やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第2版の発刊に寄せて
 本書の第一版を発刊してから,12年以上が経過しました.その間,特に悪性腫瘍治療の分子標的治療や糖尿病,高血圧症,脂質異常症などの生活習慣病の治療には,今までの薬物とは作用機構の異なる新薬があいついで開発され臨床に導入されました.今回,これらの進歩を取り入れ,第1版の全ての設問を見直し,最新の薬物治療に対応した薬理学問題集に全面的に改訂しました.
 改訂にあたっても,第1 版のときに掲げた「薬理学全体を幅広い知識をベースに把握できること,重要な薬物と用語を網羅すること,そして,実際の服薬指導の場面を念頭にした構成をとること」の方針を堅持し,薬理学の知識整理や知識確認に役立つように配慮しました.医療系の学生のみならず,現場の医療職者の方にも利用いただければ望外の喜びです.
 第1 版の執筆は,研究室の石塚智子,橋本剛,安原恭子,山本亮子の協力のもとに,山本浩一と大和谷で編集しましたが,第2版は,山本浩一が執筆し,大和谷が監修するかたちで改訂しました.第2版発刊にあたって,第1版執筆に協力してくれた4名のスタッフにあらためて謝意を表します.また,編集部の近藤信幸さんの辛抱強いサポートと,原稿に対する的確なご意見に助けられ改訂することができました.心より御礼申し上げます.
 平成29 年1 月
 山本 浩一
 大和谷 厚


 薬理学は難しいと考えている学生が多いようです.しかし,臨床で働くようになってから,もっと薬理学を勉強しておけば良かったと切実に思うという話も卒業生からよく聞きます.薬理学の難しさは,解剖学,生理学,生化学,病理学などの基礎医学の知識と,臨床医学の知識が薬の作用を理解するために必要なことと,たくさんの薬の名前を覚えなければならないことにあるように思います.
 そこで,この本ではQ&Aの形で,薬理学全体を幅広い知識をベースに把握できることと,必要な薬物名と用語名を網羅し,自然に記憶できることを目指し,看護師教育のカリキュラムと看護師国家試験の問題をベースにし,実際の服薬指導の場面を念頭に構成しました.さらに,医学部,歯学部,薬学部の学生の知識整理にも,臨床現場で働いておられる現役の医療職者の方の知識確認にも十分利用できるように配慮しました.
 本書が国家試験の準備だけでなく,薬理学が好きになるきっかけになり,医療職者が医療現場で,それぞれの立場から適切な薬物療法の確立に寄与できることに少しでも役立てば望外の喜びです.
 最後に,この本は医歯薬出版の竹内大さんとの長年の個人的なおつきあいの延長上で企画ができあがり,研究室のスタッフの協力のおかげでそれを実現することができました.深く謝意を表します.
 平成16 年2 月
 大和谷 厚
 第2版の発刊に寄せて
 序
 本書の特徴と使い方
第1章 薬物と薬剤
 1. 薬の種類
 2. 処方箋と剤形
第2章 薬物に対する生体の反応
 1. 用法・用量
 2. 薬物受容体
 3. 主作用と副作用
第3章 薬物の体内動態
 1. 吸収
 2. 分布
 3. 代謝
 4. 排泄
 5. 薬物血中濃度
 6. 薬物相互作用
第4章 薬物中毒
 1. 急性中毒
 2. 依存症と禁断症状
第5章 投与方法と薬理作用
 1. 経口投与
 2. 非経口投与
  2.1 注射 2.2 吸入
  2.3 直腸内適用・経皮適用・局所適用
第6章 主な治療薬とその特徴
 1. 末梢神経作用薬
  1.1 自律神経作用薬 1.2 局所麻酔薬 1.3 筋弛緩薬
 2. 中枢神経作用薬
  2.1 全身麻酔薬 2.2 催眠鎮静薬・抗不安薬
  2.3 抗精神病薬 2.4 抗うつ薬と抗躁薬
  2.5 パーキンソン病治療薬 2.6 抗てんかん薬
  2.7 麻薬・オピオイド鎮痛薬・鎮痛作用のある薬物
  2.8 中枢神経興奮薬
 3. 消炎薬
  3.1 非ステロイド性消炎鎮痛薬 3.2 抗アレルギー薬
  3.3 副腎皮質ステロイド薬
 4. 循環器疾患治療薬
  4.1 強心薬 4.2 狭心症治療薬 4.3 不整脈治療薬
  4.4 高血圧治療薬 4.5 脂質異常症治療薬 4.6 利尿薬
  4.7 血液に作用する薬物
 5. 消化器疾患治療薬
  5.1 健胃消化薬 5.2 消化性潰瘍治療薬 5.3 制吐薬
  5.4 止痢薬 5.5 下剤 5.6 肝・胆・膵疾患治療薬
 6. 内分泌・代謝疾患治療薬
  6.1 糖尿病治療薬 6.2 甲状腺疾患治療薬
  6.3 脳下垂体ホルモン 6.4 生殖器系に作用する薬物
  6.5 骨粗鬆症治療薬 6.6 痛風治療薬
  6.7 ビタミン欠乏症治療薬
 7. 呼吸器疾患治療薬
  7.1 鎮咳去痰薬 7.2 気管支拡張薬
 8. 感染症治療薬
  8.1 抗生物質・抗菌薬の基礎 8.2 抗生物質
  8.3 抗菌薬 8.4 抗結核薬 8.5 抗ウイルス薬
  8.6 抗真菌薬 8.7 抗原虫薬・駆虫薬
  8.8 免疫抑制薬・抗リウマチ薬
 9. 悪性腫瘍治療薬
  9.1 アルキル化薬 9.2 代謝拮抗薬 9.3 抗生物質
  9.4 微小管阻害剤 9.5 白金錯化合物 9.6 ホルモン
  9.7 その他の抗悪性腫瘍薬 9.8 分子標的治療薬
 10. その他の疾患に対する予防・治療薬
  ワクチン 消毒薬 輸液
第7章 放射線検査に用いる薬物とその特徴
 1. 造影剤
 2. 放射性医薬品
 3. 放射線治療副作用対策薬
第8章 薬物療法
 1. 服薬状況の把握・コンプライアンス
 2. プラセボ効果
 3. 療養者に対する服薬方法の工夫と指導
 4. 医療者の連携
 5. 高齢者・小児・妊婦の薬物療法
  5.1 加齢と薬物作用 5.2 小児への投与
  5.3 妊婦への投与

 索引