はじめに
生活習慣病をはじめとする多くの疾患の予防と治療には,人が健康のためによいとされる行動をとり,それを維持することが必要になります.
健康に関する行動の変容と維持に関しては幾つかの理論があり,医療と保健の現場で働く方々がそれらの理論を理解されることは,以下の3つの点において重要であると考えられます.
1 対象者の健康に関する行動の変容と維持に関して,筋道を通して考えることができるようになるということ.
2 対象者の健康に関する行動の変容と維持に関して,スタッフ間で共通の“言葉”でディスカッションができるようになるということ.
3 健康行動理論とその尺度を用いることによって,対象者の現在の状況が把握でき,介入計画の立案や実行とその評価が可能になるということ.
本書は,医療と保健の現場で働く方々が健康行動理論を理解し,上記の3点が実現されることを願って書きました.
理論をできるだけ分かりやすく説明することを心がけ,症例を提示することで現場への応用法も具体的に示してあります.また,研究の実例も豊富に示しましたので,現場での研究に興味のある方々にも参考にしていただければ幸いです.
疾患としては,2型糖尿病,肥満,高血圧,高脂血症などの生活習慣病を取り上げていますが,他の疾患の予防と治療に関しても十分応用可能であると思われます.
本書が,医療と保健の現場で働く方々の少しでもお役に立てればと願っております.
最後に,文献の取り寄せにご協力をいただいた方々,貴重な研究成果である健康行動理論の尺度の掲載をご快諾いただいた諸先生,共に仕事をさせていただいた医歯薬出版株式会社編集部の担当者各位に厚く御礼申し上げます.
2002年1月
松本千明
本書の活用にあたっての留意事項
本書をお読みいただくにあたりまして,何点かお断りをさせていただきたいと思います.
1 各章において,健康行動理論と2型糖尿病との関係を調べた研究結果を示してありますが,それらの研究の幾つかは,対象として2型糖尿病と1型糖尿病の両方の患者を含んでいます.
2 健康行動理論の多くは外国で作られたもののため,用語を日本語訳するうえで,直訳では意味が通じにくいと判断したものは,若干の意訳をしています.
3 本書で使用している「コンプライアンス」と「アドヒアランス」という言葉について:辞書にはそれぞれの意味は次のように書かれています.
コンプライアンス:“医師等により処方された治療法に患者が従う確かさ”
アドヒアランス:“患者が,いったん了承した治療法をほとんど監視なしで継続する度合”
(ナース版 ステッドマン医学辞典 メジカルビュー社,1998年)
以前は,「コンプライアンス」という言葉の方が多く用いられていたと思いますが,治療に対する患者の主体的な関わりが重視されるようになったこともあり,最近では「アドヒアランス」という言葉も使われてきていると思います.
本書では,原則的には「アドヒアランス」という言葉を用いていますが,過去の研究を紹介するにあたって,その研究論文の中で「コンプライアンス」という言葉が使われている場合には,そのまま使用しています.
4 各章の最後に,本文中で参考にさせていただいた文献(一部引用文献も含む)を載せてあります.文献の番号は本文中に示した肩付き番号に一致しています.健康行動やその理論などについてもっと勉強したいと望まれる方は,これらの文献や,以下に日本語で書かれた書物を挙げておきましたので,それらも参考にされるとよいと思います.
・「医療・健康心理学」中川米造,宗像恒次編 応用心理学講座13 福村出版(1989年)
・「最新 行動科学からみた健康と病気」宗像恒次著 メジカルフレンド社(1996年)
・「健康心理学」島井哲志編 現代心理学シリーズ15 培風館(1997年)
・「ストレスの心理学:認知的評価と対処の研究」リチャード・S.ラザルス,スーザン・フォルクマン著/本明 寛,春木 豊,織田正美監訳 実務教育出版(1991年)
・「リラクセーション法の理論と実際:ヘルスケア・ワーカーのための行動療法入門」五十嵐透子著 医歯薬出版(2001年)
・「支えあう人と人:ソーシャル・サポートの心理学」浦 光博著 セレクション社会心理学8 サイエンス社(1992)
生活習慣病をはじめとする多くの疾患の予防と治療には,人が健康のためによいとされる行動をとり,それを維持することが必要になります.
健康に関する行動の変容と維持に関しては幾つかの理論があり,医療と保健の現場で働く方々がそれらの理論を理解されることは,以下の3つの点において重要であると考えられます.
1 対象者の健康に関する行動の変容と維持に関して,筋道を通して考えることができるようになるということ.
2 対象者の健康に関する行動の変容と維持に関して,スタッフ間で共通の“言葉”でディスカッションができるようになるということ.
3 健康行動理論とその尺度を用いることによって,対象者の現在の状況が把握でき,介入計画の立案や実行とその評価が可能になるということ.
本書は,医療と保健の現場で働く方々が健康行動理論を理解し,上記の3点が実現されることを願って書きました.
理論をできるだけ分かりやすく説明することを心がけ,症例を提示することで現場への応用法も具体的に示してあります.また,研究の実例も豊富に示しましたので,現場での研究に興味のある方々にも参考にしていただければ幸いです.
疾患としては,2型糖尿病,肥満,高血圧,高脂血症などの生活習慣病を取り上げていますが,他の疾患の予防と治療に関しても十分応用可能であると思われます.
本書が,医療と保健の現場で働く方々の少しでもお役に立てればと願っております.
