やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

監訳者のことば

 本書は,2001年にCambridge University Pressから出版された「Decision making in health and medicine Integrating evidence and values」を翻訳したものである.第2版と銘打ってはいないが,本書には第1版にあたる前著がある.1980年にW.B.Saunders Companyから出版された「Clinical Decision Analysis」である.
 Clinical Decision Analysisは私の恩師である聖路加国際病院院長(現理事長)日野原重明先生とともに監訳させていただき,1992年に『臨床決断分析-医療における意思決定理論-』(医歯薬出版株式会社)として出版された.その内容は,不確実な情報に基づいて決断せざるを得ない場面での合理的な方法である決断分析を医療の場に応用したものであり,とくに,決断分析が開発,応用された企業経営や軍事戦略とは決定的に異なる,医療に特有の問題点――健康についての患者個人の価値観や社会的視点からの価値観,倫理的問題,限りある資源と公平性など――に配慮されたものであった.当時,私たち監訳者は「わが国でも,医療費の無制限な高騰はもはや許されないという社会的枠組みが個々の医師をはじめとする医療者に明確になるにつれ,医療の質の評価や効果的で効率的な臨床決断の模索といった側面が,好むと好まざるとにかかわらずますます強調され,注目されるようになるであろう.また,さまざまな異なる健康状態についての価値観が個々の患者で異なるという事実を,いかにして臨床決断の過程に組み入れることができるのかを学ぶことも焦眉の急とされている」との状況認識を記した次第である.現在のわが国における医療状況が,まさにその様相を強めていることは疑いのないところであろう.
 Clinical Decision Analysisの内容が非常に優れたものであったことは,本書が出版されるまでの21年間,それに優ると評価される教科書が見当たらなかったことからも明らかである.実際,この分野の研究者がClinical Decision Analysisは臨床決断分析のTimeless Textbookだと言うのを何回も聞いたことがある.したがって,よほど心して第2版の執筆に入る必要があったのであろう.また,著者らが多忙であったことも,大きな理由の一つでもあったようだ.たとえば,前著の企画,執筆を中心として行ったM.C.Weinsteinは,決断分析や費用効果分析の研究と教育活動においてますますその名を馳せ,H.V.Finebergはハーバード大学公衆衛生大学院のDean(院長)からハーバード大学のProvost(副学長),そして2002年以降,米国科学アカデミーInstitute of MedicineのPresidentになっていることからも,多忙さをうかがい知ることができる.前著での執筆者7名のうち本書でも名を連ねているのは2名(M.C.WeinsteinとA.S.Elstein)のみで,しかも,主な執筆はオランダの放射線科医M.G.M.Huninkとオーストラリアのジェネラル・プラクティショナーP.P.Glasziouに代わっている.内容は,前著より洗練されており,決断樹の作成などはすっきりとした記述で,確率データの入手にはEBM(Evidence-based Medicine)の考え方が導入され,さらにマルコフモデルやモンテカルロ・シミュレーションによる感受性分析など,前著になかったテーマも数多く扱われている.加えて,出版社も変わったため,前著の第2版という形をとらず,新たな教科書として出版することになったようである.前回と同様,本書の執筆者はいずれも,ハーバード大学公衆衛生大学院で学位を取得あるいは研究を行った経歴のある人々で,その意味では,ハーバード大学公衆衛生大学院“学閥”によるものではあるが,より国際的な色合いの強い教科書となった.いずれにしても,臨床であれ公衆衛生であれ,医療上の決断を合理的なものにしようと考えるすべての医療関係者に,是非読んでいただきたい内容が満載されていることを保証するものである.
 12年前の『臨床決断分析-医療における意思決定理論-』の出版時と同様,医歯薬出版株式会社編集部塗木誠治氏には,深甚なる謝意を表するものである.わが国においても決断科学分野に興味を持つ研究者,医療関係者,学生は過去10年間で増えてきているとはいえ,とても採算が取れるほどの部数を販売できるような状況ではないであろう.それを承知で,言ってみれば,純粋に研究分野としての重要性,今後のわが国の医療における重要性に鑑み,本書の出版に踏み切っていただいていたことに心から感謝申し上げる次第である.
 また,私とともに監訳の労を執った森本 剛,翻訳にあたった森本 剛,小山 弘,林野泰明,後藤雅史,高橋 理の諸先生方にも心からお礼申し上げる次第である.
 2004年3月
 京都大学大学院医学研究科臨床疫学/同医学部附属病院内科(総合診療科)教授
 福井次矢

 なお,本書では,原著に添付されているCD-ROMの内容について,翻訳していないことをお断りしておきたい.本書を補完する内容となっており,興味を持たれた読者は原著を入手されたい.



