やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 本書は,医用放射線科学講座7「放射線画像医学」の改訂に伴い,新・医用放射線科学講座「放射線画像医学」として,このたび上梓したものである.
 これまでの医用放射線科学講座7「放射線画像医学」は,当時の大阪大学医学部保健学科稲本一夫教授,別府慎太郎教授の編集により1997年に第1版が刊行された.放射線医学の歴史に始まり,臨床放射線医学概論として放射線診断学,放射線治療学,核医学が概説され,単純X線検査,造影検査,超音波,CT,MRI,核医学を中心とした各領域の画像解剖学,各疾患の画像診断学,画像ガイド下の治療手技であるIVRがトピックスも含めて解説されていたので,診療放射線技師をめざす学生の教科書として,各学年に読み継がれ,重版,増刷を重ねてきた.とはいえ,画像医学の進歩があまりに顕著であったことから,時代にそぐわなくなってしまった部分,古くなってしまった画像が出てきたのは,やむをえないことであろう.
 今回の全面的な改訂から新・医用放射線科学講座シリーズの1冊となるにあたり,「放射線画像医学」も稲本先生,別府先生に代わって,私が編集を担当させていただいた.前回,編者および著者として多大な労力を費やされた稲本先生には,放射線画像医学概論の加筆をお願いし,別府先生に代わって石蔵文信先生に循環器,心エコー等を執筆していただいたが,その他については大阪大学放射線医学教室,放射線部および関連施設を中心に著者を一新し,執筆していただいた.
 本書の核となる画像解剖学,画像医学(画像診断学)では,シェーマや三次元画像を駆使して各領域の画像解剖がわかりやすく提示され,画像医学では各疾患,各病態を描画する最先端の画像が多用されている.また,改訂前に私が担当したIVRは,最近の進歩に合わせてかなりの変更となり,当時,最先端と思われていた手技でも省かれているものがあり,新しい手技が追加されている.
 すでに実績のある本講座がバージョンアップし,診療放射線技師をめざす学生の教科書として充実した内容になったことは間違いない.本書が今後も末永く読み続けられる教科書となることを願ってやまない.
 2009年3月
 大阪大学大学院教授 医学系研究科放射線医学
 中村仁信
第1章 放射線画像医学概論
 1 放射線医学の歴史(稲本一夫)
  1.X線の発見
   1)レントゲンの功績
   2)日本への情報伝達
   3)軍陣医学での普及
   4)X線装置の国産化
  2.X線技術の発展
   1)X線管
   2)高電圧発生装置
  3.蛍光作用の利用
   1)蛍光板
   2)X線透視
   3)増感紙
  4.記録系の発達
   1)写真乾板
   2)フィルムの国産化
  5.ラジウムの発見
  6.放射線医学の出現
   1)日本の放射線医学の芽生え
   2)専門診療科の出現
   3)学会の結成
   4)放射線科専門医
   5)診療放射線技師の養成
   6)診療放射線技師の業務
   7)医学物理士の誕生
 2 放射線診断学の概説(稲本一夫)
  1.外科学への応用
   1)骨の撮影
   2)骨の診断
   3)戦場での利用
  2.胸部X線診断
   1)肺の診断
   2)透視より撮影へ
  3.造影剤の開発
   1)消化管系
   2)泌尿器系
   3)副作用
  4.間接撮影の出現
   1)間接撮影の開発
   2)間接撮影の普及
  5.第二次世界大戦以後
   1)戦争の終了
   2)原爆投下の影響
   3)高度経済成長期
  6.X線テレビの開発と二重造影
   1)暗室透視
   2)X線テレビの開発
   3)X線テレビの意義
   4)内視鏡の開発
  7.自動現像機の出現
  8.血管造影の進歩
   1)セルディンガーの功績
   2)血管造影の意義
  9.CTの出現
   1)従来のX線撮影
   2)CTの開発
   3)CTの診断的意義
   4)デジタル画像技術のきっかけ
  10.デジタル時代
  11.CRの開発
   1)CRの原理
   2)CRの特徴
   3)CRの普及
  12.デジタルX線テレビ
   1)デジタルX線テレビの特徴
   2)集検での利用
   3)災害時の利用
  13.超音波診断装置の出現
   1)超音波の利用
   2)超音波診断の発展
  14.MRIの発展
   1)MRIの出現
   2)MRIの特徴
  15.PACSのアイディア
   1)PACSとは
   2)画像電子保管
   3)遠隔診断の出現
   4)電子カルテへの発展
 3 核医学の概説(畑澤 順)
  1.核医学診断法
  2.核医学に用いる放射性同位元素
