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239巻10号 2011年12月3日
医学のあゆみ 239巻10号 原発事故の健康リスクとリスク・コミュニケーション 12月第1土曜特集
はじめに
第1土曜特集 原発事故の健康リスクとリスク・コミュニケーション はじめに 長瀧重信
  このたび「週刊医学のあゆみ」から“原発事故の健康リスクとリスク・コミュニケーション”の特集企画を依頼された.福島原発事故に関しては,すでに色々なメディアで特集が組まれているが,広く一般医家を読者対象とし,しかも一般市民を含む専門外の読者にも簡単に入手が可能な本誌において,ワンテーマに絞った特集号としての企画は非常に意義のあることと喜んで受諾した.
 事前に執筆者に対しては,本誌のような学術的性格の雑誌に掲載される論文・記事は,専門家によるコンセンサスを経た科学的事実に基づいた内容として一般読者に無条件に受け取られる傾向があるため,@できる限り科学的知見,科学的根拠に基づいたご意見の記述をいただくこと,A長期にわたる低線量放射線の影響など,いまだ科学的に確定できない範疇では,科学的な議論を踏まえ,とりわけ行動に対する勧告などには,その考え方の根拠を述べていただくこと,B放射線影響(科学的リスク評価)と放射線防護(規制上のルール)の区別が専門外の読者にとっては理解が容易ではなく誤解の元になるため,十分なご解説をお願いすることなど,執筆にあたり留意点を示した.
 掲載されている論文を拝見すると,いずれの方も本当に真剣に執筆に取り組んでいただき,原発事故の健康リスクについて,専門家集団として最新の科学的知見をまとめた充実した内容となったと自負している.執筆者の方々には深く感謝申し上げる次第である.とりわけ現在の日本でもっとも必要なリスクコミュニケーションには,多くの方の寄稿をいただいた.この国際的にも科学的に正しいと認められた知識が,読者を通じて日本社会に伝わることを念願する.
 特集企画者として,本特集を読まれる前に読者にご理解いただきたいことを,以下に序論としていくつか述べさせていただくことにする.

●科学者の社会に対する責任
―意図的に論文を集めれば,正反対のことでも“科学的に正しい”と主張できる
 放射線の影響に関しては膨大な論文がある.自らの主張に都合のよい論文を集めると,個人的,政治的,社会的な主張であっても“科学的に”という言葉で主張できる.様々な主張が科学の名前で発表されると社会は混乱する.日本の現状は混乱していると表現してもおかしくない.
 国際的にはこのような混乱を避ける必要性から,放射線の影響について純粋に科学的な知見に関する国際的な合意を定期的に報告するという習慣が確立されている.例えば,後述する「原子放射線に関する国連科学委員会」(UNSCEAR)の国連総会に対する報告書である.
 この科学のみ(個人的,政治的,社会的主張にではなく)に基づいた国際的な合意に間違いがないとは言えないが,この合意に対抗できる研究結果をもつ,あるいは反対の論拠をもつ個人の専門家は世界のどこにもいない.したがって科学者は,個人の主義主張とは別に,この国際的な純粋に科学的な合意を一致して社会に説明する義務があるのではないかと考える.
 その理由として以下を付け加えたい.放射線の健康影響に関する“科学”は,原子力の利用にとどまらず,産業や医学における放射線の利用,放射線の防護,被曝の補償といった問題まで,社会と密接にかかわっている.特に,今回の福島第一原発の事故による災害に際しては,科学的な提言は,否応なく社会に大きな影響を及ぼすことになる.
 もちろん,学問上の議論は,科学の進歩のために大いに推奨されるべきであり,現実に世界中で膨大な研究が遂行されている.しかし,様々な主張が科学の名前で社会に直接に伝わることで混乱をまねく状況下では,“科学”的な結論が出るまでの議論は,まず責任を持って科学者の間で行うべきであり,科学者間の議論は科学に基づいてフェアーに検討され吟味されるべきである.その上で,社会に対して発せられる科学者からの提言は,一致したものでなければならないと考えている.特に,原発事故が収束していない現状においては,この点は強く訴えたいところである.
 科学者にまず求められるのは,国際的に合意が得られている過去の知見を,分かりやすく社会に示すことである.科学的事実とされるもののうち,@「国際的に合意に達している事項はどこまでなのか」を明確に表明し,A合意に達していない部分は「科学的に不確実,あるいは不明である」と一致して社会に示す必要がある.現状では,@とAが混然一体となって社会に出回り,一般の方々に「何を信じればよいのか分からない」という不安感をもたらしている.科学者は,こうした情報の混乱が起きぬようにする社会的責任を負っていることを,十分に自覚すべきである.
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目 次
福島原発事故における被ばく医療
原発事故と医療人……山下俊一 詳細
内部被曝とその考え方……明石真言 詳細
福島原発事故における内部被曝と健康影響……遠藤啓吾 詳細
防災作業者の放射線健康リスク……鈴木元 詳細
緊急被ばく医療
緊急被ばく医療体制の構築……青木芳朗 詳細
緊急被ばく医療体制――三次被ばく医療機関の活動を中心に……神谷研二・他 詳細
放射線影響
放射線によるDNA損傷に対する応答機構……宮川清 詳細
疫 学
疫学調査:広島・長崎の経験から福島へ……大久保利晃 詳細
チェルノブイリ原発事故が小児に及ぼした健康影響……柴田義貞 詳細
チェルノブイリ周辺地域における放射性セシウムの内部被曝線量と健康影響評価……林田直美・高村昇 詳細
放射線防護
放射線防護の国際的枠組み……佐々木康人 詳細
放射線防護の考え方と実際の健康影響……酒井一夫 詳細
原発事故に対する放射線防護……草間朋子 詳細
リスク・コミュニケーション
リスク・コミュニケーションとは……堀口逸子・丸井英二 詳細
危機的状況におけるリスク・コミュニケーション……吉川肇子 詳細
レポート:リスク・コミュニケーションの現場から……神田玲子 詳細
原子力災害後の現存被曝状況でのリスク・コミュニケーション……山口一郎 詳細
臨界事故における健康リスクと,JCO臨界事故におけるリスク・コミュニケーションの問題点……前川和彦 詳細
環境放射線(食物も含む)
食品の放射能汚染とリスク・コミュニケーション……唐木英明 詳細
福島原発事故の環境生物への影響……酒井一夫 詳細
農耕地の汚染と農産物への影響……村松康行 詳細
原発事故の健康リスクとリスク・コミュニケーション
239巻10号 2011年12月3日
週刊(B5判,100頁)
発行時参考価格 2,200円
注文コード:923910
雑誌コード:20471-12/3
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