やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 『別冊・医学のあゆみ各科に役立つ救急処置・処方マニュアル』(医歯薬出版株式会社刊)が出版されたのは1988年.当時,『週刊医学のあゆみ』の編集委員であった石井裕正氏(慶應義塾大学内科学教授),冲永功太氏(帝京大学外科学教授),北村 諭(自治医科大学呼吸器内科学教授)他5名で編集した.以来,17年の歳月が流れ去ってしまった.
 近年,わが国の救急医療は急速な変貌を遂げ,21世紀はまさにER(emergency room)の時代になったと言っても過言ではない.そこで,最新の救急医療に対応するマニュアルの出現が期待される.
 平成15年12月,石井裕正教授,冲永功太教授,鈴川正之教授(自治医科大学救急医学)にご参集いただき,都内で編集会議を開催した.その会議では,平成16年4月から実施される医師臨床研修制度において救急医療が必須になることを踏まえ,上記別冊を時代に対応した,研修医に役立つ新たな救急医療マニュアルとして生まれ変わらせることが決定された.
 研修医向けの救急医療の単行本は数多く出版されているが,それらの多くは,意識障害・ショック・腹痛などという患者の主要症状に対する救急処置・処方が中心である.本書はこれらの主要症状から入り,さらに各科領域の疾患に速やかにアプローチすることができるように工夫してある.
 すなわち,随所にLINKと表記し,参照する疾患または疾患群にアプローチが可能であり,また,読みやすくするために,POINTとして各項目のエッセンスを箇条書きで示してある.さらに随所にHint,Do Not,サイドメモを配置して診療時のコツ,注意点,禁忌が即座に理解できるように工夫してある.
 本書は,第1章「救急診療の進め方」,第2章「救急蘇生法」,第3章「救急治療の基本手技」,第4章「主要症候とその処置」,第5章「疾患別救急処置」,第6章「救急医療の関連事項」の6章より構成されている.第5章に記載された疾患数は実に116にも及び,執筆者は医学界の各領域の権威132名より成る.
 本書は,日本医学界の総力を結集したマニュアルであり,臨床研修医のみならず,各科の内科医,他科の医師,一般開業医の諸先生方にも役立つ座右の書となることを確信する次第である.
 2005年4月 編集者を代表して
 北村 諭(自治医科大学名誉教授)
 ・序文
 ・凡例
 ・略語
 ・著者

