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258巻2号 2016年7月9日
パピローマウイルス最前線
はじめに
AYUMI パピローマウイルス最前線 はじめに 川名敬
  ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus:HPV)は,主として性行為感染でヒトの生殖器粘膜・皮膚に感染するds-DNAウイルスである.1980年代にHPVと子宮頸癌が関連する学説が発表されて以来,多くの分子生物学的・疫学的根拠が積み上げられ,HPVが子宮頸癌の発生において必要条件であることが明確となった.この発見はウイルスの感染を予防するワクチンによって癌を予防するという戦略に発展し,発見者であるハラルド・ツア・ハウゼン(Harald zur Hausen)博士は2008年にノーベル生理学・医学賞を受賞している.まさに,癌の病態解明が癌の予防につながったのが“HPV学”である.
 しかし,HPV学にはまだ決着のついていないことが多く存在する.たとえば,HPVがヒトの生殖器に感染してもほとんどは自然にヒトから排除される,という解釈があるが,これは検査で検出できるレベルの話であって,実際にはHPVは生殖器粘膜に潜伏感染しつづけることができる.HPVの潜伏感染とその再活性は比較的最近の知見である.HPV感染が持続的にウイルスを増殖することが直接的な発癌リスクであることは間違いないが,持続感染するかどうかのメカニズムや識別は研究中である.HPVを標的にした創薬は長年研究されているが,いまだに抗ウイルス剤は開発されていない.HPV学という点でも研究は尽きない.HPVを標的とした治療戦略はヒト細胞への影響がなく,魅力的な創薬につながると期待されてきたが,いまだに実用化されたものはない.
 一方,子宮頸癌をはじめとする癌研究におけるHPV学は,生殖器の癌にとどまらず,中咽頭癌,肛門癌など,多くの分野に研究の裾野が広がっている.もっとも古典的な発癌メカニズムの研究題材である子宮頸癌においても,実はHPV感染からの発癌メカニズムの必要十分条件は解明されていない.すなわち,ハイリスク(発癌性)HPV感染が必要条件であるが,十分条件とはいえないからである.ハイリスクHPVはきわめてありふれたウイルスであるにもかかわらず,癌に至るヒトと異常がでないヒトの違いは不明である.
 全世界的には,HPV予防ワクチンを用いたHPV感染自体のリスク回避を一気に進める戦略が2007年から本格化した.この約10年間のワクチン事業により世界的にはワクチンでカバーしているHPV感染の減少が明らかとなってきた.このことが近い将来,癌の減少につながることを世界中の学者が認めている.しかし,HPV予防(子宮頸癌予防)ワクチンの問題点も指摘され,国内では社会問題となっている.
 本特集では,HPV学の最新の知見をご紹介するとともに,HPV予防ワクチンの現状について理解を深められるように,HPV学のエキスパートの先生方に執筆をお願いした.
目 次
日本におけるHPVの疫学──HPVタイプと子宮頸癌の関連性……岩田卓 詳細
HPVのウイルス学における持続感染の機構……中原知美・清野透 詳細
HPVによる発癌機構――変異原としてのHPV……森清一郎 詳細
HPVに対する抗ウイルス薬の開発──京都大学医学研究科におけるアカデミア創薬の展開……萩原正敏 詳細
HPVワクチンの有効性……今野良 詳細
HPVワクチンの費用対効果……福田敬 詳細
HPVワクチン接種後の有害事象とその対策……宮城悦子・他 詳細
HPV感染細胞を標的とした免疫療法の開発……足立克之・川名敬 詳細
TOPICS
【神経内科学】
アストロサイトにおけるD-セリンの産生調節……相磯貞和 
【遺伝・ゲノム学】
HLAアレルからみた東アジア集団――旧人類との遺伝的混合……中岡博史・井ノ上逸朗 
【消化器内科学】
アジアにおける食道腺癌の現状……松ア潤太郎・鈴木秀和 
連載
【グローバル感染症最前線――NTDsの先へ】
はじめに……北潔 
250巻から70周年をつなぐ連載
32.Klothoの発見,老化研究との思わぬ出会い……鍋島陽一 
フォーラム
【パリから見えるこの世界】
46.「意識の第三層」,あるいはパスカルの「気晴らし」……矢倉英隆 
【外国人にやさしい医療――言葉の壁をこえて】
9.メトロポリタン都市,Tokyoからみる外国人患者の課題:2020年に向けて……山田秀臣・田村純人 
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パピローマウイルス最前線
258巻2号 2016年7月9日
週刊(B5判,70頁)
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