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令和8年度 日本臨床歯科補綴学会 第35回学術大会 開催される
 さる6月28日(日),国の重要文化財に指定されている国立科学博物館 日本館講堂(東京都台東区)にて「令和8年度 日本臨床歯科補綴学会第35回学術大会」が開催され(大会長/日本歯科技工士会会長・森野 隆氏,実行委員長/平沢歯科・宝崎岳彦氏),「Neo Occlusion-原則にして究極」をメインテーマに全7演題の講演が開催された.


 森野 隆氏による開会の辞に続いて,午前中は3題の教育講演が行われた.

●教育講演1「顆頭安定位をスタートと考える-成長期・不正咬合・咬合崩壊症例における臨床診断-」西川 新氏(神戸市・あらた歯科クリニック)

 西川氏は,顆頭安定位を「結果」ではなく「治療のスタート地点」として捉えており,成長期に顆頭安定位から逸脱した状態で咬合の発育が進むと骨格的な偏位を伴う不正咬合に発展し,異常の固定化に進むため,異常がある場合には速やかに修正することの重要性を述べた.また顆頭安定位は画像診断や数値などで捉えることは難しいが,小出馨氏に指導いただいた顎関節の触診を行うことで再現性や安定性を把握することが可能となり,臨床診断の重要な起点としているという.
 また開閉口路と咬合平面の不調和は顎位偏位を生み,咬合平面のズレは顆頭位を不安定にするため,咬合平面の傾斜が強く開口障害を起こしていた症例に対して矯正治療により改善した症例や,フェイスボウとゴシックアーチを用いて咬合平面の評価を行い顆頭安定位を模索した症例などを提示した.

●教育講演2「最新デジタルデンティストリーにおける咬合再現の実際と展望」白石憲作氏(株式会社CARESソリューションセンター)

 白石氏は,口腔内スキャナーやCAD/CAMシステムは大きな進化を遂げているが,それでもなお,口腔内に装着すると削合調整が必要なのはなぜか? と問題提起し,その原因には“インプットの再現性”と“アウトプットの再現性”にエラーがあると指摘した.
 インプットに関しては,口腔内スキャナーのスティッチングエラーによる再現性の低下が指摘されているが,フォトグラメトリー(写真測量による三次元的モデル作成)やCADソフトへのAI介入などにより再現性の向上が望めるとのことであった.
 アウトプットに関しては,加工パスを最適化するなどCAMソフトへのAI介入やミリングマシンのさらなる精度向上が挙げられ,今後はインプット,アウトプットの双方が進化することでデジタルデンティストリーのさらなる発展に期待したいと述べた.

●教育講演3「発育から読み解く Neo Occlusion.-舌・下顎・上顎の調和的成長が創る咬合」中村佐和子氏(東京都江東区・中村歯科医院)

 中村氏は,咬合の確立は,小児期からの動的な成長発育プロセスの帰結であり,“作る”のではなく“育つ過程”が重要であると述べた.そのためには,発育のプレセスを理解して上で,早期に機能的なアプローチを行うことで,生理的な発育ポテンシャルを最大限に引き出すことが可能になる.「Neo Occlusion」の真髄は,完成された咬合形態を作り出すことだけでなく,舌,上顎,下顎が調和的に成長するプロセスを理解し,その生物学的原則に基づいた治療哲学を構築することにある.そのためには,発育という原点に立ち返ることで未来の咬合治療の新たな考えが生まれるのではないかと述べた.

 昼食休憩を挟み,午後からは,4題の講演が行われた.
●基調講演「Neo Occlusion -原則にして究極-」小出 馨氏(日本歯科大学名誉教授,日本臨床歯科補綴学会顧問)
 
 本学術大会の基調講演として登壇した小出氏は,まずこれまでの自身の研究である全部床義歯における咬合様式の選択基準,咬合様式と咬合面形態が咀嚼能率へ与える影響,咬合器の開発などを解説,さらにトロント大学歯学部補綴学教室の客員教授としてZarb教授に師事して行った研究内容について述べた.
 咬合については,歯科治療の根幹であり,日常の生活習慣や身体姿勢,歯の喪失や経年的咬耗など,さまざまな要因で咬合にくるいが生じると,下顎や頭位の偏位を引き起こし,さらにその影響が筋膜連鎖や重心バランスと姿勢制御機能により全身の歪みへと伝播し,さまざまな徴候が発現する.これらの咬合の歪みに起因する生体現象に対して,咬合治療を実際に行う歯科医療者が的確に診断と治療を行うには,顎口腔系に関する重要事項の理解と治療内容のさらなる高度化が求められると述べ,咬合学のさらなる発展に期待を寄せた.
●特別講演1「デジタル時代のジルコニア修復-原則を踏まえた材料選択・形成・接着-」遠山敏成氏(東京都練馬区・マイスター春日歯科クリニック)

 近年,ジルコニアのオーバーレイが注目されているが,ジルコニアの機械的特性および破壊挙動を踏まえた支台歯形成,咬合接触のコントロール,そして接着への理解が必須である,と指摘.ジルコニアの物性,支台歯形成による強度の違い,サンドブラスト処理,およびMDP含有ボンディング材,接着性レジンセメントを用いた基本的な接着操作などについて解説した.
●特別講演2「普遍的な義歯技工の原則とNeo Occlusionへのアプローチ-デジタル技術とe-Haがもたらす可能性と課題-」吉田馨太氏(株式会社シンワ歯研 副所長)

 デジタルデンチャーの普及は,製作工程の効率化のみならず補綴装置の「標準化」に寄与しているものの,患者固有の条件への対応や,咀嚼効率の向上,装着感の向上など,機能面や審美性など,設計には高付加価値が求められる場面が多い.また中心咬合位や咬合平面,調節彎曲を適切に付与することで調整量の少ない補綴装置の製作が可能となり,技工品質の標準化が実現する,としたうえで,標準化の先にある「高付加価値」へのアプローチが不可欠であると述べた.
 さらにCAD/CAMを用いて,チタン製プレートやブレードティースを用いて,剛性の確保とたわみを防止し,咀嚼能率の向上を図った義歯症例を提示した.

●教育講演4「姿勢・足圧,重心動揺解析で見えてきたこと-歯科が姿勢医学に貢献できる唯一無二の領域-」小山浩一郎氏(長崎市・おやま歯科中通り診療所)

 不正咬合などが原因で,顎位の偏位に始まり,頭位の側屈・回旋,やがて姿勢の崩れや全身症状にまで及ぶ.
 そこで,姿勢・足圧,重心動揺解析装置(ToMoCo-LL,開発者:小出 馨教授,日下由紀夫氏/東総システム)を使用し,姿勢解析に用いる足圧測定,重心動揺解析データを元に,口腔諸組織への評価に有用である.そこで症例を交えながら,姿勢制御について予測的な姿勢調節(APA)と代償的姿勢調整(CPA)に着目し,制御閾値に関s与する体性深部感覚の影響を装置データに照らし,咬合と姿勢について考察した.

 全7題の講演を終え,最後は準備委員長の宝崎岳彦氏が閉会の辞を述べ,盛会に幕を閉じた

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