第1章 救急診療の進め方
  1.トリアージ――救急外来での重症度の見分け方
  2.バイタルサイン・身体所見
  3.神経学的所見
  4.病歴の取り方
  5.診療録の書き方
  6.入院・帰宅の判断
第2章 救急蘇生法
  1.AEDを使用したBLS(一次救命処置)
  2.ACLS(二次救命処置)
  3.JATEC
第3章 救急診療の基本手技
  1.気道確保
  2.血管確保
  3.人工呼吸
  4.心マッサージ
  5.除細動
  6.体外式ペースメーカー
  7.心膜腔穿刺
  8.胸腔穿刺
  9.中心静脈カテーテル
  10.胃洗浄
  11.止血
  12.導尿
  13.四肢の固定法
  14.動脈穿刺
  15.S-Bチューブ挿入
  16.イレウス管挿入
  17.腹腔穿刺
  18.腰椎穿刺
  19.血液型判定・輸血
  20.血尿
第4章 主要症候とその処置
  1.意識障害
  2.ショック
  3.呼吸困難
  4.不整脈
  5.めまい
  6.痙攣
  7.高熱(発熱)
  8.嘔気・嘔吐
  9.下痢
  10.吐血・下血
  11.腹痛
  12.頭痛
  13.眼痛・顔面痛
  14.胸痛
  15.腰痛
  16.四肢痛
  17.喀血・血痰
  18.発疹
  19.尿閉と乏尿・無尿
第5章 疾患別救急処置
 ●脳・神経
  1.急性頭蓋内圧亢進
  2.急性脳症
  3.くも膜下出血(SAH)
  4.てんかんと痙攣重積
  5.脳梗塞
  6.脳出血
  7.ギラン・バレー症候群
  8.筋無力症クリーゼ
  9.脊髄疾患
  10.低カリウム血症性周期性四肢麻痺
  11.麻痺性疾患
 ●呼吸器
  12.インフルエンザ
  13.ARDS(急性呼吸窮迫症候群)
  14.過敏性肺炎――外傷を除く
  15.気管支喘息
  16.気胸
  17.気道異物
  18.吸引性肺炎(メンデルソン症候群)
  19.急性気管支炎
  20.急性肺炎
  21.胸膜炎
  22.COPDの急性増悪
  23.肺塞栓
 ●循環器
  24.感染性心内膜炎
  25.急性右心不全
  26.急性左心不全
  27.狭心症
  28.四肢急性動脈閉塞症
  29.四肢急性静脈血栓症
  30.心外膜・心筋炎
  31.心筋梗塞
  32.大動脈瘤(急性解離性)――腹部大動脈瘤破裂を含む
  33.不整脈
 ●消化器
  34.イレウス
  35.急性膵炎
  36.急性胆管炎
  37.急性胆<INLINE NAME=“画像枠”COPY=OFF>炎
  38.急性虫垂炎
  39.急性腸間膜血管閉塞症
  40.劇症肝炎
  41.消化管穿孔
  42.上部消化管内異物
  43.食道静脈瘤破裂
  44.ヘルニア嵌頓
 ●内分泌・代謝
  45.ADH不適合分泌症候群(SIADH)
  46.下垂体卒中
  47.カリウム代謝異常
  48.劇症1型糖尿病
  49.高血圧緊急症
  50.甲状腺クリーゼ
  51.低血糖
  52.糖尿病性昏睡
  53.ナトリウム・水代謝異常
  54.乳酸アシドーシス
  55.粘液水腫昏睡
  56.副腎クリーゼ
 ●血液
  57.凝固不全症
  58.血液型不適合
  59.血小板減少症――ITP,TTP含む
  60.DIC(播種性血管内凝固症候群)
  61.貧血――輸血の適応と基準
  62.無顆粒球症
  63.薬剤性造血障害
  64.溶血性貧血――溶血発作,無形成発作aplastic crisis
 ●腎
  65.悪性腎硬化症
  66.急性糸球体腎炎
  67.急性腎盂腎炎
  68.急性尿細管壊死
  69.腎動脈・腎静脈閉塞症
  70.腎毒性物質による腎障害
  71.尿毒症
  72.ネフローゼ症候群
  73.免疫疾患による腎障害
 ●産婦人科
  74.産科・婦人科疾患
 ●小児科
  75.悪性高熱
  76.急性副腎不全
  77.子ども虐待――チャイルド・アビュース
  78.重症感染症・敗血症
  79.脱水――電解質異常・SIADH
  80.腸重積症
  81.乳幼児突然死症候群(SIDS)
 ●骨・関節
  82.開放性骨折・脱臼
  83.捻挫
  84.皮下骨折・脱臼
 ●眼
  85.眼疾患
 ●耳鼻
  86.耳鼻疾患
 ●皮膚
  87.皮膚疾患
 ●精神
  88.悪性症候群
  89.アルコール離脱症候群
  90.過呼吸症候群
  91.自殺企図
  92.不安神経症
  93.夜間せん妄
 ●中毒
  94.家庭用品の中毒
  95.急性アルコール中毒
  96.急性薬物中毒(医薬品による)――睡眠薬,鎮痛解熱薬
  97.一酸化炭素中毒
  98.食中毒(微生物による)
 ●外傷
  99.外傷治療の基本的な考え方
  100.硬膜内血腫(硬膜下血腫)
  101.硬膜外血腫
  102.脳挫傷
  103.顔面外傷
  104.胸部外傷
  105.腹部外傷
  106.骨盤骨折
  107.脊椎・脊髄損傷
  108.四肢外傷
  109.四肢切断
  110.圧挫症候群
  111.コンパートメント症候群
  112.咬傷・刺傷(動物による)
  113.熱傷の初期治療
  114.熱中症
  115.偶発的低体温症
  116.溺水
第6章 救急医療の関連事項
  1.患者・家族への対応
  2.インフォームドコンセント
  3.救急診療に必要な脳死判定の知識・脳死判定基準
  4.救急診療に必要な法医学的知識

・付録
 1.輸液療法
 2.注射用ドブタミン・ドパミン100mg用量・体重早見表
 3.腎不全における抗菌薬の体内動態
 4.抗菌薬のスペクトラム

・索引