About the authors――著者について

●M.G.Myriam Hunink
 Leiden大学にて医学博士号を取得後,アムステルダムで放射線科医としてトレーニングを受け,臨床決断分析の博士号をロッテルダムのErasmus大学にて取得した.現在,オランダのErasmus University Medical Center Rotterdamの放射線科医であり臨床疫学の教授,ボストンのHarvard School of Public Healthの健康政策・保健管理学の客員教授である.現在,Society for Medical Decision Makingの会長.
●Paul P.Glasziou
 オーストラリアのQueensland大学のEvidence-based Medicineの教授で,Inala Community Health Centerの総合診療医でもある.エビデンスに基づく医療を医学生や医療従事者に教育している.Harvard School of Public Healthの客員準教授であり,シドニー大学のNHMRC Clinical Trials Centreの客員準教授でもある.また,BMJのEvidence-Based Medicine誌の共編者.
●Joanna E.Siegel
 米国保健福祉省においてAgency for Healthcare Research and Quality(AHRQ)のResearch Initiative in Clinical Economicsの部長を務める.Harvard School of Public Healthにおいて健康政策学の修士号を,健康決断科学の博士号を修得した.大学では看護学を専攻した.
●Jane C.Weeks
 Dana-Farber Cancer InstituteとHarvard Medical Schoolの内科の準教授であり,Dana-Farber Cancer Instituteのアウトカム・政策研究センターの部長でもある.腫瘍内科医であり,癌の予防と治療に関するアウトカム研究や費用効果分析を専門とする研究者である.
●Joseph S.Pliskin
 イスラエルのBeer-Sheva,NegevのBen-Gurion大学の健康政策学のSidney Liswood教授である.健康システム政策部の部長であり,Industrial Engineering and Management部のメンバーでもある.ボストンのHarvard School of Public Healthの健康政策・保健管理学の客員準教授でもある.現在,European Society for Medical Decision Makingの会長.
●Arthur S.Elstein
 シカゴのイリノイ大学医学部の医学教育学教授.1995年から1999年まで,Medical Decision Makingの編集主幹であった.Medical Problem Solving: An Analysis of Clinical Reasoning(1978),Clinical Decision Analysis(1980)の共著者であり,Professional Judgment: A Reader in Clinical Decision Making(1988)の共編集者である.Society for Medical Decision Makingの元会長.
●Milton C.Weinstein
 Harvard School of Public Healthの健康政策・保健管理学,生物統計学のHenry J.Kaiser教授,Harvard Medical Schoolの内科学教授,Harvard Center for Risk Analysisにおける医療技術経済評価プログラムの責任者でもある.Innovus Research,Inc.の副社長で,Society for Medical Decision Makingの元会長.



