新版 序にかえて
「糖尿病コンサルテーションブック」を出版してから8年の月日が経ちました.わたくしたちの予想以上に多くの皆様にお読みいただきましたこと,編集に携わったものとしてこころよりお礼申し上げます.今回,ガイドラインの更新や新たなエビデンスの蓄積を基に,より幅広い分野におけるコンサルテーションに対応できるようにと「新版 糖尿病コンサルテーションブック」を作成いたしました.
わたくしが医師としての第一歩を踏み出したのはもう40年以上も前のことです.当時の勤務先の病院では“consultation sheet”という書類がありました.院内の医師からアドバイスをもらうためのもので,A4サイズのシートの上半分のみが複写式となっており,コンサルテーションを受けたい内容について記載し,複写式の上の薄いシートのみが専門医のもとに届けられます.専門医の回答は診療記録(chart)に綴じられたシートの下半分にコンパクトに記載されるというものでした.薄いコンサルテーションシートを何枚も白衣のポケットに詰め込んで,院内の各階をさっそうとラウンドするスタッフ医師はレジデントには憧れの的でした.そのようななかで「吉岡,院内でのコンサルテーションはあたりまえ,院外の専門医からコンサルテーションが来るようになったら,お前が一人前になったということだよ……」と大先輩から教えられたことは,いまも忘れられません.いつかはきっと,一人前の医師に……と思い続けていますが,effective clinicianへの道は遠く険しいものです.
糖尿病に関連したコンサルテーションのほとんどは,血糖のマネジメントに関するものです.スマートで的確な血糖値のマネジメントは素敵です.しかし,検査値を見て,指示を出して完了――というのではなく,患者さんを丁寧に診察し,治療の必要性について十分に説明を行い納得していただく必要があります,“血糖=糖尿病”ではありません.血糖値の異常の裏側にある病態,患者さんの思い,長期的な治療を継続する際に妨げとなり得る社会的な背景などについても十分にこころを砕いてコンサルテーションを行う必要があります.
このコンサルテーションブックを毎日の診療に十分に活用いただき,患者さんたちのよりよい医療のために役立てていただきたいと思います.
2022年7月
NTT東日本札幌病院
吉岡成人
序にかえて
人口の高齢化とともに,日本における糖尿病の患者数は増加の一途をたどっています.
平成25年12月に厚生労働省が公表した平成23年国民健康・栄養調査によると,糖尿病の患者数は推計で950万人,糖尿病の患者と糖尿病予備群の合計は2,050万人にも及んでいます.しかも,高齢の糖尿病患者は著しく増加しており,60歳以上の男性の約25%,女性でも約14%が医療機関で糖尿病ないしは糖尿病の予備群であると指摘されたことがあると報告されています.私たちの施設でも,外来に通院している2型糖尿病患者の平均年齢は65歳を超え,80歳代の患者が全体の11%を占めています.
糖尿病患者の増加や高齢化などを背景として,糖尿病診療を担当する医師・医療スタッフの仕事は,単なる血糖値の管理にとどまるのではなく,社会的に多くの問題を抱え,多臓器の疾患を合併・併発した糖尿病患者をきめ細かく診療し,包括的なケアを行うことに重点が置かれるようになってきました.
私たちは診療の現場で,多くの診療科からさまざまなコンサルテーションを受ける毎日を送っています.手術を控えた糖尿病患者の周術期の管理,静脈栄養,経腸栄養を行っている患者の血糖コントロール,腎機能障害,肝機能障害を伴った患者の代謝管理,感染症への対応,精神的な問題への対応,小児期,青壮年期,老年期などのライフステージに応じたマネジメントなど…バラエティに富んだコンサルテーションの内容に対して,迅速で的確な対応を行うことが求められています.
今回の別冊プラクティスでは,他科からのコンサルテーションにいかにして効果的な対応を行うかについて,森 保道先生を中心とした『プラクティス』の全編集委員が,文字どおり「総力を挙げて」考え抜いたものを読者の皆様に提供することになりました.プラクティカルで読みやすいコンサルテーションブックを作成しようと考え,サイズも従来のB5判から皆様により使いやすいであろうA4判変型に変更し,ひとまわり大きくしてみました.
読者の皆様が,他科からコンサルテーションを受けられたときに,本書を手に取っていただき,一つひとつの論文のエッセンスをくみ取って,今まで以上にスムーズな対応を行っていただくことができれば,編集に携わったものとしてこれ以上の喜びはありません.
