やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

監訳者の序
 日本語で記載された補聴器に関する書物をインターネットで検索するとおよそ15冊(amazon.co.jp 2004年7月調べ)がリストアップされる.医療関係者向け,一般ユーザー向け,補聴器販売店向けなど様々であるが,1冊で全ての概要を把握できるような書はいまだ刊行されていない.
 オリジナルの書籍は,2000年にオーストラリア国立聴覚研究所のHarvey Dillon博士の手によって世に送り出されたもので,必要かつ十分に「補聴器学概論」と「補聴器の実際」をオールインワンにして書き上げられており,多くの国の医師,言語聴覚士,認定補聴器技能者らのバイブルとして活用されている.
 ところが,日本には,通読すべき「補聴器」の日本語テキストがないのが実情である.小生がこのオリジナルの書籍を手にしたのは,2001年1月にタイで開催されたヒアリングインターナショナル第4回国際会議の席である.機器展示・書籍コーナーでたまたま手にし,そのおもしろさに学会そっちのけで読みふけったことを覚えている.帰国するや,すぐさま翻訳の準備作業に取りかかった.医歯薬出版は即座に日本語版刊行を受諾してくださり,分担翻訳者への依頼も,NPO日本ヒアリングインターナショナル鈴木淳一会長の協力のもと,「高品位低価格補聴器開発プロジェクト」メンバーの参加でスムースにことが運んだ.さらに,ワイデックス株式会社,GNリサウンドジャパン株式会社,スターキージャパン株式会社からの技術的な情報提供なしでは日本語版の出版に漕ぎ着けることができなかっただろう.紙面を借りて関係諸氏・各社へ謝意を伝えたい.また,遅々として進まなかった小生の校閲を見守ってくださった医歯薬出版編集部に感謝する.彼らなしではこの500ページ弱の書を完成させることはできなかっただろう.
 現在のように,デジタル技術がどんどんと進んで飛躍的に進歩している時代には,ゆったりと物事を熟成してアウトプットしていくことがなじまないことも多い.本書を刊行するにあたり,実際はまだまだ手を入れたいところもあったが,最新の情報が陳腐化することより今を伝えることを優先し,監訳者の責任で,荒削りながらも脱稿させたことをここに申し添える.読者諸氏からのご批判やご意見を頂戴する形で,今後の充実をはかっていきたい.
 最後に,本書が,臨床現場における補聴器の 「エビデンスに基づく科学的フィッティング」 の一助となり,耳鼻咽喉科医,言語聴覚士,認定補聴器技能者など多くの補聴器関係者必携の書となることを切に願うものである.
 2004年 夏 監訳者 中川 雅文


序 章
 本書は,補聴器学の講義テキスト,あるいは補聴器適合判定医があらゆる局面で実践的情報を入手できる適切な指南書としてまとめた.
 本書は,実際に役立つこと,理論的に聞こえるようになることの2点から構成してある.問題点を明らかにし,そのうえでその解決法を記述してある.可能な限りどの内容についても経験的に立証できる研究成果を基に記述し,過去に報告のない場合は,暫定的な推奨方法や決定方法を示してある.補聴器に詳しい読者なら,本書に掲載されているデータや臨床手順が初めて出版された内容であること同様に,これらが古くなった論点を見抜く大局観をもったものであることに気づくだろう.
 本書は,多くの階層を通して読み続けられるように構成されている.トピックの大筋のみ知りたい読者は,各章冒頭の「概要」で十分だが,ほとんどの読者が惹きつけられより読み進むことを期待している.本文中の網かけで,各トピックのメインを示してある.網かけの段落は,とくに,読みやすく,理解しやすくデザインしてある.網かけの内容は,分厚い本書に埋め込まれた薄い本のような意味合いであろうか.本書内容のおおよそ半分ぐらいは,教養課程などで講義しない内容となっているが,本書ではこれらを非常に詳しく説明している.最も詳細なコメントは,最終的には,脚注やセクションに詰め込み小さく印刷してある.あらゆる資料について,実践的かあるいは理論的かに分類し,パネル形式(囲み記事)で示してある.2つのタイプのパネルの違いは,パネル画面とタイトルから区別できる(訳注:実践的な資料はタイトル部分を網かけしている).
 NALの開発した臨床ツールの説明では,全てを満足させることに限界があった.NALは,補聴器適合判定医にとって有用な,理論武装できる実践的ツールの開発に主眼をおいているためである.しかし本書では,NAL手順の利点と限界がどこから発生するものであっても,客観的に評価した.惜しむらくは,各章で取り上げられた専門家の意見が,著者の考えより優位であることを期待している.
