Ishiyaku Dent Web

歯科医師・歯科技工士・歯科衛生士のポータルサイト

第84回日本矯正歯科学会学術大会 開催される
 9月29日(月)~10月1日(水),札幌コンベンションセンター・札幌市産業振興センター(札幌市)にて,標記学術大会が「繋ぐ未来―コラボレーションの力」をメインテーマに開催された(大会長:佐藤嘉晃氏/北海道大学大学院歯学研究院歯科矯正学教室).
 海外特別講演「Fantastic is more than just Plastic!」では,Nikhillesh Vaiid氏 (President of the World Federation of Orthodontists)が登壇.昨今注目を集めている技術の一つであるアライナー矯正について,必要とされる歯の移動を行うためには「なぜ」「どのように」「何を」の観点から検討することが重要だと強調.症例に応じてアンカースクリューや拡大装置などの補助装置を併用することで,良好な治療結果が得られることを示した.
 シンポジウム1「危機管理に学ぶ」では,南須原康行氏(北海道大学病院),天野慎介氏(一般社団法人全国がん患者団体連合会),小畑 真氏(弁護士法人小畑法律事務所,弁護士・歯科医師)と立場の異なる3名の講演が行われた.まず医療者の立場から「リスクコントロールとクライシスマネジメント」のテーマで登壇した南須原氏は,医療界では他に比べて事故に対する防御機能が脆弱なことを概説.医療安全の基本的な視点として,ヒューマンエラーが生じることを前提に診療システムを構築することを提言した.次に「医療安全へのがん患者の立場からの期待」と題して登壇した天野氏は,自身が外部委員として関わる群馬大学医学部附属病院の医療安全に向けた取り組みを紹介.医療事故を防止するためには患者と医療者とのコミュニケーションにおいて心理的安全性が担保されていることが必要だとした.最後に法律家の立場から登壇した小畑氏は,「矯正歯科における法的トラブルの予防と対応」と題して講演.治療同意書を法的な観点からだけでなくコミュニケーションツールとして利用することで患者との信頼関係が強固になることなどを,判例も交えながら解説した.
 臨床セミナー1「歯の移植は次世代矯正歯科の標準治療になり得るか」では,月星光博氏(愛知県)が「自家歯牙移植における創傷の治癒」をテーマに登壇.豊富な臨床経験をもとに創傷治癒のメカニズムと適応症について解説し,自家歯牙移植では歯根膜の保存が大前提となること,根未完成歯はきわめて予後がよいことを強調した.その後に行われた教育講演では,松沢祐介氏(社会医療法人恵佑会札幌病院口腔顎顔面外科)が「Dentoalveolar surgeryを用いた矯正歯科と口腔外科のCollaboration」と題して講演.第二大臼歯埋伏に対する外科的整直,矯正歯科治療のための骨移植,歯の移植など,矯正歯科治療に口腔外科の術式を併用することで治療結果の向上が図られることを示唆した.続いて行われたシンポジウム2「基礎研究から臨床へ繋ぐ」も含め,いずれも本大会のメインテーマを彷彿とさせるもので,他科とのコラボレーションやチーム医療により矯正歯科治療のさらなる発展が見込まれることがうかがえた.
 大会最終日には,JOSフォーラムが開催.日本歯科専門医機構認定「矯正歯科専門医」取得のための最新情報が共有されたほか,学会創立100周年記念事業についてのアナウンスや各賞授与が行われた.

JOSフォーラム
 次回大会は,100周年記念大会として例年より会期を拡大し,2026年10月12日~16日にパシフィコ横浜で開催される予定(大会長:西井 康氏/東京歯科大学歯科矯正学講座).

■他のニュース記事をさがす

日付から記事をさがす
<2025年10月>
2829301234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930311
2345678
キーワードから記事をさがす

人気の歯科書籍(キーワード別)

歯科雑誌 最新号