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第40回日本小児歯科学会関東地方会大会および令和7年度総会 開催される
 10月5日(日),標記会が【子どもの健康は胎児期から始まる~小児歯科からできること~】をメインテーマにタワーホール船堀(東京都江戸川区)にて開催された(大会長:藤岡万里氏/医療法人緑生会あびこクリニック・昭和医科大学歯学部小児成育歯科学講座,準備委員長:山崎 優氏/やまざき歯科クリニック).
 大会長の藤岡氏は,産科併設歯科での経験から得た「命の尊さ」と,子どもを育てる保護者や周囲の大人たち,そして成長していく子どもたちへの想いを本大会テーマに込めたと述べた.情報過多な現代社会において,親と子どもに多く関わる小児歯科が「いつから,どのように関わるべきなのか」との問いに対し,歯科からの「支援」「気づき」「想い」の大切さを参加者と共有する機会となった.
藤岡万里氏(医療法人緑生会あびこクリニック・昭和医科大学歯学部小児成育歯科学講座)
 基調講演では,船津敬弘氏(昭和医科大学歯学部小児成育歯科学講座教授)が「親子と育む小児歯科診療~子どもの成長に合わせた対応~」と題して登壇.昭和,平成,令和と時代が移り変わるなかで,保護者を含めた親子の関わり方が大きく変化していることを指摘した.約30年前は母子分離が原則であったが,現在は中学生にも保護者が診療に同席することが一般的になっている.船津氏は,保護者同席が子どもの精神的安定につながる一方,医療者と子ども自身とのラポール形成が阻害される可能性も指摘しつつ,この時代だからこそ保護者を巻き込んで診療を展開することで子どもの健康増進を図る重要性を強調した.
船津敬弘氏(昭和医科大学歯学部小児成育歯科学講座教授)
 本会講演では,笠井靖代氏(日本赤十字社医療センター第二産婦人科部長)が「加速化する少子化の中での周産期医療の課題~こころもみる~」をテーマに講演.2024年の出生数は過去最低の686,061人,合計特殊出生率は1.15と少子化が加速している現状を提示した.妊娠・出産・育児を取り巻く環境が「自然に妊娠して,自然に出産し,家族や地域社会の中で子育てをしていくこと」から大きく変化し,生殖補助医療による妊娠や高年妊娠が増加している実態を説明.妊産婦のメンタルヘルスの重要性についても触れ,2020年以降,自殺が妊産婦死亡の原因として産科危機的出血や羊水塞栓を上回り最多となっていることを指摘した.笠井氏は,歯科医療従事者が日常診療上の何気ない会話や声かけ,悩みの傾聴を通じて妊産婦のこころを支える大きな力を持っていると述べ,特に小児歯科に携わる専門職の役割に期待を寄せた.
笠井靖代氏(日本赤十字社医療センター第二産婦人科部長)
 認定歯科衛生士研修セミナーでは,秋山邦久氏(常磐大学人間科学部心理学科教授)が「令和時代の子どもとの医療コミュニケーション」と題して講演.コミュニケーションは内容だけでなく,「いつ,何処で,誰と,誰が,何を,どのように」という“文脈”(背景)から成り立っており,特に「いつ」と「誰と誰が」に令和という時代が影響することを解説した.支援を受ける側が支援する方の文脈に合わせるのではなく,支援する方が支援を受ける側の文脈に合わせることの重要性を強調し,令和世代の子どもたちの文脈に合わせた医療コミュニケーションが求められていると結んだ.
秋山邦久氏(常磐大学人間科学部心理学科教授)
 臨床講演では,2題の講演が行われた.杉山智美氏(昭和医科大学歯学部小児成育歯科学講座講師)が「子どもたちが健やかに成長するために小児歯科医ができること―小児科との連携―」をテーマに講演.歯科治療時に配慮が必要な小児が増加している現状を踏まえ,小児科と連携をとって診療を行うことの重要性を実際の症例を通じて紹介した.小児の治療は歯科単独ではなくチームで行うことの重要性を訴えた.
 続いて,村瀬正彦氏(昭和医科大学横浜市北部病院こどもセンター准教授)は「良好な発育発達に向けて新生児医療が取り組んでいること」と題し,在胎28週未満で出生する児の死亡率は減少している一方で認知機能障害の割合に変化がないことから,「後遺症なき生存」が大きな課題となっていることを説明.特に早産児にとって出生直後からの栄養管理がきわめて重要であり,中枢神経系の発達は受胎してからの約1000日の間に急速に進行するため,この時期の栄養状態がその後の認知・運動機能の発達に強く影響することを強調した.また,母乳栄養の重要性と強化母乳栄養の必要性について解説し,NICU退院後も発育や発達を継続的にフォローアップする重要性を述べた.
 このほか,ポスター発表(特別企画ポスターディスカッション,社会保険委員会企画発表,一般演題),ランチョンセミナー,企業セミナー,商業展示など充実したプログラムが組まれた.大会終了後には同会場内で40周年記念祝賀会も開催され,参加者の親睦を深める機会となった.

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