 もう1つの課題は,聴力を失ったことによって生じた困難を乗りこえるための補助を探している聴覚障害をもった人をどのように呼ぶかであった.用いることのできる用語は,「患者(patient)」,「依頼人(client)」,「消費者(consumer)」もしくは同じように「顧客(customer)」などがある.これらの個々の用語はそれぞれ,ある人たちにとっては気になるものであるようだ.それぞれに遭遇する部分が異なると,異なる用語が最も適切であるようだ.彼,もしくは彼女の聴力検査をしようというのならば患者となり,最先端の(そして高価な)補聴器を買うか,一般的なものを買うかを決めようというときには消費者となり,補聴器適合判定医の指導や助言を得て,コミュニケーション障害に取り組んでいるならば依頼人となる.聴覚障害の人たちの観点からは,補聴器適合判定医のこうした人たちへの態度と同様に,彼らを助けるために何を話したり,行ったりしているかが重要である.どの用語で彼らを表現するかということはさほど重要ではなく,おそらく用語が,補聴器適合判定医の態度へ影響をするときに重要となるのである.本書は,依頼人中心(もしくは患者中心)のリハビリテーションアプローチをとっている.最も一般的な慣用と,耳鼻咽喉科の補聴器外来に来院する人たちがどのように呼ばれることを望んでいるかという最近の調査(Nair,1998)を参考に,本書では「装用希望者」「患者」「クライアント」などの用語を採用している.どうかご自由にそれぞれの読者が望む用語に置き換えてお読みいただきたい.
 一人の著者による書き下ろしにより,古い知見の上に新しい知見が系統立ち,補聴器のトピックが包括的に収録され,総合的な構成にできる利点がある.不利な点は,一人の著者が全てを知っているわけではないということである.本書は世界中の多くの仲間に助けられてできあがった.彼らは1節,1章,ときにはそれ以上の部分の校閲(見直し)に時間を割いて,専門知識を分かち合ってくれた.本書の各セクションは,その分野の数名の先進的専門家による厳しいレビューを受けている.私は,次に挙げる人々に対して,その援助と寛大に引き受けてくれたレビュー,情報提供に大きな感謝をささげたい.
 Henning Anderson,Torburg Arvidsson,Herbie Baechler,Chris Barker,Lucille Beck,Greg Birtles,Arthur Boothroyd,Eric Burwood,Klaus-Dieter Butsch,Denis Byrne,Denis Carpenter,Teresa Ching,Laurel Christenson,Bob Cowan,Robyn Cox,Don Dirks,Richard Dowell,Wouter Dreschler,Claus Elberling,Todd Fortune,Stuart Gatehouse,Stan Gelfand,Gail Gudmundsen,David Hawkins,Louise Hickson,Karolina Smeds,Jeanette Jordt,Gitte Keidser,Juergen Keisling,Mead Killion,Pat Kricos,Dawna Lewis,Roger Lovegrove,Carl Ludvigsen,Phil McAlister,Hugh McDermott,Gus Meuller,Arlene Neuman,Philip Newall,Claus Nielsen,Bill Noble,Jerry Northern,Anna O'Brien,Sharon Page,Chester Pirzanski,Rick Pimentel,Jill Preminger,Suzanne Purdy,Larry Revit,Anders Ringdahl,MarkRoss,Susan Scollie,Richard Seewald,Joseph Smaldino,Greg Smith,Wayne Staab,Pat Stelmachowicz,Dafydd Stephens,Gerry Studebaker,Robert Sweetow,Richard Tyler,Dianne Van Tasell,Hans Verschuure,Barbara Weinstein,Soren Westermann,Sharan Westcott,Helen Wortham.いくつかの資料についてはMarquarie大学,およびIowa大学のRuth Betler氏のクラスの聴覚科学の学生がレビューをしてくれ読みやすくなった.とくに,彼らの注意深いコメントに感謝の意を述べたい.Jear Benningの労を惜しまないレイアウトと版下作成にも感謝する.最終版のどのような間違いも,もちろん私ひとりが責を負うのであり,できる限り早く,喜んで知りたいと願っている.ご指摘は,ぜひ,publisher@boomerang.com.auにご送付願いたい.