最後に,文献の取り寄せにご協力をいただいた方々,貴重な研究成果である健康行動理論の尺度の掲載をご快諾いただいた諸先生,共に仕事をさせていただいた医歯薬出版株式会社編集部の担当者各位に厚く御礼申し上げます.
2002年1月
松本千明
本書の活用にあたっての留意事項
本書をお読みいただくにあたりまして,何点かお断りをさせていただきたいと思います.
1 各章において,健康行動理論と2型糖尿病との関係を調べた研究結果を示してありますが,それらの研究の幾つかは,対象として2型糖尿病と1型糖尿病の両方の患者を含んでいます.
2 健康行動理論の多くは外国で作られたもののため,用語を日本語訳するうえで,直訳では意味が通じにくいと判断したものは,若干の意訳をしています.
3 本書で使用している「コンプライアンス」と「アドヒアランス」という言葉について:辞書にはそれぞれの意味は次のように書かれています.
コンプライアンス:“医師等により処方された治療法に患者が従う確かさ”
アドヒアランス:“患者が,いったん了承した治療法をほとんど監視なしで継続する度合”
(ナース版 ステッドマン医学辞典 メジカルビュー社,1998年)
以前は,「コンプライアンス」という言葉の方が多く用いられていたと思いますが,治療に対する患者の主体的な関わりが重視されるようになったこともあり,最近では「アドヒアランス」という言葉も使われてきていると思います.
本書では,原則的には「アドヒアランス」という言葉を用いていますが,過去の研究を紹介するにあたって,その研究論文の中で「コンプライアンス」という言葉が使われている場合には,そのまま使用しています.
4 各章の最後に,本文中で参考にさせていただいた文献(一部引用文献も含む)を載せてあります.文献の番号は本文中に示した肩付き番号に一致しています.健康行動やその理論などについてもっと勉強したいと望まれる方は,これらの文献や,以下に日本語で書かれた書物を挙げておきましたので,それらも参考にされるとよいと思います.
・「医療・健康心理学」中川米造,宗像恒次編 応用心理学講座13 福村出版(1989年)
・「最新 行動科学からみた健康と病気」宗像恒次著 メジカルフレンド社(1996年)
・「健康心理学」島井哲志編 現代心理学シリーズ15 培風館(1997年)
・「ストレスの心理学:認知的評価と対処の研究」リチャード・S.ラザルス,スーザン・フォルクマン著/本明 寛,春木 豊,織田正美監訳 実務教育出版(1991年)
・「リラクセーション法の理論と実際:ヘルスケア・ワーカーのための行動療法入門」五十嵐透子著 医歯薬出版(2001年)
・「支えあう人と人:ソーシャル・サポートの心理学」浦 光博著 セレクション社会心理学8 サイエンス社(1992)
第1章 健康信念モデル(ヘルス・ビリーフ・モデル)
■ 健康信念モデルの考え方
→健康信念モデルの現場への応用
reserch findings 健康信念モデルと生活習慣病に関する研究
第2章 自己効力感(セルフ・エフィカシー)
■ 自己効力感の考え方
→自己効力感の現場への応用
reserch findings 自己効力感と生活習慣病に関する研究
第3章 変化のステージモデル
■ 変化のステージモデルの考え方
→変化のステージモデルの現場への応用
reserch findings 変化のステージモデルと生活習慣病に関する研究
第4章 計画的行動理論
■ 計画的行動理論の考え方
→計画的行動理論の現場への応用
reserch findings 計画的行動理論と生活習慣病に関する研究
第5章 ストレスとコーピング
■ ストレスとコーピングの考え方
→ストレスとコーピングの現場への応用
reserch findings ストレスとコーピングと生活習慣病に関する研究
第6章 ソーシャルサポート(社会的支援)
■ ソーシャルサポートの考え方
→ソーシャルサポートの現場への応用
reserch findings ソーシャルサポートと生活習慣病に関する研究
第7章 コントロール所在
■ コントロール所在の考え方
→コントロール所在の現場への応用
reserch findings コントロール所在と生活習慣病に関する研究
付録 健康行動理論 問題と解答
装丁・本文デザイン/小川さゆり
■ 健康信念モデルの考え方
→健康信念モデルの現場への応用
reserch findings 健康信念モデルと生活習慣病に関する研究
第2章 自己効力感(セルフ・エフィカシー)
■ 自己効力感の考え方
→自己効力感の現場への応用
reserch findings 自己効力感と生活習慣病に関する研究
第3章 変化のステージモデル
■ 変化のステージモデルの考え方
→変化のステージモデルの現場への応用
reserch findings 変化のステージモデルと生活習慣病に関する研究
第4章 計画的行動理論
■ 計画的行動理論の考え方
→計画的行動理論の現場への応用
reserch findings 計画的行動理論と生活習慣病に関する研究
第5章 ストレスとコーピング
■ ストレスとコーピングの考え方
→ストレスとコーピングの現場への応用
reserch findings ストレスとコーピングと生活習慣病に関する研究
第6章 ソーシャルサポート(社会的支援)
■ ソーシャルサポートの考え方
→ソーシャルサポートの現場への応用
reserch findings ソーシャルサポートと生活習慣病に関する研究
第7章 コントロール所在
■ コントロール所在の考え方
→コントロール所在の現場への応用
reserch findings コントロール所在と生活習慣病に関する研究
付録 健康行動理論 問題と解答
装丁・本文デザイン/小川さゆり