  3.核医学機器
  4.核医学の撮像装置
   1)シンチレーションカメラおよびSPECT
   2)PET
  5.画像処理
  6.放射性医薬品
   1)SPECTで用いる放射性医薬品
   2)PETで用いる放射性医薬品
  7.SPECTとPETの臨床応用
  8.安全管理
 4 今後の発展の方向(稲本一夫)
  1.X線発見100年とつぎの100年
   1)要素技術の革命
   2)自動診断技術の発展
   3)検査の流れの改善
   4)放射線科の中央化より分散化へ
   5)三次元画像技術の発展
  2.分子画像技術の出現
第2章 画像解剖学
 1 骨格軟部系
  1.頭蓋(稲本一夫,小水 満)
   1)頭蓋の全体的観察
   2)頭蓋正面撮影像
   3)頭蓋側面撮影像
   4)軸方向撮影(頭蓋底)像
   5)ウォーターズ撮影像
   6)コールドウェル撮影像
  2.頭頸部
   1)篩骨断層像
   2)頭頸部側面像
   3)喉頭断層像
  3.側頭骨(聴器)
   1)断層撮影
   2)単純撮影
  4.脊柱
   1)頸椎
   2)胸椎
   3)腰椎
   4)仙骨・尾骨
  5.骨格
   1)胸骨
   2)肋骨
   3)肩関節
   4)上肢骨
   5)手の指骨
   6)骨盤(寛骨)
   7)下肢骨
   8)足の指骨
  6.乳房(小水 満)
   乳房の解剖
 2 脳神経系(田中 壽)
  1.脳
   1)頭蓋
   2)髄膜
   3)脳の概観
   4)大脳
   5)間脳
   6)脳幹
   7)小脳
   8)脳室,脳脊髄液
   9)下垂体
  2.脳血管
   1)頭蓋外動脈
   2)大脳の動脈
   3)小脳,脳幹の動脈
   4)頭蓋内の静脈
  3.脊椎,脊髄
   1)脊椎
   2)脊髄,脊髄神経
 3 胸部(富山憲幸)
  1.胸部単純X線写真正面像
   1)縦隔
   2)肺門
   3)系統的読影法
   4)左右の肺野の明るさの違い
  2.胸部単純X線写真側面像
  3.フィルムの経時的な比較の重要性
  4.胸部CT解剖
   1)CTの表示
   2)体循環と肺循環
   3)縦隔条件
   4)肺野条件
  5.肺の高分解能CT
  6.肺の末梢構造
  7.胸部MRI解剖
 4 腹部
  1.腹部単純X線像(金 東石)
  2.食道
   1)解剖学的関係
   2)食道の狭窄部
   3)食道の各部位の名称
   4)食道癌取扱い規約
   5)造影像
  3.胃
   1)解剖学的関係
   2)単純撮影
   3)胃の部位
   4)胃の蠕動
   5)胃の粘膜
  4.十二指腸
   1)解剖学的関係
   2)部位
  5.小腸
  6.大腸
   1)解剖学的関係
   2)大腸の粘膜
   3)生理的狭窄部
  7.肝内胆管
   1)解剖学的関係
   2)造影
   3)部位
  8.胆嚢,胆嚢管,総胆管,膵管
   1)解剖学的関係
   2)部位
  9.泌尿器系(鳴海善文)
   1)解剖学的関係
   2)部位
  10.男性生殖器
   造影
  11.女性生殖器
   造影
  12.腹部大動脈造影(金 東石)
   1)腹腔動脈
   2)上腸間膜動脈
   3)下腸間膜動脈
   4)中副腎動脈
   5)腎動脈
   6)総腸骨動脈
  13.門脈
   1)脾静脈
   2)上腸間膜静脈
   3)下腸間膜静脈
  14.下大静脈
   1)肝静脈
   2)腎静脈
   3)右精巣静脈あるいは右卵巣静脈
   4)総腸骨静脈
   5)奇静脈
   6)半奇静脈
   7)骨盤内静脈
  15.腹部CT
   1)肝上部
   2)肝門部レベル
   3)胆嚢レベル
   4)女性骨盤レベル
   5)男性の大腿骨頭レベル
  16.腹部MRI
   1)上腹部冠状断像
   2)女性骨盤矢状断像
   3)男性骨盤矢状断像
  17.腹部超音波
   1)超音波画像表示
   2)上腹部の基本走査による超音波画像解剖
 5 循環器系(石蔵文信)
  1.循環と機能解剖学
   1)循環
   2)機能解剖学
  2.心臓の解剖
   1)心室
   2)心房
  3.心臓の画像(全般)
  4.左室長軸断面
   1)心エコー図
   2)MRI
   3)左室造影法
  5.四腔像
   1)心エコー図
   2)CT像
  6.短軸像
   心エコー図
  7.心膜
   1)心膜の解剖
   2)心膜の画像
  8.冠動脈
   1)冠動脈の解剖
   2)冠動脈の画像
  9.大動脈
   1)大動脈の解剖
   2)MRI画像
   3)CT画像
   4)心エコー図法