 私の所属するAustralian Hearing, National Acoustic Laboratories,およびCooperative Research Centre for Cochlear Implant and Hearing Aid Innovationsの役員および同僚にも感謝する.20年以上にわたって私は,聴覚障害をもった人たちへの,研究成果を基にした臨床手法を用いる有効なハビリテーションとリハビリテーションに貢献する組織にいた.研究や実地臨床などの取り組みにさいし,指導ややる気を与えてくれた指導者のおかげで,現在の知識と信念が形作られた.数多くのこうした指導者のなかで第1に挙げられるのは,Denis Byrne氏である.
 最後に,そして最も重要な,彼女がいなくては本書が生まれなかったわが妻,Fiona Macaskillに謝辞を述べたい.Fionaは,家庭生活にまで侵入する本書執筆の3年もの間,たえず私を励ましつづけ,家族をまとめてきた.Fionaのすばらしい臨床の専門的知識はまた,他の方法では決して得ることのできなかった多くの聴覚科学的洞察を提供してくれた.本書に,それらが十分に反映できたことを願う.
 (辻 達諭)
 訳注:本書において,補聴器適合判定者・臨床家という用語は,医師・言語聴覚士・認定補聴器技能者を指した総称として用いている.
 妻Fionaと子どもたちLouisa,Nicholasの理解と協力に感謝する.
 故Denis Byrne先生の指導と英知と教示に感謝する.
補聴器ハンドブック 目次

 監訳者の序 中川雅文
 パネル(囲み記事)一覧
 序 章……辻 達諭

第1章 補聴器を理解するために 中川雅文
 1.1 難聴者の直面する問題
  1.1.1 聴力の低下
  1.1.2 ダイナミックレンジの減少
  1.1.3 周波数分解能の低下
  1.1.4 時間分解能の低下
  1.1.5 いくつかの機能低下の組み合わせで生じてしまう問題
 1.2 音の計測
  1.2.1 物理学的計測の基本
  1.2.2 リニア増幅器と利得
  1.2.3 飽和音圧レベル
  1.2.4 カプラと実耳計測
 1.3 補聴器の種類について
 1.4 歴史的な観点からみた補聴器
  1.4.1 集音管補聴器の時代
  1.4.2 カーボンマイクロホンの時代
  1.4.3 真空管の時代
  1.4.4 トランジスタと集積回路の時代
  1.4.5 デジタル時代
第2章 補聴器構成部品 中川雅文
 2.1 ブロック図
 2.2 マイクロホン
  2.2.1 動作原理
  2.2.2 マイクロホンの周波数特性
  2.2.3 マイクロホンの欠点
  2.2.4 指向性マイクロホン
  2.2.5 マイクロホンの位置
 2.3 アンプ
  2.3.1 アンプ技術
  2.3.2 アンプの性能
  2.3.3 ピーククリッピングと歪み
  2.3.4 出力アンプ
  2.3.5 コンプレッションアンプ
 2.4 デジタル回路
  2.4.1 アナログからデジタルへの変換
  2.4.2 デジタル信号処理器
  2.4.3 デジタル-アナログ(DA)
 2.5 音質調整およびフィルタ
  2.5.1 フィルタおよび音質調整の構成
  2.5.2 パッシブ,アクティブおよびデジタル方式の音質調整
 2.6 レシーバ
  2.6.1 動作原理
  2.6.2 レシーバの周波数特性
 2.7 音響ダンパ
 2.8 テレコイル
 2.9 外部入力
 2.10 リモートコントロール(リモコン)
 2.11 骨導レシーバ
 2.12 電池
  2.12.1 動作原理
  2.12.2 稼動電圧
  2.12.3 容量と物理的な大きさ
 2.13 まとめ
第3章 補聴器システム 野田 保
 3.1 カスタムとモジュラー構成
  3.1.1 カスタム補聴器
  3.1.2 モジュラー補聴器
  3.1.3 セミモジュラー,セミカスタムの補聴器
 3.2 アナログ補聴器
 3.3 プログラマブル補聴器
  3.3.1 プログラマ,インターフェースおよびソフトウエア
  3.3.2 マルチプログラマブル補聴器
  3.3.3 ペア比較(paired comparison)
 3.4 デジタル補聴器
  3.4.1 配線回路式デジタル補聴器
  3.4.2 プロセッサ式デジタル補聴器
  3.4.3 シーケンシャル(順次)処理かブロック処理か
  3.4.4 デジタル補聴器の仕様
