2025/10/31
10月26日(日),富士ソフトアキバプラザ(東京都千代田区)にて,徳島大学名誉教授・坂東永一先生講演会「クラウンーこれまでの歩みとこれから―」が開催された(主催:スタディグループ救歯会).
トータル5時間を超える講演では,坂東氏が東京医科歯科大学,徳島大学にて40年にわたり追及してこられた,下顎運動と咬合に関する研究成果が,①クラウンの高さ,②(下)顎運動に調和した咬合面,③円滑な顎口腔機能に必要な咬合接触,の3つのテーマのもと,余すところなく解説された.
①「クラウンの高さ」では,測定のための機器開発の経緯をはじめ,咬合調整量からの検証など,適正なクラウンの高さについての考え方が整理された.さらに,歯髄の感覚閾値,咬筋活動の観察等から,クラウンの高さが顎口腔系に与える影響を総合的に解説された.
②「(下)顎運動に調和した咬合面」では,補綴学の歴史そのものともいえる咬合器をめぐる話題を提示.そもそも,顎運動とは上顎と下顎のいずれを基準面とするかの整理がないまま,咬合器上での顎運動の再現が議論されてきたことが,今日までの議論における混乱の最大の原因の一つと指摘.下顎運動と相補下顎運動の理解のうえで,咬合平面,顆頭点,顆路,ガイド,顎間軸,咬合参照面等の概念を整理する必要があるとした.
③「円滑な顎口腔機能に必要な咬合接触」では,咬合学は補綴学および生理学の視点が統合されて初めて完成するとの,故石原壽郎・元東京医科歯科大学教授の指摘を紹介.咀嚼は随意運動でありつつも反射運動としての側面を有するという生理学的知見が議論の大前提として整理され,「下顎運動との協調」を求めた機械的咬合論ではなく,「不適切な筋活動の制御」に立脚する生理的咬合論を希求することが,円滑な顎運動の理解を導くと強調され,講演を結んだ.