Foreword――緒言

 崇高な審判である偶然がすべてを支配する――ジョン・ミルトン 失楽園 第2巻 909-10行

 1970年代の終わりに本書の前作(Weinsteinら,1980)を書いたときには,医学における決断はかつてなく複雑なものに思われた.選択することのできる診断補助検査や治療の数は,一世代前に比べてとてつもなく多くなり,医療費は高騰するばかりであった.自分自身の人生に影響を与える決断に積極的に参加したいと考える患者の数はますます増加し,医師はより権威主義的でない医師-患者関係に順応しつつあった.決断分析のツールを用いることにより,臨床医と患者は医療のおかれている複雑な状況を構成要素に解きほぐし,関連する不確実性や価値を評価した後に再び組み立てて,実行のための論理的な指標として用いることができた.
 それから一世代たった今日では,医療における決断のジレンマはますます大きな問題となりつつあるように思われる.これは,単に精巧な新しい器具や医薬品,手術の成功率やその他の介入などの科学的,技術的な進歩の結果によるものだけではない.政府機関や医療サービス提供システムが,決断に関してより直接的な(そして指導的な)役割を担うようになったために,医療決断を取り巻く状況自体が混乱してきているのである.今日では,医療におけるおもな関心は医療費のみならず医療の質にまで及んでいる.もはや医療情報にアクセスするために主治医のみに頼る必要はなく,インターネットはその正確性や妥当性はさまざまであるが,多くの人々に膨大な情報への直接アクセスを可能にした.人間の遺伝子のマッピングの進歩を考えると,臨床医はまもなくたった一世代前にはSFの題材であった深刻な倫理的問題に直面する可能性もある.
 医療や科学,ヘルスケア領域の環境におけるこれらのダイナミックな変化のために,本書はこれまで以上の価値をもつことになった.この版では,ヘルスケアのおかれている複雑な状況をより理解しやすくするような基礎的な方法と洗練された方法の両方を収載している.しかし,この本に書かれている内容が例外的でまれな臨床の状況に当てはまると考えてしまうことは誤りである.科学的な知識や臨床のエビデンス,価値判断を統合して筋の通った決断を行う作業は,医療において日常的に行われている作業である.
 医療上のアウトカムの違いのほとんどは,実験的で高価な技術が利用できないことでは説明できない.むしろ,比較的安価で効果の証明された技術を,それらを必要とする人が利用できないことによりそのような差違が生じている――ハイリスク群に対する肺炎球菌ワクチンや心筋梗塞後のβ遮断薬,適切な癌のスクリーニング,など……である.妥当な費用をかければ便益を甘受できると思われるすべての人に,系統的に予防的,診断的そして治療的な手段を講じることと比較すると,質の改善に取り組むことは特別なことでもなければ,例外的な決断でもない.本書で学習することにより医療やヘルスケア領域での日々の決断をより堅固なものにすることができる.
 科学やヘルスケアがどれほど進歩しても,医療現場での偶然の要素は変化しないであろう.因果関係や予後を正確に理解することにより,ある結果の起こりやすさについての理解の程度を深めることはできるが,不確実性がゼロになることはないであろう.医療における学習のほとんどは,医療上のケアにおける不確実性の大きさを減らすことであると解釈することができる.本書に記載した概念や方法により,避けることのできない不確実性と向き合ったときに,いかにインフォームド・ディシジョンを行うかについての指針が得られる.
 本書に示す方法は,決断者を援助するためのツールにすぎない.積極的に決断を行おうとする人のためのツールであり,悩み多い患者のためのツールでもある.さらに,政策決定者や支払者のためのツールでもある.これらのツールによって危険な状況が安全になるわけでもなければ,怠惰で能力のない臨床医が優秀な医療者に変わるわけでもない.本書の方法を用いて結論が出なくても,意見の違いがどのような理由により生じているのかを明らかにすることができる.本書に示した方法により,生命と疾患の現実と不確実性を取り扱う際に,思慮深い臨床医や誠実な患者,偏見のない政策決定者はより理に適った結論を引き出すことができるであろう.
 ハーバード大学副学長 Harvey V.Fineberg
 REFERENCE――参考文献
 Weinstein,M.C.,Finberg,H.V.,Elstein,A.S.et al.(1980). Clinical Decision Analysis.Philadelphia: W.B.Saunders.



Preface――はじめに

 医療上のものであれ,政策上のものであれ,さらには個人的なものであれ,あなたはどのくらいの頻度で決断に迷っているのだろうか.臨床医学や健康政策において,決断は非常に複雑なプロセスになってきており,リスクや利得,費用や選好についてトレードオフを行わざるをえないのである.科学的論文やウェブ上,あるいはメディアなどに呈示される急速に増加するエビデンスも考慮しなくてはならない――そのなかには良質なエビデンスもあれば質の悪いエビデンスもある.患者と社会に関する価値ともっとも良質で利用可能なエビデンスを統合しなくてはならない.そして,われわれの直観的な考えと理詰めの分析との調和を図らねばならない.
 本書では,臨床決断や健康政策上の決断を行う際に,エビデンスに基づく量的データや主観的なアウトカムの値を統合するためのツールについて図示し説明している.本書は,決断のプロセスをより優れたものとするために決断分析の考え方を採り入れたいと考えている臨床医学もしくは健康政策の決断にかかわるすべての人を対象としている.臨床決断分析,臨床疫学,EBM,ヘルスケアの技術評価や健康政策に関心のある大学(院)生や医療関係者を念頭においている.
 著者らの経歴からわかるように,本書は多くの学問分野と関連している.関連分野としては,総合診療や放射線医学,腫瘍内科学,数学,決断科学,決断心理学,健康政策・保健管理学などが挙げられる.本書中の例は臨床と健康政策の両方から引用されている.
 本書には,前版(Weinsteinら,1980年)が存在するが,本のタイトルだけでなく,内容の80%,出版社,さらには著者も変わった.しかし,本の表紙の色は同じである.そしておもなメッセージも変わらない.つまり,一般的に臨床医学とヘルスケアの決断では,エビデンスと価値観と1つの枠組みに統合する積極的なアプローチを採用することで,臨床医学とヘルスケア全般における決断はより望ましいものとなる.
 本書(原書)にはCD-ROMをつけてある.しかし,本書自体はCD-ROMに直接アクセスしなくても,椅子かソファでくつろぎながら読むこともできる.CD-ROMには付録的に,練習問題の解答,決断分析ソフトウェア,そのソフトウェアを用いた本書中の決断モデル例,有用なスプレッドシートなどの補助教材,抄録つきの文献などが含まれている.
 本書を楽しみながら読んでいただければ幸いである.あなたの決断が(計画どおりに)成功することを祈っている.
 M.G.Myriam Hunink
 Paul P.Glasziou