  3.4.5 デジタル補聴器の利点
 3.5 遠隔検知・送信補聴器システム
 3.6 誘導ループ
  3.6.1 場の一様性と方向
  3.6.2 磁場強度
  3.6.3 ループ周波数レスポンス
 3.7 無線周波送信
  3.7.1 原理およびFMキャプチャ効果
  3.7.2 補聴器への結合
  3.7.3 FMと局所マイクロホンの組み合わせ
 3.8 赤外送信
 3.9 教室音場増幅
 3.10 磁気ループ,無線周波(FM),赤外送信および音場増幅システムの長所と短所の比較
 3.11 補助聴取装置
 3.12 まとめ
第4章 電気音響的性能と測定 中原凱文
 4.1 カプラと人工耳による補聴器の測定
  4.1.1 カプラと人工耳
  4.1.2 試験箱
  4.1.3 測定信号
  4.1.4 利得周波数レスポンスとOSPL90周波数レスポンス
  4.1.5 入出力の機能
  4.1.6 歪み
  4.1.7 内部雑音
  4.1.8 磁気応答
  4.1.9 ANSIとIEC規格
 4.2 実耳装用利得
  4.2.1 実耳装用利得(REAG)測定のためのプローブの位置設定
  4.2.2 REAG,カプラ利得と人工耳利得との関係
  4.2.3 不適合な補聴器を発見する測定法
 4.3 挿入利得
  4.3.1 挿入利得測定のプローブの位置
  4.3.2 利得とカプラ利得および人工耳利得との関係
  4.3.3 標準マイクロホンと挿入利得
  4.3.4 不正確な挿入利得の測定を検出する
  4.3.5 挿入利得測定値の精度
 4.4 実耳試験の実用的な問題
  4.4.1 プローブの較正
  4.4.2 耳垢(みみあか)の影響
  4.4.3 背景雑音による悪影響
  4.4.4 補聴器の飽和
  4.4.5 拡声器のオリエンテーション
  4.4.6 測定信号の特性
 4.5 装用耳の閾値検査と機能的利得
 4.6 補聴器におけるフィードバック
  4.6.1 フィードバックの仕組み
  4.6.2 音質に対するフィードバックの影響
  4.6.3 プローブチューブ測定値とフィードバック
 4.7 不完全な補聴器の故障修理
 4.8 まとめ
第5章 イヤモールド,イヤシェル,カプリングシステム 中川雅文
 5.1 イヤモールドおよびイヤシェル形状
  5.1.1 BTEイヤモールドの形状
  5.1.2 ITE/ITC/CICのイヤシェル形状
 5.2 イヤモールドとイヤシェルの音響効果についての概要
 5.3 ベント
  5.3.1 補聴器利得とOSPL90のベント効果
  5.3.2 ベントとオクルージョン(こもり感・耳閉塞感)
  5.3.3 ハウリングに対するベントと音漏れの影響
  5.3.4 パラレルベントとYベント
 5.4 音道:チユービング,ホルン,くびれ
  5.4.1 音響ホルンとくびれ(締めつけ)
  5.4.2 特別な目的をもつイヤフック
 5.5 ダンパ
 5.6 チューブ,ダンプ,ベントの構成
 5.7 イヤモールドやイヤシェルの選択手順
 5.8 耳型採取
  5.8.1 耳型採取に関する基本
  5.8.2 CICや高利得補聴器用の耳型テクニック
  5.8.3 耳型の材料
 5.9 イヤモールドやイヤシェル
  5.9.1 イヤモールドやイヤシェルの構成
  5.9.2 イヤモールドやイヤシェルの材料
  5.9.3 インスタントイヤモールドやインスタント補聴器
  5.9.4 イヤモールドやイヤシェルの修正・修理
 5.10 まとめ
第6章 補聴器に使用される圧縮システム 中川雅文
 6.1 圧縮の主な役割:信号のダイナミックレンジの縮小
 6.2 コンプレッサーの主な特性
  6.2.1 ダイナミックコンプレッション特性:アタックタイムとリリースタイム
  6.2.2 静的圧縮特性
  6.2.3 入力および出力制御
  6.2.4 マルチチャンネル型圧縮
 6.3 圧縮を使用することの理論的解釈
  6.3.1 不快感,歪みおよび障害の回避
  6.3.2 音節間または音素間の強さの差の軽減
  6.3.3 長時間レベル差の軽減
  6.3.4 音の快適さの向上
  6.3.5 ラウドネスの正常化
  6.3.6 了解度の最大化
  6.3.7 ノイズの軽減
  6.3.8 経験的アプローチ
 6.4 コンビネーション型コンプレッサーによる補聴器
 6.5 各種圧縮システムの利点と欠点
  6.5.1 圧縮増幅とリニア増幅の比較
