第3版発行にあたって
本書の初版は,今から約22年前の1998年に発行されました.当時,看護学のテキストはカラー印刷が少なく,看護にとって重要な観察は結果についての記述が多く,方法の記述が少なかったことから,カラー印刷で配布していた講義資料を1冊にまとめ,書籍として発行しました.当時,オールカラー印刷は容易ではなく,出版社に大変な無理を言っての発行でした.初版発行から約10年後の2007年に改訂しましたが,その後も医療の進歩は目覚ましく,機器の改良や機種の変更,新生児のケアとして清拭が主流となるなどさまざまな変化がみられることから,このたび第3版として内容の刷新を図ることとしました.
第3版では,新生児の清拭法,新機種を用いての新生児黄疸の観察法を加え,授乳法も新たな方法を追加するなど,より詳細な内容としました.また,解剖学的なイラストを追加することにより,写真で示した技術を解剖学的にも理解していただけるように工夫しました.さらに,初版から引き続き,手順が必要な理由や技術のエビデンス,歴史的背景などを「POINT」として適宜紹介しています.
日常生活において妊婦や新生児と接触する機会が少なく青年期を迎え,看護教育を受けて臨地実習ではじめて妊婦・新生児に接するという学生の皆様にもイメージしやすく,学習書として役立てていただければ幸いです.
決して懐古主義ではありませんが,天災の多い近年,いつ・どのような時も看護は必要であり,対応できなければならないというのが信条です.まして,ヒトの出生は時も場所も選びません.「停電だから機器を使えない」などとは言っていられません.本書にも,あえてトラウベ聴診器を用いた胎児心音聴取の技術を紹介しています.五感をフルに活用すれば観察はできる,基本となることに習熟していれば危機的対応はできると考えるからです.
今回の改訂にあたって,初版,第2版同様に看護教育のためにと快くモデルを承諾していただき,撮影にご協力いただいた皆様に心から感謝申し上げます.また,写真撮影の便宜を図ってくださいました方々にも深くお礼申し上げます.
昨年からの自然災害,さらに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行という大変な状況下での制作となりましたが,医歯薬出版担当各位には多大なるご協力とご助言を賜り,改めてお礼申し上げます.
2020年11月
櫛引美代子
はじめに─初版発行にあたって
看護教育において,技術教育が最優先されることでないのはいうまでもないが,理論的技術の教育をいかにして効果的に行うかは,教師の重要な課題である.教育方法は講義,視聴覚教育,演習と段階的に進められ,実習において理論と実践の統合が図られることが多い.一方,学生は限られた実習時間に講義で学んだ理論を実践と統合することによって,知識を深め,看護能力を高めることになる.また,学生は実習場で対象者に的確な技術を行使できることによって看護の達成感が高まり,主体的な看護の展開を考える重要な要因となる.
時代とともに学生の生活経験は乏しく,それが看護教育において看護技術の修得に影響を及ぼしている.また,少子化と核家族化の社会現象によって,乳幼児や妊婦との接触機会がないままに成長する世代が増加している.多くの看護学生は,母性看護学実習で初めて新生児や妊婦に接触することになる.そこでは,戸惑いがみられ,緊張感だけが高まってくることさえある.看護学実習で,学生は自分自身が計画し,実施しようとする看護技術を自己学習や復習を繰り返すことによって,生き生きと看護を実践している状況がしばしばみられる.
そこで,母性看護技術の自己学習や復習に活用できる手軽な冊子と考えて本書をまとめた.本書は看護学生が実習場で最も汎用する技術について,講義や学内演習の教授内容をもとにまとめたものである.内容の構成はカラー写真を中心に手順を図示し,手順の原理や実施の際の留意事項,関連項目をポイントに付記した.母性看護技術の自己学習はもちろんのこと,実習中に曖昧な部分や忘れた部分について,必要なページをちょっと開いて復習できるように考慮した.大いに本書を活用して看護学に意欲を燃やしていただけることを期待している.
また,保育器は母性看護学実習においてのみならず,小児・小児外科領域でも使われる器械である.看護婦が後片づけや消毒を行わない場合でも,専門的見地から方法を指示できるようにと考えて本書の内容に含めた.したがって,看護学生に限らず,職場の新人教育にも活用できるかと考えている.
本書の発刊にあたって,快くモデルになってくださった方々,撮影に協力してくださった本学部の学生の皆さんに心から感謝申し上げます.なお,イラスト原画の作成にあたっては,本学部卒業生の牛丸千代美さんのご協力によるものであり,感謝申し上げます.
また,医歯薬出版担当各位には多大なるご協力とご助言を賜り,改めて感謝申し上げます.
1998年10月
櫛引美代子
本書の初版は,今から約22年前の1998年に発行されました.当時,看護学のテキストはカラー印刷が少なく,看護にとって重要な観察は結果についての記述が多く,方法の記述が少なかったことから,カラー印刷で配布していた講義資料を1冊にまとめ,書籍として発行しました.当時,オールカラー印刷は容易ではなく,出版社に大変な無理を言っての発行でした.初版発行から約10年後の2007年に改訂しましたが,その後も医療の進歩は目覚ましく,機器の改良や機種の変更,新生児のケアとして清拭が主流となるなどさまざまな変化がみられることから,このたび第3版として内容の刷新を図ることとしました.
第3版では,新生児の清拭法,新機種を用いての新生児黄疸の観察法を加え,授乳法も新たな方法を追加するなど,より詳細な内容としました.また,解剖学的なイラストを追加することにより,写真で示した技術を解剖学的にも理解していただけるように工夫しました.さらに,初版から引き続き,手順が必要な理由や技術のエビデンス,歴史的背景などを「POINT」として適宜紹介しています.
