やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 助産学実習では,助産師国家試験受験資格が得られる要件として分娩介助10例程度を経験する必要があります.そのため助産学生にとって助産学実習は刻一刻と変化する分娩進行状態を判断し,産婦や胎児・新生児とその家族のケアをすすめていくという新しい経験の連続となります.高齢妊娠や合併症妊娠など,リスクを抱える産婦も多くなっている今日,助産学生であっても分娩誘発や吸引分娩,緊急帝王切開へ移行する事例などに遭遇することがあります.看護職者の業務拡大・包括指示の流れのなか,助産師がどう判断して医師と協働するのか,正常分娩の知識だけでなく,リスクの高い産婦とその家族へのケアとその思考過程を事前に学んでおかなければ対応できない時代になってきています.
 さらに,日本助産師会の助産業務ガイドライン2014にも記載されているように開示できる記録が求められています.助産師は自分が何の情報を収集し,どうアセスメント・判断して,何を実施したのかを的確にタイムリーに説明し,記録する義務があります.事例のアセスメントやケアの根拠と内容,そして評価という一連の助産過程についてきちんと記録するトレーニングを学生の時に受けておく必要があります.
 このような背景のもと,本書では「分娩期」を中心の構成とし,正常分娩とリスクの高い産婦へのアセスメントとケアにおいて必要な知識,情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント),助産診断(看護診断),助産計画(看護計画)という流れを,事例を通じて思考過程に沿って学習できるように書かれています.また,本書は既刊の「母性看護実習プレブック」の姉妹編としてより詳細な情報からのアセスメントとケア計画を“自己学習できるワークブック”として位置づけています.
 第1編「産婦のアセスメントとケア」では,助産学生が臨地実習で受け持つと予測される事例を想定して助産過程が展開できるように構成しています.正常から逸脱した事例は,初産婦の事例を基本として特徴的な部分を学べるようにしました.
 第2編「新生児のアセスメントとケア」では,生後24時間までの正常新生児および帝王切開で生まれた新生児のアセスメントとケアを取り上げています.帝王切開で生まれた新生児の事例は第3編の予定帝王切開の事例と対応していますので,あわせてお読みいただければ幸いです.
 第3編「ハイリスク産婦と新生児のアセスメントとケア」では,臨床で遭遇する典型的な事例として,予定帝王切開,分娩誘発のほか,妊娠高血圧症候群と妊娠糖尿病の産科合併症,早産(妊娠32週〜36週),多胎を取り上げました.そして,特に注意が必要な妊娠糖尿病,早産,多胎についてはハイリスク産婦から生まれた新生児のアセスメントとケアを対応させています.特に,アセスメントやケアの根拠となる知識はなるべく最新のエビデンスを掲載するように努め,穴埋め式で知識を確認したり,ケア計画を書き込んだりすることによって思考過程が強化されるように工夫しました.
 助産学生にとっては,実習前に臨床で必要な知識とアセスメント能力を養うための教材として本書を活用していただければと考えます.また,判断と助産ケアのプロセスが思考過程に沿って示されていますので,改めて勉強したいという助産師にとっても,臨床で遭遇するその他の事例でも応用できる力を身につけることができるものと期待いたします.
 本書を用いた学習により知識の整理,アセスメントポイントの理解,事例に適した個別的なケア展開の学習が深められることを願っています.
 最後になりましたが,本書の企画から出版に至るまで,本当に長期間にわたり根気強く支援して下さり,多大なるお力添えをいただきました医歯薬出版の編集部の皆様に心より深謝申し上げます.