  6.5.2 単一チャンネル圧縮に対するマルチチャンネル型圧縮の利点
 6.6 まとめ
第7章 補聴器の信号処理方式 中原凱文
 7.1 複合マイクロホンおよびその他の指向性補聴器
  7.1.1 固定型指向性アレー
  7.1.2 適応型アレー
 7.2 単一マイクロホンの雑音抑圧
 7.3 フィードバック抑制
  7.3.1 利得周波数特性制御によるフィードバック抑制
  7.3.2 位相制御によるフィードバック抑制
  7.3.3 フィードバック経路打ち消しによるフィードバック抑制
  7.3.4 周波数シフトによるフィードバック抑制
 7.4 周波数転移
 7.5 音声手がかりの強調処理
 7.6 まとめ
第8章 補聴器装用候補者についての評価 福澤 理
 8.1 補聴器を使用できる閾値の下限
  8.1.1 閾値上昇と聴力像
  8.1.2 語音弁別能
  8.1.3 自己報告障害とハンディキャップ
  8.1.4 きき取り環境,ニーズおよび予想
  8.1.5 外見上の懸念
  8.1.6 操作と取り扱い
  8.1.7 年齢
  8.1.8 パーソナリティー
  8.1.9 中枢性聴覚情報処理障害
  8.1.10 耳鳴り
  8.1.11 様々な要因が複合する場合
  8.1.12 装用に気乗りしていない患者へのカウンセリング事例
 8.2 補聴可能な難聴の限界
  8.2.1 語音明瞭度が不良な場合
  8.2.2 補聴器か人工内耳か
  8.2.3 補聴器か体性感覚型の補聴器か
 8.3 補聴器装用の医学関連禁忌
 8.4 まとめ
第9章 補聴器の処方 山口幸也
 9.1 補聴器処方という概念とその背景
 9.2 リニア増幅器の利得周波数レスポンスを用いた処方
   9.2.1 POGO処方
   9.2.2 NAL処方
   9.2.3 DSL処方
   9.2.4 POGOII,NAL-RP,DSL:各処方の実例と比較
 9.3 ノンリニア増幅器の利得周波数レスポンスと入出力特性
   9.3.1 LGOB処方
   9.3.2 IHAFF処方とラウドネス
   9.3.3 Madsen社のAurical
   9.3.4 スケールアダプト処方
   9.3.5 FIG6処方
   9.3.6 DSL[i/O]処方
   9.3.7 NAL-NL1処方
   9.3.8 各処方の比較
   9.3.9 圧縮開始点の指定
 9.4 伝音難聴と混合難聴
 9.5 マルチメモリ補聴器のオプション
   9.5.1 環境と聞き方で特性を変える
   9.5.2 マルチメモリ補聴器の適応例
 9.6 OSPL90対応の処方
   9.6.1 不快感,障害,歪みを防ぐ原則
   9.6.2 圧縮の形式:可変利得かピーククリッピングか
   9.6.3 OSPL90処方
   9.6.4 周波数ごとのOSPL90の処方
   9.6.5 ノンリニア補聴器に対するOSPL90
   9.6.6 伝音難聴と混合難聴のOSPL90
 9.7 過大音量とそれによる難聴の進行
 9.8 まとめ
第10章 補聴器の選択と調整 新井寧子
 10.1 補聴器の装用スタイル(種類)を決める:CIC,ITC,ITE,BTE,めがね形かそれとも箱形か
 10.2 補聴器の特性を選ぶ
  10.2.1 音量調節
  10.2.2 テレコイル
  10.2.3 外部入力端子
  10.2.4 指向性マイクロホン
 10.3 信号処理法の選択
  10.3.1 信号処理法の選択と補聴器処方
  10.3.2 補聴器適合手順の選択
 10.4 補聴器選択と調整の概要
 10.5 プログラマブル補聴器選択と調整の12ステップ
 10.6 ノンプログラマブル補聴器の選択と調整の11ステップ
 10.7 耳の大きさと形に合わせたカプラ処方
 10.8 術後変形した外耳道に装着するとき
 10.9 処方した実耳特性の達成と確認
 10.10 OSPL90による微調整と評価
 10.11 まとめ
第11章 補聴器の微調整とトラブルシューティング 中村昇太郎
 11.1 日常的問題の解決
  11.1.1 取り扱い上の困難
  11.1.2 イヤモールドあるいはイヤシェルの不快感
  11.1.3 粗造なイヤモールド,きついシェル
  11.1.4 自声の音質とオクルージョン(耳閉塞感)
  11.1.5 ハウリング
  11.1.6 音質
  11.1.7 雑音,明瞭度,ラウドネス
 11.2 系統立った微調整手順
  11.2.1 ペア比較法
