2025/12/16
12月13日(土),14日(日)の2日間,パシフィコ横浜ノース(横浜市西区)にて標記大会が「歯科審美の現在地 ―色彩美・形態美・機能美の調和と融合―」をテーマに開催された(大会長:小川 匠氏・鶴見大).
アドバンストセミナー2「デジタル歯科治療の現在地」(座長:末瀬一彦氏・日本歯科医師会常務理事,石川功和氏・日本歯科技工学会会長)では,田中晋平氏(昭和医大)が「デジタルデータの統合ワークフローによる審美歯科治療―現在の到達点―」と題し,デバイス・マテリアルの進化に伴う補綴治療のデジタルワークフローの変遷に言及.いわゆるゴールドスタンダードとなるような手順の確立には至っていないものの,今後は歯列・骨形態・顔貌の計測データに加えて顎運動や骨質などの機能・生体条件や歯の挺出・歯肉退縮などの時間軸を伴うデータを反映させることで,より個別化した補綴装置の選択・製作やメインテナンスプロトコルの立案に活かせる可能性があるとした.
新谷明一氏(日歯大)は「デジタル歯科治療で求められる材料学的知識」と題し,主に切削加工に用いられる歯冠色材料としてのガラスセラミックス,ジルコニア,CAD/CAM用レジンブロックの基本物性や症例選択について整理.現状において審美的に満足のゆく補綴装置を製作するにはアナログ技術の併用も必須となり,審美性と強度の観点から適切な材料を選択する必要があることを指摘.そのほか,ファイバー補強CAD/CAM用レジンブロックの特徴やブリッジ設計時の注意点等を述べ,CAD/CAM用レジンブロックのさらなる適用拡大の可能性に触れた.
末瀬氏は「保険診療におけるデジタル歯科治療の現状と展望」と題し,かつては保険の修復治療が金属材料による補綴処置が中心であったのが,昨今では金属代替材料を用いた治療が広がっている状況をデータで示し,特に歯科用CAD/CAMシステムの普及がメタルフリー材料の保険導入の追い風になったこと,その保険導入当初の脱離・破折といったトラブルが減少して良好な生存率・成功率を示し保険診療として高い価値を有する点を強調.そのうえで,適用条件に関して歯科医師により広い裁量権の与えられることが望ましいと訴えたほか,2025年12月1日に保険導入となった3次元プリント有床義歯の概要とメリットにも触れた.