2026/06/29
6月26日(金)~28日(日)の3日間,2026年臨床歯科を語る会が,リンクフォレスト(東京都多摩市)にて開催された(実行委員長:斎田寛之氏・埼玉県).1981年に発足した同会は,今回が45周年の節目の開催となった.
「会員発表」では,登坂祐介氏(新潟県),山本哲史氏(広島県),江尻健一郎氏(東京都),星野修平氏(東京都)の4氏が登壇.提示症例はいずれも判断の難しいシチュエーションにありながら,治療計画の根拠が明確に示され,丁寧かつ緻密な治療の実際が紹介された.
「全体会①:臨床観察に基づいた過不足のない診療をめざして」では,千葉英史氏(千葉県)が登壇.長年の臨床観察からたどり着いた「過不足のない診療」の姿について,25年以上経過10症例の提示を軸に,自院での臨床統計の情報も交えての考察が展開された.術者と患者で「過不足のない」の認識にずれが生じてはいけないこと,オーバートリートメントでは必要十分には決してたどり着かないことなどの数々の指摘は,千葉氏の臨床哲学を知る機会であるのみならず,参加者それぞれが自らの臨床を振り返る機会ともなった.
分科会は「①歯髄保存の適応症と限界」「②少数歯欠損症例における治療戦略~最小限の介入とは~」「③重度歯周炎(StageⅣ)を伴う咬合崩壊症例への対応」の3つのテーマが設定された.
「③重度歯周炎(StageⅣ)を伴う咬合崩壊症例への対応」では,残存歯数11~17歯という条件が設定され,治療戦略の判断の難しい局面において,症例のおかれている状況をどう捉えて治療を進めていくか,5名の演者がそれぞれ症例報告を行った.松延允資氏(福岡県)は,一次固定で対応した症例の経過から,力学的に安定した設計が咬合崩壊症例の長期予後に寄与すると強調.大八木孝昌氏(神奈川県)は,外的な力の影響を減少させることが重要であるとし,正確な力の評価を治療計画に反映させた症例の実際を報告.大村星太氏(埼玉県)は,厳しいシチュエーションにある犬歯をキートゥースと見定め,その保存に主眼を置いた補綴設計を提示した.松井宏榮氏(神奈川県)は,咬合崩壊のステージにおける可撤性補綴のメリットとして,変化への対応が容易となることをあげ,受圧・加圧のバランスを整えることとあわせ,咬合,顎位の安定が達成できると述べた.松田光正氏(熊本県)も二次固定のメリットを強調するなかで,特に残存歯の歯列内配置に着目して長期の経過を紹介,検証した.
「夜の部屋:医療と医業のはざま」では,押見 一氏(東京都)を企画プランナーに,秋元秀俊氏(秋編集事務所)をコメンテーターに迎え,金属価格の高騰など,良質な医療と医院経営の両立が困難とされる現状において,保険診療,自費診療をどのように捉えるべきか,さらには臨床医としてのそもそものあるべき姿についてまで,「医療と医業」を切り口に白熱した議論が展開された.
「全体会②:井上 孝先生に聞く,力に対する生体反応の真実~天然歯・インプラントにまつわる臨床仮説~」では,井上 孝氏(東歯大名誉教授)を講師に迎え,骨吸収と骨増生めぐる臨床と研究のマッチングが試みられた.まず,森本達也氏(静岡県)および武田孝之氏(東京都)により,力の影響と考えられるさまざまな臨床における現象が,仮説を伴って提示され,最新のサイエンスから井上氏がその検証を試みるという構成で進行.臨床上のさまざまな疑問や判断に迷う局面について,多くのヒントが次々に提示される展開に,時間を忘れるほどの熱気に会場が包まれた.
その他,若手症例相談の部屋,ポスター発表など,趣向を凝らしたさまざまな試みが行われた.
2027年は,7月2日(金)~4日(日)に,同会場で開催の予定.