やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 筆者(斉藤)は2018年,日本補綴構造設計士協会(PSD)主催の歯科技工セミナーを受講した.歯科医師である筆者が受講した理由は,パーシャルデンチャーの設計ができるようになりたかったからである.当時はクラスプの位置や数などを決めずに印象や模型を歯科技工士に送り,お任せで製作していただいていた.具体的な指示もなく,歯科技工士はさぞ困っていたと思うが,なにも言わずに製作してくれていた.
 患者さんは地域柄高齢者が多く,特に部分欠損している患者さんが多かった.出来てきた技工物を調整して入れるだけの日々が続いていた.
 ある時,著名な先生のセミナーに参加したところ,「義歯の設計をやりましょう」と言われた.何もしていない自分は目が覚めた.
 クラスプをかけた歯が次第になくなる.最後は総義歯.この流れを止めるには永続的なパーシャルデンチャーを作らなければならないと考えた.
 そこでこれでは不十分と感じたため,パーシャルデンチャーの実技コースを探していたところ見付けたのが,川島セミナーである.そこで受講して驚いたことは,川島 哲先生の「材料へのこだわり」と「適合へのこだわり」である.材料の保管方法や埋没材の製造ロット番号による違い,そして,気温,湿度によって撹拌時間を変えることなど,これまで材料に対して関心の低かった筆者にとって貴重な学びとなった.またゴールド床の軟化熱処理では,ゴールド床が溶解しそうになるまで何度も行ったが,川島先生はそれに熱心に付き合ってくれて,その熱意に驚いた.
 川島先生は,歯科医師が「実際にキャストパーシャルを作ったのと作っていないのとでは患者満足度が全然違う」とおっしゃっていた.セミナー受講中は気がつかなかったが,製作を経験した後では,患者さんへの説明の内容やデンチャーの設計が格段に良くなっていることに気付いた.アンダーカットの量や位置,歯牙の動揺や形態によるクラスプの位置や数,そして骨隆起に対する設計の違いなど,実際に自分でキャストパーシャルを製作することで見えてくることが多かった.
 また技術面のみならず,歯科医療に対する考え方も学んだ.歯科医師,歯科技工士がWin-Winの関係で患者さんのために尽くすことの重要性をあらためて学んだ.今回は,こうした設計と技工経験を通して川島先生とともに治療した臨床例を供覧したいと思う.
Special Article
特別企画 ─義歯建築家への道─ 歯科医師と歯科技工士の連携によるキャストパーシャル製作
 (斉藤篤史,川島 哲)

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特別解説 チェアサイドとの連携による顎機能に調和した補綴装置の製作
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