 REFERENCE――参考文献
 Weinstein,M.C.,Fineberg,H.V.,Elstein,A.S.et al.(1980). Clinical Decision Analysis.Philadelphia: W.B.Saunders.



Acknowledgments――謝辞

 著者以外の方々の力添えなしでは本書の出版はありえなかった.多くの人がこの本の作成に携わった.とくに,原稿を校閲,編集,改訂し,例題やその解答,参考教材を準備するのに尽力いただいた以下の方々に感謝申し上げる:Karen Visser,Majanka Heijenbrok,Galied Muradin,Rogier Nijhuis,Ylian Liem,Ankie Verstijnen,Miraude Adriaensen,Karen Kuntzに感謝する.April Levin,Alan Schwartz,Julie Goldberg,Edwin Oei,Jeroen Nikken,Marc Kock,Liang Wang,YiXiang Wang,Rick van Rijnからは,草稿に貴重なコメントをもらった.技術的編集についてはAnne Bosselaarに感謝する.
 本を書く作業に含まれるのは,紙に文章を書き図を作成するだけではない.ここに書き記すことのできないほどの多くの人々から与えていただいた考え方やアイデア,知識が本書をまとめる上で大きな力になった.今回は直接はかかわっていないが,本書の前版の著者の貢献には特別な感謝の気持ちを表したい:Harvey V.Fineberg,Howard S.Frazier,Duncan Neuhauser,Raymond R.Neutra,Barbara J.McNeilに深謝する.さらに,Society of Medical Dicision Makingの会員の方々,Harvard School of Public Health,Queensland大学,Erasmus University Medical Center Rotterdamの大学生,大学院生からの助言に感謝する.
 最後に,多くの夕方の時間と週末の時間をこの本の製作に費やす機会を与えて支えてくれた私たちの家族,とくにNancy,Steven,Peter GlasziouとMarijn,Laura Franxに感謝する.
医療・ヘルスケアのための決断科学―エビデンスと価値判断の統合― Contents――目次

監訳者のことば
著者について
緒言
はじめに
謝辞
略語

第1章 ヘルスケアにおける決断の要素
 1.1 はじめに
 1.2 決断と不確実性
 1.3 第1ステップ-PROactive:問題と目的
  1.3.1 P:問題点(Problem)の定義
  1.3.2 R:さまざまな視点からの再構成(Reframe)
  1.3.3 O:目的(Objective)の明確化
 1.4 第2ステップ-proACTive:選択肢,帰結,トレードオフ
  1.4.1 A:すべての関連する選択肢(Alternatives)の考慮
  1.4.2 C:帰結(Consequences)のモデル化と可能性(Chances)の推定
  1.4.3 T:トレードオフ(Trade-offs)の関係にある数値の同定と計算
 1.5 第3ステップ-proactIVE:統合,価値,解析と評価
  1.5.1 I:エビデンスと価値の統合(Integrate)
  1.5.2 V:期待値(Value)の最適化
  1.5.3 E:前提の検証(Explore)と不確実性の評価(Evaluate)
 1.6 結果の利用
  1.6.1 特定の臨床決断に対する指針
  1.6.2 クリニカルアルゴリズム
  1.6.3 クリニカルバランスシート
  1.6.4 患者立脚型決断ガイド
 1.7 これらのツールの有用性
  1.7.1 実用性
 1.8 要約
 1.9 本書の概要
  演習 演習 1.1
  演習 1.2
  演習 1.3
  演習 1.4
  文献