  11.2.2 音質の絶対評価
  11.2.3 ペア比較法による計画的な選別
  11.2.4 ペア比較法による適応パラメータの調整
  11.2.5 音質の絶対評価を用いた適応的微調整
  11.2.6 マルチメモリ補聴器の家庭での微調整
 11.3 まとめ:微調整を展望して
第12章 新規補聴器装用者へのカウンセリング 中原凱文
 12.1 難聴とは
 12.2 補聴器の購入
 12.3 補聴器の使用
 12.4 新しい音の世界と補聴器装用という経験への適応
 12.5 補聴器の手入れ
 12.6 きき取り戦略
  12.6.1 話し手と周りの状況の観察
  12.6.2 社会的相互作用の操作
  12.6.3 環境の操作
  12.6.4 きき取り戦略の教育
 12.7 家族と友人の参加
 12.8 コミュニケーション訓練
 12.9 補聴器が誘発する難聴の防止
 12.10 補助集音装置
 12.11 継続的支援
 12.12 カウンセリングの方式
 12.13 カウンセリングの手順
  12.13.1 評価のためのカウンセリング
  12.13.2 フィッティングのためのカウンセリング
  12.13.3 追跡調査のためのカウンセリング
  12.13.4 グループカウンセリングの活用
 12.14 まとめ
第13章 聴覚リハビリテーション効果を評価するために
 湯★貴文・稲見親哉・小村桃子
 13.1 ことばのきき取り検査
  13.1.1 補聴器適合評価におけることばのきき取り検査の限界
  13.1.2 装用効果の評価(ことばのきき取り検査の役割)
 13.2 装用効果を評価するための質問紙法による自己評価
  13.2.1 質問紙法の方法論
  13.2.2 自己評価法
 13.3 打ち合わせで必要なことと目標
 13.4 使用法評価,問題,満足度
 13.5 調整後しばらく経過してからの効果の変化
 13.6 補聴器による健康と生活の質への影響
 13.7 まとめ
第14章 両耳装用とフィッティング 中川雅文
 14.1 音源定位性と両耳聴
  14.1.1 健聴者はいかにして音源定位するか
  14.1.2 難聴と方向感
 14.2 検知と認知における両耳の効果
  14.2.1 頭部陰影効果
  14.2.2 雑音下の両耳スケルチ
  14.2.3 両耳の冗長性
  14.2.4 両耳によるラウドネスの重合(両耳による音のうるささの重ね合わせ)
 14.3 両耳装用の利点
  14.3.1 語音明瞭性
  14.3.2 音質
  14.3.3 遅発性の聴覚の剥奪を避ける
  14.3.4 位置覚
  14.3.5 耳鳴りの抑制
  14.3.6 その他の利点
 14.4 両耳装用の不利な点
  14.4.1 価格
  14.4.2 両耳干渉
  14.4.3 自己像(セルフイメージ)
  14.4.4 その他の不利な点
 14.5 両耳装用効果の確認方法
  14.5.1 基準耳の選択に伴う先入観
  14.5.2 両耳装用効果を評価するのに必要な語音検査の感度
  14.5.3 両耳装用効果を評価するための語音検査の役割
  14.5.4 方向感検査
 14.6 左右に聴力差があるときのフィッティング
  14.6.1 聴力に左右差のあるとき,両耳装用か片耳装用か
  14.6.2 片耳装用時,良聴耳か不良聴耳か
  14.6.3 その他の選択肢:FM補聴器とCROS補聴器
 14.7 両耳装用か片耳装用かの決定
 14.8 電気音響学的な処方に基づく両耳装用の効果と片耳装用の効果
 14.9 まとめ
第15章 小児特有の装用上の課題 深澤佳道
 15.1 聴覚経験と聴覚活用の喪失
 15.2 難聴の評価
  15.2.1 周波数特性と耳の特性の評価
  15.2.2 小さな耳に対する較正問題
 15.3 補聴器とイヤモールドの仕様と形状
  15.3.1 補聴器
  15.3.2 イヤモールド
  15.3.3 FM無線送信システム
 15.4 小児に対する増幅器の処方
  15.4.1 スピーチ弁別能力と増幅必要条件
  15.4.2 閾値に準拠した手順とラウドネスに準拠した手順の比較
  15.4.3 小さな外耳道に対する配慮
 15.5 実耳パフォーマンスの検証
 15.6 装用時の能力を評価する
 15.7 両親への手助け
 15.8 聴能訓練の到達目標
  15.8.1 乳児における到達目標と対策
  15.8.2 幼児における到達目標と対策
