要となる基本的な知識
抗体同定の手順
IAT単独で抗体スクリーニングを行う場合
不規則抗体検査の限界
STEP 4 症例問題で学ぶ 抗体同定の進め方とポイント(江頭弘一)
PART 03 交差適合試験
STEP 1 交差適合試験の基本を学ぶ(日高陽子)
交差適合試験とは
交差適合試験に用いる検体
交差適合試験を行う前に
交差適合試験の方法
主試験
副試験
交差適合試験の手順
結果の解釈
交差適合試験の限界
生後3カ月未満の児
血小板濃厚液と新鮮凍結血漿の交差適合試験
STEP 2 コンピュータクロスマッチの基本と注意点を知る(日高陽子)
コンピュータクロスマッチとは
コンピュータクロスマッチの条件
コンピュータクロスマッチのメリット・デメリット
STEP 3 症例問題で学ぶ 交差適合試験の実践と考え方(天本貴広)
PART 04 新生児・乳児の輸血検査/母児不適合妊娠の輸血検査
(川畑絹代)
ABO血液型検査
RhD血液型検査
不規則抗体検査
交差適合試験
コンピュータクロスマッチ
生児・乳児への輸血製剤
胎児・新生児溶血性疾患(HDFN)
HDFNの輸血関連検査
Case
PART 05 造血幹細胞移植患者の移植前後の輸血検査・輸血療法
(水村真也)
輸血検査で必要な造血幹細胞移植に関する知識
造血幹細胞移植前後に行う輸血検査
ABOミスマッチ造血幹細胞移植後の血液型検査と輸血療法
ドナー血液型への変更条件
Case01
Case02
Case03
PART 06 緊急輸血の対応と輸血検査
(村井良精)
Case01-1
Case01-2
Case02
Case03
PART 07 輸血副反応発生時の対応と輸血検査
(山田麻里江)
輸血副反応の報告体制の構築
検査室におけるおもな対応
輸血副反応の分類
輸血感染症
溶血性輸血反応(HTR)
非溶血性輸血反応
Case
輸血検査 Q&A(松浦秀哲)
(1)凝集反応の判定のコツを教えてください
(2)オモテ・ウラ不一致時の対応は?
(3)輸血検査の結果に影響する要因を教えてください
(4)PEG-IATにおける偽陽性の原因・対策は?
(5)輸血拒否患者への対応を教えてください
(6)新任技師の教育をどうしていますか?
(7)輸血の専門用語の伝え方を教えてください
(8)医師・技師間のコミュニケーションのポイントは?
STEP 1 ABO血液型検査の基本を学ぶ(李 悦子)
ABO血液型の基礎知識
ABO血液型検査法の種類
検体採取にかかわる注意点
ABO血液型検査法の手順
予期せぬ反応を認めたら
予期せぬ反応の原因
陥りやすい血液型判定時のミス
輸血検査の精度管理
当直者への教育
適合血の選択
STEP 2 予期せぬ反応の原因と対応を整理する(井手大輔)
予期せぬ反応を認めた場合の基本的な対応の流れ
原因(1) 汎血球凝集
原因(2) 後天性(獲得性)B
原因(3) 寒冷凝集素や自己抗体の結合
原因(4) 疾患による抗原の減弱
原因(5) 亜型
原因(6) 新生児/高齢者
原因(7) 型物質の異常増加
原因(8) 異型輸血後
原因(9) キメラ/モザイク
原因(10) 胎児母体間輸血症候群
原因(11) 連銭形成
原因(12) 不規則抗体
原因(13) 母体から移行した抗体による反応
原因(14) 高分子製剤輸注後/造影剤投与後
原因(15) 低・無γグロブリン血症
原因(16) ABO不適合造血幹細胞移植後
STEP 3 症例問題で学ぶ トラブルケースの考え方と対処法(道野淳子)
PART 02 不規則抗体検査
STEP 1 不規則抗体検査を理解するための基本用語集(井手大輔)
Keyword(1) 不規則抗体
Keyword(2) 臨床的意義のある抗体
Keyword(3) 不規則抗体スクリーニング
Keyword(4) 不規則抗体同定検査
Keyword(5) 間接抗グロブリン試験
Keyword(6) 反応増強剤
Keyword(7) 生理食塩液法