第2章 不確実性の取り扱い
 2.1 はじめに
 2.2 確率の種類
 2.3 診断の不確実性
  2.3.1 合計の原則
  2.3.2 条件付き確率
  2.3.3 データの入手方法
 2.4 予後の不確実性
  2.4.1 生存曲線
  2.4.2 確率樹
  2.4.3 予後因子
  2.4.4 データの入手方法
 2.5 治療の不確実性
  2.5.1 データの入手方法
 2.6 確率の統合
  2.6.1 確率乗法則
  2.6.2 条件付き確率
  2.6.3 従属と独立
  2.6.4 確率の掛け合わせ
 2.7 期待値
  2.7.1 平均,期待値,大数の法則
 2.8 まとめ
  CHECK LIST A.診断上の確率を評価する研究
  CHECK LIST B.予後についての研究の評価
  CHECK LIST C.治療または予防についての研究の評価
  演習 演習 2.1
  演習 2.2
  演習 2.3
  演習 2.4
  演習 2.5
  文献

第3章 最良の治療選択
 3.1 はじめに
  3.1.1 Benjamin Franklinと天然痘
 3.2 より効果があるが危険性のある選択肢の選択
 3.3 診断上の不確実性のもとでの最良の治療選択肢
  3.3.1 第1ステップ-PROactive
  3.3.2 第2ステップ-ProACTive
  3.3.3 第3ステップ-ProactIVE
  3.3.4 主観的な治療閾値の推定
  3.3.5 一次元,二次元,三次元,n次元感受性分析
 3.4 診断上の情報を得る決断と決断樹の作成時にすべきこと,してはならないこと
 3.5 まとめ
  演習 演習 3.1
  演習 3.2
  演習 3.3
  演習 3.4
  文献

第4章 アウトカムの価値づけ
 4.1 はじめに
 4.2 決断の典型例
  4.2.1 臨床現場での決断
  4.2.2 社会としての決断
 4.3 アウトカムの属性
  4.3.1 起こりうるアウトカムが2つの場合
  4.3.2 起こりうるアウトカムが多数ある場合:属性が1つ
  4.3.3 起こりうるアウトカムが多数ある場合:属性が多数
 4.4 質で調整した生存期間
 4.5 アウトカムを価値づけする手法
  4.5.1 レイティングスケール
  4.5.2 標準(基点)ギャンブル
  4.5.3 時間トレードオフ
  4.5.4 アウトカム,価値を測定するほかの手法
 4.6 専門用語に関するコメント
 4.7 アウトカムを価値づけする手法の間の関係
 4.8 健康指数
 4.9 過去に測定された効用値の利用
 4.10 死亡より悪い健康状態
 4.11 効用値測定の実際
 4.12 危険回避と時間選好
 4.13 効用値を利用した「質で調整した生存年数」
 4.14 効用値評価における他の心理学的問題
 4.15 討論:決断の典型例への応用
  4.15.1 臨床現場での決断:積極的な決断者
  4.15.2 臨床現場での決断:受動的な決断者
  4.15.3 社会としての決断:診療ガイドライン
  4.15.4 社会としての決断:資源の配分
 4.16 まとめ
  演習 演習 4.1 時間トレードオフ
  演習 4.2
  演習 4.3
  演習 4.4
  演習 4.5 手根管症候群に対する多属性効用値
  演習 4./リスク-リスクトレードオフ
  文献

