やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

特集 悪液質─内部障害のリハビリテーション栄養
 編集委員 鈴木規雄
 企画主旨
 急速に高齢化が進むわが国において,さまざまな現場でサルコペニアが注目され関心が高まっている.サルコペニアの原因には,加齢,低活動,栄養摂取不足,疾患が挙げられるが,このうち加齢以外によって生じるサルコペニアは二次性サルコペニアと分類される.医療現場で遭遇するサルコペニアの多くは,疾患を有する二次性サルコペニアである.がん,心疾患,呼吸器疾患,腎疾患などの内部障害に起因するサルコペニアは,悪液質の病態が関与すると考えられている.
 いずれの疾患においても悪液質は予後不良であり,悪液質に対する介入が予後の改善に結びつくことは困難である場合が多い.このことは,悪液質に対する介入が積極的になりにくい原因の一つでもある.しかし,悪液質では自覚症状の増悪や,日常生活動作(ADL),生活の質(QOL)の低下が生じ,これらの対策も不可欠である.予後や在院日数など臨床的アウトカム以外に,患者立脚型アウトカムの改善は非常に重要である.また,近年ではがん患者に対する緩和ケアだけでなく,非がん患者に対する緩和ケアの重要性も認識され,診療報酬にも反映されている.アドバンスド・ケア・プランニング(ACP)は早期より望まれ,悪液質を呈する慢性疾患において,緩和ケアによる介入は積極的なものに変わりつつある.悪液質に対して,診断・評価,薬物療法,栄養療法,運動療法に加えて精神的な介入も必要であることが提唱され,これらは多職種で取り組むリハ栄養ケアプロセスそのものともいえる.薬物治療や外科的治療など既存の疾患に対する治療に加えて,リハビリテーション(以下リハ)栄養はさまざまなアウトカム改善の一助となり,緩和ケアにおいても有用な手段として期待される.
 臨床試験の実施や結果から新たな知見も得られているが,多くは海外からの報告であり,わが国からの悪液質に関する研究報告は非常に少ないのが現状である.本特集は悪液質について理解を深めることにより,「悪液質=終末期」「悪液質の介入は意味がない」などの誤解を解き,内部障害におけるリハ栄養の重要性,介入のポイントがより明確になることを期待し企画した.臨床現場においてより多くの患者に適切なリハ栄養が行われ,また悪液質に関する研究の発展につながることを願っている.
特集 悪液質─内部障害のリハビリテーション栄養
 企画主旨
 悪液質とは(内藤立暁)
 悪液質の病態(榊 弥香 乾 明夫)
 悪液質におけるリハビリテーション栄養の必要性─運動療法の視点から(藤原 大)
 悪液質におけるリハビリテーション栄養の必要性─栄養療法の視点から(鈴木達郎)
 悪液質に対する薬物療法(木田圭亮 土井駿一・他)
 疾患ごとの悪液質とリハビリテーション栄養
  がん悪液質(前田圭介)
  心臓悪液質(小西正紹)
  COPDと悪液質(飯田有輝)
  CKD・腎不全と悪液質(齊藤正和 森沢知之・他)
 悪液質に対する緩和ケアとリハビリテーション栄養の役割(森 直治)

連載
新連載【リハ栄養研究の勘所(1)】
 臨床研究の意義と魅力(紙谷 司)

【災害支援とリハビリテーション栄養(6)】
 ウィズコロナ社会におけるリハビリテーション栄養的支援の必需性(田中友規)

リハビリテーション栄養 論文紹介(6)
 (富樫慎太郎)

【リハ栄養あるある(6)】
 急性期における慢性呼吸器疾患患者の低栄養・サルコペニア対策(白土健吾)

原著 Implementation of rehabilitation nutrition care process,evaluation of muscle mass and proposal of oral nutrition supplementation:A crosssectional survey among health workers
 (Yoji Kokura,Hidetaka Wakabayashi et al)

短報 老健入所者の栄養状態と在宅復帰・筋力・ADLの関連
 (濱祐也(井尻朋人・他))

第10回日本リハビリテーション栄養学会学術集会・第1回国際リハビリテーション栄養学会学術集会 抄録集

 日本リハビリテーション栄養学会 入会のすすめ
 日本リハビリテーション栄養学会誌投稿規定
 次号予告