 2015年 初秋
 町浦美智子
 本書の特徴と使い方
第1編 産婦のアセスメントとケア
 1 初産婦の分娩期の援助(町浦美智子)
  分娩第1期 電話連絡時
   (1)アセスメントに必要な知識
   (2)事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   (3)事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   (4)助産計画の立案(目標と具体策)
  分娩第1期 入院時
   (1)アセスメントに必要な知識
   (2)事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   (3)事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   (4)助産計画の立案(目標と具体策)
  分娩第1期 極期〜分娩第2期
   (1)アセスメントに必要な知識
   (2)事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   (3)事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   (4)助産計画の立案(目標と具体策)
  分娩第3期
   (1)アセスメントに必要な知識
   (2)事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   (3)事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   (4)助産計画の立案(目標と具体策)
  分娩第4期
   (1)アセスメントに必要な知識
   (2)事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   (3)事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   (4)助産計画の立案(目標と具体策)
  分娩2時間後〜初回歩行まで
   (1)アセスメントに必要な知識
   (2)事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   (3)事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   (4)助産計画の立案(目標と具体策)
 2 経産婦の分娩第1期〜第2期の援助(町浦美智子)
  分娩第1期 電話連絡時
   (1)アセスメントに必要な知識
   (2)事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   (3)事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   (4)助産計画の立案(目標と具体策)
  分娩第1期 入院時
   (1)アセスメントに必要な知識
   (2)事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   (3)事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   (4)助産計画の立案(目標と具体策)
  入院1時間後
   (1)アセスメントに必要な知識
   (2)事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   (3)事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   (4)助産計画の立案(目標と具体策)
  分娩室入室後〜分娩まで
   (1)アセスメントに必要な知識
   (2)事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   (3)事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   (4)助産計画の立案(目標と具体策)
   (5)その後の経過
 3 正常から逸脱した産婦の援助(佐々木くみ子)
  疲労性微弱陣痛による促進分娩
   (1)アセスメントに必要な知識
   (2)事例 疲労性微弱陣痛による促進分娩
   (3)事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   (4)事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   (5)助産計画の立案(目標と具体策)
   (6)その後の経過
  回旋異常(後方後頭位)による遷延分娩
   (1)アセスメントに必要な知識
   (2)事例 回旋異常(後方後頭位)による遷延分娩
   (3)事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   (4)事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   (5)助産計画の立案(目標と具体策)
   (6)その後の経過
  分娩停止による緊急帝王切開分娩
   (1)アセスメントに必要な知識
   (2)事例 分娩停止による緊急帝王切開分娩
   (3)事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   (4)事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   (5)助産計画の立案(目標と具体策)
   (6)その後の経過
  分娩第2期の胎児機能不全による吸引分娩
   (1)アセスメントに必要な知識
   (2)事例 分娩第2期の胎児機能不全による吸引分娩
   (3)事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   (4)事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   (5)助産計画の立案(目標と具体策)
   (6)その後の経過
第2編 新生児のアセスメントとケア
 1 生後24時間までの新生児のケア( 知恵)
  出生直後〜2時間後
   (1)アセスメントに必要な知識
   (2)事例 生後24時間までの正常新生児(出生直後〜2時間後)
   (3)事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   (4)事例の健康課題の導き方と健康課題の決定
   (5)看護計画の立案(目標と具体策)
  生後6時間後
   (1)アセスメントに必要な知識
   (2)事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   (3)事例の健康課題の導き方と健康課題の決定
   (4)看護計画の立案(目標と具体策)
  生後12〜24時間後
   (1)アセスメントに必要な知識
   (2)事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   (3)事例の健康課題の導き方と健康課題の決定
   (4)看護計画の立案(目標と具体策)
 2 帝王切開で産まれた新生児のケア( 知恵)
   (1)アセスメントに必要な知識
   (2)事例 帝王切開で生まれた新生児
   (3)事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   (4)事例の健康課題の導き方と健康課題の決定
   (5)看護計画の立案(目標と具体策)
第3編 ハイリスク産婦と新生児のアセスメントとケア
 1 予定帝王切開を受ける産婦の援助(古山美穂)
   (1)アセスメントに必要な知識
   (2)事例 予定帝王切開術を受ける産婦
   (3)事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   (4)事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   (5)助産計画の立案(目標と具体策)
 2 分娩誘発を行う産婦の援助(山田加奈子)
   (1)アセスメントに必要な知識
   (2)事例 分娩誘発を行う産婦
   (3)事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   (4)事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   (5)助産計画の立案(目標と具体策)
   (6)その後の経過
 3 産科合併症によるハイリスク産婦の分娩
  妊娠高血圧症候群軽症のある産婦の援助(山田加奈子)
   (1)アセスメントに必要な知識
   (2)事例 妊娠高血圧症候群軽症のある産婦
   (3)事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   (4)事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   (5)助産計画の立案(目標と具体策)
  妊娠糖尿病のある産婦の援助(山田加奈子)
   (1)アセスメントに必要な知識
   (2)事例 妊娠糖尿病のある産婦
   (3)事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   (4)事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   (5)助産計画の立案(目標と具体策)
  妊娠糖尿病の産婦から生まれた新生児のケア(佐保美奈子)
   (1)アセスメントに必要な知識
   (2)事例 妊娠糖尿病の産婦から生まれた新生児
   (3)事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   (4)事例の健康課題の導き方と健康課題の決定
   (5)看護計画の立案(目標と具体策)
  早産(妊娠32〜36週)となる産婦への援助(古山美穂)
   (1)アセスメントに必要な知識
   (2)事例 早産(妊娠32〜36週)の産婦
   (3)事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   (4)事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   (5)助産計画の立案(目標と具体策)
  早産で生まれた新生児のケア(佐保美奈子)
   (1)アセスメントに必要な知識
   (2)事例 早産で生まれた新生児
   (3)事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   (4)事例の健康課題の導き方と健康課題の決定
   (5)看護計画の立案(目標と具体策)
  多胎分娩をする産婦の援助(古山美穂)
   (1)アセスメントに必要な知識
   (2)事例 多胎分娩の産婦
   (3)事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   (4)事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   (5)助産計画の立案(目標と具体策)
   (6)その後の経過
  多胎で生まれた低出生体重児のケア(佐保美奈子)
   (1)アセスメントに必要な知識
   (2)事例 多胎で生まれた低出生体重児
   (3)事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   (4)事例の健康課題の導き方と健康課題の決定
   (5)看護計画の立案(目標と具体策)

 索引