  10.肺動脈
第3章 画像医学
 1 骨・関節・軟部組織系
  1.骨のX線画像法(田中 壽)
   1)骨の構造
   2)骨の形成・成長
   3)骨の病的状態
   4)広範・全身性の骨濃度の低下
   5)広範・全身性の骨濃度の上昇
   6)局所的な異常
   7)外傷
  2.骨の核医学画像法(畑澤 順)
   1)悪性腫瘍の骨転移,原発性骨腫瘍
   2)骨外傷
   3)代謝性疾患
   4)大腿骨頭壊死症
  3.骨の血管造影法(田中 壽)
  4.骨の磁気共鳴画像法(柏木伸夫)
   1)骨MRIの特徴
   2)各撮像法の特徴
  5.関節の磁気共鳴画像法(中西克之)
   1)関節の構造
   2)MR撮像パラメータ
   3)膝関節
   4)股関節
   5)肩関節
   6)肘関節
   7)手関節ほか
  6.関節シンチグラフィ(畑澤 順)
  7.軟部組織の磁気共鳴画像法(柏木伸夫)
 2 頭頸部・脳神経系(田中 壽,櫻井康介)
  1.脳
   1)出血性病変
   2)虚血性病変
   3)腫瘍性病変
   4)炎症,脱髄,変性疾患
   5)外傷
  2.脊髄・脊椎
   1)腫瘍
   2)脊髄空洞症
   3)その他の脊髄疾患
   4)脊椎症,椎間板ヘルニア
   5)椎間板炎,脊椎炎
  3.頭頸部
   1)耳
   2)鼻・副鼻腔
   3)上咽頭
   4)唾液腺
   5)口腔,舌,中咽頭
   6)下咽頭,喉頭
   7)甲状腺
   8)副甲状腺
 3 呼吸器・胸郭(富山憲幸)
  1.肺癌
   1)画像所見
   2)腫瘤影
   3)症例
  2.縦隔腫瘍
   1)分類
   2)症例
  3.肺炎
   1)肺炎の罹患
   2)症例
  4.びまん性肺疾患
   1)画像診断
   2)症例
 4 心臓・脈管系(石蔵文信,内藤博昭)
  1.画像診断法の特性
  2.心臓計測
   1)心血管造影法
   2)心エコー図法
   3)CT
   4)MRI
  3.疾患ごとの検査法の選択とその画像情報
   1)先天性心疾患
   2)弁膜症
   3)感染性心内膜炎
   4)虚血性心疾患
   5)心臓腫瘍
   6)心膜炎
   7)大動脈瘤
 5 消化器系
  1.腹部単純像(稲本一夫)
   1)石灰化像
   2)ガス像
   3)腹水
  2.食道
   1)食道憩室
   2)食道裂孔ヘルニア
   3)食道炎と潰瘍
   4)アカラジア
   5)食道静脈瘤
   6)食道癌
   7)食道良性腫瘍
  3.胃
   1)胃炎
   2)胃潰瘍
   3)早期胃癌
   4)進行胃癌
   5)ポリープ
   6)胃粘膜下腫瘍
  4.十二指腸
   1)十二指腸潰瘍
   2)憩室
  5.小腸
   1)限局性腸炎(クローン病)
   2)悪性リンパ腫
  6.大腸
   1)腸重積
   2)憩室
   3)潰瘍性大腸炎
   4)クローン病
   5)ポリープ
   6)大腸癌
  7.肝臓(金 東石)
   1)びまん性肝疾患
   2)肝腫瘤性病変
  8.胆嚢
   1)胆石症
   2)胆嚢炎
   3)胆嚢癌
   4)胆管癌
  9.膵臓
   1)炎症性膵疾患
   2)膵腫瘤性病変
 6 泌尿器・生殖器系(鳴海善文)
  1.腎臓
   1)位置・回転異常
   2)腎盂腎炎
   3)腎嚢胞
   4)嚢胞腎
   5)海綿腎
   6)腎細胞癌
   7)ウィルムス腫瘍
   8)腎盂腫瘍
   9)腎結石
   10)腎石灰化症
   11)水腎症
   12)腎血管性高血圧症
  2.尿管
   1)尿管結石
   2)尿管腫瘍
  3.膀胱
   1)膀胱腫瘍
   2)膀胱結石
   3)膀胱炎
   4)神経因性膀胱
   5)尿管瘤
  4.前立腺
   1)前立腺肥大
   2)前立腺癌
  5.子宮
   1)子宮筋腫
   2)子宮頸癌
   3)卵巣腫瘍
  6.副腎・後腹膜腔
   1)神経芽細胞腫
   2)副腎皮質腺腫
   3)褐色細胞腫
   4)後腹膜腫瘍
第4章 IVR(友田 要)
 1 IVRとは
 2 IVRのデバイス
  1.カテーテル
  2.塞栓物質
  3.ステント
 3 血管系IVR
  1.血管塞栓術
   1)動脈塞栓術
   2)門脈・静脈系の塞栓術
  2.血管形成術(PTA)
   1)四肢,腎臓のPTA
   2)経皮的肝内門脈静脈短絡術(TIPS)
  3.下大静脈フィルタ
 4 非血管系IVR
  1.経皮経肝胆管ドレナージ(PTCD)
  2.膿瘍ドレナージ
  3.ラジオ波焼灼術(RFA)

 索引
  和文索引
  欧文索引