  15.8.3 就学前児童における到達目標と対策
  15.8.4 小学生における到達目標と対策
 15.9 思春期と美容上の課題
 15.10 安全上の問題
 15.11 まとめ
第16章 CROS補聴器・骨導補聴器・埋め込み補聴器 松脇由典
 16.1 CROS補聴器
  16.1.1 CROS補聴器(標準タイプ)
  16.1.2 BICROS補聴器
  16.1.3 ステレオCROS補聴器(CRIS-CROS)
  16.1.4 経頭蓋的CROS補聴器
 16.2 骨導補聴器
  16.2.1 骨導補聴器の適応
  16.2.2 骨導補聴器の出力特性
  16.2.3 骨導補聴器の処方
  16.2.4 骨導補聴器の不利な点
 16.3 埋め込み,半埋め込み補聴器
  16.3.1 側頭骨埋め込み補聴器(BAHA)
  16.3.2 人工中耳
 16.4 まとめ
 文献
 日本語索引
 外国語索引
 パネル(囲み記事)一覧
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パネル(囲み記事)一覧(◆は実践的な資料)
第2章
 指向性マイクロホンの動作
 用語解説:マルチバンドとマルチチャンネルの違い
 ◆電池の使用上の注意
第3章
 ◆補聴器で通常調節できるパラメータ
 ◆プログラマブル補聴器の利点
 ◆実践上のコツ:室内ループ
 ◆実践上のコツ:弱い磁気信号を発射する電話機
 ◆実践上のコツ:ループの設置または改善
 ◆実践上のコツ:送信機の装用
 ◆実践上のコツ:信頼できない受信の修理
 ◆FMレシーバ出力制御器の調節
第4章
 ◆実践上のコツ:簡易な較正検査
  利得周波数レスポンスの要約に使用される用語
  入出力図上の利得,減衰,圧縮,拡張の確認
 ◆実践上のコツ:内部雑音の測定
  理論上の説明:外耳道内の定在波
 ◆実践上のコツ:REAG測定のためのプローブチューブ
 ◆実践上のコツ:補聴器測定の点検
  理論上の概要:実耳利得
 ◆実践上のコツ:挿入利得測定のためのプローブの位置
 ◆実践上のコツ:背景雑音による悪影響の調査
 ◆広帯域試験信号を用いることができないときにはどうするか
 ◆実践上のコツ:補聴器装用者とスピーカーの位置
 ◆実践上のコツ:プローブで誘発されるフィードバックを避ける
第5章
  根拠となる理論:ベントの音響質量をベントの直径と長さから計算する
  理論的転換:補聴器をどのように測定すべきかに関する「ベント関連共鳴」ならびにそのインパクト
 ◆実践上のコツ:実耳利得ターゲットにあわせる
 ◆高品質な低周波サウンドを実現する
 ◆閉塞効果を自分で体験してみよう
  閉塞効果(オクルージョン)が発生する理由
  理論:音響ホーンが機能する仕組み
 ◆実践上のコツ:ダンパを使ってBTEの中周波数レスポンスを形成する
 ◆実践上のコツ:はたしてフィットするか?
 ◆実践上のコツ:素早くダンパを変える
 ◆警告:偶発的な結果
 ◆印象は骨部外耳道に到達しているか?
 ◆CIC印象テクニック-要約
 ◆三段階耳型技術-要約
 ◆まとめ:きついフィッティングだが快適なイヤモールドもしくはイヤシェルを作成するための5つの方法
  オトプラスティックの硬度
第6章
  圧縮に関する重要な原理:圧縮動作に対する補聴器装用者およびフィルタ制御の効果について
  圧縮による最大出力の制御
  圧縮による音節間レベル差の軽減
  圧縮による長時間レベル差の軽減
  圧縮による快適さの向上
  圧縮によるラウドネスの正常化
  重要な原理:SN比における圧縮の効果
  圧縮によるノイズの軽減
  BILLおよびTILL:相補的矛盾
  リニア増幅と比較した中または低圧縮閾値の実用面での利点
第7章
  電子的フィードバック制御を利用する理由
第8章
  高音急墜型難聴に関する特別な問題
  決定すべき問題の評価:自己報告標準化アンケート
 ◆支援を求めるモチベーションの判定
  きき取りの必要性と期待の判定:COSITM
 ◆補聴器取り扱い能力チェック
  要約:補聴器の購入と使用に対する障害となりうるもの
  人工内耳の適応
第9章
  補聴器処方の手順を理解するために
  POGO処方,POGOII処方
  NAL処方
  DSL
 ◆補聴器処方に関連した実際的な問題
  理論的な難問:個々のクライアントの補聴器なしの特性の復元.補聴器の挿入利得 REIGを目標とするか,補聴器をつけたときの装用利得 REAGを目標とするか.
