やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 人はみな健康でありたいと願っています.しかし,突然病に倒れることがあり,その瞬間から日常生活が一変してしまいます.治療を受けるために入院したり,在宅での療養を強いられたりすることで,はじめて健康のありがたさに気づく人が多いと思います.また,疾患の多くに生活習慣が関わっていることを知るたびに,疾患予防にかかわるという看護の役割がいかに重要であるかを痛感させられます.
 さて,看護師を目指しているみなさんにとって,直近の目標は看護師国家試験に合格することだと思います.とはいえ,とくに実習中は,事前学習やレポート作成のために睡眠時間を削ることもあり,想像していた以上に大変だと思います.なかには,実習と国家試験対策の両立は難しいと感じて,焦っている人や不安を募らせている人もいるでしょう.しかし,国家試験対策に長年かかわってきた経験から,実習での学びこそが国家試験合格の鍵を握っていると感じています.
 重要なことは実習での学び方です.受け持たせていただく患者さんの疾患について,病態と看護を中心に勉強される人が多いと思いますが,多くの学生さんから「関連図が書けない」「アセスメントできない」という話を聞きます.くわしく話を聞いていくと,それらの原因はおそらく,人間の身体の仕組みそのものをきちんと理解していないことにあります.人間の身体の構造と機能がわからなければ,疾患の成り立ちも看護もつながりません.たとえば腎不全の患者さんの看護をするとき,皆さんはどのように看護展開しますか? 私がおすすめしたい勉強法は,真っ先に正常な腎臓の構造や機能について復習することです.そして,腎不全というのは腎臓の機能が低下して,腎臓本来の仕事ができなくなっている状態ですから,いったいどの程度機能が低下しているのだろうか? それを知るために何の検査をするのか? 結果はどうだったのか? この結果から予測できることは何か? どのような症状が出現するのだろうか? この状態にある患者さんに必要な看護は何か? と考えていくことがポイントだと思います.
 そこで,『解剖と疾患と看護がつながる!』(2010年初版発行,医歯薬出版)という本を出版しました.すると,多くの方から「解剖と疾患と看護がつながっていく勉強はおもしろい!」「楽しい!」という感想をお寄せいただきました.さらに「他の疾患についてももっと勉強したい!」という声や「看護展開の力をつけたい!」というご要望も多く寄せられたため,今回は,最近の看護師国家試験に出題された疾患のなかから,各領域の頻出疾患を取りあげて解説しました.日頃よく耳にする疾患ばかりだと思います.しっかり看護展開できるよう,解剖から疾患をふまえたうえで必要な情報の取り方などを学んでいただければと思います.情報不足のまま思い込みで看護をすることなく,病態からアセスメントできる力を身につけ,正確な知識にもとづく看護ができるプロフェッショナルとして成長されますことを願っております.
 最後に,みなさん全員が看護師国家試験に合格されることを心からお祈りいたします.
 さわ 和代
Chapter 1 心筋梗塞
Chapter 2 肺癌
Chapter 3 大腸癌
Chapter 4 脳梗塞
Chapter 5 大腿骨頸部骨折
Chapter 6 ネフローゼ症候群
Chapter 7 乳癌
Chapter 8 川崎病
Chapter 9 白血病
Chapter 10 統合失調症
Appendix 関連図のかき方 ワンポイント講座