第5章 診断上の情報の解釈
 5.1 診断上の情報と確率の修正
  5.1.1 有病率と検査前確率
  5.1.2 FOBTと大腸癌の2×2表
  5.1.3 2つの重要な条件付き確率:感度と特異度
  5.1.4 検査後確率:検査結果が陽性後の確率と陰性後の確率
  5.1.5 確率の修正:2×2表の利用
  5.1.6 スクリーニングにおける有病率の影響
 5.2 ベイズの公式
  5.2.1 確率の表記法の復習
  5.2.2 ベイズの公式の導出
  5.2.3 ベイズの公式の適用
 5.3 偶発樹の反転とベイズの定理
 5.4 ベイズの公式とオッズ・尤度比
  5.4.1 オッズ
  5.4.2 オッズを用いた確率の修正
  5.4.3 オッズ・尤度比の公式を用いた暗算による確率の変換
 5.5 検査前確率についての(主観的な)情報の入手
  5.5.1 利用可能性:思い出しやすさへの依存
  5.5.2 代表性:有病率を無視した臨床像への焦点
  5.5.3 投錨と調整:新しい情報の調整不足
  5.5.4 価値バイアス
 5.6 検査の正確度の研究の入手と質の評価
 5.7 まとめ
  演習 演習 5.1 痴呆のスクリーニング
  演習 5.2 乳癌のスクリーニング
  演習 5.3 クラミジアの尿スクリーニング
  演習 5.4 便潜血検査と大腸癌
  演習 5.5
  演習 5.6
  文献

第6章 検査を行う時期の決断
 6.1 はじめに
 6.2 治療閾値についての再考
 6.3 検査閾値:グレイゾーンの定義
 6.4 害のある検査のための閾値
 6.5 臨床情報の期待値
  6.5.1 完全な情報の期待値
  6.5.2 臨床情報の期待値
 6.6 効果発現必要症例数
 6.7 まとめ
  演習 演習 6.1
  演習 6.2 アスピリンによる心血管系疾患による死亡の一次予防
  演習 6.3
  演習 6.4
  演習 6.5
  文献

第7章 複数の検査結果
 7.1 はじめに
 7.2 検査結果が複数のカテゴリーをもつ場合における検査後確率
  7.2.1 検査前確率
  7.2.2 検査結果のカテゴリーの尤度比
  7.2.3 検査後確率
 7.3 真陽性率と偽陽性率間のトレードオフ
  7.3.1 トレードオフの視覚化:ROC曲線
  7.3.2 尤度比とROC曲線
  7.3.3 尤度比と解釈不可能な検査結果
 7.4 診断補助検査の有用性を比較するための要約指標
  7.4.1 ROC曲線の曲線下面積
  7.4.2 ROC曲線の曲線下面積のノンパラメトリックな推定値
  7.4.3 ROC曲線の曲線下面積のパラメトリックな推定値
  7.4.4 2つ以上のROC曲線の曲線下面積を比較する
 7.5 陽性基準の決定
 7.6 複数の検査結果の組み合わせ
  7.6.1 複数の検査の条件付き非独立と独立
  7.6.2 多変量のベイズの定理と多変量の予測式
  7.6.3 組み合わせの検査のROC曲線と至適陽性基準:多変量の臨床予測式
 7.7 その他の問題点
  7.7.1 複数の疾患,疾患状態の分析
  7.7.2 新しい診断技術の開発
 7.8 まとめ
  演習 演習 7.1 PE診断の陽性基準の最適化
  演習 7.2 冠状動脈疾患の診断におけるEBCT
  演習 7.3 C++型肝炎の陽性基準
  演習 7.4 マルコフ腫瘍の診断
  文献

第8章 エビデンスの検索と要約
 8.1 はじめに
 8.2 最良の研究の検索
  8.2.1 電子媒体を用いた検索
  8.2.2 方法論フィルター
  8.2.3 電子化データベース
 8.3 システマティックレビューとメタ分析
  8.3.1 関連する一次研究の検索
  8.3.2 研究の吟味と選択
  8.3.3 研究の要約と統合
  8.3.4 一般化と不均一性
  8.3.5 問題に特有の方法
 8.4 主観的推定値
  8.4.1 決断分析において,なぜ主観的確率を用いるのか
  8.4.2 決断分析と真実
  8.4.3 エビデンスと主観的確率の統合
  8.4.4 専門家グループによる確率の評価:デルファイ法
  8.4.5 主観的確率の定義
 8.5 感受性分析の再考
 8.6 まとめ
  演習 演習 8.1
  文献