2014年3月
NTT東日本札幌病院 糖尿病内分泌内科
吉岡成人
「糖尿病コンサルテーションブック」を出版してから8年の月日が経ちました.わたくしたちの予想以上に多くの皆様にお読みいただきましたこと,編集に携わったものとしてこころよりお礼申し上げます.今回,ガイドラインの更新や新たなエビデンスの蓄積を基に,より幅広い分野におけるコンサルテーションに対応できるようにと「新版 糖尿病コンサルテーションブック」を作成いたしました.
わたくしが医師としての第一歩を踏み出したのはもう40年以上も前のことです.当時の勤務先の病院では“consultation sheet”という書類がありました.院内の医師からアドバイスをもらうためのもので,A4サイズのシートの上半分のみが複写式となっており,コンサルテーションを受けたい内容について記載し,複写式の上の薄いシートのみが専門医のもとに届けられます.専門医の回答は診療記録(chart)に綴じられたシートの下半分にコンパクトに記載されるというものでした.薄いコンサルテーションシートを何枚も白衣のポケットに詰め込んで,院内の各階をさっそうとラウンドするスタッフ医師はレジデントには憧れの的でした.そのようななかで「吉岡,院内でのコンサルテーションはあたりまえ,院外の専門医からコンサルテーションが来るようになったら,お前が一人前になったということだよ……」と大先輩から教えられたことは,いまも忘れられません.いつかはきっと,一人前の医師に……と思い続けていますが,effective clinicianへの道は遠く険しいものです.
糖尿病に関連したコンサルテーションのほとんどは,血糖のマネジメントに関するものです.スマートで的確な血糖値のマネジメントは素敵です.しかし,検査値を見て,指示を出して完了――というのではなく,患者さんを丁寧に診察し,治療の必要性について十分に説明を行い納得していただく必要があります,“血糖=糖尿病”ではありません.血糖値の異常の裏側にある病態,患者さんの思い,長期的な治療を継続する際に妨げとなり得る社会的な背景などについても十分にこころを砕いてコンサルテーションを行う必要があります.
このコンサルテーションブックを毎日の診療に十分に活用いただき,患者さんたちのよりよい医療のために役立てていただきたいと思います.
2022年7月
NTT東日本札幌病院
吉岡成人
序にかえて
人口の高齢化とともに,日本における糖尿病の患者数は増加の一途をたどっています.
平成25年12月に厚生労働省が公表した平成23年国民健康・栄養調査によると,糖尿病の患者数は推計で950万人,糖尿病の患者と糖尿病予備群の合計は2,050万人にも及んでいます.しかも,高齢の糖尿病患者は著しく増加しており,60歳以上の男性の約25%,女性でも約14%が医療機関で糖尿病ないしは糖尿病の予備群であると指摘されたことがあると報告されています.私たちの施設でも,外来に通院している2型糖尿病患者の平均年齢は65歳を超え,80歳代の患者が全体の11%を占めています.
糖尿病患者の増加や高齢化などを背景として,糖尿病診療を担当する医師・医療スタッフの仕事は,単なる血糖値の管理にとどまるのではなく,社会的に多くの問題を抱え,多臓器の疾患を合併・併発した糖尿病患者をきめ細かく診療し,包括的なケアを行うことに重点が置かれるようになってきました.
私たちは診療の現場で,多くの診療科からさまざまなコンサルテーションを受ける毎日を送っています.手術を控えた糖尿病患者の周術期の管理,静脈栄養,経腸栄養を行っている患者の血糖コントロール,腎機能障害,肝機能障害を伴った患者の代謝管理,感染症への対応,精神的な問題への対応,小児期,青壮年期,老年期などのライフステージに応じたマネジメントなど…バラエティに富んだコンサルテーションの内容に対して,迅速で的確な対応を行うことが求められています.
今回の別冊プラクティスでは,他科からのコンサルテーションにいかにして効果的な対応を行うかについて,森 保道先生を中心とした『プラクティス』の全編集委員が,文字どおり「総力を挙げて」考え抜いたものを読者の皆様に提供することになりました.プラクティカルで読みやすいコンサルテーションブックを作成しようと考え,サイズも従来のB5判から皆様により使いやすいであろうA4判変型に変更し,ひとまわり大きくしてみました.
読者の皆様が,他科からコンサルテーションを受けられたときに,本書を手に取っていただき,一つひとつの論文のエッセンスをくみ取って,今まで以上にスムーズな対応を行っていただくことができれば,編集に携わったものとしてこれ以上の喜びはありません.
