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「100周年記念 第85回日本矯正歯科学会学術大会」開催される
 10月13日(火)~16日(金),標記学術大会が『100年の煌(きら)めき,未来への飛翔 ―A Century of Sparkle, Fly High to the Future』をテーマに開催された(於:パシフィコ横浜)(大会長:東京歯科大学歯科矯正学講座/西井 康氏).
 創立100周年を迎えた本学会は,1926年の創立以来矯正歯科医療の発展とともに歩み,現在では約7,300名の会員を擁する歯科専門学会へと成長している.記念大会では,100年の歴史を振り返る特別講演をはじめ,国内外の研究・臨床に関する講演やシンポジウム,100周年記念研究の成果報告など多彩なプログラムが展開された.
会場内の様子
 シンポジウム1「口腔機能の新展開~呼吸・顎関節・脳機能との接点~」では,「鼻はなぜあるのか?睡眠医学の視点から」と題し,千葉伸太郎氏(国際医療福祉大学三田病院睡眠医学・睡眠外科センター)が登壇.鼻呼吸による気道の確保や脳機能への影響を解説し,小児期の鼻閉や口呼吸が顎顔面形態の成長や将来の閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)発症に及ぼす影響と,予防・治療の重要性を述べた.
 次に,「形態改善の先にある『脳と機能』の統合:末梢咬合の改善から中枢神経適応,そして『形態と心』をつなぐ臨床プロセス」と題し,小野卓史氏(東京科学大学大学院)が登壇.矯正歯科治療後の機能安定には,脳や神経筋系の適応が重要であると解説したうえで,fMRIによる脳活動の解析や患者の言葉の定量分析を紹介し,形態・機能・心理を統合した診療の重要性を示した.
 谷本幸太郎氏(広島大学大学院)は,「不正咬合と顎関節症:その関連性を再考する」と題し登壇.顎関節症と不正咬合の因果関係を示す科学的根拠は十分でないとしつつ,一部の不正咬合との関連を解説.変形性関節症や特発性下顎頭吸収による顎顔面形態の変化を取り上げ,下顎頭吸収のメカニズムや成長期の顎関節症の経過,両者の関連性を考察した.

 シンポジウム3「矯正歯科治療の長期安定を求めて」では,「動的治療後の咬合変化に向き合う責務」と題し,小坂竜也氏(東京都・小坂矯正歯科)が登壇.動的治療後の咬合は経年的に変化し,長期安定の条件を満たせない症例もあると指摘.自身の長期経過症例を通じ,保定や再介入の判断,動的治療後の管理のあり方を考察した.
 小川晴也氏(広島県・小川矯正歯科)は「8020達成を目指した矯正歯科治療―長期安定のための治療ゴールを再考する―」と題し,アンテリアガイダンスや口唇閉鎖機能などと術後安定性の関係を検討.咬合と機能の調和,術後管理のあり方をふまえ,8020達成を見据えた治療ゴールを考察した.
 本吉 満氏(日本大学)は「長期安定に関与する要因を考える」と題し,CBCTと側面セファログラムによる治療前後の舌位評価を紹介.前歯後退量やアンカースクリューによる大臼歯圧下と舌骨・気道の変化をふまえ,長期安定に関わる咬合平面の位置について考察した.

 シンポジウム7「アライナー型矯正装置を見つめ直す」では,「アライナー矯正の問題点とその解決方法」と題し,槇 宏太郎氏(昭和医科大学歯科病院)が登壇.アライナー矯正の歯の移動予測や治療効果の検証における課題を指摘したうえで,個別の力学シミュレーションや科学的な観点からの難易度診断を行い,GP(一般歯科)・矯正歯科医が協力体制で本装置への信頼性を取り戻すことが必要だとした.
 吉田教明氏(長崎大学大学院)は「バイオメカニクスから見たアライナー治療の現在地」と題し登壇.デジタル上の歯の移動計画と実際の移動には乖離があると指摘したうえで,アライナーによるモーメントの伝達と三次元的コントロールの限界,抜歯症例でのトルク制御やボーイングエフェクトを解説した.
 窪田正宏氏(石川県・くぼた矯正歯科医院)は「アライナー矯正治療に必要な4つの臨床的要件―臨床面からの考察―」と題し登壇.治療の予測実現性を高める4要件として,術者によるデジタルセットアップの構築,治療経過の評価・修正(モニタリング),材料特性の理解(アライナーの品質),患者の装着協力度を提示し,適切な治療の要点を解説した.

 シンポジウム9「Ⅱ級1類ハイアングルへの方略」では,さまざまな歯科矯正法による治療アプローチが展開された.
 まず,「骨格性Ⅱ級1類ハイアングル症例への治療方略 ―Digital Orthodonticsの手法を取り入れた.022 SWESによる外科矯正治療」と題し,永井宏人氏(神奈川県・永井矯正歯科医院/PPAS矯正歯科臨床研究会)が登壇.骨格性Ⅱ級1類ハイアングル症例への外科的矯正治療を提示し,セファロ分析に基づく治療計画と.022 SWES,3次元シミュレーション,CAD/CAMスプリントの応用を紹介した.
 次に,Ⅱ級1類ハイアングル症例への治療アプローチ―Tweed Philosophyにみて―」と題し,清水典佳氏(日本大学 名誉教授)が登壇.Tweed法に基づき,下顎切歯の直立化,上顎前歯の圧下・舌側移動,臼歯部の垂直的コントロールについて解説し,成長期症例とアンカースクリューを用いた成人症例への対応を示した.
 文野弘信氏(東京都・文野矯正歯科/BSC研究会)は「バイオプログレッシブ法におけるⅡ級1類ハイアングル上顎前突症例をどのように読み取るか?―診断・治療目標・メカニクスの選択の重要性について―」と題し登壇.Ⅱ級1類ハイアングル症例に対し,顎顔面形態や成長,口腔機能,審美性を総合的に評価したうえで,治療目標の設定,治療メカニクスの選択を行う重要性を示した.成長発育のある小児症例と成人症例に対し,ゼロベースバイオプログレッシブ法により,非外科にて個性正常咬合に導いた治療手法と思考過程を示した.
 浅井保彦氏(岐阜県・浅井矯正歯科/アレキサンダー研究会)は「Ⅱ級1類ハイアングル成人症例への挑戦」と題し登壇.Alexander Disciplineの基本理念とブラケット設計を紹介したうえで,Ⅱ級1類ハイアングル症例に対し,大臼歯抜歯やアンカースクリューの応用など,症例に応じた治療法の工夫を解説した.
 西岡真人氏(福岡県・西岡矯正歯科医院/LASソサエティ)は「Ⅱ級1類ハイアングル症例に対するLASの治療戦略―治療システムに組み込まれたバーティカルコントロール―」と題し登壇.アンカレッジを軸に,診断から結果,評価まで一体化し,垂直的コントロールを治療システムに組み込むLAS(Level Anchorage System)について解説したうえで,Ⅱ級1類ハイアングル症例に対する臼歯の挺出を防ぐ治療戦略を解説した.

 次回大会は,2027年11月23日(火・祝)~11月25日(木)に神戸国際展示場(兵庫県神戸市)にて開催される予定.

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