Keyword(8) 酵素法
Keyword(9) カラム凝集法
Keyword(10) マイクロプレート法
Keyword(11) 直接抗グロブリン試験
Keyword(12) 量的効果
Keyword(13) 可能性の高い抗体,否定できない抗体
Keyword(14) 消去法
Keyword(15) 高頻度抗原に対する抗体,低頻度抗原に対する抗体
Keyword(16) 2-ME,DTT
Keyword(17) 吸着(吸収),解離
Keyword(18) Fisher確率計算法
STEP 2 不規則抗体の種類と臨床的意義を整理する(国分寺 晃)
不規則抗体とは
不規則抗体の「臨床的意義」とは
AHTR・DHTR・HDFN
不規則抗体と輸血用血液製剤の選択
ABO血液型(抗A,抗B,抗A,B)
H抗原(抗H,抗HI)
Rh血液型(抗E,抗cなど)
Duffy血液型(抗Fya,抗Fyb)
Kidd血液型(抗Jka,抗Jkb)
Diego血液型(抗Dia,抗Dib)
Kell血液型(抗K)
JR血液型(抗Jra)
MNS血液型(抗M,抗N,抗S,抗s)
Lewis血液型(抗Lea,抗Leb,抗Leab,抗Lec,抗Ledなど)
P1PKおよびGloboside血液型(抗P1,抗P,抗PP1Pk)
Xg血液型(抗Xga)
STEP 3 不規則抗体スクリーニング・同定の手順と注意点を学ぶ(丸山美津子)
不規則抗体スクリーニング・同定の目的と意義
不規則抗体スクリーニング・同定の準備
不規則抗体の検査法
抗体スクリーニング陽性から抗体同定までの流れ
抗体同定の過程で必要となる基本的な知識
抗体同定の手順
IAT単独で抗体スクリーニングを行う場合
不規則抗体検査の限界
STEP 4 症例問題で学ぶ 抗体同定の進め方とポイント(江頭弘一)
PART 03 交差適合試験
STEP 1 交差適合試験の基本を学ぶ(日高陽子)
交差適合試験とは
交差適合試験に用いる検体
交差適合試験を行う前に
交差適合試験の方法
主試験
副試験
交差適合試験の手順
結果の解釈
交差適合試験の限界
生後3カ月未満の児
血小板濃厚液と新鮮凍結血漿の交差適合試験
STEP 2 コンピュータクロスマッチの基本と注意点を知る(日高陽子)
コンピュータクロスマッチとは
コンピュータクロスマッチの条件
コンピュータクロスマッチのメリット・デメリット
STEP 3 症例問題で学ぶ 交差適合試験の実践と考え方(天本貴広)
PART 04 新生児・乳児の輸血検査/母児不適合妊娠の輸血検査
(川畑絹代)
ABO血液型検査
RhD血液型検査
不規則抗体検査
交差適合試験
コンピュータクロスマッチ
生児・乳児への輸血製剤
胎児・新生児溶血性疾患(HDFN)
HDFNの輸血関連検査
Case
PART 05 造血幹細胞移植患者の移植前後の輸血検査・輸血療法
(水村真也)
輸血検査で必要な造血幹細胞移植に関する知識
造血幹細胞移植前後に行う輸血検査
ABOミスマッチ造血幹細胞移植後の血液型検査と輸血療法
ドナー血液型への変更条件
Case01
Case02
Case03
PART 06 緊急輸血の対応と輸血検査
(村井良精)
Case01-1
Case01-2
Case02
Case03
PART 07 輸血副反応発生時の対応と輸血検査
(山田麻里江)
輸血副反応の報告体制の構築
検査室におけるおもな対応
輸血副反応の分類
輸血感染症
溶血性輸血反応(HTR)
非溶血性輸血反応
Case
輸血検査 Q&A(松浦秀哲)
(1)凝集反応の判定のコツを教えてください
(2)オモテ・ウラ不一致時の対応は?
(3)輸血検査の結果に影響する要因を教えてください
(4)PEG-IATにおける偽陽性の原因・対策は?
(5)輸血拒否患者への対応を教えてください
(6)新任技師の教育をどうしていますか?
(7)輸血の専門用語の伝え方を教えてください
(8)医師・技師間のコミュニケーションのポイントは?