2026/07/14
7月11日(土)~7月12日(日),神奈川県歯科医師会館(横浜市)にて,標記学会総会・学術大会(大会長:大金 誠氏/名誉大会長:守屋義雄氏)が,「歯科医療の明日そして未来」をテーマに開催された.なお,関東甲信越歯科医療管理学会総会・第32回学術大会との併催である.
アピール講演では,「航空業界から学ぶ医療のヒューマンエラー対策」と題し,進 俊則氏(日本航空機操縦士協会会長)が登壇.ヒューマンエラーをなくすことは不可能であるが,減らすことは可能であり,防護壁を何層にも重ねる努力が必要であることを航空業界の事例とともに提言した.
教育講演では「これからの歯科医療管理」と題し,新理事長に就任した柴垣博一氏(柴垣歯科医院/神奈川県綾瀬市)と「歯科医療管理が歩んできた今までと今後」と題し,前理事長の尾﨑哲則氏(日本大学)が登壇.「医療安全」「地域連携」に加え,「経営の安定と持続可能な歯科医療提供体制の構築」を含めた3本柱として,一般開業医にとって必要とされる魅力ある学会づくりと,それを牽引するアカデミアな集団にしたいと,柴垣氏から決意表明がなされた.
特別講演では「厳しい歯科界を救うのは医療管理学!!」と題し,髙橋英登氏(日本歯科医師会会長)が登壇.限られた資源を活用し,診療の質を損なうことなく,国民に安心・納得して窓口で診療費を支払ってもらうためには,医療と経営の両面から質を高める必要があり,それこそが医療管理学であること,そして,歯科医療管理学がこれからの歯科界を支える重要な基盤となると強く提言.
シンポジウム2-1「女性の活躍編(ダブルライセンス)」では,5名のシンポジストが登壇.呉橋美紀氏(西馬込駅前クリニック歯科/東京都)は「ピンチを感じた時にこそ,チャンスが生まれる」と題し,学生時代に赤点・追試を経験した逆境をバネに,薬剤師免許を取得後,病院,外資系貿易商社に勤務した後,歯科医師を目指した経緯を報告.浮谷得子氏(浮谷歯科医院/千葉県市川市)は「訪問歯科医師と訪問歯科衛生士の現実そして未来」と題し,歯科衛生士を経験した後,歯科医師免許を取得し,外来診療と訪問診療を行っていることを紹介.施設や個人宅における歯科衛生士が行う口腔健康管理は毎週100人を超えており,人生の最期まで患者や家族に寄り添う尊い歯科衛生士の仕事について,末期癌を患った患者さんの貴重な画像記録とともに紹介.斉藤久子氏(東京科学大)は「法歯学分野における現場から人材育成への展開」と題し,歯科医師免許取得後,医学部法医学教室に進学,そして26年間勤務し,現在では歯学部で学生の育成にあたっているという自身の経歴と次世代を担う学生を紹介.それをうけ,小出さくら氏(昭和医科大学歯学部2年生)が「歯科衛生士から法歯学へ,そして歯科医師へ-ダブルライセンスが拓く女性のキャリア-」を,古野満理佳氏(東京科学大学歯学部5年生)が「人と関わることが好きな私が選んだ道」を発表した.
シンポジウム2-1(左から古野満理佳氏,小出さくら氏,斉藤久子氏,浮谷得子氏,呉橋美紀氏)
基調講演では「医療法改正とこれからの医療制度の展開」と題し,西嶋康浩氏(厚生労働省医政局地域医療計画課長)が登壇.2040年頃の超高齢社会を見据えた医療法改正(昨年12月)の概要(「地域医療構想の見直し等」「医師偏在是正に向けた総合的な対策」「医療DXの推進」)を解説.
神奈川県歯科医師会企画のシンポジウム2-2「医業承継に関する現状及び課題の比較と分析」では,4名が登壇.今宮圭太氏(神奈川県歯科医師会専務理事)は「歯科医業承継に関する意識調査」と題し,全国の都道府県歯科医師会を通じて全会員に実施した「医業継承等に関するアンケート」結果,および大都市圏である神奈川県歯科医師会の1つの取り組みとして,事業継承・開院サポート事業:WEB版会員台帳システムを準備中であることを報告.桑名良尚氏(三重県歯科医師会常務理事)は「三重県における医院承継-現状と課題-」と題して,中規模圏の現状と課題を報告.木村哲也氏(大分県歯科医師会会長)は「医業承継に向けての課題-今から準備すべきこと-」と題して,小規模圏の現状と課題を報告.寺島多実子氏(日本歯科医師会常務理事)は「地域医療提供体制確保と医業承継」と題して,全国約2割の無歯科医地区・準無歯科医地区の存在(日本歯科総合研究機構調べ)や歯科診療所が6年後には6万施設を下回る予測などを報告.また,新潟県や福島県・福島市による県等歯科医師会や大学同窓会によるマッチング支援を共有.いずれにおいても親族内を中心とした従来型の医院承継は今後困難が予想され,従業員承継やM&A(第三者承継)などを含めた地域歯科医療確保の方策を具体的・かつ速やかに進めていく必要があることが確認された.
シンポジウム2-2(左から桑名良尚氏,寺島多実子氏,木村哲也氏,今宮圭太氏)
ほか,口演発表およびポスター討論も白熱し,歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士の高齢化や歯科医師・歯学部入学者の減少など現況を踏まえたうえで,明るい未来像についても探求し,歯科医療の3本柱(教育・臨床・研究)を基本とした少子高齢時代において歯科界が果たすべき方向性がみえた2日間であった.
次回,第68回学術大会は,2027年5月22日(土)~23(日),広島にて開催予定(大会長:山﨑健次氏).