日常生活において妊婦や新生児と接触する機会が少なく青年期を迎え,看護教育を受けて臨地実習ではじめて妊婦・新生児に接するという学生の皆様にもイメージしやすく,学習書として役立てていただければ幸いです.
決して懐古主義ではありませんが,天災の多い近年,いつ・どのような時も看護は必要であり,対応できなければならないというのが信条です.まして,ヒトの出生は時も場所も選びません.「停電だから機器を使えない」などとは言っていられません.本書にも,あえてトラウベ聴診器を用いた胎児心音聴取の技術を紹介しています.五感をフルに活用すれば観察はできる,基本となることに習熟していれば危機的対応はできると考えるからです.
今回の改訂にあたって,初版,第2版同様に看護教育のためにと快くモデルを承諾していただき,撮影にご協力いただいた皆様に心から感謝申し上げます.また,写真撮影の便宜を図ってくださいました方々にも深くお礼申し上げます.
昨年からの自然災害,さらに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行という大変な状況下での制作となりましたが,医歯薬出版担当各位には多大なるご協力とご助言を賜り,改めてお礼申し上げます.
2020年11月
櫛引美代子
はじめに─初版発行にあたって
看護教育において,技術教育が最優先されることでないのはいうまでもないが,理論的技術の教育をいかにして効果的に行うかは,教師の重要な課題である.教育方法は講義,視聴覚教育,演習と段階的に進められ,実習において理論と実践の統合が図られることが多い.一方,学生は限られた実習時間に講義で学んだ理論を実践と統合することによって,知識を深め,看護能力を高めることになる.また,学生は実習場で対象者に的確な技術を行使できることによって看護の達成感が高まり,主体的な看護の展開を考える重要な要因となる.
時代とともに学生の生活経験は乏しく,それが看護教育において看護技術の修得に影響を及ぼしている.また,少子化と核家族化の社会現象によって,乳幼児や妊婦との接触機会がないままに成長する世代が増加している.多くの看護学生は,母性看護学実習で初めて新生児や妊婦に接触することになる.そこでは,戸惑いがみられ,緊張感だけが高まってくることさえある.看護学実習で,学生は自分自身が計画し,実施しようとする看護技術を自己学習や復習を繰り返すことによって,生き生きと看護を実践している状況がしばしばみられる.
そこで,母性看護技術の自己学習や復習に活用できる手軽な冊子と考えて本書をまとめた.本書は看護学生が実習場で最も汎用する技術について,講義や学内演習の教授内容をもとにまとめたものである.内容の構成はカラー写真を中心に手順を図示し,手順の原理や実施の際の留意事項,関連項目をポイントに付記した.母性看護技術の自己学習はもちろんのこと,実習中に曖昧な部分や忘れた部分について,必要なページをちょっと開いて復習できるように考慮した.大いに本書を活用して看護学に意欲を燃やしていただけることを期待している.
また,保育器は母性看護学実習においてのみならず,小児・小児外科領域でも使われる器械である.看護婦が後片づけや消毒を行わない場合でも,専門的見地から方法を指示できるようにと考えて本書の内容に含めた.したがって,看護学生に限らず,職場の新人教育にも活用できるかと考えている.
本書の発刊にあたって,快くモデルになってくださった方々,撮影に協力してくださった本学部の学生の皆さんに心から感謝申し上げます.なお,イラスト原画の作成にあたっては,本学部卒業生の牛丸千代美さんのご協力によるものであり,感謝申し上げます.
また,医歯薬出版担当各位には多大なるご協力とご助言を賜り,改めて感謝申し上げます.
1998年10月
櫛引美代子
第3版発行にあたって
はじめに─初版発行にあたって
1 清潔法
1 沐浴法
目的/必要物品/留意事項/方法
2 清拭法
2 新生児黄疸の観察と治療
1 スクリーニング法
目的/方法
2 光線療法(光線療法ユニットの場合)
目的/準備/方法
3 新生児身体計測
目的/必要物品/留意事項/計測部位と計測方法
4 胎盤の検査
目的/必要物品/方法
5 直接授乳法と新生児の抱き方
1 直接授乳法(1)
2 直接授乳法(2)
3 直接授乳時の抱き方と工夫
4 排気(ゲップ)の方法
5 新生児の抱き方
6 おくるみの使い方
6 直接哺乳量の測定法
必要物品/方法
7 保育器の準備と消毒法
1 保育器の準備
2 保育器の消毒法
8 骨盤外計測
目的/必要物品/方法
9 妊婦の観察法
1 レオポルド触診法
目的/準備/方法
2 胎児心音(児心音)聴取
3 子宮底長測定と腹囲測定
必要物品/準備/方法
文献一覧
はじめに─初版発行にあたって
1 清潔法
1 沐浴法
目的/必要物品/留意事項/方法
2 清拭法
2 新生児黄疸の観察と治療
1 スクリーニング法
目的/方法
2 光線療法(光線療法ユニットの場合)
目的/準備/方法
3 新生児身体計測
目的/必要物品/留意事項/計測部位と計測方法
4 胎盤の検査
目的/必要物品/方法
5 直接授乳法と新生児の抱き方
1 直接授乳法(1)
2 直接授乳法(2)
3 直接授乳時の抱き方と工夫
4 排気(ゲップ)の方法
5 新生児の抱き方
6 おくるみの使い方
6 直接哺乳量の測定法
必要物品/方法
7 保育器の準備と消毒法
1 保育器の準備
2 保育器の消毒法
8 骨盤外計測
目的/必要物品/方法
9 妊婦の観察法
1 レオポルド触診法
目的/準備/方法
2 胎児心音(児心音)聴取
3 子宮底長測定と腹囲測定
必要物品/準備/方法
文献一覧