やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 理学療法士を志したのはいつの日のことだろう.高校時代のあの瞬間か,あるいは社会人として仕事をしながら何かに疑問を感じていたあの瞬間か.
 これまでの経緯は一人ひとり異なっても,目標とする理学療法士養成校に入学して国家試験に無事合格し,今は臨床現場の現実に直面しているのではないでしょうか.
 本書は,日々の臨床現場で試行錯誤している新人理学療法士の皆さんの参考書として編集させていただきました.
 臨床家に求められるスキルは数多く存在しますが,新人理学療法士がすべてを習得するのは容易なことではないでしょう.本書ではそのなかでも特に重要な4つのスキル(社会スキル,臨床スキル,研究スキル,教育スキル)に注目してみました.
 第1章は「社会スキル」として,社会人の第一歩をどのようにスタートすればよいのかを紹介しています.
 第2章と第3章は「臨床スキル」として,臨床実習から一歩踏み込んだ理学療法が展開できるようにまとめてあります.第2章では臨床スキルの基本となる一連の理学療法過程を,第3章では疾患別の理学療法をまとめています.
 第4章は「研究スキル」として,臨床研究をどのように展開すればよいのか,研究計画から学会発表までの過程を紹介しています.
 第5章は「教育スキル」として,はじめての臨床実習指導にどう取り組めばよいのか,教育学的な視点を含めて実践例を紹介しています.
 第6章は「新人教育システム」として,特徴ある複数の臨床施設における新人教育の実践例を紹介しています.新人理学療法士のみならず,指導者の方々および臨床教育システムの構築を考えている施設にも参考にしていただけます.
 4つのスキルの根底にある,臨床家として最も重要なスキル─それはチャレンジ・スキルです.臨床家は,日々問題に直面します.その問題に前向きにチャレンジして,みずから解決するためのスキルを身につけることが大切です.本書がその一助になれば幸いです.
 2010年11月
 小林 賢
 序文
 目次
 はじめに
序章 学校教育の立場から
 (1)理学療法士教育の課題(潮見泰藏)
 (2)理学療法士教育に求めるもの(橋精一郎)
 (3)臨床で学ぶことの意味(大川裕行)
1章 社会人として・組織の一員として働くために(小宮山一樹)
 (1)基本的業務を知る―組織の一員として働くために
 (2)接遇を知る
 (3)コミュニケーションスキルを知る
2章 臨床における理学療法の実践(基礎編)―脳血管疾患急性期を例に―(市川雅彦)
 (1)理学療法を実践するうえでの心得
 (2)まずは情報収集から始めよう
 (3)理学療法に必要な検査・測定を実践する
 (4)問題点を抽出して目標を設定する
 (5)治療を開始してから退院まで
3章 臨床における理学療法の実践(応用編)
 (1)変形性股関節症―人工股関節全置換術―(三森由香子)
 (2)靱帯損傷・半月板損傷(小山貴之)
 (3)肩腱板断裂(島岡秀奉)
 (4)脳血管障害―回復期―(田中直次郎)
 (5)運動発達障害―脳性麻痺を中心に―(新田 收)
 (6)呼吸器疾患(急性呼吸不全)(深井和良)
4章 臨床の疑問を研究するために(今井覚志)
 (1)研究を知る
 (2)研究を立案する
 (3)研究を実践する
 (4)研究を公表する
5章 臨床指導者になるために(小林 賢)
 (1)指導者は何をするのか
 (2)教えるために準備する
 (3)実際に指導する
 (4)学習者とのやりとり
 (5)教えたことを整理する
6章 こんな臨床教育を実践しています
 (1)筑波記念病院(飯塚 陽・斉藤秀之)
 (2)慶應義塾大学月が瀬リハビリテーションセンター(寺林大史・呂 隆徳)
 (3)西広島リハビリテーション病院(田中直次郎)
 (4)細木病院(島岡秀奉)
 (5)新小倉病院(入江将考)
 (6)和歌山県立医科大学附属病院(上西啓裕)

 コラム 新人奮闘記(鈴木徹也)
 索引