2025/11/14
11月9日(日),東京歯科大学(東京都千代田区)にて,第10回補綴歯科臨床研鑽会『プロソ’25』が「リジッドサポートを正しく理解しよう!」をメインテーマに,ハイブリッド形式にて開催された(大会長:山下秀一郎氏・東歯大).
≪臨床セミナー1≫では,まず山下氏が登壇し,「リジッドサポートを正しく理解しよう」との演題で講演.リジッドサポートは補綴臨床において頻繁に使用されるものの,その概念が正しく共有されていない現状を指摘.リジッドサポートの考え方を,歴史的な経緯と文献に基づいて整理し,今一度正しい理解に基づき臨床応用に結びつけようと呼びかけた.続いて,黒田昌彦氏(東京都・黒田歯科医院)は,「緩圧かリジッドかの論争中にコーヌスクローネへ」と題し講演.40年を超えるコーヌスクローネ義歯の臨床経過を多数紹介し,リジッドサポートがいかに患者の満足を導いてきたか,義歯設計や補綴精度のみならず,メインテナンス・経過観察の側面からも考察した.
≪臨床セミナー2≫では,臨床現場および教育現場での義歯設計の実際が報告された.長野泰弘氏(茨城県・ながのデンタルオフィス)は,コーヌスクローネ義歯の3症例の経過を提示し,よく噛める義歯であることに加え,超高齢社会における最適な補綴装置であることを強調した.都築 尊氏(福歯大)は、学生教育におけるリジッドサポートの扱いについて言及.部分床義歯設計においては,支台歯への適切な負担とその合理的な制御の見極めが重要であり,リジッドサポートの概念の正しい理解が必須のステップであるとした.
≪臨床セミナー3≫は,クラスプ義歯でのリジッドサポートの可能性について,チェアサイド,ラボサイドそれぞれの視点からの報告.加藤芳実氏(東歯大)は,リジッドサポートに近づけるクラスプ義歯の条件を整理.プロビジョナルの段階からの歯科技工士との情報共有が必須であるとした.青木 勇氏(東京都・ライズアオキ)は,着脱方向を徹底的に突き詰めたうえでのクラスプ設定に関する研究成果を報告した.
≪臨床セミナー4≫では,「ミリングテクニックを用いたIRPD」のテーマで白井麻衣氏(鶴見大)が,「インプラントによるリジッドサポートの臨床的考察」と題し荻野洋一郎氏(九大)がそれぞれ講演.白井氏はアンテリアハイパーファンクションを呈する症例において,ミリングによる高い連結強度の実現と,インプラント支持による安定した義歯の提供の可能性を提示した.荻野氏は,IOD,ISRPDの予後は,対合歯列の状況との関係性が大きく影響すると指摘し,インプラントの本数や埋入位置,アタッチメントの選択については,症例ごとにコストパフォーマンスの見極めが求められるとした.