第9章 限りある資源
 9.1 はじめに
 9.2 限りある資源の効率的な配分
  9.2.1 例:医師にとって,時間は限りある資源
  9.2.2 資源配分の分析手法:概要
  9.2.3 分析の視点
  9.2.4 費用効果分析のモデル
 9.3 費用
  9.3.1 CEAにおける費用の構成要素
  9.3.2 費用の測定--ヘルスケア資源
  9.3.3 時間やほかの資源の費用の測定
 9.4 効果
  9.4.1 ヘルスアウトカムの単一尺度
  9.4.2 ヘルスアウトカムの複合尺度
 9.5 費用とヘルスアウトカムの割り引き
  9.5.1 割り引きの機序
  9.5.2 割り引きの原理
  9.5.3 割り引き率
 9.6 増分費用効果分析
  9.6.1 買い物熱の問題
  9.6.2 競合的選択の問題
  9.6.3 拡張型優勢
  9.6.4 買い物熱の問題と競合的選択の問題の組み合わせ
  9.6.5 費用効果分析研究の比較
 9.7 費用効果分析における不確実性の取り扱い
 9.8 費用効果分析を行ううえでのガイドライン
 9.9 費用効果分析における分配の正義と平等性に関する問題
 9.10 費用効果分析の利用
  補遺 健康や医療における費用効果性に関する委員会の推奨の要約
  演習 演習 9.1
  演習 9.2
  演習 9.3 米国における腸骨動脈閉塞性疾患の経皮的治療の費用効果性
  演習 9.4
  演習 9.5
  文献

第10章 繰り返しイベント
 10.1 はじめに
 10.2 マルコフモデル
 10.3 マルコフモデルの評価
  10.3.1 基本行列法
  10.3.2 コホートシミュレーション
  10.3.3 余命の計算
  10.3.4 生存曲線の評価
  10.3.5 分割生存曲線の予測
  10.3.6 生活の質で調整した余命(期待効用値)
  10.3.7 価格の計算
  10.3.8 微調整:半サイクル補正
  10.3.9 モンテカルロシミュレーション
 10.4 マルコフ状態
  10.4.1 一時状態
  10.4.2 トンネル状態
  10.4.3 患者集団の不均衡
  10.4.4 吸収状態
  10.4.5 非吸収モデル
 10.5 決断樹からマルコフ節:マルコフサイクル樹
 10.6 移行確率の推定
 10.7 コホートシミュレーション対モンテカルロシミュレーション:どちらを用いるべきか?
 10.8 感受性分析
 10.9 まとめ
  演習 演習 10.1
  演習 10.2 乳癌の予防
  演習 10.3 マルコフ狂気
  文献

第11章 不均一性と不確実性
 11.1 はじめに
 11.2 不均一性と不確実性の種類
  11.2.1 サブグループ間の不均一性
  11.2.2 集団における不均一性
  11.2.3 確率論的不確実性
  11.2.4 変数型不確実性
  11.2.5 モデル構造型不確実性
 11.3 不均一性と不確実性の分析
  11.3.1 感受性分析:一次元,二次元,n次元
  11.3.2 さまざまな初期状態を有するマルコフコホート分析
  11.3.3 対象集団内の不均一性に対するモンテカルロマイクロシミュレーション
  11.3.4 離散イベントシミュレーションによるマイクロシミュレーション
  11.3.5 確率論的不確実性のモンテカルロシミュレーション
  11.3.6 モンテカルロ確率論的感受性分析
  11.3.7 分析的確率論的感受性分析:デルタ法
  11.3.8 モデル構造の変化についての分析
 11.4 費用効果分析における不確実性
  11.4.1 費用と効果の結合分布
  11.4.2 効果と費用の直線結合
  11.4.3 受容性曲線
 11.5 まとめ
  補遺 デルタ法
  演習 演習 11.1
  演習 11.2
  演習 11.3
  文献

第12章 積極的(Proactive)な決断:人生の道程
 P 方針(Path),過程(Process),問題(Problem),認識(Perception)のP
 R 再構成(Reframe),熟慮(Reflect),現実(Reality)のR
 O 目的(Objective),相反(Opposites)のO
 A 意識(Awareness),選択肢(Alternatives),積極性(Active)のA
 C 帰結(Consequences),可能性(Chances),関連(Connectedness),カオス(Chaos)のC
 T トレードオフ(Trade-offs),“道"(Tao)のT
 I 統合(Integrate),直感(Intuition),織り交ざり(Interwoven),相互作用(Interaction)のI
 V 価値(Value),展望(Vision)のV
 E 検証(Explore),評価(Evaluate),期待(Expectations)のE
 まとめ
 文献

索引