  LGOB
  IHAFF,Contour(等高線図)とVIOLA
  Madsen社のAurical
  スケールアダプト処方
  FIG6処方
  NAL-NL1処方
  聴覚閾値を取るかラウドネスを取るか
  ラウドネス正規化の複雑さ
  圧縮領域に入るか出るか
  圧縮開始点を低くとることの利害
  高度および重度難聴に対するWDRC圧縮
 ◆耳硬化症による難聴
 ◆まとめ:利得処方について伝音難聴に対する考慮
 ◆マルチメモリ補聴器を推薦するには
 ◆圧縮増幅器を処方する場合とピーククリッピングを処方する場合の原則
  平均的な補正値を使わずにLDLからOSPL90を導く
 ◆NAL-SSPL処方の発行手順
  周波数依存のOSPL90処方の理論的根拠
 ◆周波数依存のOSPL90処方
 ◆伝音性および混合難聴に対するOSPL90処方またはRESR
  理論的な根拠:難聴の進行の予測
 ◆実際的な手順
第10章
 ◆管理上のトラブルを少なくするための選択
  適合判定医の手を煩わせない簡単なプログラマブル補聴器
  処方目標値との一致度:どのくらい一致していればよいか
  実耳目標値からカプラ目標値に換算する方法
  実耳目標値からイヤシミュレータ目標値に換算する方法
 ◆実践上のコツ:特性をあらかじめ調整しておくのは意味があるか
  カプラ処方のカスタマイズ
 ◆実耳とカプラの利得差RECDの計測
 ◆80dBまたは90dB SPLでの実耳測定の注意点
 ◆補聴器の最大出力を評価する
第11章
 ◆補聴器のどのコントロールが問題を解決するか-トラブルシューティングの2ステップ
  2チャンネル以上の取り扱い
  圧縮微調整のためのスケール値と手順
第12章
  カウンセリングの利点に関する根拠
  不適当な型式を好む場合の対処法
  一度に1歩ずつ-経験と練習が必要な状況
 ◆STEP用紙の使用法
  補聴器のていねいな扱い方
  読唇法が貴重である理由の理論的背景
  きき取り戦略の要約
  自信の醸成:成功が成功の元
 ◆話し好きのクライアントの対処法
  自宅訪問
  グループカウンセリングのポイント
第13章
  自己評価の質問項目の例
  質問紙の構造と信頼性を理解するために:因子,サブスケール,内容の一貫性,各項目との相関関係,初回と再検査の差異
 ◆APHAB質問紙の使用にあたって
  APHAB質問紙の適用
 ◆COSIの説明
 ◆患者に質問する問題項目
 ◆2つの簡単な満足度質問表
  結論:時間経過と結果の変化
第14章
  用語説明
  事例:頭部回折効果によってSN比はどのように変化するか
  まとめ:語音明瞭度に関する両耳装用の優位性
 ◆聴覚の剥奪・廃用を避けるために
  理論的な背景:両耳装用による両耳位相・時間差に対する効果
  順応:いつ頃から方向感を獲得できるか
 ◆簡単な方向感検査
  まとめ:左右差のある難聴における両耳装用
 ◆カウンセリング上のポイント
 ◆どちらの耳に装用するか(単純な原則)
  両耳装用は初回から行うべきか段階的に行うべきか
第15章
  今後の課題:乳幼児に対する語音検査
  小児の実耳(外耳道内における閾値;dB SPL)測定について
 ◆実践上のコツ:補聴器をいかにしっかり装用させるか
  FMシステムと最新のノンリニア補聴器について
 ◆乳幼児に対する処方と調整
 ◆最大出力値の評価方法(7歳以上の場合)
  今後の課題:不快閾値の他覚的評価
  要点:他の親との交流
第16章
  CROS補聴器:要点
  CROS補聴器における利得周波数特性の調整法と確認