2025/12/08
12月7日（日），東京科学大学大岡山キャンパス西9号館（東京都目黒区）にて標記大会が開催された（大会長：金澤 学氏・科学大，実行委員長：駒ヶ嶺友梨子氏・科学大）．
特別講演「長期安定を目指したインプラント治療における骨・軟組織再生の最新戦略」では，丸川恵理子氏（科学大）がインプラント周囲炎の罹患率や病因論，インプラント周囲辺縁骨吸収のコントロールについて文献的に検討．さらに骨補填材料や成長因子，自家骨採取のドナーサイトに関して最新の研究・臨床動向に言及したほか，各種骨造成術や上顎洞底挙上術，即時インプラント治療における有効な術式・マテリアルを紹介．今後の研究の展望として，インプラント周囲辺縁骨の吸収を最小限にするためのアプローチや骨質の的確な測定・評価，適切な抜歯のタイミングや抜歯後の処置，よりよい人工粘膜の開発をあげた．
生涯学習公開セミナー『有床義歯の “ デザイン ” を再考する』（座長：古屋純一氏・昭和医大）では，はじめに松田謙一氏（大阪府）が「有床義歯における咬合接触の重要性～義歯の安定と機能を考えた咬合接触デザイン～」と題し，有床義歯における咬合はマクロ視点（顎間関係）・ミクロ視点（咬合接触）ともに義歯の安定に影響を及ぼす点に触れたうえで，部分床義歯と全部床義歯の咬合様式に関する用語・概念を整理．さらに臨床例を交えながら，症例ごとに義歯の安定と顎関節・残存歯の保護のどちらを優先すべきか検討し，特に義歯の安定と機能が咬合接触で大きく変化する症例では部位ごとに上下顎頬側咬頭間の間隙量を調整し，義歯の安定と食物破砕効率のバランスを考えるとよいとした．
次に松丸悠一氏（フリーランス総義歯治療専門歯科医師）が「高度顎堤吸収症例に必要な総義歯のデザイン」と題し，同症例における適切な床外形のデザインについて考察．左右非対称な顎堤吸収においても失った組織を補うことを意識すればおおよそ左右対称な床外形となる点を述べたうえで，下顎では舌下部や舌小帯部，口腔前庭部，確認が困難となるレトロモラーパッド部の辺縁封鎖を達成する床縁設定や前顎舌骨筋窩における適切な床縁形態等について，上顎ではバッカルスペースやフラビーガム部に対する対応等について，解剖学的考察を交えながら述べた．