2014年3月
NTT東日本札幌病院 糖尿病内分泌内科
吉岡成人
新版 序にかえて(吉岡成人)
I 総論
はじめに〜他科からのコンサルテーションを受けてまずすること(亀卦川(石黒)喜美子・森 保道)
周術期のコンサルテーション(内田貴康・西村明洋)
糖尿病患者の末梢静脈栄養(池田 更・長澤 薫)
糖尿病患者の中心静脈栄養(岩本真彦・植木浩二郎)
薬剤による耐糖能異常(含む免疫チェックポイント阻害薬)(松村公男・亀卦川(石黒)喜美子)
低血糖の原因精査(及川洋一・島田 朗)
化学療法時のコンサルテーション(木村聡一郎・辻本哲郎・森 保道・梶尾 裕)
II 各論
肝疾患(肝炎,NASH/NAFLD,肝硬変)(瀬尾千顕・西村理明)
膵疾患(膵炎,膵がん,自己免疫性膵炎)(安森 翔・藤山 隆・藤森 尚・大野隆真・小川佳宏)
腎疾患(腎炎のパルス療法,腎移植の周術期管理)(渡部ちづる)
慢性腎不全,透析(血液透析,腹膜透析)(馬場園哲也・花井 豪)
呼吸器疾患(肺がん,肺結核,間質性肺炎)(高本偉碩)
循環器疾患におけるコンサルテーション(外舘祐介・石垣 泰)
内分泌疾患(先端巨大症,クッシング症候群,原発性アルドステロン症)(関戸恵子・関戸貴志・駒津光久)
高度肥満症を合併した糖尿病(小野 啓・横手幸太郎)
血液疾患(田口昭彦・谷澤幸生)
重症感染症(加賀英義・田村好史)
消化管疾患,胃瘻,腸瘻(福岡勇樹・成田琢磨)
妊娠糖尿病,糖尿病合併妊娠(黒瀬 健)
泌尿器科(松久宗英)
精神科(林野泰明・峯山智佳・野田光彦)
小児の糖尿病
1)2型糖尿病(菊池 透)
2)1型糖尿病(佐藤詩子)
遺伝性糖尿病が疑われたとき(安田和基)
高齢者の糖尿病(永井 聡)
人生の最終段階における糖尿病ケア(三浦義孝)
あとがき (森 保道)
I 総論
はじめに〜他科からのコンサルテーションを受けてまずすること(亀卦川(石黒)喜美子・森 保道)
周術期のコンサルテーション(内田貴康・西村明洋)
糖尿病患者の末梢静脈栄養(池田 更・長澤 薫)
糖尿病患者の中心静脈栄養(岩本真彦・植木浩二郎)
薬剤による耐糖能異常(含む免疫チェックポイント阻害薬)(松村公男・亀卦川(石黒)喜美子)
低血糖の原因精査(及川洋一・島田 朗)
化学療法時のコンサルテーション(木村聡一郎・辻本哲郎・森 保道・梶尾 裕)
II 各論
肝疾患(肝炎,NASH/NAFLD,肝硬変)(瀬尾千顕・西村理明)
膵疾患(膵炎,膵がん,自己免疫性膵炎)(安森 翔・藤山 隆・藤森 尚・大野隆真・小川佳宏)
腎疾患(腎炎のパルス療法,腎移植の周術期管理)(渡部ちづる)
慢性腎不全,透析(血液透析,腹膜透析)(馬場園哲也・花井 豪)
呼吸器疾患(肺がん,肺結核,間質性肺炎)(高本偉碩)
循環器疾患におけるコンサルテーション(外舘祐介・石垣 泰)
内分泌疾患(先端巨大症,クッシング症候群,原発性アルドステロン症)(関戸恵子・関戸貴志・駒津光久)
高度肥満症を合併した糖尿病(小野 啓・横手幸太郎)
血液疾患(田口昭彦・谷澤幸生)
重症感染症(加賀英義・田村好史)
消化管疾患,胃瘻,腸瘻(福岡勇樹・成田琢磨)
妊娠糖尿病,糖尿病合併妊娠(黒瀬 健)
泌尿器科(松久宗英)
精神科(林野泰明・峯山智佳・野田光彦)
小児の糖尿病
1)2型糖尿病(菊池 透)
2)1型糖尿病(佐藤詩子)
遺伝性糖尿病が疑われたとき(安田和基)
高齢者の糖尿病(永井 聡)
人生の最終段階における糖尿病ケア(三浦義孝)
あとがき (森 保道)